異世界審査員91.大陸調査その3

18.06.14

* この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但し引用文献や書籍名はすべて実在のものです。民明書房からの引用はありません。

異世界審査員物語とは
私と農業の関りと言えば、家内の実家で田植えと稲刈り、そして蚕の手伝いに行った程度しかない。もっとも蚕は1990年頃に止めた。ともかく農業について何も知らないまったくの門外漢である。しかしなにも知らないからこそ、不思議だなあと思うことがある。
例えば「北海道+農業+温暖化」というキーワードでネット検索すると、地球温暖化によって北海道農業が大きな打撃を受けるという記事や論文がたくさん見つかる。温暖化によって北海道の農作物生産が増加するというものは見当たらない。なぜだろうと素朴に思う。
米の生産高は北海道が日本一であるが、明治初期までほとんどゼロだった。今米作り日本一というのは、明治以降の品種改良や技術向上などによるのだろう。しかし明治以降、北海道の最高気温が2℃、最低気温が4℃上昇していることも、関係ないとは思えない(注1)実際に1884年から2010年までの北海道の最高気温と作況指数の相関を求めると、0.36となり弱いが確実に相関がある(注2)現実に作況指数は気温、日照時間、降水量の従属関数であり、それは農家の常識である(注3)
であれば温暖化は北海道の米作にメリットがあるという説もあって然るべきだが、それがないのはなぜだろう? 北海道農業は米作ではなく寒冷地の作物で持っているということなのだろうか?

1922年8月、兼安と石原そして熊田は馬や馬車や汽車を乗り継いで、ウラジオストクからノモンハンに至った。将来大規模な戦闘が行われる場所ではあるが、目の前にあるのはなにもない大草原だ。都市もなく工場もなく地下資源もない。何が起きても誰も困らず、戦場に最適だと考えるべきだろうか?
三人はそこで将来起こるであろうノモンハン事件に想いをはせ、議論する。
初めはいかに戦い、いかに勝つかというテーマだったが、議論するうちに戦争目的となり、戦争が外交の一手段であるならば戦わずにすませる方法、戦いをいかに収めるかというテーマに流れて唾を飛ばす。そして最終的には国家のあるべき姿ということを考えるのである。

満州の地図 数日間、ノモンハン付近をさすらった後、三人はノモンハンから奉天に向けて馬を進めた。既にこの時代には満州には複数の鉄道線路が敷かれていた。とはいえ鉄道線路が敷かれているのは満州を四半分した南東だけで、満州西側や北部には鉄道線路は一部しかない。鉄道線路があるのは人が大勢住んでいて産物が多いことであり、鉄道線路がないのは、人が少なく産物も少ないということだ。鉄道線路はアメリカとかイギリスの投資で作られている。

三人が進む大草原には都市はもちろん田舎町もなく、たまに遊牧民の住まいがあり、それよりも少ないアメリカ人の入植地があった。
アメリカの入植地は数軒ずつまとまっているが密集しておらず、隣の家まで数キロありそうだ。その一軒に近づくと、腰にでかいコルトピースメーカーをぶらさげたカウボーイが馬に乗って現れた。まさにアメリカ西部開拓そのままだ。人の姿格好だけでなく、建物も牛舎も、やぐらの上で回る風車が井戸水を汲み上げているところまで同じだ(注4)この場合、三人が野盗と思われてもおかしくない。

兼安は英語でカウボーイに挨拶する。自分たちは扶桑国の事業家で商売のネタを探しに来た、通りがかったのでぜひお話を聞きたいという。
井戸水汲み用風車 カウボーイは30代で妻と子供二人を連れて、ここに入植したという。モンゴル人を数人雇って放牧を任せている。家の周りに小さな家庭菜園がある。見渡す限り我が家の放牧場だというが、いくら広くても牛が食べつくせばおわりだ。だから定期的にテントを持って遊牧しなければならない。
このあたりには町はなく、教会もなければ学校も郵便局も銀行もない。定期的に守備隊の巡回があるから郵便物があれば頼むのだという。子供が学校に行くようになれば学校の寄宿舎に入れるという。
兼安の商売の話には、行商に来るならともかく、店を構えても買いに行く暇もないし、お金もないとカウボーイは笑う。
泊っていけというカウボーイの言葉に感謝して、三人はその農場を去った。
三人は地平線に消えていく風車を何度も振り返って見た。熊田は、風車で地下水を組み上げれば数十年かせいぜい百年で枯れてしまい、それで終わりですよという(注5)そのときあのカウボーイはどうするのだろうか。いや、それほど時が経たずとも戦乱が一度ならず起きて、ここに住み続けるのはできないかもしれない。知り合いでなくても、困難が待ち受けている人を見るのは辛い。

アメリカ陸軍の砦にも寄った。西部開拓時代の騎兵隊の砦そのものだ。ここでも扶桑国の実業家と自己紹介して話を聞く。
砦には1個中隊約200人とその家族や牧師など合わせて数百人住んでいる。兵隊が10人程度のグループで、定期的に入植地を巡回しているという。この兵力と装備している武器では野盗や馬賊ならともかく、近代的な軍隊に対抗できるはずがない。一旦事あれば全滅だなと石原は思う。
入植者が馬賊や遊牧民から襲撃されることは今のところないらしい。それはまだ入植者が少数なので、既存の遊牧民とコンフリクトが起きていないからだという。もし入植者が増えたり、土地を囲ったりすれば騒動が起きると考えているようだ。
この世界ではアメリカが満州に鉄道建設して、かなりの数の入植者がいる。中国はこのとき満州に利用価値がないとみてか、アメリカの入植にいちゃもんつけていない。それともアメリカに多数の苦力(クーリー)を送り込んでいるので、お互い様と考えているのだろうか?
その他、欧州大戦で青島のドイツ軍を破った(扶桑国の支援が大きかったが)イギリスが山東半島を租借して満州への拡大を図っていた。
つまりこのときは中華民国が建国されて一応満州は中国の領土らしいが、中国の統治が及ばず、中国・アメリカ・イギリスがそれぞれ経済活動している状況にあった。

奉天への道々、集落とか砦が目に入ると、訪問していろいろと話を伺う。だがそんなことは二・三日に一度しかない。普段、三人のときの話題は、ノモンハンの戦争はどうあるべきだったのかということばかりだった。いや最近はノモンハンの勝敗以前に、そもそもこの土地をどう統治するのかがテーマとなった。
元々、兼安は真面目に調査する気はなさそうだ。何年も前から熊田中尉のような草がたくさん送り込まれているわけで、そういった専門家から細かい情報が日々本国に伝わっている。つまり兼安は自分自身が満州の実態を見て感じたかったのだろうと石原は思う。
ということで三人は、調査にはあまり入れ込まず漫遊の旅を進めた。
毎晩、満天の星空を見て食べて語り合った。
おっと昼でも夜でも輪になって話すときは、お互いに背中を合わせて目は周囲に向けている。お互いの顔を見て話に熱中していると、いつの間にか誰かが背後に忍び寄っているかもしれない。

兼安教授
「石原君、君はノモンハンの戦いを勝つ方法を考えているようだが、勝てるものかね?」
石原莞爾
「戦争に勝つということは戦場で敵兵を斃すことだけではありません」
兼安教授
「そりゃそうだろう。作戦立案もあるだろうし兵士の訓練をして士気もあげなくちゃいかん。シベリア出兵の士気は最低だったというじゃないか。祖国の危機であれば兵士も真剣だろうが、戦争目的を明確に示せないようではやる気も起きないだろうね」
石原莞爾
「いえ、兼安さん、そういう切り口じゃないのですが・・・山縣有朋は戦争を始める時は刀を鞘に納めるまでを考えなければならないと語ったそうです。戦争を始めるには、戦争目的をはっきりさせなければなりません。であれば勝敗要件が明確で、勝つために何をすべきかが分かります。そして勝たなかった場合、つまり戦争目的を果たせなかった場合の処置も決めておかなければなりません」
兼安教授
「そりゃ、当たり前だろう」
石原莞爾
「いえいえ、向こうの世界ではノモンハンの戦争目的ははっきりしていなかった。おっとそれを言うならシベリア出兵の戦争目的もはっきりしていないどころか、ときとともにドンドン変わった。初めは在留日本人の保護、ロシア人の生命財産の保護、チェコ軍団の支援、日本の権益確保と・・
ですから目的を果たすためにどうすべきかと、真剣に考えていたわけがありません。
行き当たり場当たり、その場しのぎになし崩し、なにをどこまですべきかはっきりしない」
兼安教授
「うーん、そうすると石原君はノモンハン事件をどう定義するのだ?」
石原莞爾
「ノモンハン事件はソ連と日本の見方が全く異なっていました。ソ連は建国間がない共産主義国家が危機に陥ったと考えた。国家の存続がかかっていると考えたのです。だからシベリアの田舎の国境線争いであっても負けるわけにはいかない。よって彼らの戦争目的ははっきりしていたし、それを果たしたわけです。
他方、日本の目的は国境線を超えてきたソ連軍を日本が考えていた国境まで追い払うことでしたが、目的はかなわず、それだけでなく欧州の戦線に多大な影響を与えてしまった。そして最悪なのは自分がしたこと、その結果を想像できなかったことでしょう」
兼安教授
「というと石原参謀長はノモンハンの戦いで、国家の戦争として位置付けるべし、戦争目的は相当広いノモンハンの国境線の確保だけでなく侵攻して我が国領土とすることになのか?」
石原莞爾
「この世界でそれを議論しても意味がありません。我が国がここに権益もなく、駐屯しているわけでもなく、前提条件が違うからソ連と国境線を争う状況にありません。
こちらでは扶桑国とソ連が戦うケースはなさそうです。ですからアメリカとソ連が戦うことを研究すべきかと思います」
兼安教授
「扶桑国が戦うことはアリエナイということか?」
石原莞爾
「だって満州に我が国がおらず、代わりにアメリカとイギリスがいる現状を鑑みれば、扶桑軍が戦うわけがありません。扶桑国とソ連が戦うなら、ソ連の北海道侵攻、あるいは逆に扶桑国が樺太へ侵攻する場合です。いずれにしても満州ではありません。
ソ連というか共産主義の拡大を止めるのが戦争目的ならば、扶桑国単独ということはないでしょう。先のシベリア出兵のように、連合国が足並み揃えてとなるでしょう」
兼安教授
「この世界では、いつかアメリカとソ連が衝突する。その時巻き込まれる可能性が高いというのか?」
石原莞爾
「そうですね。でもにらみ合っていれば、ときにはガス抜きしないと危ないでしょう。積極的にガス抜きをしたほうが大戦争になる恐れはないのかもしれません」
兼安教授
「アメリカなら戦争目的は変わるよね? 満州の完全領有化とかになるのだろうか?」
石原莞爾
「いや、それにとどまらず我が国にとってもっと危険なことかもしれません」
熊田中尉
「満州を獲った次は、我が国への侵略戦争ですか?」
石原莞爾
「堂々と扶桑国を領有するとは言わないでしょうけど、扶桑国の属国化とかあっても驚きません。フィリピンとかプエルトリコくらいの扱いですかね。領土ではなく属州扱いですか」
兼安教授
「でもそれはないだろう。我が国はれっきとした歴史ある独立国だし、国際連盟の常任理事国だよ」
石原莞爾
「経済が弱まればおしまいですよ。アメリカがソ連と戦い、満州を勝ちとればアメリカは扶桑国を地理的に包囲するわけです。ソ連から樺太をとれば北も押さえてしまう。ともかくノモンハンに勝てば、ゆくゆく我が国は周囲をアメリカに囲まれてしまう」
熊田中尉

「サンマリノとかバチカンみたいなものですね」

注:レソトも同様だが、その立国ははるかに後年の1966年だ。


石原莞爾
「そして政治的な支配以前に、経済的に支配され、文化的には吸収されてしまうでしょう」
兼安教授
「アメリカがソ連と戦うのは、我が国にとって悪手ということか?」
石原莞爾
「とはいえ進出してくるソ連を止めるにはアメリカが必要です。この旅でいろいろ見て、これからのシナリオを考えてみます」
熊田中尉
「アメリカが勝つことしか言いませんが、ソ連が勝つ可能性を忘れちゃいけません」
石原莞爾
「そうなればアメリカの入植者がひどい目に合うでしょうね。ただ緒戦でアメリカが負けてもそれで終わりということはないでしょう。過去、アメリカが負けたと言った戦争はありません。ましてや入植した自国民がひどい目にあったなら絶対仇をとるでしょう」
兼安教授
「石原君の考えるシナリオには期待するが、その通り世界は動くのかい?」
石原莞爾
「動かすようにしましょう」


翌日も三人は馬を並べて歩きながら語り合う。

兼安教授
「アメリカがノモンハンで戦うなら、扶桑国はどういうスタンスをとるべきか?
そのとき選択肢は、中立、ソ連と同盟、アメリカと同盟の三択あるわけだが」
石原莞爾
「アメリカが、満州民族の民族自決とか清崩壊後の東アジアの安定のためと大義名分を掲げるなら、扶桑国はアメリカを支持すべきでしょう。
アメリカの戦争目的に賛同できなければ中立、間違っても共産主義のソ連支持はないでしょう」
兼安教授
「支持するとは参戦することなのか、基地や武器弾薬の提供なのか、声明だけなのか?」
石原莞爾
「それも多様ですね。ただそういうのは我が国がフリーハンドで決められるわけではありません。周囲の状況から選択肢が決められてしまう」
熊田中尉
「私の専門の農業になりますが・・・」
兼安教授
「なんですか?」
熊田中尉
「農業の生産高は土地によって制約され、人口は農業の生産力で制限されます(注6)
満州の面積は我が国の面積の約3倍110万km2です(注7)南部では米作できますが、北部は遊牧と乾燥地農業しかできない。それぞれ半々としましょう。米作で200人/km2養えるとして1億人、遊牧と乾燥地農業が20人/km2として1000万人、つまり満州が養える人口は1億1000万人となります(注8)この数字を大きいと思うかどうかですが、1922年の今、扶桑国が3分の1の面積で6,000万人養っていることを考えると生産性が低い」
兼安教授
「すまん、言っていることが分からない」
熊田中尉
「気候や地形によって暮らせる人口は決まり、それを超えて入植すると土地が劣化して短期間、せいぜい10年とか15年で砂漠化してしまう(注9)
兼安教授
「つまり、どういうこと?」
石原莞爾
「どの国がここを領土にしても、あまりメリットはないということですか?」
熊田中尉
「そうですね。戦争目的には領土を取るということもある。領土と言っても不凍港とか農業地帯とか鉱山とかその価値はいろいろでしょう。ただここ満州では石炭はあっても石油は少し、鉄鉱石も乏しい。農業するにも一番人口を支える米作は南の方だけ。北の方は昔からの酪農しかできない。
人口は現時点3,000万近くいる。物理的にあと8,000万しか住めない」
兼安教授
「伸びしろが8,000万といっても、それだけで我が国の人口より多い」
石原莞爾
「気象などの制約条件を考えると、あまり旨味はないということか」
熊田中尉
「昔なら異民族を皆殺しにして、開いた土地に住むという民族浄化なんてしたもんです(注10)今の時代にはそんな無茶はできないでしょう」
兼安教授
「熊田君は、向こうの世界の日本が満州をとって入植者を入れようとした施策は、そもそも無茶だということか?」
熊田中尉
「豊かさって何ですかね? あっ、人生観とか価値観ではありません。
スペインは南米に侵攻して住民を虐殺して、財宝を持ち帰った。
インドに侵攻したイギリス人は、インドの体制を大きく変えず、従来の支配層を使って生かさず殺さず税を巻き上げた。インドが貧しくなった分の富がイギリスに渡り王侯貴族は豊かな暮らし、庶民もそのおこぼれを頂戴した。
アメリカに行ったイギリス人は、原住民を 殺して 追い払い自ら農業を始めた」
兼安教授
「うーん、熊田君の言っているのが分からない」
熊田中尉
「いや自分も確固たる考えがあって語っているわけではありません。
今の例え話は、遺産を全額もらうケース、毎年配当をもらうケース、金でもらうのではなく自分が働くケース、いろいろあるというだけのこと。
産業形態を変えずに土地から得られる財は一定です。満州の財をどういう風に手にするのかと思いましてね」
兼安教授
「日本が満州に植民しようとしたのは、熊田君のいう三番目かな」
熊田中尉
「でも土地が同じなら耕す人が代わっても収穫が変わるわけがありません」
兼安教授
「日本の技術なら満州を穀倉地帯にできると考えたんだろう」
石原莞爾
「だが技術があっても制約を撥ね退けることはできない。アメリカの入植地では地下水を利用しているが、熊田さんは持続性がないと言う」
兼安教授
「そこまで根源的なことにたちかえるなら、そもそも戦争とは何なのか?」
熊田中尉
「考えるなら、戦争はなぜ始まるかでしょう」
兼安教授
「なるほど、それならソ連は不凍港の獲得、自国への脅威をなくすためには先手を打つこと、アメリカは市場確保と農地確保、イギリスは年貢がとれる国の確保」
石原莞爾
「中華民国にとっては過去の領土回復、我が国にとっては緩衝地帯の確保ですかね。お互いに狙いは違うが手に入れたいのは同じだ」
熊田中尉
「その葛藤を平和的に解消できなければ戦争になる」
石原莞爾
「戦争は政治の一手段ですからね」
兼安教授
「しかし熊田君がいうように、この土地にそんな価値があるようには思えない」
石原莞爾
「経済学でいうバブルじゃないですかね、つまり「そのものの価値ではなく、価値があるだろう、これから値上がりするだろうという期待」ではないですか」
熊田中尉
「手に入れたら実は負債だったりしてね」

昨日、2018年6月12日、北朝鮮の金正恩とトランプ大統領がシンガポールで会談しました。その結論である声明はあいまいでわけのわからないものでした。
黒電話
そもそも北朝鮮が核ミサイルで近隣諸国を恐喝するようになったのはなぜなんでしょうか?
中国親分の手先としての脅迫・恐喝の実行犯なのか? ヤンキーがいつのまにか力を付けて中国一家から独立した暴力団を立ち上げたのか? 働かず金を巻き上げて暮らすことに慣れきった金一族の暴走なのか?
ともかく北朝鮮を撲滅しないと解決しませんね。
そのためにはトランプよりもっとしたたかな交渉者を差し向けないとだめかもしれない。
あるいは、我々が北朝鮮の暴力に負けない力を持つという選択肢もある。


うそ800 本日のなぞ
石原莞爾は後にこの旅行で得たことから論文を書く予定です。
その論文のタイトルはなんでしょう?

「■■■■■■」だろうなんてばらしてはいけません。

<<前の話 次の話>>目次


注1
注2
北海道の米作り \冷害の発生と対策

注3
注4
注5
「水危機、ほんとうの話」沖大幹、新潮社、2012

注6
人口支持力とはcarrying capacityの訳で、土地が何人を養っていけるかということ。普通の場合、1q2あたりの人口を言う。工業化社会になれば人口支持力は増えるが、実際には農産物の供給地がなければ成り立たない。
時代区分産業発達形態人口支持力(人/km2)日本人口(万人)
縄文狩猟・採集0.1〜0.74〜26
弥生〜平安水稲栽培2415〜300
室町〜江戸経済社会化112500〜3000
明治〜昭和初期工業化3393000〜10000
20世紀末〜脱工業化?(注)34012000
(注)食料自給率40%だから実質340×0.4=136人

Cf:日本の人口減少は4度目だった…今回は「未曾有」なぜ人が増加しないのか
cf:人口の超長期推移

注7
昔満州と言われたところは、今の遼寧省、吉林省、黒竜江省、内モンゴル自治区の一部で、現在の行政区画との対応しない。2010年の中国のデータから満州に該当する地域の面積(110万km2)と人口(約1億人)を推定した。

注8
昔は社会科で産業発達と人口支持力の関係など習った思い出があるが、ググっても出てこない。最近はそういう教え方をしないのだろうか?
一般に養える農産物は米とトウモロコシと言われている。米の場合概ね1km2四方で300人くらい、これが最大らしい。麦になると半分以下になる。
米が主食の国の面積当たり人口は、バングラデシュ1100人/km2、ベトナム282人、インドネシア138人、タイ134人、日本170人くらい

注9
アメリカの穀倉地帯は「オガララ帯水層」の地下水によって支えられている。地下水位は毎年30センチほど低下していて、あと数十年で汲み上げが難しくなるという。
National geographic 2012.12.25
National geographic 2016.12.28

注10
民族浄化とは1990年代に旧ユーゴスラビア地域で、セルビアとクロアチアが殺し合ったことを、「ethnic cleansing」と表現したことの翻訳。
同じことは過去より行われてきた。旧約聖書時代でも、十字軍の時代でも、バトゥの西征(モンゴルのヨーロッパ侵攻)でも、勝利した側は、負けた方の兵士、貴族、平民、奴隷を問わず皆殺しをすることは珍しくなかった。
日本のように、敗者のトップだけが腹を切っておしまいというのはきわめて稀である。天草は通常の戦いでなく宗教戦争だから違うのかもしれない。



外資社員様からお便りを頂きました(2018.06.14)
おばQさま
>地球温暖化
この論旨にどこか胡散臭さを感じる時は、現状を固定しておいて温暖化が起きた場合の被害を主張する場合です。
農業を行う側だって、作柄が悪くなるのに作物を適したものに変えない事はありえませんね。
せめて、緯度に対する作物と農業生産量が北にシフトした場合の変動くらいの想定で言ってくれないと判りません。
それだと生産量が大きくなるから言わないのでしょうか?

>異世界
お書きになった事を読んで、かつての帝国政府や陸海軍に欠けていたものが良く判ります。
なるほど、国家としての戦争の目的は何か、終戦までの複数の想定シナリオと、それらに対する利害の評価ですね。
これも、先の地球温暖化のシュミレーションと同じで、状況が変われば変えてゆく必要があります。
加えて、相手の立場での同様な想定シナリオです。 これが正確ならば相手の基本戦略や動きを正しくとらえられます。
史実のノモンハンでは、ある陸軍将校が「戦争は継続意思を失った時が負けだ」とバスケ漫画の如き言葉を言っておりました。
一面真実ですが、継続意思が折れないのは明白な目標があるからです。 バスケならば試合に勝つという明白な目標がありますが、戦争では、局面の戦争で勝てなくても、戦略目的を達成できる場合もあるし、国家の最終的な目標の為に必要な撤退もあり得ます。
そういう意味では、同時代の史実では、明白な国家としての目標の欠落が、中国戦線の泥沼化や、国家の孤立を生んだ事が判ります。

>米国開拓民と砦
歴史は繰り返す、西海岸の成功体験を忘れられず、同じ事をやっている米国が、とても素敵です。
ここに日本を飛び越えて米国がいて、満蒙でソ連と直接対峙する場合の、日本の立ち位置は重要ですね。
敗戦後は、米国の手下になりましたが、この世界では独自の国家戦略が可能です。
ソ連側から見れば、日本と米国が共同して戦われるのは厳しい。
史実では、これをさせず、むしろ対独の為 連合国側から支援させたのはソ連の大きな成功とおもいます。
異世界の場合には、ドイツや欧州と組んで、米日と対立という可能性もありそうです。
いづれにせよ国際政治は複雑怪奇で、世界は最終戦争に向かうのか、それとも違うシナリオが出来るのか、楽しみにしております。

外資社員様、毎度ありがとうございます。
厳しい指摘かと冷や汗をかいて拝読いたしました。
  • 温暖化について
    地球の気温が温暖化しているのは事実と思います。地球温暖化を否定する科学者も測定された結果を否定する人はいません。ただ地球温暖化というのは「人間活動によって二酸化炭素が増えたことによって気温が上昇すること」を言います。それが本当なのか否かはまだ証明されていません。地球は氷河期を脱しようとしているのだと語る科学者もいます。
    温暖化によって害があると語る人は、温暖だった時期のことを語ることをしません。
    実を言って過去何度もあった間氷期の気温は現在よりも2℃ないし3℃高かった。そうでなければ三代丸山なんて文化があったはずがありません。
    まあ気温が高くなって困ることがあるのは間違いないでしょうけど、気温が高くなってありがたいこともあるだろうと思います。
  • 戦争目的
    戦争ばかりでなく、人生目的というのも考えられると思います。学校ではそういうことを教えません。アメリカが何でもよいとは言いませんが、アメリカのジュブナイル小説を読むと日本の赤川次郎などとは違い感心することが多々あります。「ジャンパー」という映画がありました。原作は全然違うまともな成長物語なんです。
    ああいった小説をティーンエイジャーが読めば自身が成長するだろうと思います。その結果、人生目的というのを考えるんじゃないかと、
    もっと青少年の成長になるジュブナイル分野を期待したいです。
    私は齢70間近にしていまだ人生とは何かと彷徨っております。
  • これから
    このお話は異世界に行ったISO審査員の悲喜劇を書こうとしたのですが、審査という仕事が成り立つ舞台を書いているうちにドンドン変質してお話をどうまとめるか、どこでオシマイにするか考え中です。今1922年まで来ましたから、ノモンハン1939ではなく、ノモンハン1929でも起こして大恐慌を軟着陸させてオシマイさせましょうか?

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