*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但し引用文献や書籍名はすべて実在のものです。民明書房からの引用はありません。
ドイツがベネルクスに侵攻したのは9月始めであった。しかしフランス・イギリス軍の大反撃を受けて即座に数十キロ後退した。そして現在国境のドイツ側に陣地を構築し仏英軍の侵攻を防ごうとしている。膠着といってお互い身動きが取れない状態だ。ドイツは何をしても待ち構えている英仏軍に反撃をくらい、英仏はまだ国家として戦争の準備が整っていない。だから防ぐことはできても攻め入ることができない。 毎日、ドイツ軍陣地の上を扶桑国の偵察機が飛んでいる。それも24時間滞空しているのだ。普通、偵察機というものは飛んでいってしまうが、扶桑国の偵察機は一日3交代制で常時上空にいるというのは神経を逆立てる。 高射砲も10,000メートルを飛んでいる偵察機まで砲弾が届かず、せいぜい嫌がらせ程度でしかない。 Bf119は上昇限度10,000と言っているが、 それは与圧キャビン・暖房付きの最終型で、量産初期や中期の型式では6,000くらいが実用限度であった ということは10,000メートルを飛んでいる偵察機を迎え撃つ手段はない。 対策として戦車や輸送車両などを迷彩塗装するくらいしか手がなく、それでは夜間に移動しても偵察機の目を逃れることはできなかった。多分赤外線カメラで見ているのではないかと思われた。 イギリスにある偵察機の基地を攻撃しようとしたが、片道1000キロの長距離を飛べる爆撃機も護衛戦闘機もなくお手上げである。彼らはブリテン島の東側ではなく西側から飛んで来る。いったい航続距離はいかほどなのだろう。 イギリスは満州でアメリカが購入した長距離爆撃機のことを知っていた。それを売ってくれと扶桑国に迫る。中野たちは検討した結果、あまり早くドイツがお手上げになると欧州内に溜まった歪が解放されないと考えた。それで売却できる飛行艇はすべて爆撃機に改造してアメリカに譲渡してしまった。もう国内で輸送機に使っている手放せないものしか残っていないという理由で断った。 次期飛行艇はやっと量産体制に入ったところであるのも事実であった。 史実ではベネルクス侵攻からひと月でフランスを制圧、そしてその一月後イギリス進攻のための露払いとしてイギリス航空戦力をつぶそうとバトルオブブリテンが始まった。 フランスさえ占領していないこの世界では、ドイツがこれからどう動くのわからない。しかしとにかくイギリスの航空戦力を増強していないとどうにもならない。ドイツの新戦術・電撃戦には航空支援が付き物である。だからそれを阻止するにも航空戦力、具体的に言えば戦闘機がなければどうにもならない。 史実ではバトルオブブリテンは1940年7月に始まった。そのとき英空軍は708機の戦闘機があったが、その3分の2は旧式化したハリケーンでドイツ空軍はカモと呼んでいた。 この物語の世界ではイギリスに戦闘機は400機程度しかない。他方ドイツは相当前から戦争に備えて生産が行われており、メッサーシュミット800機が第一線にあった 。 この航空戦力が優勢なときにバトルオブブリテンを開始すれば圧勝だったろうが、あいにくいまだフランスを占領せず、それどころかベネルクスも取れていない。ドイツからロンドンに飛べば、航続距離わずか680キロのBf109では行きはともかく帰り道の半分も飛べない。敵地で空中戦をすればそこで燃料切れする。 ともかくイギリスではドイツが足踏みしている時間で戦闘機生産に励んだ。更にアメリカに対しては戦闘機売却を要請した。
だから春に満州で活躍したP35は既に旧式化していた。アメリカの新鋭戦闘機は陸軍がP-40、海軍はF4Fだった。これもまたすぐには数が揃わない。 ●
10月5日● ● 在アメリカ扶桑国領事館 中野、伊丹夫婦、岩屋、さくら、石原がいる。 | |||||
「欧州は膠着状態だな。これからどういう筋書きになるのだ?」
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「イギリスは戦闘機の増産に励んでいますし、アメリカからP-40を200機購入する話がついたようです。とはいえそれらが揃うのは12月でしょうね。 そしたらバトルオブブリテンを始めてもらいますか」 | |||||
「おいおい、ドイツはまだベネルクス三国を通過してないぞ。それにフランスを占領してもイギリスに攻め込む余力が残っているかどうか……」
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「我国がイギリスに飛行艇爆撃機を売るのを断ったら、アメリカに満州にある爆撃機を売ってくれと話を持っていった。アメリカは売るだろうか。もしあの爆撃機でドイツ国内を爆撃するようになるとドイツはお手上げかもしれない」
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「アメリカは来春ソ連が満州に再侵攻する前に大規模な爆撃をするつもりです。ですから売らないでしょう」
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「いや、冬中あの飛行艇を満州で遊ばせておくことはない。冬季間戦闘がないのがハッキリしているから、その間欧州に持っていって爆撃をするかもしれない」
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「その場合二つ問題があります。ひとつは政治的なことですが、アメリカ軍がドイツ爆撃するということはアメリカが参戦するわけで、当然ソ連とアメリカは欧州でも敵対することになります。 もうひとつは技術的なことで、扶桑国の偵察機が誘導とか護衛戦闘機の管制をしないとき大きな損害が出るのではないですか」 | |||||
「まず最初の問題については、お二人が検討してほしい。 二番目は従来の航法でも問題ないのではないか。ただ私はドイツのことだからすぐにもあの飛行艇を撃墜する方法を編み出すと思う」 | |||||
「あの飛行艇を撃墜するのは時間の問題でしょう。そんな新兵器が現れたらどうしますか?」
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「早期警戒兼戦闘機管制は戦場から少し離れて飛べばいいかなと思います。 爆撃機は対抗措置がありません。夜間の爆撃くらいしか思いつきません。今後は一層高速、高空をとぶしかないでしょう」 | |||||
「さくらだっけか、新兵器が成功するのは一度だけって言ったな。我々は成功した兵器とか戦術にあぐらをかかず、常に新しいものを考えないといかんな」
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「とりあえずは川西の新型飛行艇に期待しましょう。上昇限度も速度も大幅に向上します」
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「敵と同じく、我々も高空、高速の戦闘機の開発も必要だな」
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「よし、今日はこれまでとしよう。みんな考えるんだ。ドイツもイギリスもフランスも消耗させること。ソ連をドイツと組ませることだ。我国に火の粉が降りかかってこないように」
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10月8日● ● 在アメリカ扶桑国領事館 中野、伊丹、岩屋、さくら、石原がいる。 前回会合を持ってから三日たたずに事態が動いた。 | |||||
「イギリスの飛行艇基地が攻撃された。ドイツ軍が輸送船に水上機を積んでアイルランド沖の北大西洋から飛ばして爆撃した」
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「まるで向こうの世界のドーリットル攻撃のようですね | |||||
「被害状況は?」
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「基地に停泊していた飛行艇2機が全損だ。1機は偵察飛行中だったので被害はない」
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「電波探知機の技術が漏れては困りますから破壊したのでしょうね?」
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「ああ、完全に爆破処理したという。 それからもうひとつ、イギリスが送りこんだスパイからの情報だ。ドイツは高空攻撃用の戦闘機を作ったらしい。メッサーシュミットBf109にターボチャージャーを付け、操縦席に与圧と暖房とつけ、機関銃を15ミリに強化した。これは11,000まで上がれるという。もちろんそこまで上昇するのに20分や30分かかるのだろうけど」 | |||||
「それじゃもう高空はサンクチュアリではなくなりましたか」
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「いつかは出現すると思っていました。当面はできることは限られています。電波探知機で敵機を発見したときは近づかない。敵が近づいてきたなら尾部銃座で返り討ちするだけです」
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「返り討ちできるのか?」
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「おじさま、飛行艇は大丈夫かもしれませんが、ドイツの狙いはそこではないでしょう」
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「と言うと?」
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「彼らは偵察機や早期警戒機に見張られていて移動とか作戦が分かってしまうのが問題なのです。ですから短期間でも作戦行動が見られなければ良いと考えているに違いありません」
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「なるほど、こちらが偵察機を使えないうちに、ベネルクス三国を通過してフランスに侵攻するつもりか」
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「イギリスのレーダーが偵察機の代わりにならないかしら。イギリスのレーダーはどれくらいの距離まで見えるのかしら?」
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「正確なところは分からないが、数十キロから100キロというところだろう。もちろん地上に設置されているから水平線の向こうは見えない」
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「それでは大陸上空を飛んでいる飛行機は分かりませんね」
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「そのためには早期警戒機のように空高く飛ばないと。向こうの世界のバトルオブブリテンではイギリス海峡を監視するのがせいぜいだったから」
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「では我国の偵察機が飛べなければドイツ軍のフランス侵攻は可能になりますね」
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「確かに……どうしたものか」
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「向こうが頭を絞ったなら、我々も頭を絞って対抗しなければならない。 イギリスとフランスが通常の偵察機を飛ばすのがまずあるだろう。我々におんぶにだっこだから一旦事が起きるとお手上げになる」 | |||||
「考え方ですが……私たちは元々ある程度、ドイツもイギリスも消耗することを願っていた。簡単に決着がついては困るわけです。 いざドイツが奇襲をかけたら我が国の偵察機の働きで、あっという間にドイツ軍を押し返した。前回の意見交換では、それが行き過ぎだということでした。しかしこのたび期せずしてドイツ軍が我が国の偵察機を破壊したから釣り合いがドイツ側が有利に振れた。 じゃあ、願ったりかなったりじゃないですか。なにも困ることはない」 | |||||
「なるほど……言われてみればその通りだ。我々にとっても我が国の兵器の強さ弱さが分かったわけで、悪いことばかりではない」
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「となると我々はどうすればいいのか?」
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「なにもしないでいいのです。イギリスには偵察機の補充が困難だと言っておけばいい。 しかしドイツもこの猶予期間はせいぜい10日か半月と知っているでしょう。となると再侵攻は今日・明日にも実行するかもしれませんね」 | |||||
「その結果、日本の世界と同じ流れになるのか?」
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「いえ、既に英仏は臨戦態勢でしょうから、向こうの世界のように簡単にはフランスに侵入できないと思います。アルデンヌのルートも前回の侵入でバレちゃってますし」
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「奇策としてはドイツがベネルクス三国を止め、マジノ線を真正面から攻め込むかもしれません」
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「マジノ線の兵員は動かしていないと聞く。それならベネルクス三国からの侵攻よりも激しい攻防戦になる。 それにドイツ軍は簡単にベネルクス三国の国境からフランス国境に移動できるものだろうか?」 | |||||
「やはり偵察が必要だ。衛星写真がとれませんか。人工衛星は1周ごとに少しずつずれていくわけだから、昼夜問わなければ上空を通るわけでしょう」
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「そううまくはいかないのです。周回ごとに経度が25度ずれていきますが、緯度が50度でも周回ごとに900キロもずれるのです。網の目が900キロもあれば偵察になりません」
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「現行の偵察機は最大高度11,000と言ったな? スパイの言うようにドイツの戦闘機はそこまで上がって来れるのか?」
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「何とも言えませんね。話半分というところかもしれません。しかし、万が一撃墜されると電子機器の秘密が漏れてしまいます。それは避けたいですね」
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「でも電波探知機で敵戦闘機が飛んでないかどうかを見て、いない時なら高空偵察は可能でしょう。高度1万まで上昇するのに20分とすればその間に100キロ以上逃げられる。また相手が高度1万にいたとすれば相手の燃料切れを待って飛んでいけばいいわけでしょう」
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「岩屋さん、さくらの案で行こう。強行偵察はするなと言っておくこと。 よし、本日はこれまでにしよう。進展があったらまた集まろう」 | |||||
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10月 9日午後● ● アメリカ戦争省 石原とさくらが訪問する。 | |||||
「さくら、聞いたぞ。扶桑国の偵察機が撃破されたそうだな」
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「そうなのよ。イギリスに3機派遣していたのですが、ドイツ軍の爆撃で2機が大破というか影も形もなくなったそうです」
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「それでもまだ1機あるなら一日24時間監視は無理でも短時間だけでも偵察できるじゃないか」
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「おじさま、それもあまり自由にはできなくなったのよ。ドイツは急遽、メッサーシュミットを何機か高高度用に改造して要撃体制をとったそうです」
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「なるほど、誰でも考えることだが、すぐにできたドイツはソ連より技術が上か。ということは来春には満州でも爆撃は安全ではなくなるということか」
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「あら、ドイツがソ連にその戦闘機を売るかどうかは分からないでしょう。それにソ連が半年でそういう戦闘機を作れるとは思えません。 忘れては困りますが、偵察機は敵戦闘機の接近を知ることができるから簡単には攻撃されませんよ。ただ自由に爆撃はできなくなるかもしれません」 | |||||
「なるほど、そう言われるとそうだね」
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「アメリカはP-40を200機売るそうですね。ドイツ軍が攻めてくる前に間に合えばいいけど」
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「今アメリカは中立国だが、そのうちドイツが無制限潜水艦戦をするようになり、戦争に巻き込まれるのだろうなあ〜」
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「欧州大戦の時と同じ流れですか」
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「そんな気がするよ。知ってるかもしれないが、ソ連がポーランド国境にだいぶ軍隊を集めている。ポーランド侵攻は間近だろう」
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「ポーランドに攻め入るということは、満州はとりあえず棚上げするのかしら?」
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「いや、冬の間にポーランドを攻め取り、春になったら満州ということもある」
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「イギリスが貴国に爆撃機を貸してほしいと言って来たとか?」
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「ああ、だが満州からイギリスまで輸送するのも大変だ。ソ連経由はないし、インド中東というルートはドイツ軍に攻撃される。だから太平洋を島伝いにアメリカとイギリスに飛ぶしかない。調べたんだ、実に15,000(24,000km)マイルだぜ。我国としては実行不可能と回答した」
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「ソ連とドイツの関係はどうお考えですか?」
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「緒戦でドイツは痛めつけられたようだが、このままでは終わるまい。次の会戦でドイツが勝てばソ連はドイツに付くだろうし、このままドイツが負け続けたら英仏につくだろう」
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「お利口さんの考えることですね。 いずれにしろここ1週間か2週間で道筋が決まるでしょう」 | |||||
「その期間内にドイツが再攻撃するというわけか?」
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「そう考えてます」
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「君たちが言うなら根拠があるのだろう。そいじゃ2週間待ってから考えるとしようか」
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「でもアメリカが望む未来はあるでしょう。それを実現しようとはしないのですか?」
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「さくら、今晩空いてないか?」
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「あら、ディナーにでも誘っていただけるの? それともオペラ?」
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「ディナーだよ、良いレストランを予約している。ドレスアップして来てくれ。ワインを飲みながらアメリカが望む未来を語りあおうか」
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「私はどうなのですか?」
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「ちょっとさくらに会わせたい人がいるんだ。今回は遠慮してくれ」
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「まさかさくらを誘拐するとか……」
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「さくらはVIPだぜ、国際問題になるようなことはしないよ。それにいつも護衛が付いているのを忘れたのか」
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注1 | ||
注2 |
「空軍大戦略」リチャード・コリヤー、早川書房、1969 | |
注3 |
ドーリットル空襲とは1942年4月18日太平洋戦争緒戦において負けてばかりのアメリカ軍が士気高揚を図って行った東京空襲である。航空母艦2隻に当時としては大型のB25爆撃機16機を積み、東京を空襲後中国まで飛んだ。日本に与えたショックは極めて大きかった。 ところでドーリットルがドリトル先生、ハップバーンとヘボン式ローマ字、アンダーソンがアンデルセン童話、シャルルがカール・ダニエルとかチャールズ皇太子、ギョエテとは俺のことかとゲーテ言い、日本語化するとき音が多様に書かれるのでわけわかめ。 ところで毛沢東とか習近平を日本語で読むのはなぜなんだろう? | |
注4 |
高速で移動している目標を射撃するとき、弾丸が到達するまでの時間に相手が移動しているところを狙わなければならない。これを見越し角という。第二次大戦末期にアメリカが見越し角を補正する自動照準器を作ったが、それ以外の国はみな戦闘機の操縦士が目算で狙って撃った。 | |
注5 |
戦闘機に搭載されている機関銃/機関砲の射程は700mとか1000mとかいろいろ書かれている。しかしベトナムで戦ったパイロットの話では1000フィート(300m)以内に近づかないと命中しても効果がないという。M61のバルカン砲でこれだから、発射速度(毎分当たり発射弾数)が遅い第二次大戦の機関銃では有効な効果を出すにはもっと近くなければだめなはず。 |