17.05.25
本日は、マネジメントとは何かを考えたいと思う。
飯塚悦功氏(JAB理事長)は某講演会で
「マネジメントとは経営のこと、品質マネジメントとは品質経営のこと(2016.12)」と語ったそうだ。
それは正しいのでしょうか。
そもそもISO規格あるいは翻訳規格であるJISでは「マネジメント」とはどのように定義されているのでしょうか?

JISQ9000:2015(ISO9000:)
3.3.3 【マネジメント、運営管理】
組織を指揮し、管理するための調整された活動
注記1. | マネジメントには、方針及び目標の確立、並びにその目標を達成するためのプロセスが含まれることがある。 |
注記2. | "マネジメント"という言葉が人を指すことがある。すなわち、組織の指揮及び管理を行うための権限及び責任をもつ個人またはグループを意味することがある。"マネジメント"がこの意味で用いられる場合には、この項で定義した、一連の活動としての"マネジメント"の概念との混同を避けるために、常に何らかの修飾語を付けて用いるのがよい。例えば"マネジメントは・・・しなければならない"は使ってはならないが、"トップマネジメントは・・・しなければならない"を使うことは許される。このほか、その概念が人に関係することを伝えるために、例えば、"経営者・管理者の"、"管理者"のような別の言葉を用いることが望ましい。
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飯塚氏はマネジメントとは経営なりと語ったが、ISO9000の定義を読めばマネジメントとは経営ではなく管理ではないかと思える。というのは「組織を指揮する」のは社長の仕事とは思えない。指揮とは割り当てられた使命の達成のために資源を活用し、企画・組織・調整・統制する機能のこと。それは経営者の仕事ではない。それはせいぜい部長・課長の仕事だろう。社長のすることは管理ではなく統率というべきではなかろうか。
ちなみに管理と経営は規模が違うのではなく視野が違う。
注1. | 執行役と執行役員は違う。執行役は役員で執行役員は従業員である。詳しくは会社法参照 |
注2. | |
注3. | |
日本では普通、マネジャーという言葉は管理職に使われ、社長はもちろん役員を指すには使われない。そして経営者と聞いて思い浮かべるのは、社長か
ナンバーツウせいぜいが
ナンバースリーまでではないだろうか。役員でない管理者が「俺は経営者だ」と言ったら失笑する。
正しいか否かはともかく、一般的に社長(イクイバレント)が経営者、部課長クラスの管理者がマネジャーかと思える。係長以下になるとマネジャーといわず監督者と呼ぶのではないかな?
昔のこと、私が係長になったときやっと管理者になれたと思ったら、上司から係長は監督者だと言われた。まあ会社によって考えは違うだろう。もちろん、労働基準法での管理監督者はまた別だ。
そもそもマネジメントとかマネジャーとはどういう意味なのだろう?
- 英語版GoogleでそんなQ&Aを見つけた。
What's the difference between a manager, a director and a chief officer?
マネジャー、ディレクター、最高責任者の違いは何か?
A manager is in charge of something: resources, people, projects, programs, accounts
マネジャーとはリソース、人、プロジェクト、プログラム、アカウントを担当する。
A director is in charge of something bigger: multiple managers, an entire discipline, multiple projects
ディレクターは、より大きなこと、複数のマネジャー、全体の教育訓練、複数のプロジェクトを担当する。
A chief officer is not only in charge of something big (like multiple directors, or an entire aspect of the business), but is also an officer of the company and so has specific legal and stockholder obligations that managers and directors often don't.
最高責任者は、(複数のディレクターや全般的な業務の)を担当するだけでなく、会社の役員でもあり、経営者や取締役はしばしばそうではない具体的な法律や株主の義務を負う。

おばQ注
注1. | 最高責任者とは会社のトップという意味ではなく業務についての最高責任者のことであり、通常担当業務を入れて最高財務責任者(CFO)、最高人事責任者(CHO)、最高品質責任者(CQO)などと呼ばれる。 |
注2. | 私の経験では、ディレクターを部長級に使っている会社もあり、取締役に使っている会社もあった。ネットでみたが日本語の職階と英米の職階は1対1にならないようだ。 |
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- マネジャーとエクゼクティブの違い
マネージャーは、部門や部門などの企業内の特定の業務を監督します。特定のプロジェクトには、プロジェクトマネージャーと呼ばれるマネージャーがいます。マネージャーは、特定のプロジェクトの日々の作業に全面的に責任を負うことはほとんどありません。マネージャは、特定のプロジェクトに接続しているか、特定の部門に割り当てられているかのいずれかを直接報告する1人以上の従業員を持つことがよくあります。マネージャーは会社の仕事をする上で不可欠な要素ですが、多くの場合、マネージャーは会社の方針や使命を指示しません。
エグゼクティブは企業の一般的な方針と全体的な使命を指導し、一般的に最高レベルの組織のはしごに割り当てられます。エグゼクティブは、企業全体ではないにしても、企業の大部分に影響を及ぼす意思決定を行う広い寛容さと権限を持つことが多い。管理職は特定の部署やチームを頻繁に取ることが多いのに対して、役員は多かれ少なかれ実務指導を担当していますが、経営幹部は会社の日々の業務に関与している場合とそうでない場合があります。
おばQ注:
エグゼクティブマネジャーと言ったときはエグゼブティブではなく、上級マネジャーというニュアンスで部長や執行役員を呼ぶことが多い。執行役員とは会社法で言う役員ではなく従業員である。
- ドラッカーは「リーダーは正しいことを行い、マネジャーは決められたことを正しく行う」と語っている。
マネジャーはマネジメントをする人であることは間違いない。
マネジメントシステムは管理の仕組みであり、経営の方法とは思えない。
もちろん規模の小さな組織においては社長がマネージしているケースもあるだろう。しかしそれはマネジメントイコール経営ではない。社長が社長業務とマネジャー業務を兼任しているに過ぎない。規模が大きくなればマネジャー業務をそれなりの人に移譲していくはずだ。それができないと大企業に成長せずに崩壊する。
私はビル・ゲイツやジョブスには会ったことがないが、彼らがISO規格を参考にして経営することは決してないだろう。彼らの頭にあるのは、あるべきIT社会であり、己がその実現にどのように貢献するか、いかにビジネスチャンスを見つけ生かすかということだろう。そして彼らより職階がふたつ下くらいの人たちが、与えられた使命を達成するためにISO規格のようなことを考え展開するのではないだろうか。
ということを考えると、マネジメントとは経営だとは思えない。マネジメントとは会社の運用における管理の要件である。
そしてISOMS規格は経営の規格ではない。もしそうならMS規格の数だけ経営の方法があるのか? もっとも最近はどのMS規格も標準テキストの一括変換だから、その心配はない代わり複数存在する意義が怪しいが。

本日のまとめ
ISO規格に出てくる"マネジメント"とは"経営"ではなく"管理"と読み替えれば間違いはない。
マネジメントとは経営、ISO規格は経営の規格だと語る人がいても無視しましょう。そもそも経営なんて標準化(standardization → standard = 規格)できるはずがない。
もしそれが可能なら経営をミスすることはない。おっとISO認証を受けている企業で管理の問題がなくなったと聞いたことがない。認証を与えている認証機関では審査員の管理がしっかりしているとも思えないし・・
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