PDCAとは

17.06.01
少し前、まあ半月ほど前でしょうか、町でISOがらみの知りあいというか旧友に出会い立ち話をしました。そんな中でのこと
「ISO審査で審査員から『お宅の会社はPDCAが良く回っていますね』と褒められたんだけど、あれってバカにされた気がしたよ。失礼じゃないか」とのこと、
聞くと方針から目的・目標(現時点2004年版)から監視・測定そしてマネジメントレビューと項目を追っていくのがビジブルで簡単だったからだとのこと。
PDCA彼が言うのは、PDCAというのは当たり前のことであって、方針展開においてPDCAが良く回っていますねというのは、他の事柄においてPDCAが回っていないことの皮肉だったのではなかろうかと
彼とその話はそれっきりでしてお別れしました。
その後考えたんですよ。もちろん私はその場の状況は知りませんし、彼の会社でPDCAの具体的証拠がどうなのかもわかりません。ただISO審査でPDCAというものを方針展開だけに言及したことがどうかなあ〜とはちらと思いました。

PDCAとはなんでしょうか?
そんなこと常識だろうって、失礼しました。
そいじゃ本日はそんなひまつぶしを・・・
簡単な運動というかゲームを考えてみましょう。輪投げにしましょう。
最近はマイナーになったかもしれませんが、輪投げくらい誰でもしたことがあるでしょう。幼稚園でも老人ホームでもできるというのがいいですね。
輪投げ でも簡単なゲームではありません。輪の重さも違いますし、輪がしっかりしているのか変形しやすいのか、目標までの距離も違います。ですからその場で始めて投げるときは、どのくらいの力で投げればどのくらい飛ぶのかわかりません。
まあ、やってみましょう。
あっ行き過ぎた、そいじゃ少し手前に投げてみようか、
アッ、届かなかった。そいじゃ最初より弱く二回目よりは強く投げてみよう。
ああ、今度は少し右だったなあ、それじゃ少し左を狙って・・・
まあそういうことを繰り返してやがてはうまくいくでしょう。何度やってもダメなら、あなたがPDCAを知らないのか、常に同じ投げ方ができないのでしょう。
「精度」と「正確さ」なんてのを習ったのは半世紀も前のこと、私も歳をとりました。

精度と正確さとは: 正確さ(accuracy)とは、その値が「真値」に近い値であることを示す。
精度(precision)とは、その複数回行ったときのばらつきの尺度である。
JISZ8103:2000参照

まあ、それはおいといてと・・・・
トライしてその結果を評価し次のトライに反映する、そういうことって常にあります。いや仕事であれ家事であれすべてそういうプロセスで動いているのではないでしょうか。
不肖おばQは我が家の掃除と洗濯を担当しております。残念ながら炊事の能力は皆無であり家内の担当であります。今は自動洗濯機といえども洗剤の量、いや水の量にしても洗濯時間にしてもデフォルトが良いわけではなく、汚れの落ち具合、すすぎ具合をみて我が家はこの設定ですると決めているわけです。そしてもちろんその設定に至るにはカットアンドエラーというか何度かのPDCAの結果決めているわけです。まあ、一回決めたら特段の支障がなければそれっきりってのは正直なところですが。

* 2020.12.07追加
この古いコンテンツを読んでいて「カットアンドエラー」というのをみて、ありゃ、これは「カットアンドトライ」の勘違いだと思いました。確認のため辞書を見たところ、一般的には「カットアンドエラー」といい、技術分野では「カットアンドトライ」というとありました。
いやはや、不勉強も極まれり。これを書いたときは辞書を引いたのでしょう、タブン

お掃除 お掃除にしてもPDCAの積み重ねです。積み重ねというのは何度も繰り返すという意味ではありません。掃除機の吸い込み口にしても敷居はこれを使ったほうがきれいになるとか、箪笥の奥はホームセンターから買ってきた細いパイプを付けてやるとか、色々と工夫するわけです。そういった即物的というか細かいこともありますし、洗濯と掃除を同時に組み合わせて行えば効率的に効果的にできるというPDCAもあるわけです。更に吸いこみ具合や動きやコードの傷み具合を観察して、ごみ袋の交換とか、そろそろ掃除機を買い替えなければとか、モップを交換しようとかというレベルのPDCAもあるわけです。
くだらないと言われると確かに高尚なお話ではありません。ただなにごともいろいろと考えなければならないということ、PDCAといってもそのシューハートサイクルは一種類しかないわけではない、多様な階層のPDCAの組み合わせであることを確認しておきましょう。

PDCAの絵 さて話は変わって、ISO規格でPDCAなんて言い出したのはISO14001:1996が最初です。その序文の中で「アプローチの基本を図1に示す」とあるだけで、あまりというかそれ以上PDCAについて語っていません。

図1を見ると規格の各項目をPDCAに割り振ったとしか思えないわけですが、これがISO14001の定めるプロセス(アプローチ?)はPDCAになっているのだと意味するとは思いません。
私の独断ですが、それ以前に存在したISO9000s:1994(1987もほとんど同じ)の各項目が機能ごとに記述していてPDCAに並べていないことに対し、ISO14001は違うのだと主張したかったのだろうと思います。
主張したところでどってことはないのですがね

そして業務すべてにおいてPDCAすなわちフィードバックを行うのはこの図1に関わりなく当然のことでしょう。というのは「4.5.1監視及び測定」と「4.5.2不適合並びに是正及び予防処置」があるわけで、これは目的目標だけでなく業務全般に要求しています。
要するにISO14001:1996の序文でPDCAを掲げたのは単に規格構成がISO9000s:1994とは違うのだということに過ぎないでしょう。
と言いますのは、ISO9000s:1994においてだって「製品、工程及び品質システムに関する不適合の原因の調査を記録し是正処置を行い効果を確認する(4.5.2)」ことを要求していました。要するに業務においてフィードバックをすることは当たり前のことだった。

PDCA ISO9001も2000年版以降は序文にPDCAの図を掲載したが、この図がなんといいましょうか、わけのわからんものでありまして、こんな図はない方が品が良かったとしか言いようがない。一つの図に顧客を二つ書くというあたりからもってレベルが低く、図を描いた人の脳というか能力を疑う。
ともかく、ISO14001の序文でアプローチにPDCAのプロセスを採用したというのは、単に規格項番のとり方をPDCAの流れに沿わせたということの意味だろう。

そういうことを踏まえて冒頭の旧友が語ったことを考えた。
おっと前提として審査員の実際の言葉を知らず、またそのときの状況を知らないのだからあくまでも想像を重ねたことであることはお断りしておく。

審査員は「方針から目的・目標(現時点2004年版)から監視測定そしてマネジメントレビューと項目を追っていくのが簡単だったからPDCAが良く回っている」と言ったとするならば、それはちょっと変だという友人の言には同意する。
まずトップマネジメントが示した方針が展開され実施されているということは方針に関してPDCAが回っているということだろう。それがビジブルであるということは悪いことではないだろうが、ビジブルでなくてもPDCAが回っている場合もあるだろう。もちろんビジブルでなければPDCAが回っていないとき検出しにくい(分かりにくい)ということになるかもしれない。
ただ会社の仕事は方針展開だけではない。日常業務、ルーチンワークの方がテーマごとの活動より占める割合は大きい。そういった業務においてPDCAが回っていなければならないのはISO規格でも要求していることだ。だから「方針から目的・目標(現時点2004年版)から監視測定そしてマネジメントレビューと項目を追っていくのが簡単だったからPDCAが良く回っている」というのは方針に関してだけは正しいが、それ以外の業務についてPDCAが回っているかどうかはわからないはずだ。

まあ審査員の言葉は深遠な意味を持たないとみなせばどうってことはない。単なる社交辞令だったのかもしれない。
審査員側も企業側も、PDCAはいかなるものであるかを認識し、現実の改善に努めていただければ良いだろうと思う。

うそ800 本日の宣伝
PDCAの神話PDCAの話もお読みいただけたら幸甚でございます。
しかしこれらを書いたのは既に10年前、うそ800も歴史だけはあるものでございますね。
そして現実はあまり進展がないようで悲しいことです。



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