異世界審査員122.製品認証その3

18.10.08

*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但し引用文献や書籍名はすべて実在のものです。民明書房からの引用はありません。

異世界審査員物語とは

コーヒー 政策研究所のロビーである。吉沢と兼安が新世界技術事務所から伊丹と相談して戻ってきたところだ。お互いに考えごとをして黙ってコーヒーを飲んでいる。

兼安が考えているのは製品認証の進め方である。伊丹氏は製品認証の概念を教えてくれたが、具体的なことはコンサル契約をしないと対応しないという。まあ、彼らはそれで食べているわけで悪辣なわけではない。しかし兼安は、そんなことくらい人に頼らず自分がやってやるという意地がある。
まずは仕組みを考えて、それから商工省の担当官に話を付けて法律を作り制度を立ち上げる。それから実際に書面や製品の性能などを試験する機関をどうするかだ。
今、内務省の品質保証認証制度が動き始めたところだから、そのメンバーに話して試験機関に立候補を募ろうか? 1社くらいやろうというところはあるのではないか。そういえば、名前は忘れたが半蔵時計店の若手幹部はなかなか山っ気のある男だと聞いている。お任せでもいけるのではないだろうか。
そんなことを考えていると吉沢が話しかけてきた。

吉沢教授
「太陽熱発電関係では、いろいろ検討しなければならない事項がある。型式認証については、兼安君に任せてよいね?」
兼安教授
「中野さんは型式認証制度は私にと仰ったのですね?」
吉沢教授
「そう、私は太陽熱発電システムの特許の申請、例の鉄工所へ賠償の話をつけることと今後の指導、それから太陽熱発電機器の規格作成。
熊田君は太陽熱発電システムの群島内への普及施策検討とその実施。
そして兼安君は太陽熱発電水道設備の許認可制度の立ち上げだ。正確に言えば型式認証に限定しない。この設備の安全確保だ。どんな方法でもいい」
兼安教授
「了解しました。ところで最近の様子を見ていると、この研究所も人減らしなのでしょうか? だんだんと昔なじみの顔を見かけなくなってきましたね」
吉沢教授
「俺は単なる人減らしじゃなくて、この研究所の性格が変わってきたように感じる」
兼安教授
「どういうことでしょう?」
吉沢教授
「今までは伊丹さんたちのいた世界の技術とか考え方を、こちらに展開することが主眼だったと思う。
これからは政策研究所の名前の通り、我が国の長期的政策とか、その展開策立案を業務にするのではないか。今までしていた具体的な問題の対策実施というものは本来担当すべき官庁の部署に任せていくようだ」
兼安教授
「すると以前私たちが担当した船団護衛とか機械要素や電子部品の開発や標準化なんてのは、もうこの研究所の仕事じゃないということですか」
吉沢教授
「そのようだ。現にそういう仕事は減っている。そして石原君は政治学の研究で留学させたし、伊丹奥さんには地方自治の研究させている。
実は私も今回は熊田君からの要請で太陽熱発電に関わったが、主に担当しているのは大学における発明発見能力向上策とか学校教育の見直しなどで、今までの具体的な開発に比べて一歩下がったというか大局的なことをしている」
兼安教授
「なるほど、その流れに沿っていけないと米山君のように出ていくことになるわけか」
吉沢教授
「いやいや、米山君は左遷されたわけではない。彼も自分に合った新しい仕事で喜んでいたよ。ともかく兼安君には型式認証制度を頼むよ」

吉沢は兼安に任せたことで、肩の荷が下りた感じでスタスタと去って行った。
兼安は腕組みして考える。型式認証制度というのは今までこの国にはなかったようだ。伊丹氏の話ぶりでは向こうの世界では当たり前の方法で、仕組みなり手順なり基本形はもう確立しているらしい。
そして新世界技術事務所とコンサル契約すれば、その指導なり実行なりを手伝ってくれるという。そのお金を節約するか、手間を節約してお金を払うかがとりあえずの判断事項だ。
新世界技術事務所に頼むとなるといかほどになるだろう? 伊丹氏は年収150両(1800万)はいくらしい。彼を四カ月間拘束すれば50両、会社への支払いはその倍はいくだろう。となると100両(1200万円)くらいになるのかな? 兼安は自分の金ではないが、そんな大金を払う気にはなれない。

翌日、兼安は内務省の入札対応の認証制度の担当者 海老沢氏に会いに行く。

海老沢
「兼安教授でしたね、政策研究所にはいつもお世話になっております。今回の官公庁向けの入札時の認証制度確立には政策研究所の方は参画してはいませんが、中野様から新世界技術事務所の伊丹さんを紹介していただきまして、問題なく認証制度開始にこぎつけました」

兼安はここにも伊丹が関わっていたのかと驚いた。同時にこの仕事は伊丹に関わらずに成し遂げようという意思が強まった。

兼安教授
「海老沢さんは内務省の認証制度の主担当者とお聞きしております。政策研究所の開発した太陽熱発電水道システムは海老沢さんの第三者認証制度とはちょっと違うものですが、やはり第三者認証制度を立ち上げる必要がありまして、海老沢さんの方でその担当をしていただけないかなと発想しました」
海老沢
「うーん、仕事の性質が純粋に技術的なことでしたら商工省所管かと思います。今回私が担当しました第三者認証制度は、入札という各省庁共通の課題でしたから内務省所管になったわけでして、技術について具体的な要求もなければ、完成品の試験などもありません。純粋に技術的なことでしたら工業を所管している商工省ですね」
兼安教授
「制度として似たようなものでも縦割りは変えられないのですか?」
海老沢
「そりゃそうですよ。所管とはそういう意味です。
別件ですが、兼安さんがおっしゃったような、管理体制だけでなく製品の製造工程や検証も含む認証制度は既に存在しています」
兼安教授
「えっ、似たような制度があるのですか?」
海老沢
「ええとだいぶ前、欧州大戦の末期でした。覚えておられると思いますが欧州でインフルエンザが大流行しましたね。次はこの扶桑国で流行するだろうと予想して、小沢先生というお医者さんがその特効薬を製造しようとしたのです」
兼安教授
「ほう、小沢先生ですか? 存じません」
海老沢
「島村先生はご存じと思いますが、小沢先生は彼の師匠に当たる方です。
それはともかく、その薬品製造に当たって品質が良いものを間違いなく作る方法、万が一不具合が起きたらそれをはじく仕組みを制度化したのです。
GMPと言います(注1)グッドマニュファクチュアリングプラクティス、すばらしい製造方法とでも訳すのでしょうか。完成品の合否ではなく、製造から保管や教育などを体系的に管理することですね」
兼安教授
「GMP? 医薬品ですから所管は内務省ですか?」(この時代、厚生省はない)
海老沢
「そうです、内務省衛生局が所管しています」
兼安教授
「担当者を紹介していただけませんか」


矢部さん
矢部さん

数日後、兼安は海老沢の紹介で、内務省衛生局の矢部氏に会っていた。
インフルエンザ以来ですね

お役人
「海老沢からの話では兼安さんは、GMPについて知りたいということですね」
兼安教授
「そうです。安全に係る機器を生産したいのです。その設計や検査基準などは確立しています。一般企業にそれを製造させたいのですが、製造技術も管理もしっかりしていると判定したところに製造させたい。そして継続してその品質や管理体制を監視して問題が起きないようにしたいのです。
海老沢さんに相談したら、衛生局で既にそういう仕組みを認証しているとのこと、ぜひご教示いただきたいと」
お役人
「GMPの要求事項というのは薬品や医療用具に特化しています。兼安さんが想定している機械製造の管理項目とは性質が異なると思います。また薬品や医療に関しては医師とか看護婦(注2)などの資格者は以前から法律で決まっています。ですから資格要件なども新たに設けるなどもあまりありませんでした。
要するに兼安さんが想定している機器の製造管理に対応するかと言えば、ちょっと違うかと思います」

兼安は矢部氏から渡されたGMPの基準(省令)を斜め読みする。

兼安教授
「質問です。この医薬品製造業者の点検とか認可は誰がするのですか?」
お役人
「名目上は大臣です。もちろん実際にするのは保健所です」
兼安教授
「民間に審査や判定をさせることは考えてませんか?」
お役人
「国民の安全衛生に関する審査を、民間に下請けすることはできないでしょう」
兼安教授
「保健所にはそういうことができる技術者人がいるわけですか?」
お役人
「もちろんです。薬剤師資格者を採用し教育して業務に従事させます。民を指導するのが官です。またそれができる人を採用するわけで、」
兼安教授
「判定はともかくとして審査だけでも民間に委託できないのでしょうか?」
お役人
「どうでしょう、ものによるのではないですか。それに最終判定は委託できないと思いますね。例えば運転免許を取るための自動車学校は民間ですが、運転免許試験は官でないとまずいのでないですか」
兼安教授
「なるほど、」
お役人
「兼安さん、機械設備について私は詳しくない。商工省工務局の工業課へ相談されたらいかがですか」


滝田氏
滝田さん

兼安は矢部の紹介で商工省工業課の電気用品担当の滝田氏に会うことができた。

役人
「兼安さん、お話を聞くと既に我々も似たような制度として、もう10年近く前に、電気用品試験規則というものを定めている(注3)つまり法で定めた電気用品を作る者は大臣の製造免許を持たないとならないこと、製造又は輸入する電気用品の型ごとに大臣の型式認証を受けなければならないこと、型式認証を受けていない製品を製造販売してはならないことです。もちろん型式認証を受けた後に設計変更をしてはいけません。また検査をする機関は大臣が指定したところでないとならない」
兼安教授
「おお、それは私の希望そのものです。その対象品目を電気用品だけでなく水道施設とか太陽熱発電システムにも適用できませんか?」
役人
「電気用品でなくても似たような制度はある。ボイラーや圧力容器を造ろうとするにはまず製造者は製造の許可を受けること、製造するボイラーや圧力容器は構造規格を守っていること、製造したものは溶接や構造検査を受けなければならず、その検査機関は所管官庁に登録した機関でなければならない(注4)
但し、それは法律ではなく条令つまり県で定めたものなのですよ。全国的な法律で決める前に必要に迫られた県や府が条例を制定してきました。まあ先見の明がなかった我々の責任ですね。ともあれ、現状ではそれで間に合っています」
兼安教授
「法律であろうと県の条例であろうと、我々の作ったものはそこで検査を受けなければならないということになると、そもそも認証とか認定制度を考えるまでもなかったということですか?」
役人
「というか、お宅は無許可で製造したことになります」
兼安教授
「それは・・・気が付きませんでした」
役人
「まあ、研究所で試作し試験しただけとのこと、法的には対象外になりそうですね。その話は聞かなかったことにしましょう。
お話を聞く限りその設備が受ける法規制は、電気関係、圧力関係、水道関係となると思います。圧力関係については府県での規制に適合すること、電気関係では電気用品の規制、水道は衛生など内務省の規制があるかどうかですね」
兼安教授
「伺いますとほとんどは既存の認証制度で間に合うようですが、足りないところは法律を改正して品目追加とか検査項目追加とかすれば良いのでしょうか?」
役人
「それは簡単にはいきません。といいますのは、追加となる製品独自の検査項目が検査できる方法、機器、技能者がいるかどうかが問題です。新しい製品では試験する方法もその基準も確立していないものも多いのです(注5)
兼安教授
「なるほど・・・ご教示いただけたら幸いですが、特定の製品についてそれようの認証制度を作るのがいいのか、現行制度を組み合わせるのがいいのか、」
役人
「法律を制定したり改正するには、製造者や使用者、取り巻く関係者の要求や技術的可能性などのすり合わせが必要です。それは一筋縄ではいきませんし、調整するために1年とか1年半とかかかります。
基本的に法律というのは大きくではなく小さく作ります。地域限定なら法律ではなく条令、細かいことは法律ではなく施行令で定めます。今とり上げている製品は南洋地域限定のようですからあまり大事にせず、南洋庁が決めるのが良いのではないですか。我々も国内販売がないならタッチしませんし。それに本土では日差しが弱くて使えないでしょう。
それと法律には原則がいくつかありまして、特別法優先の原則というのがあります。二つの法律が異なることを定めている場合は、その事柄に関しては一般法が適用されず、特別法が優先されます。既に類似の法律があっても、南洋限定の法律があればそれが適用されますので、国内法との調整がいりません。あるいは太陽熱発電と水道についての法律があれば、ボイラーの法律も水道の法律も関わりません。そんな方法で政策研究所が基準を決め、南洋庁の規則で定めれば良いのではないか」
兼安教授
「その場合、南洋庁あるいは政策研究所が主体となるしかないのですね?」
役人
「もちろんそうなります。ところで実は南洋群島の法体系は本土や朝鮮・台湾と違い、地域レベルの条例がありません。帝国議会の定める法律しかない。それより階層が低いとなると勅令で、その下は南洋庁令です(注6)
兼安教授
「私は法律に疎くそういうことを知りませんでした。制度そのものを定めるにも、その根拠法をどうするのか大変なのですね」
役人
「参考になるかどうか、規制とは法律だけではないのです」
兼安教授
「とおっしゃいますと?」
役人
「アメリカにはULというものがあります。これは法律ではありません」
兼安教授
「ULとはなにものですか?」
役人
「ULとはアンダーライターズ・ラボラトリ、訳せば保険会社の研究所でしょうか(注7)もう二・三十年前になりますが、当時出始めの電気製品の火災が多くて保険会社がお手上げになりました。そこで保険会社は電気製品を試験する部門を作り、彼らが決めた基準を満たさない製品による火災には保険金を払わないとしたのです(注8)
兼安教授
「ULはアメリカの国家機関ではないのですね?」
役人
「アメリカの国民は、国の規制を好まないようです。我が国のように国民を子ども扱いして製品でも道路でも細かく規制して危なくないようにする方法もあるでしょう。その対極に好き勝手にしてよい、その代わり怪我や事故は自分持ちという考えもあるのですね」
兼安教授
「問題があれば困った人が対応しろということですか?」
役人
「この場合は保険会社が困ったから、自分たちが電気用品の基準を決めて、それを満たさない危ない製品で火事や怪我をしたら保険金を払わないとしたわけです(注9)
兼安教授
「一方的に保険金を払わないと言えるのですか?」
役人
「保険は契約です。保険の約款なんて読んだことないでしょう、私もですが・・・保険の契約書には細かい字で免責がいろいろ書いてあります。あそこにそういうことを書いておけば良いわけですよ」

どうでもいいことですが ルーペ 私も家内も 安い バスツアーが大好きで毎年数回利用している。この旅行の約款というのも文字高さが1.2ミリくらいしかない。お客さんに読ませないためとしか思えない。
私は眼鏡をはずしても虫メガネでも読めない。どうしても読まなければならないときはルーペを使っている。
こういったものの文字サイズに規制があるのかと調べたら、ちゃんとある。重要事項は8ポイントだそうだ。8ポイントって2.8ミリだ。となると1.2ミリで表記しているのは重要事項じゃないのか? 消費者保護の観点からおかしいぞ!


兼安教授
「その方法をこの太陽熱発電に適用することもありえるわけですか?」
役人
「なんとも言えませんね。二つのことを考えなければならないでしょう。
ひとつは法規制というか論理的裏付けです。保険契約ではありませんから、どういう形で規制するのか本土や南洋の法律でできるかどうか。
ひとつは国民性ですね。我が国では国民の安全はお上、つまり国というか政府が保全しなければならんという感覚でしょう。南洋には南洋の常識があるでしょう。市販品で事故や怪我をしたとき、政府が悪いと言われるかどうかですね」
兼安教授
「なるほど、これもまた検討しなければならないことが多いですね。
滝田さん、この他にもこういう仕組みはあるのでしょうか?」
役人
「あると思いますよ、私も外国の事例などは良く知りません。ただ兼安さんはそういう製品認証を調べることが目的ではなく、この太陽熱発電についてなるべく手間のかからない制度を考えれば良いのではないのですか。お聞きしますと入札における品質保証制度、薬品のGMPなど、今まで五つや六つは調べたわけで、そういったものを参考に制度設計をされたらどうでしょう」
兼安教授
「ありがとうございました。本日は私が無知であることを認識しました」


兼安はこの国でも型式認証制度は既にいくつも存在していることに驚いた。伊丹が話したよりも進んでいるじゃないか。とはいえ、太陽熱発電水道システムについていえば、既存の型式認証制度に便乗することはできそうない。滝田が教えてくれたように、南洋庁あるいは政策研究所が独自の制度を立ち上げる必要がありそうだ。
結局、いろいろ調べた結果、初めに戻ったような気もする。とはいえいろいろなことを知ったのは前進だ。

兼安は吉沢に相談する。

兼安教授
「既存のこの国の制度を利用するのはむずかしそうです。それで委任統治領で国外であることから、南洋庁独自の型式認証制度を立ち上げた方が法的な関係でも負荷的なことでもめんどくさくないと考えるに至りました」
吉沢教授
「どんな制度なのかな?」
兼安教授
「まだ案とまでいえないですが、南洋庁が試験を行って合格したものの製造者と型式のリストを公表するというのはどうでしょう」
吉沢教授
「販売の許可とか禁止をしないのか?」
兼安教授
「リストにあるものを買うのも自由、リストにないものを買うのも自由。但しリストにあるもので事故が起きたときは保証するけど、リストにないものには保証しない」
吉沢教授
「そんな仕組みでいいのかなあ〜
ところで試験をするといっても、その規格を作るとか実施する機関はどこか当てはあるのか?」
兼安教授
「南洋庁限定なら吉沢さんが作る製品仕様と検査基準を、南洋庁のその役人に庁令にしてもらえばおわりです。
検査機関ですか・・・本土のメーカーしか作らないだろうから、簡単になら政策研究所の吉沢さんの部署でできませんか?」
吉沢教授
「オイオイ、それってまるっきり手抜きじゃないか」
兼安教授
「南洋群島には623も島があるそうです(注10)この設備を備えないところもあるでしょうし、複数備えるところもあるでしょう。仮に設置される数を島の数と同じく600とします(注11)そして耐用年数を15年としましょう(注12)
仮に今後5年間で100の島で設置するとして年間20施設、それ以降10年間で300として年30施設、耐用年数15年とするとそれ以降は年間27件更新することになる。となると検査機関はひとつで検査員数人で間に合うことになる」
吉沢教授
「なるほど、とすると政策研究所の一部署の仕事量になるからちょうどということか」
兼安教授
「いかがですかね」
吉沢教授
「何事でも技術革新があるから、15年以上同じものを製造するとは思えない。最初の更新時には今と全く違う設備になるように思うね」
兼安教授
「といいますと、吉沢さんの特許も賞味期限があるということですか?」
吉沢教授
「もちろんだよ。そもそも特許の有効期間は15年だよ(1995年に法改正され20年になった)。
ということは安全基準を決めて、それを満たせばよいという方法で良いだろう。そして試験機関は政策研究所ではなく・・・例の半蔵時計店にでもやらせようか」

うそ800 本日の暴露話
正直申しまして私も製品認証なんてのには表面的にしか関わっておりません。
間違いはお許しください。
どのみち、次回でこれまでの話をちゃぶ台返ししちゃいます。苦情は言わないで・・

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注1
GMPとは1960年代にアメリカで医薬品の製造について規制基準を定めたことに始まる。その後対象が医療機器、化粧品などに広がり、また地域的には欧州、日本に広がった。日本では1994年から厚生省省令で法で定める要件となった。
参考:医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令

注2
看護婦が看護師になったのはつい最近の2002年である。

注4
ボイラーコードの歴史年表より
西暦(元号)出来事
1883(明16)福岡県、「蒸気罐取締規則」制定
1886(明18)長野県、「陸上汽罐取締規則」制定
1889(明22)官営佐渡金山で「汽罐取締規則」制定
1894(明27)東京府「汽罐汽機取締規則」を定め、「汽罐並ニ汽機ヲ設置セントスルモノハ事前ニ所轄警察署ニ願出免許ヲ受ケルヘシ」と規定
1911(明44)工場法公布。明治31年草案に規定のあったボイラー検査については既に府県において確立されていることから新たに明文規定をおく必要なしとし、危害を及ぼすおそれのある工場設備についてのみ行政官庁が必要な措置をとる権限を規定。
警視庁、「汽罐汽機取締規則」改正。「当庁ノ指定セル保険業者ノ汽罐保険ニ加入シ、其検査ヲ受ケタル汽缶、汽機ハ第19条ノ定期検査ヲ省略ス」
1935(昭10)内務省、「汽罐取締令」制定(現行「ボイラー及び圧力容器安全規則」の前身)。同法成立により全国レベルで検査 基準が確立。
1947(昭22)労働省設置。労働基準法制定。同法に基づき「労働安全衛生規則」制定。
1959(昭34)「ボイラー及び圧力容器安全規則」制定

今我々が目にしている電気製品や機械の試験項目を想定したとき、その検査装置なり検査する測定項目が考えられないものはまずないだろう。しかし全く新しい製品、例えばCDやフロッピーディスクあるいはUSBが現れたとき、それらの種々の測定項目や測定機器は分からないあるいは存在しないものがあっただろう。20世紀初頭はそういうことの連続だった。このオハナシの初めにノギスを考案したりダイヤルゲージを造ったりという時期があったのを思い出してほしい。

注6
旧憲法でも地方自治体が定めるものとして条例があった。しかし委任統治領である南洋群島においては帝国議会の定める法律だけが公式なもので、条例がない。代わりに天皇陛下の名による勅令があり、その下位に南洋庁長官の出す南洋庁令しかなかったようだ。
参考:旧外地法令の調べ方

注7
生命保険とは死ぬ方に賭けること
I bet on I will die.
生命保険とは自分が
死ぬ方に賭けること
そう考えると驚く。でも決闘も濡れ衣も、神は正義を勝たせるという理屈から始まった。起源を考えると面白い。
保険を掛けるのは契約者で、受ける方を保険引受人(アンダーライター)と呼ぶ。普通は保険とは貯蓄と理解されているが、その本質は賭けだ。
生命保険は死ぬ方に賭けることで、死ねば勝ちで保険金が入り、生き残れば負けで賭け金を失う。同じく火災保険は火事が起きる方に賭けたことになる。
昔イギリスで人の生き死にを賭けたのが生命保険の起源。このとき賭けを受けた人が契約書の下の部分に署名したのがunderwriteの語源
参考:「生命保険」と「賭博」は元々兄弟だった

注8
注9
20世紀半ばからほとんどの州はUL認定でないと販売禁止という策をとっているが、当初はそのような法律とのリンクはなかった。
参考:ULについて・UL規格全般

注10
日本統治時代の記録によると623島だという。
参考:【大日本帝国】委任統治区域 南洋群島【植民地】

注11
別の見方をすれば・・・
南洋群島の人口は1920年頃5万人、1940年頃13万である。但し後者の内77,000人は日本人と朝鮮人だったから現地人は6万でほとんど増えていない。
仮にこの水道設備が100人用とすると1925年頃600セットあれば間に合うことになる。

注12
上水道施設の耐用年数が何年か探ったけどわからなかった。法人税法では給排水設備は15年となっている。それから考えると浄水設備も同じ程度で償却しなければならないだろう。



外資社員様からお便りを頂きました(2018.10.12)
おばQさま
お元気で連載 お喜び申し上げます。
大変 勉強になることが多いです。
五月雨な感想ですみません。

>ULが保険会社の研究所
流石のお話しです。 私も、最近まで知りませんでしたが、会社案内で教えて貰いました。
なんでも、エジソンの電球と電力事業に伴い、火災の危険と保険料率算出の為だったとか。
認証と保険がかかわりそうなのは、現在の技術ですと自動運転などはまさにそうですね。
残念ながら、エジソンの電球のようなシンプルな技術ではなく、外乱からの影響、車間の通信、車と道路の関係、天候など、様々な要素が絡み合うので非常に要素が多いです。
統計的に危険率は処理できますが、普及しなければ十分な統計が無いので玉子とニワトリ状態で、日本は なかなか進みません。
中国や米国は、むしろドンドン進めております。 技術者の端くれとしては、少し羨ましい

>自力救済の禁止
そういえば学校の法学の授業で始めに出て来ました。
確かに、政府が救済を担保出来ないと成り立ちませんよね。
江戸時代の仇討ちは、むしろ儒教的な意味:不倶戴天(礼教)から来ているのでしょうね。
そういう意味では、「仇討ち」は、日本には珍しい宗教法だったかもしれません。
疑似儒教世界に生きる武士しか適用されませんし。

>公共サービスと水道
現在 水道は民営化の方向に向かっているのですか。
確かに、別荘地では、当たり前のように、民営化されていますし、ゴミ回収などインフラサービスも民営化されています。
水道が民営化に向かっているのは、理解できる事実を見ています。
デベが潰れた別荘地、住人が減った地域の民営簡易水道などは、修理さえおぼつかなくて、公営化して欲しいと悲鳴を上げています。
一方で、そういう地域の公営の財政に余裕があるはずもなく、赤字の事業を背負えるはずもありません。
大きな流れでは、住人が減るのですから、インフラをどう畳むかはこれからもっと考えてゆかないと駄目ですね。
そういう意味では、何も所から作れる南洋諸島のお話しは羨ましい。

外資社員様、毎度お便りありがとうございます。
私とULの付き合いは長いです。私が高校を出て会社に入った年に、会社でアメリカに輸出するぞ、みんなでUL規格を分担して翻訳しようなんて始まったのですよ。素面で考えるとアリエネー話です。
私も10ページくらい割り当てられて辞書を引いてなんとかかんとか訳しましたけど、まあほとんど間違っていたでしょうね。そんな時代もありました。
その後ずっと現場でしたが、現場の管理者を首になって品質保証に流されたら欧州に輸出するにはISO9001認証しないとだめだ、お前担当!なんて言われました。JIS訳は1991年に存在したのですが、私はそれを知らず高校を出てから20年も英語と縁がありませんでしたが、A4で13ページあったのを何とか訳しました。私の翻訳を基にみんなで認証目指して頑張ったという恐ろしい活動でした。
私の黒歴史は常に英語と共にあり・・
自力救済
確かに儒教とか武士限定でしたね。もっとも時代小説でなく、代官の記録とか奉行所の記録などの本を読むと、江戸時代殺人も仇討もめったになかったそうです。私の家内が捕り物帳とかチャンバラ小説が大好きなので、辻斬りとか火付けなんてお話だけだったといいましたら、家内は現代劇の刑事ものとか裁判ものだって実際にはめったにないお話じゃないかと返り討ちにあいました。
日本の殺人事件は過去50年間減り続け、今は年400人弱です。多いようですが、全国に警察署は1163あるので、ひとつの警察署では4年に1件くらいになります。ドラマはやっぱりドラマでしかないようです。
ただ昔ヨーロッパでは裁判というものが原告と被告双方が認める権威者とか人格者に裁判料を払って裁定を依頼したそうです。民間の裁判というか自力救済といってもいいのでしょうか。歴史を調べると面白いです。
公共サービス
地方公共団体が破綻するというのは、人口構成変化、人口減、産業構造の変化などいろいろな要素があります。私はこれからは今までと同じ暮らし方ではだめ、発想の転換をしなければならないと思います。
例えば、市街化地域には電気・水道・下水道・ゴミ回収をするけど、範囲外にはそういった公共サービスをしない、そこに住むなら自分で頑張りなさいということもあって良いと思います。あるいは高齢者は強制的に集合住宅に住まわせ給食を食べるとか、車を保有するのは必要性を審査するとか、人権を制限するということも必要かもしれません。
独裁とか人権無視と批判されるかもしれませんが、エネルギー危機とか温暖化とかパラダイムシフトが起きているわけですから、そういう制約条件に対応していかなければならないと思います。
南洋の話
私も南の島で老後を過ごしたいと心の中で思っているのですが、現実は甘くないですね。
南洋群島が日本の委任統治領になったとき原住民が5万人だったそうです。現時点でも10数万人でしょう。なんとなれば人口支持力がないからです。グアムなんて食料のほとんど、エネルギーの全部、医療品、衣料品、耐久消費財も全部、島外から調達しています。
南洋群島ではありませんが、ハワイの産業は上位から、観光、軍事、農園ですが、実際には観光と軍事でもっています。島に島外から観光に必要なものを運び込み、お客さんを呼び、結果としてお金とゴミを落としていくだけということでしょう。
サンゴ礁は魚類の生産性が高いなんて言いますが、実際には同種の魚を大量に水揚げできず、産業になりにくいといいます。だから島々は発展せず人も住んでいないということでしょう。
すべてにおいて神の見えざる手は絶対です。

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