異世界審査員149.満州その9

19.02.14

*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但し引用文献や書籍名はすべて実在のものです。民明書房からの引用はありません。

異世界審査員物語とは

満州事変の本を読むと、どの本も満州事変の起きるまでのいきさつを、延々と長々と書いている。
例えば島田俊彦の「満州事変」という文庫本は本文が398ページあるが、中国が列強に食い物にされ清が崩壊し内戦状態に至った経緯とその状況の説明に167ページを費やし、満州における日本人入植者と警備する兵隊に対する排日テロと日本側の対応に77ページ、日本軍が決起して中華民国軍(実態は軍閥 張学良軍)との戦いに133ページ、但し関東軍の作戦活動はその半分で残りは東京の内閣や参謀本部の経緯である。そして残り20数ページは事変後の外交交渉である。満州事変の範囲をどうとらえるかだが、計画と戦闘は17%、内閣や外国の関りを含めても37%である。それ以外は当時の中国の状況説明だ。
つまり清の衰退、阿片戦争、更なる清の衰退、国内の乱れ、租借地、日清戦争、辛亥革命、軍閥の発達、内戦勃発、孫文の死、ソ連の浸透、共産党のテロ、外国人排斥・テロ・暴動、などなど。
しかしそれは無駄なことを書いているのではなく、そのような清と清崩壊後の対応と混乱を知ってないと、満州事変は理解できないということだ。

関東軍(注1)が列車を爆破させて軍閥(注2)のトップである張作霖(ちょうさくりん)を暗殺したなんて、とんでもないことだと思う。でもそれまで10年以上も軍閥同士の戦いとか暴動で、日本を含めた外国の領事館が焼かれたり駐在外交官が殺されたり居住民が殺されたり略奪されたりということが日常茶飯事あった。だから日本人を始め外国人ももちろん中国人も、中華民国政府はちゃんと治安を維持してほしい、安心して暮らせる国になって欲しいと希求していたという現実がある。
満州事変は石原莞爾が企てたとか言われているが、司令官でもない一士官ひとりにできることじゃない。彼がトリガーを引いたにしろ、周りの人たちが、中華民国が不法者やテロを取り締まれないなら、日本人は我々が守るぞと考えていなければ動くはずがない。
「満州鉄道線路が中国軍に爆破された」という報告が来たとき、企てを知らされなかった者たちが「これは謀略だろう」と考えても、反対とか密告をせず積極的に協力したということがそういうことだ。それは空気に流されたのではなく、多くの人がそう考えていたのだろう。

現代の判断基準なら、満州事変が日本の謀略で始めたことは許せないと思うだろう。しかし中国はソ連の権益を奪還しようと条約無視で武力攻撃したり(注3) ブッシュ大統領 ソ連もそれを再奪還したりと、日本と同じレベルの戦いが何度も発生している時代だから、日本が悪とは言えない。
敵が鉄道線路を破壊したと言って戦争を始めるのと、イラクに大量破壊兵器があると言いがかりをつけて戦争を始めたのと、何ら変わらない。
そして今現在、ロシアがバルト三国やウクライナを侵略したり、中国が南シナ海で人工島を作ったりするのを思うと、主義主張に関わらず力のある国はみな横暴である。いや力がない国は横暴できないだけだ。


1928年6月
中華民国はソ連が中国国内でスパイ活動をしていることを理由に、ソ連外交官を国外追放した。そして満州の軍閥 張作霖はソ連の所有している東支鉄道を武力で制圧した。
当然ソ連も黙っていない。すぐにソ連軍は騎兵大隊を始め戦車や飛行機などを備えた8万人の兵士を進めた。そして満州の北と西のソ連との国境付近で、張作霖軍とソ連軍がにらみ合う事態となる。
対する中国側は10万いたが、戦車や飛行機はわずかしかなく戦力的には圧倒的に劣勢だった。

ソ連軍中国軍
兵員8万人10万人
大砲200門135門
重機関銃294丁99丁
飛行機60機5機

7月5日
ソ連軍は西側国境と北側国境の数か所から侵入を開始する。中華民国軍、実質は張作霖の息子 張学良が率いる軍隊は、あっという間に追い散らされる。
満州の南にある遼東半島はアメリカの租借地であり、中央を南北に走る満州鉄道はアメリカのものである。満州鉄道沿線はもちろん東支鉄道沿線にもアメリカ人入植者は多い。アメリカは租借地と鉄道線路を防衛するために軍隊を置いているが、イギリスとフランスはウラジオストクにはいるが満州に兵を置いていない。
ソ連側も中国側もアメリカ軍の介入を警戒し、双方がアメリカ軍の中立を希望した。ソ連はアメリカが中国を支援することを警戒し、中国はアメリカの救援部隊が戦争終結後、北満州に居残ることを警戒した。
実際のアメリカ軍は微力であり、動くに動けず、情報収集と様子見をするだけだ。
満州の地図
上端の蛇行した青線がアムール川(黒竜江)で、ソ連と中国の国境である。

オレンジが東支鉄道:中国軍が当初は占拠するもののすぐにソ連が奪還する。

赤色が満州鉄道:元はソ連が建設したがアメリカに売却した。(史実とは違う)

7月10日
ソ連は国境になっているアムール川(黒竜江)に砲艦(注4)を遊弋させ、川沿いの中国軍基地を砲撃した。中国側はこれに対抗しようと砲艦を出すが、ことごとく沈められあっけなく壊滅する。
西から侵入したソ連軍は鉄道線路を使いチチハルに至りこれを制圧する。270キロ先のハルピン攻略も時間の問題だ。ソ連は東支鉄道を奪還するだけでなく、その沿線を占領すると見える。もしウラジオストクまで進撃すれば、ウラジオストクをシベリア出兵時から占領している英仏と戦うことになる。

*このお話ではシベリア出兵は撤退するが、英仏がウラジオストク周辺は占領を続け、ソ連は日本海に不凍港を持っていない。



7月10日 アメリカ東部時間午後
アメリカ戦争省
例によって、ホッブス大佐、グリーン少佐、それに石原とさくらがいる。

ホッブス大佐
「いやはや、とんでもないことになった。我々が仕掛ける前にソ連が仕掛けてきたよ。いや、中国人が仕掛けたというべきか。勝算もないのにソ連に戦争を仕掛けるとは、バカとしか言いようがない」
さくら
「同感です。大統領からお話があったのでしょう」
ホッブス大佐
「ああ、満州制圧作戦をどうするのかと質問がきた。今日・明日にも今後の見通しと対策案を策定して報告しなければならない。
大前提だがこの結果、我が国の入植者が土地を失うとか人的被害を受けてはたまらない。既にもう東支鉄道沿線の入植者はハルピンに避難を始めている。ソ連がハルピンに進軍してきたら、汽車で奉天か大連に避難させるしかない。農業の季節だというのに戦争になってしまった。今年の農作物は期待できない」
グリーン少佐
「ソ連が東支鉄道の権利を取り返し、更に周辺地域を支配下に収めるとなると、アメリカの利権ともろにぶつかる」
さくら
「見方によれば、ソ連と中国の抗争で我が国の入植者が危険である。安全と利権確保のために出兵するという大義名分ができたわけでしょう」
グリーン少佐
「私も同じ考えです。一旦制圧されたら取り返すのは難しくなる。我々も満州鉄道沿いの入植地の安全確保に動くことを提案します」
ホッブス大佐
「とはいえ、ソ連軍は戦車も飛行機もある。兵力も満州駐留のアメリカ軍の10倍だ。現有勢力では勝てる見込みはない」
さくら
「ここは張作霖と協力してソ連を追い返すしかありません。そして戦争協力の対価として現在の満州鉄道沿線だけでなく、広い面積を要求したらいいじゃないですか。
中国と戦わずに我々の目的を達成できるならけっこうな話です」
ホッブス大佐
「ソ連は準備万端で戦いを始めた。欧州大戦で戦った8万の歴戦の兵に、飛行機や戦車も多数ある。張作霖軍と共闘しても、我が方の満州駐留軍1万に、満州制圧に予定していた2万を合わせても歯が立たないよ。向こうは陸続きで鉄道があり、ドンドン人も兵器も送れるけど、こちらは海の向こうから送るのに20日もかかる。
それに蒋介石も戦っている軍閥のトップ張作霖も、我が国だけでなく英仏にも手を出すなと言っている」
さくら
「それはまたどうしてでしょう」
ホッブス大佐
「外国に支援を求めると、当然見返りを求められる。なんとしても自力でソ連を追い返さないと外国の利権が上積みされる(注5)
大統領も中国から要請がなければ動きにくいだろう。フランスやイギリスも様子見だ。まあ彼らは満州に利権はないがね。もっともソ連がウラジオストクまで攻め入るならどうなるか。ともかくアメリカが先走っては動きにくい」
石原莞爾
「単にソ連の兵力が圧倒的で、アメリカが用意できる兵力は少ないということでしょうか? それなら勝つ方法を考えればよろしいのか?」
ホッブス大佐
「相手は中国軍と違い手ごわいぞ。勝つ方法があるのか?」
石原莞爾
「戦争目的をはっきりしてくれれば作戦は立てますよ。戦争目的としては、アメリカの入植地の安全確保か、満州全土の制圧か、満州国樹立なのか」
ホッブス大佐
「名目はともかくアメリカ単独で戦いに勝てるか?」
石原莞爾
「勝てる作戦を考えるんです」
さくら
「扶桑国を引きずり込むという手はどうですか?
アメリカの満州攻撃で兵員空輸を依頼したでしょう。あれは外国には秘密です。しかし中国の安全保障という名目で、かつ扶桑国の安全保障にもつながるとなれば堂々と要求できるし、扶桑国も協力せざるを得ないでしょう。しかもその場合、費用は扶桑国持ちにできるでしょう」
グリーン少佐
「おやおや、扶桑国のお姫様がそんなことを言うとは、お父さんや皇帝陛下から叱られるんじゃないか」
ホッブス大佐
「扶桑国がどれほど協力してくるのか? まさか戦闘員までは派遣しないだろう」
さくら
「直接戦闘に参加するなら、戦後はそれ相応の要求されるでしょうね。
地上戦闘員を出さなくても兵員輸送とか弾薬提供はするでしょう。日本海の制海権を確保して、ソ連の日本海側からの上陸や補給も阻止するでしょう」
石原莞爾
「それはアメリカの外交交渉次第だろうね。扶桑国がはっきりとソ連の敵国となるから相当の決断が必要だ」
さくら
「でも扶桑国とソ連の葛藤は時間の問題ですし」
石原莞爾
「それはそうだ。そもそも今回の空輸に扶桑国が協力したのは、ソ連の覇権拡大を恐れているからだ」
ホッブス大佐
「どんな作戦になる?」
石原莞爾
「ご理解されていると思いますが、私もさくらも扶桑国の代表ではなく、何の権限もありません。ただ国際情勢は理解しているし扶桑国の兵器開発については存じています。
そういう扶桑国の兵器を含めた作戦を考え、それを基に扶桑国と交渉したらどうかという提案をします。少しでも協力を得られれば、アメリカ単独より相当有利になるでしょう。
もちろん交渉は貴国が正式なルートで行ってほしい。交渉の成否は責任外です」
ホッブス大佐
「まあそれはそうだろうな。で提案は何段階かになるのだろう」
石原莞爾
「さくらと考えます。そうですね、明後日の朝まで時間をください」
ホッブス大佐
「あさっての朝とはすごい早さだな。期待して待つよ。大統領にはあさっての午後回答すると言っておく」

石原は領事館経由、中野に打ち合わせをしたい旨連絡すると、さくらと作戦案を考える。



7月21日 アメリカ東部時間午前
在米日本領事館会議室
中野と伊丹夫婦、そして石原とさくらである。

中野
「状況が大幅に変わってしまった。今我々が懸念しているのはソ連が満州を日本海まで占拠しないかということだ。ウラジオストクまで確保されたら、我国はソ連の海軍と対峙することになる」
さくら
「ウラジオストクは今も英仏の軍隊がいますよね。いくら英仏軍が少数と言えど、ソ連はそこまで来るかしら」
中野
「あらゆることを想定しておかねばならない」
石原莞爾
「ということは扶桑国は、アメリカの作戦への協力を大幅に増強すると理解してよろしいのですね」
中野
「騙し合いをしてもしょうがない。アメリカの作戦次第だが、我が国の安全に関わることには協力する」
石原莞爾
「今問題はふたつあります。ひとつは蒋介石を始め張作霖が、対ソ連の戦いにアメリカが参戦することを拒否していること。それから満州にいるアメリカ軍は1万少々しかいないこと。満州制圧に準備していた兵力も3万です」
中野
「我々も検討してきたので結論だけ言う。それを基に作戦を考えてくれ。
ひとつ、地上戦闘員は出さない。但し空中偵察だけでなく航空作戦は協力する。しかし使用する飛行機は大型飛行艇に限られる。小型機は中国まで飛べないので、向こうで活動するには地上部隊を出さなくてはならないからな。
ひとつ、無線機の提供はする。我が方から偵察した情報伝達には必要だ。但し機密保持のため用済後は回収する。
ひとつ、砲煩兵器の供与はする。現時点では対戦車砲と対空火器を考えている。そのふたつがあればソ連の戦車と飛行機は無力化できるはずだ。
それでどうかということだ」
石原莞爾
「分かりました。明日午前にホッブス大佐と協議、明日午後ホッブス大佐と大統領が協議することになっています。
作戦は今日さくらと立案します。あさってまたここで話し合いたい。」



7月22日 アメリカ東部時間朝

石原莞爾
「さくらとの検討結果を報告します。戦争目的が明確でなかったので、私たちが仮に定めました。アメリカの現行権益と入植地の安全の確保とします。ソ連軍は既にチチハルにいますので、大至急の実行が必要です。
なお扶桑国とは内々に話し合いをしました。扶桑国は地上戦力の投入はしないということです。ただ我が軍の空輸と武器弾薬の供給そして偵察は協力するということです。
作戦案は可能性のあるひとつに絞りました。基本、張作霖との交渉はナシで権益保全の理由で作戦を開始します」
ホッブス大佐
「元々の権益だけか、当初より大幅トーンダウンだがこの状況では仕方がないか。
それと扶桑が地上軍を出さないというのは、まあこちらにとっても良いかもしれんな。戦後の配分でもめることが少ない」
石原莞爾
「作戦は扶桑国の大分で訓練中の1個連隊を大至急ハルピンとチチハルの中間にある大慶(だいけい)に空輸し防衛線をはります。同時に偽装して持ち込んだ戦車を配備します。
それから大至急、大連に駐留している軍隊のほとんどをハルピンと満州鉄道防衛のために移動します。大連から970キロ、1日半あれば運べるでしょう。
フィリビン駐留軍を船と飛行機で空輸します。飛行機は扶桑国に依頼、直接ハルピンに毎日1個連隊・1週間で7000名を運びます。並行して2万人を船で運びます。船は約1週間で大連着です。
扶桑国は対戦車砲と対空砲を空輸で大慶まで運ぶとのことです。扶桑国の話ではソ連の戦車と飛行機を無力化できると言います。以上の条件ならアメリカ軍はがんばれるでしょう。
以上をもってチチハルより東、以南へのソ連の侵攻を止めます」
ホッブス大佐
「意外性のない作戦だな。フィリビンから兵員を空輸するというが、今大分にいる部隊はひと月以上かけて上陸訓練しているのだぞ」
石原莞爾
「彼らは敵地の河川への着陸を想定しています。こちらは自国兵力が確保している地点へ普通に着水します。ですから訓練はいりません」
ホッブス大佐
「なるほど、その場合 2日内にハルピンに1万1千の兵力か、でも敵は8万だぞ」
石原莞爾
「8万というのは西側からチチハルに侵入したものだけでなく、北側アムール川から侵攻した勢力を含めてです。チチハル方面に限れば2・3万ですよ」
ホッブス大佐
「仮に3万として1万で防げるのか?」
石原莞爾
「戦車と飛行機を無力化して、空中偵察とその情報提供があれば十分と思います。
我が国の偵察機なら、兵隊がどこに何人隠れているのかまで把握しますよ」
ホッブス大佐
「ソ連はT18戦車が200台あるという。我が軍は偽装して持ち込んだT1戦車が20台だけだ」
アメリカT1戦車ソ連T18戦車
アメリカT1戦車ソ連T18戦車

石原莞爾
「200台というのは北部国境も含めてですよ。チチハルにはその一部しかいません。それに扶桑国が対戦車砲を提供するというんです。大丈夫でしょう」
グリーン少佐
「対戦車砲とは何かね?(注6)
石原莞爾
「戦車破壊に特化した直射砲です。口径は60mmくらいです。通常 大砲は口径と同じ厚さの装甲はぶち抜きます。ソ連戦車の装甲は16ミリですから軽いですよ。
それにこちらの方が射程も大きい。T18が37ミリ砲を打つ前に七面鳥撃ちです」
ホッブス大佐
「偵察機の派遣など時間がかかるだろう。いつからできる」
石原莞爾
「アメリカが要請したとき偵察機は発進する。以降、24時間監視する」
グリーン少佐
グリーン少佐が信じられないのか、呆れたように肩をすくめた。

ホッブス大佐
「それが本当なら百人力だ。
話は分かった。ともかく即時それこそ今日・明日に実行が必須だな。
ドクター、真面目な話、作戦の成否はどうかね?」
石原莞爾
「戦争目的が仮定したアメリカの現行権益を確保であれば、必達します。
当初の狙いより規模縮小ですが、欲を出すと現状では兵站が切れます。元々は弾薬に限りある中国軍を想定してましたけど、ソ連軍は後背地からいくらでも補給されますからね」
ホッブス大佐
「昼から大統領と話し合う。夕方また集まってくれ」

うそ800 本日の疑問
いろいろと満州事変とか満州に関する本を読むと、なぜ日本があれほど満州に拘ったのか不思議でならない。寒冷で豊かとはいえない土地に、ものすごい投資を行いあれほどの犠牲を払って太平洋戦争に進む原因になってしまった。
確かに東北冷害とか昭和恐慌、諸外国の保護貿易、黄禍論、輸入規制など日本は困難な状況にあった。しかし日本国内の開発を最優先に行うべきではなかったか。朝鮮や満州に投資したものを東北に投資すれば見返りは間違いなく日本国民にあったはずだ。

子供のとき見た古い福島県の地図に、白河から棚倉まで鉄道線路が書いてあった。オヤジに何でなくなったのかと聞くと、 蒸気機関車 それは白棚線といって1916年に開業したのだが、後に線路や汽車や駅の設備など一式を朝鮮か満州に持っていった。戦争に負けて向こうに置いてきたんだという。
当時私が子供の頃は、道路も未整備でモータリゼーションも進んでおらず、わざわざ満州に線路を持っていくなんてせずに国内の鉄道網を整備していれば良かったのにと思った。
当時は再び線路を引こうという運動もあった。後に国鉄がバスを運行するようになった。東日本大震災後はそのバス路線も大幅に縮小されたと聞く。

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注1
関東とは日本の関東ではない。万里の長城の東の意味で遼東半島や満州などを関東といったらしい。日本軍が租借した遼東半島に駐留した日本軍を関東軍と称した。

注2
軍閥とは
中国で清朝が実質的に崩壊した1900年から1930年にかけて、清国の将軍や地方の馬賊の頭が、勢力を集めその頭目となり、それぞれ自分の領土を支配した。軍閥は陸軍だけでなく、空軍や海軍を持つものもあった。それぞれはある程度独立国のような動きをして相互に戦ったり、通貨発行や外交(鉄道の建設交渉など)までするものもいた。時代が下り蒋介石が軍閥をまとめ中央の支配下に入った軍閥は将軍に任じられるようになる。
張作霖は遼東半島出の満州を含む中国東北地方の大手軍閥で、最終的には蒋介石のトップの将軍になった。

注3
史実では1929年7月に勃発した。奉ソ戦争とか中ソ紛争と呼ばれる。

注4
砲艦(ほうかん)とは沿岸や河川で使われる小型で喫水が浅い軍艦。中国では揚子江や長江だけでなくアムール川のような大河で使われた。現在でもアマゾン川などではコーストガードや救難のために存在する。

注5
1931年に日本が満州事変を起こしたとき、日本も中華民国も戦争ではなく事変であると称したのも、同様である。日本は戦争ではなく日本人入植者の安全確保の行動といい、中国は他国の介入があると面倒になるから偶発的な衝突であるという。

対戦車砲とは、当然戦車が現れてから発生した。第一次大戦でイギリスが世界最初の戦車MARK1を投入し、他国も戦車を投入すると、 世界最初の戦車 従来の大砲と違い直接射撃をする戦車攻撃用大砲として対戦車砲が発生した。
しかしこの頃の戦車の装甲は10ミリとか20ミリ程度で、人が持つ対戦車ライフルとか野砲などで代用し、専門の対戦車砲は第一次大戦後に作られた。それも口径20〜37ミリ程度だった。
その後、第二次大戦までは本格的戦争もなく対戦車砲も大きな進歩はなかった。
第二次大戦では戦車の大型化、装甲の強化などがあり、対戦車砲の口径は50ミリから75ミリ、末期には90ミリクラスとなる。第二次大戦後はあまりにも大型化して運用が難しくなった対戦車砲は廃れ、無反動砲や対戦車ミサイルに代わっていく。


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