1996年版
環境と相互に作用しうる、組織の活動、製品又はサービスの要素
element of an organization's activities, products or services that can interact with the environment.
2004年版
環境と相互に作用する可能性のある、組織の活動又は製品又はサービスの要素
element of an organization's activities or products or services that can interact with the environment.
2015年版
環境と相互に作用する、又は相互に作用する可能性のある、組織の活動又は製品又はサービスの要素
element of an organization's activities or products or services that interacts or can interact with the environment.
上記3つを見比べただけでも、変だなあ?というところは多々ある。
まず「相互に作用する可能性のある」だけでは足りずに「環境と相互に作用する」を追加する要があるや否やであるが、どんなものなのだろう? 「可能性がある」というのはまだ起きていない時ばかりに使われることでもなさそうだ。そして「可能性はないけど実際には発生している」なんてのは論理的にない。
日本語訳について言えば、「can」を「可能性」や「しうる」にするよりも、「ありえる」の方が良いのではないか。まあこれはどうでもいいか、規格そのものもどうでもいいのだから。
対象3つをつなぐ接続詞であるが、「activities or products or services」ではなく「activities, products or services」が正しいように思える。英語で接続詞は最後Wordの前にのみ置くべきだということでなく、この3つは同等ではなく、組織の活動と広義の製品(製品&サービス)で大分類と小分類のつながりだからレベルが異なる。だから「or」をすべて「又は」に訳しているが、日本語にはちゃんと「又は」と「若しくは」の使い方があるわけで、単純に英語の単語をそのまま置き換えるのは稚拙である。「又は」を重ねるのでなく、「組織の活動又は製品もしくはサービスの要素」とすべきであろう。それは接続詞の作法とか格調高くというのでなく、読む人が理解しやすく、対象の関係を誤解しないためである。日頃、環境法規制を読んでいる人ならば、規格の言い回しに拒否感を持つはずだ。ひょっとして翻訳した人たちは、環境法規制など読んだことがないのかもしれない。
さて、環境側面とは「組織の活動又は製品又はサービスの要素」と定義で述べている。「要素(element)」とはなんだろうか?
elementは定義されていないので英語の一般的な意味と理解することになる。
ロングマン英英辞典によると、
one part or feature of a whole system, plan, piece of work etc, especially one that is basic or important
「システム全体、計画、仕事の一部などの1つの部分または機能、特に基本的または重要なもの」というところか、
なにごとかが原因となって起きた「こと」が、「部分または機能」であるはずがない。
環境側面は「もの」とか「能力」である。環境影響という「ありさま」とか「起きたこと」が環境側面であるはずはない。
それは私の説ではない。上記のように定義に環境側面はelementであると書いてあり、elementとは英英辞典を引けば「部分(もの)」または「機能(働き・能力)」であって、「流体が漏れている」とか「高温で燃えている」ということはelementではなく、故に環境側面ではない。