異世界審査員121.製品認証その2

18.10.04

*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但し引用文献や書籍名はすべて実在のものです。民明書房からの引用はありません。

異世界審査員物語とは

ここは丸の内にできた新しいビルである。新世界技術事務所は震災後に借りていた新宿の事務所から少し前にここに移った。なんと7階建ての5階である。 ビルディング 工藤は社長室の東京駅が見える窓を背にして「こんなところで仕事をするとは思わなかったよ」と笑った(注1)

事務所を移したのは大儲けしたからとか、丸の内に事務所を構えて箔を付けようなんていう軽薄な理由ではない。震災からの復興時に丸の内にはいくつもビルが建てられたが、1920年代にはそれほどオフィスビルが必要なわけではない。そしてそれまでは丸の内よりも日本橋とかがビジネスの中心で、丸の内のブランドはまだまだだった(注2)
そんなわけで遅くにできたビルはテナントが埋まらず、新世界技術事務所に入ってほしいと言ってきたのだ。いわゆる年季奉公(注3)ある。新世界技術事務所はビルの建設とは関係なかったが、その不動産会社の事務の能率改善をしたことがあり、そのよしみから200平米で3年という要請を工藤は断れなかったのだ。
新世界技術事務所の仕事も砲兵工廠や工場など製造業だけでなく、事務や販売関係のコンサルも増えてきたこともあり、丸の内に事務所を構えたことは悪いことばかりではない。

今日は、政策研究所の吉沢教授と兼安教授が訪問してきた。工藤社長と伊丹が対応する。

工藤社長
「これはまたお久しぶりですな。最後にお宅の仕事をしたのは地震対策の相談で2年前でしたね」
吉沢教授
「そう皮肉を言わないでくださいよ。お宅さんをないがしろにして他に仕事を依頼していたわけじゃありません」
伊丹
「お宅も震災復興も一段落して、次なる問題が起きるまでは小休止という状況でしょう」
吉沢教授

羽左大好況じゃない大恐慌だ羽右

羽左大好況じゃない大恐慌だ羽右

大好況じゃない大恐慌だ

「いやいや、私どもに閑散期はありません。まだ極秘ですが世界的な経済恐慌が1927年に起きると予測されています。今年1925年、あと2年です。
経済政策などを担当している部署では今対策を検討中です。いずれお宅にも産業構造改革とか新事業育成などでお宅に依頼することになるでしょう」
伊丹
「私の世界よりも2年早いですね。その後ノモンハン戦争も起きるでしょうし、国の舵取りも大変だ」
兼安教授
「ノモンハンは向こうの世界より9年早い1930年だそうです」
吉沢教授
「もっとも向こうの世界ではソ連と扶桑国でしたが、この世界ではソ連とアメリカですね」
工藤社長
「そういえば石原さんがアメリカとソ連のノモンハン戦争を予言した本を書きましたね。あれからもう3年か」
兼安教授
「アメリカは戦争に絶対撤退しないでしょうね。なにせかの国は今だかって戦争に負けたことがないし、それに西部開拓が終わった今、満州は彼らのニューフロンティアですからね」
工藤社長
「ノモンハン戦争は長期化するでしょうし、そうとなると扶桑国は物資供給基地となりますね。武器・弾薬、食料、医療品、病院や休暇を過ごす場所。
欧州戦争と同じく儲かると言えば儲かるでしょうけど、欧州戦争と違い戦場がすぐそばですから戦争に巻き込まれるのも困ります」
兼安教授
「とはいえ共産主義の膨脹を止めるには、誰かが戦かわねばなりません。向こうじゃ日本が負けたから中国も朝鮮も赤化した。こちらの世界ではアメリカに頑張ってもらわなければ」
伊丹
「扶桑国が巻き込まれるのはやむを得ないでしょうけど、あまり拡大したり泥沼化しないことを祈ります」
兼安教授
「早い段階でアメリカに勝ってもらわなければなりませんね」
吉沢教授
「おっと、本日の話はそういう大事件ではなく、南洋群島に水道と電気を普及させようという事業なのです」
工藤社長
「ほう、水道と電気ですか! それはまた先進的というか生活水準を大きく向上させるでしょう。へたすると本土以上の生活水準だ。今この国で水道と電気が使える家庭といったら半分もないのではないかな(注4)
吉沢教授
「実はそう明るい話ではなく、ちょっと問題が起きまして、その対策方法の相談に乗ってほしいのです」
伊丹
「問題とはどんなことでしょうか?」
吉沢教授
「島村医師をご存じと思います」
伊丹
「島村医師・・・ああ、昨年の春かな、南洋に住みついたとか噂を聞きました」
吉沢教授
「南洋には小さな島が多くて、そんな島には河川はありません。特にサンゴ礁は標高も低く井戸を掘っても塩分が多く飲めません。 南の島 そのため水源のない島では雨水を貯めて生活用水にします。元々がきれいな水でありませんし、貯水槽に溜めておけばゴミも虫もばい菌も入ります。水のせいで病気になる原住民も多いのです。
島村先生はなかなかアイデアマンでして、きれいな水を得るために太陽熱を利用して海水を蒸留して水道で送るという発想をしました。もちろんアイデアだけではできませんから、南洋開発の一環として政策研究所で具体化してほしいと依頼されました。
それで私が試作機を作りまして島村先生の島に設置したのです」
伊丹
「それはすごいですね。病気が減るなどの効果はあったのでしょうか?」
兼安教授
「水道と発電は十分機能しています。しかし病気予防の効果はこれからです」
吉沢教授
「それが評判になりまして、模造品を作った人がいるのです。ところがそれは見よう見まねの粗悪品で爆発事故を起こしました」
工藤社長
「うゎー、製造する企業には技術指導しないといけませんね」
吉沢教授
「おっしゃる通り。いずれその水道システムを普及させようと考えておりまして、そのためには一般の企業で製造をしないと間に合わないでしょうし、そういったとき粗悪品を作らせない方法を確立したいというのが相談内容です」
伊丹
「人命にかかわる製品はしっかり管理しないといけませんからね」
兼安教授
「伊丹さんはどんな相談を受けても、分からないとかできないとか言わないのですね」
伊丹
「心の中でそう思っても口にしちゃいけません。お客が逃げていきますよ、アハハハ」
吉沢教授
「伊丹さんはもう頭の中にそういう仕組みが思い浮かんだのでしょうか?」
伊丹
「こんなことを言うとなんですが・・・そういう要求は普遍的なもので、その対応というか予防策も一般形があるのですよ。もちろん実行は簡単じゃありませんけど」
吉沢教授
「ぜひともお聞かせ願いたいですね」
工藤社長
「伊丹さん、それは例の品質保証というのとは違うのかい?」
伊丹
「まったく同じではありませんが、似たようなものではありますね」
吉沢教授
「というと例の内務省の品質保証認証ですか」
伊丹
「まあ、あれも兄弟ですね」
兼安教授
「私には全然分かりません。初歩から説明してください」
伊丹
「正直言ってこういったことについて、まだ正式というか世の中で共有された言葉も考え方もありません。これから技術が進み製品が複雑になるにつれて、いろいろな考えが現れ整理されて分類もされ名前も付けられていくと思います。ここでは私の独断で説明しますのでそれは納得してください。
人が作る物が簡単なときは一目見て良品か否か分りました。土器にヒビ割れがあれば水が漏れるというのは一目瞭然です。
しかし物が複雑になると見ただけでは良し悪しが分かりません。使えるか使えないか検査することが必要になりました。
大砲 ところがさらに複雑になると、検査をしても分からない場合が出てきました。欧州大戦のときの大砲の弾はいくら検査しても、着弾したとき爆発するかしないか分かりません。あのときは、材料は決めた通りか、寸法は図面通りか、加工や組み立ては決めた通りにされているか、決められた通り実行しその記録を残すという方法を取りました。
それは直接 製品の良し悪しを判定するのではなく、製品に安心できるようにするというイメージでしょう。なぜならまっとうな材料で、図面通りに仕上げて、正しく加工組立したとしても、期待された仕事をするかどうかは分かりません。けれどもそういう方法をとれば良否は断定できませんが、安心感、信頼感、確信、まあそういう心証が得られます」
吉沢教授
「分かります。結局のところは大砲で撃ってみなくちゃわからない」
伊丹
「ともかく現時点できないことは代用特性というか、直接的でなく間接的に評価しているわけです。でもってそういう製品が大丈夫だろうという信頼感を確保する方法を品質保証といいます(注5)
工藤社長
「例の砲弾から始まった砲兵工廠の品質活動ですね」
伊丹
「そうです。しかし品質保証とは製品に対する確信を持てるようにする「活動全体のこと」ですから、この方法しかないというわけではありません。今までいろいろと工夫され、その方法論は多々あります。砲兵工廠の品質保証活動と砲弾の不発弾対策の品質保証活動は中身が違います。今回の官公庁の入札のために求めていることは、対象物が多様なので一般論で具体的なことがありませんね」
工藤社長
「それが理由で伊丹さんは内務省の品質保証規格に賛成しなかったのですね」
吉沢教授
「話の途中で遮ってすまないのですが、今回の太陽熱発電の装置は複数の業者に製造させるつもりです。装置には安全や品質からいくつか重要な部分があり、そこは寸法・構造・材料などを指定したい。それ以外は自由に作っても良いかと思っています。そういうある程度の自由を与えることもできるものですか?」
伊丹
「なにごとも手法が初めにあるわけではなく、目的を果すために手法を考えなければなりません。ですからある程度の自由を与えることができるのかではなく、自由にできるところとできないところがある仕様を示せば良いことです。ええとある品物を発注するとき、その内部構造を細かく指定する方法もあるでしょう、その反対に内部構造はブラックボックス、つまり内部構造はお任せでインとアウトの仕様を指定することでもよいです。それは新しい考えじゃなくて、昔から仕様だけ指定して細かいことはお任せということは普通のことです。
吉沢教授が外部に発注するとき仕様だけ指定する方法もアリでしょう。その中間で、ほとんどはお任せだけど一部だけは指定するというのもありでしょう」
吉沢教授
「なるほど、そうすると太陽熱発電装置はいくつかの機器に分かれますが、それぞれをブラックボックスとするけど、安全上重要なところは使用する部品指定とか構造を指定すればよいということですね」
伊丹
「それだけでなく外形寸法とか固定部のねじ穴の位置なども指定しておかなければならないでしょう」
吉沢教授
「はっ、外形寸法などどうでもよいと思いますが?」
伊丹
「吉沢さんの設計された装置がどんなものか全く存じませんので想像で申しますが、例えばひとつの機械が故障したとき、別の会社で作った同じ役割りの機械と交換できないと困るのではないですか。中身はブラックボックスでその中の構造や機構は違っても、同じ役目の機械なら簡単に交換できてすぐ使えるのは必要条件でしょう。もし外形寸法や取付方法が違えば簡単に交換できません」
工藤社長
「それって標準化ですね」
伊丹
「そうです。ねじやベアリングはメーカーが異なっても同じ寸法なら交換可能です。吉沢さんが設計した太陽熱発電装置の機器はメーカーが異なっても交換可能であるべきでしょう」
吉沢教授
「なるほど、確かにお客さんが故障とか寿命で別会社のものに交換しても、全く支障なく使えることは大事なことですね」
兼安教授
「でもそうすると最初に設置するときに、この機械はA社、この機械はB社というバラバラになってしまうこともありますね」
工藤社長
「それで困ることがありますかね? 客が同じ用途の機械が選択できるなら、その中で安くて良いものを選ぶことができます」
兼安教授
「なるほど、それは悪いことではないのか・・」
吉沢教授
「ええと今までお話を聞いていて知りたかったことの一つは既に解消しました。
もうひとつはそういう指定をしたとして、間違いなく良品を作らせるにはどうしたらいいかということです。ええとつまり、私どもが製品仕様といくつか絶対に守るべきことを公開したとします。それで各社がそれぞれ製造したとき、安全であることを確実にするにはどうしたらいいですかね?」
兼安教授
「状況というか事情をいいますと、政策研究所は設備の仕様を決めて公にしますが、できあがった製品を政策研究所が購入するわけではありません。太陽光発電や水道を必要とする島の町や村が購入するかもしれず、一般人が購入するかもしれない。もちろん国家予算で調達することもあるでしょう。
そういうわけですから、いずれにしても政策研究所が受入検査をすることはありません。
ですから図面指定通り作らないかもしれませんが、誰も検査をしないから図面通りでなくても気が付きません。そういうとき図面通りに品質一定に作らせるにはというのが難題ですわ」
伊丹
「そういう方法もいくつか考えられます」
兼安教授
「えっ、そういう方法は既にあるのですか?」
伊丹
「先人はほとんどあらゆることを考えてきました。まず基本的に製造販売者は「政策研究所規格」に適合か否かを表示させる義務付けをしなければなりません。そして政策研究所規格に適合でないものは販売してはならないことを法で定めなければならない」
吉沢教授
「ええと、法で決めるとはどういうことですかな?」
伊丹
「政策研究所の図面で作れば安全なものができるのでしょう。当然それは高くつく。もし先ほど吉沢教授がおっしゃった重要な部分を指定通りでなく作れば安くなるでしょう。でもそういったものを好き勝手に作って販売すれば危険ですから、売ってはいけないと法で規制しなければなりません。販売すれば法違反ですから処罰されるようにします。
もちろん「政策研究所規格適合」と表示するのは自分勝手にできないわけです」
吉沢教授
「そこまでは分かりました。次はその政策研究所規格に適合したのを誰が判定するかですね」
伊丹
「その通りです。
その前に、適合してほしいものはなにかとなります」
吉沢教授
「えっ、図面通りであることです」
伊丹
「そうでしょうか? 太陽熱発電装置といえばボイラーがあると思いますが、ボイラーの耐圧試験をすることとか、その検査記録を保管することとか、その試験をする人は一定要件、例えば研修を受けたとかの資格要件がいるのではありませんか?
そのほか耐圧機器の組み立てにも資格が必要かもしれません。特に溶接などは完了後では良否が分かりませんから、溶接工は技能者でなければなりませんね。
その他、保管中に劣化するようなことがあっては困ります。保管中に錆びては性能が保証されません。そうすると保管条件や運送条件も決めなければならない。
そういった検査方法、作業者の技能とか保管方法は図面に書きません。図面に書いてなくても守らなければならないことは多々あるでしょう」
吉沢教授
「なるほど、設計仕様、工作仕様、検査仕様などをまとめなければなりませんね」
伊丹
「その通り。このお話は単なる相談なのでしょうから要点だけ話します。詳細はお宅で考えてくださいね」
吉沢教授
「これ以上は有料ということですな」
工藤社長
「まあ、そうですね。我々も霞を食べては生きていけませんから」
吉沢教授
「はあ、内容次第ではコンサル契約をしたいと思います。確認しておきますが、具体的な方法の案はお持ちだということですね」
工藤社長
「そりゃもちろん」
伊丹
「まず仕様確認を誰がするかですが、普通に考えて第一者、第二者、第三者があります。第一者とは製造者が確認することです」
兼安教授
「自分が作ったものを自分が検査しても、また製造工程をその会社が保証しても信用できません」
伊丹
「そうかもしれませんが、そうでないかもしれません。技術レベルが高いとか、危険性の少ないものであればよろしいでしょう」
吉沢教授
「もうひとつは企業の倫理だな。問題があったら夜逃げするようでは困る」
伊丹
「第二者とは購入者つまり買い手が確認することです」
兼安教授
「そりゃできませんね。孤島の酋長が設備の良し悪しが分かるわけがない」
伊丹
「そういう方法もあるということです。
最後は第三者ですが、要するに製造者でもなく購入者でもない第三者が製品検査や製造工程を調べてお墨付きを与えるという方法です」
工藤社長
「内務省の方法と同じだな」
伊丹
「同じところもありますが、違うところもあります。」

伊丹は黒板に絵を描く。

要求事項の組み合わせ
対象項目内務省の品質保証砲弾の不発対策太陽熱発電
一般的な管理体制ありありなし/あり
製品対応工作仕様ありあり
製品対応設計仕様あり

この他 多様なものがありえる


伊丹
「さきほど、品質保証といってもひとつの方法しかないわけではないと申しました。対象となるのを考えると、まず生産体制を確認するという方法でしょう。内務省の品質保証はこれです。内務省のものは一般論だけで、製品ごとの技術的なものは要求していません。それで十分なのか不十分なのかは、これからの実績が示すでしょう。
欧州大戦のときに行った砲弾の不発対策は管理体制だけでなく、製品の工作仕様や保管方法なども対象範囲にしていました。しかし製品設計は対象外です。砲弾の設計仕様は与えられているからです」
吉沢教授
「図では太陽熱発電装置では製品対応の設計仕様と書いている。設計仕様は私の方で決めているわけだが・・」
伊丹
「先ほどのお話では、一部は設計して渡すけどその他の部分は製造者にお任せとおっしゃったので、それなら製造メーカーが設計する部分もあり、それが良いか悪いかを第三者が点検しなければならないのではないですか?」
吉沢教授
「なるほど、」
兼安教授
「一般管理体制は「なし/あり」となっているが、必要なのか不要なのか?」
伊丹
「すべては費用対効果です。安全に係るものですから主要な製造条件の記録は必要でしょう。しかしそれを教育訓練とか文書管理まで広げるか否かは作る物の複雑さ次第となります(注6)
兼安教授
「伊丹さんは私が疑問に思っていることなどとうに考えているわけだ」
伊丹
「もう骨組みとしてはこれでオシマイですが、第三者をどうするかはまだ話していませんね。
既に動いている内務省の認証制度に便乗するというのもありでしょう。但し、内務省の制度は図でも示したように一般的な管理体制だけですから、審査会社も審査員も太陽熱発電装置を調べる能力もないかもしれないし試験する設備もない、現時点ではね。
それと本質的なことですが、審査する対象が異なりますから内務省ではなく、商工省が主務官庁になるでしょうね。内務省は官公庁の調達の一般論としての品質保証だから所管するのはおかしくないけれど、太陽熱発電装置という具体的な製品であれば、内務省はそもそもお門違いです」
兼安教授
「伊丹さんとしては商工省に製品認証部門を設けるということですか?」
伊丹
「いえ、そう決めつけるわけではありません。製品そのものを検査したり工場を審査するのは官庁のすることではないでしょう。それは内務省の制度と同じく民間会社に任せてよいと思います。ただ法律を含めてその仕組み作りとか、検査会社の認定などの監督官庁は商工省かと思います。製品の安全確保とか技術基準を所管するのも商工省でしょう。
それとこのシステムは熱帯でしか使えないと思います。となると、商工省が所管とか法律で決めなければならないということでもなさそうです」
兼安教授
「うーん、意味が分かりませんが」
伊丹
「南洋群島でしか使えないものならば、扶桑国の法律ではなく南洋群島の法律で決めれば済むことかなと思いました」
吉沢教授
「南洋群島は扶桑国ではないから法律とか条令ではないだろうねえ〜。南洋群島内で通用する公的な規則というのはなにになるんだろう?(注7)
兼安教授
「なるほど、どのような法規制にするかということも要検討ということですね。
ええと具体的に次に進んでどのような制度にするか、その検査会社をどう認可するかとか、基準合格の表示とか公示とか具体論詳細に入るわけですが、それはお金を取りますよとなるのですね」
工藤社長
「そういうことです。今日の話だけでも無料とは思えない価値があると思いますよ」
吉沢教授
「確かに、価値あるお話でした。ところでこういう仕組みはなんというのでしょうか?」
伊丹
「既に似たような制度はいくつかあります。そしてそれぞれいろいろと名乗っています。これもそれらと同じく吉沢さんが名付けて良いわけですが、内務省のものと違うのは具体的な製品があることです。ですから製品認証と言っても良いし、この場合は具体的な型名まであることから型式認証と称しても良いと思います」

うそ800 本日のおもひで
私がこういったものに初めて関わったのは電取だった。その後ULがあり、GMPとかBABTなんてのにも関わった。いやいや原子力品質保証とか官公庁向け(注8)というのもありましたね。振り返ると私はベテランの品質保証屋ではありませんか(笑)

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注1
日本で1920年代はオフィスビルとしては8階建てくらいが最高だったらしい。
「建物高さの歴史的変遷(その1)」

注2
日本橋を三井の街、丸の内を三菱の街というそうだ。日本橋が江戸時代からビジネスの中心だったのと違い、丸の内は岩崎彌之助が1890年に練兵場跡地を購入して開発したもので歴史は新しい。一丁倫敦(ロンドン)と呼ばれたのは1914年以降のこと。1923年落成の丸ビルは関東大震災で被害がなく、臨時救護所となった。そして関東大震災の復興で丸の内が伸びたらしい。

年季奉公という言葉は、ビルテナントの場合は特別な意味で使われる。新しいビルが入居者が埋まらないときに、ビルを建てた建設会社に多少店賃を割り引いて3年とか5年とか期限を切って入ってもらうことを言う。その対象範囲には建設関係はもちろん、エレベーター会社とか什器を納めたところ、その他 通常の取引先や下請け会社も義理で入居する場合もある。
年季が開けるとほとんどの店子は出ていくのも常のこと

注4
上水道普及率推移
このグラフは1950年からだが、グラフから見て1925年は10ないし15%だろう。

品質保証の定義はいろいろ変遷したが、ISO8402:1986では「製品又はサービスが、所与の品質要求を満たしていることの妥当な信頼感を与えるために必要なすべての計画的及び体系的活動」としていた。ここで「信頼感」という語は定義されていない。
ところで信頼感の原語はconfidenceであるが、これは信頼/信頼感なのだろうか? 英英辞典などをみると他を信頼するというよりも、己を信頼するというニュアンスに思う。となると信頼よりも自信という感じかな。言葉の意味からして、内部品質保証なら自信で外部品質保証なら信頼なんだろうか?

注6
ISO9001:1987の序文には「品質システムは、その組織の目的、製品又はサービス又はその組織固有の慣習によって影響を受ける。したがって、品質システムは組織ごとに異なる」と記されている。
製品又はサービスが単純であれば、組織のメンバーの力量が高ければ、組織の慣習が意識高くあれば、システムはシンプルで十二分だろうし、その逆もしかり。一様に管理体制まで要求することはない。というのが規格の本来の意味であるが、日本の認証機関は横並び、ステレオタイプを望み、空気を読むのが上手い多くの企業は実態とかけ離れた同じシステムもどきを示して認証している。嗚呼、カナシー

注7
委任統治領であった南洋群島は、日本ではなかったので日本の法律は法的に通用しないこと、また府県や市町村でなく条例も制定根拠がない。領土でないとして勅令(天皇名で発する命令)その下位規則は南洋庁令として制定されたという。実際の南洋の法規制を見ると「南洋群島○○法」(大正〇年勅令第〇号)となっている。
なお、台湾、朝鮮、南樺太は本土ではないが日本の領土であるとして、帝国議会が外地法を定めて適用された。
参考:旧外地法令の調べ方

注8
官公庁向けというのが何を意味するか、分かる人は分かるでしょう。分からない人は分からないけど。


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