うそ800始末8.ISO事務局

20.02.13
うそ800始末とは

ISO認証している会社の多くには、「ISO事務局」というものが存在するそうだ。「そうだ」というのは伝聞を表す言葉である。伝聞なのは、私はISO事務局という仕事をしたことがないから。
そりゃ初めての仕事ならプロジェクトを組んで「ガンバロー、ISO認証」ということもあるだろう。しかし不思議なことにISO認証するための半年とか10か月だけでなく、認証後何年経過してもISO事務局というお仕事あるいは部署があるのだ。「10年目のISO事務局」というのも見かけたことがある。
お茶 いったいISO事務局というのはどんな仕事をしているのだろうか? 私は非常に興味がある。私は企業においてISO認証に20年も関わってきたが、ISO事務局というのがなかったし、なくても困らなかったので、ISO事務局というものがどんなお仕事をしているのかわからない。まさかお茶をしばくのがお仕事とか……

昔大流行した○○フォーラムではISO事務局を名乗る方が大勢いた。最近でもアイソス誌の特集などでは、○○社ISO事務局なんて肩書の方がいるところを見ると、絶滅危惧どころかおおいに繁栄しているようでご同慶の至りである。ISO第三者認証制度がなくなってもISO事務局は生き残るのかもしれない。

ISO事務局の方々が書いているのを見ていると、ISO事務局というのは非常に多様な仕事をしていて、多忙極まるらしい。
毎年度初めには種々計画を立て、内部監査を計画して実行し、定期的に計画の進捗をフォローし、順調でない部門に対しては指導したり叱責したりせねばならない。更には定期的に経営トップに計画の進捗を報告し、審査前にはなんと対応をご説明(指導)したりもするという。
それどころかISO審査前には、審査員にどのような切り口で審査してほしいとか、こんな指摘を出してほしいとか出さないでほしいとか暗躍するという。
ISO審査の企画、脚本、監督、演出、主演、脇役、諸々である。笑っちゃうよね 😄
私は面倒くさいのは嫌いだから、とてもISO事務局は務まらない。

しかしそんなこと、わざわざISO事務局という部署が必要とは思えない。

こう考えるとISO事務局がしている仕事というのは、本来職務分掌で決まっている部門がすべき仕事であって、ISO事務局が関わることではない。あるいはそもそもする必要のないことではないのか?
ISO事務局がしなければならない仕事がないなら、ISO事務局とは無用ではないのでしょうか?

話は変わる。
一般消費者を顧客とするBtoCなら別だが、BtoBでは品質保証協定が必要だったのは昔からである。
検査体制、種々試験、保管、輸送などが品質保証の要求範囲になるのは通常のことだ。それらの要求事項を社内に展開し、実施させ、確実に行っているかを確認し、それを顧客に説明できるようにするのが品質保証のお仕事である。

ISO9001が登場したとき、品質保証屋にとってそれは品質保証要求が一つ増えたという認識でしかない。もちろんISO9001の初版が品質保証の国際規格を自称したように、その遠大な目標はすべての品質保証要求事項を標準化・一本化しようということだったわけだが、現実には統合できたのではなく、単に一つ追加になったのが事実。
ともかくそういうものが現れたとき、これで会社を良くしようとか、これは経営の規格だと思うはずがない。商売のための条件と認識するだけだ。

そういう考え方を、品質をないがしろにするとか、顧客満足が最上位と知らない愚か者などと言ってほしくない。
品質なんて会社の重要なもののひとつ、ワンノブゼムに過ぎない。大事じゃないとは言わないよ、いくつも大事なものがある中のひとつなんだよ、
わかりますか? そもそも会社とは何かと考えたら、社会に貢献するために存在する。それは提供する製品・サービスによってはもちろんだが、雇用や納税を通じての貢献もあるし、提供する製品やサービスの効用だけでなく、それを製造/提供することによる環境負荷や社会的影響も無視できるわけではない。
総合的に考えれば、品質第一と無邪気に言えるものではない。もっともISO14001では環境第一という。それに矛盾を感じない鈍感さはなんだ?

ISO9001だけではない。ISO14001だって同じことだ。過去より公害防止とか遵法に勤めていたなら、ISO認証にあたって、過去を振り返り不足がないか見直す程度だろう。
ISO14001を読んで「これはすばらしい! これを基に企業を経営しよう」なんて思うわけがない。もしそんな人がいたら、その会社はおかしいことは間違いない。
だいぶ前だが「日本が世界標準に負け続ける理由(新井 暢)」という冊子を読んだことがある。驚いた! この人はISO9001を読んで感動して、就業規則までISO規格に合わせたそうだ。
ISO9001に就業規則と関わることがあるのかどうか? 考えても教育訓練と査定の関係とかくらいしか思い浮かばない。ぜひともISO9001で資金繰りをしてほしい。
ともかくそういう発想は異常である。そう考えた人はまっとうな経営者ではない。

ISO事務局の存在が理解できないのと同じく、ISO事務局の方々が語ることは理解できないことのオンパレードである。
😂
ISO事務局と名乗るある方は、会社のシステムを作ったり、会社の活動を指揮したり、ものすごい活躍をしているようだ。中には「私が会社を動かしている」と豪語する者もいた。
そんな話を聞いても私は感心などするわけがない。それが冗談でなければ、自意識過剰か誇大妄想だと思う。そのお方は会社の資金繰りとか、社運を賭けた契約とか、採用や査定も仕切っているのだろう。もちろん株主総会も取締役の選出も、陰で操っているに違いない。
大言壮語もいいかげんにしてほしい 😆

会社の仕組みを作ったとはどういう意味なのだろう?
従来の取締役会の形態から委員会設置会社にしたとか、社外取締役を決めたとか、育休制度とかダイバーシティ化を図ったとかいうことなのだろうか?
まさかISO事務局を作ったということじゃないよね?
しかしそんなことの決裁権限があるなら、ISO事務局というのは社長室とか取締役会なのだろうか?

会社を良くする……
そりゃ組織で働く者として悪い会社より良い会社のほうがいいです。でも良い会社ってどんなことを言うのですかね?
私の考える良い会社ですか? まず賃金が高いのがいいですね、退職金も企業年金も、毎年特別ボーナスがでるのもいい。
福利厚生も充実していて、毎年社員旅行で海外とかいいねえ〜。育休ももちろんだ。
職場環境も大事です、オフィスは一人当たり10m2が標準らしいが、15m2もあると快適です。
人間関係も大事だ。モラハラもセクハラもないほうがいいですね。労働時間は短いほうがいいし、当然フレックスで在宅勤務もOKで……ISO事務局は就業規則の改定とかされたのでしょうか?
おっと倒産されてはたまらない。だから売上も利益もすばらしく、棚残なんて考えることもなく、特許収入だけでやっていけるとか……ISO事務局の活躍の場はきりも限りもありません。

ええとISO事務局は、会社を良くするためにどんなことをしたのでしょうか?
ISO事務局と名乗る人たちが語ることはどうも、会社の仕組みを作ったり、会社を良くするといえるほどのことをしていないと思うのは私だけだろうか?
ISO事務局とは、ラインで使えない人間が集い、自意識過剰、誇大妄想を語る場所なのですか?

蛇足であるが……
ISOのための活動を改善活動と誤解しているISO事務局もあるようだ。改善活動は日本固有(でもないが)の活動であった。
省エネをしよう、廃棄物の分別をしようという考えも過去からあった。それは費用改善/無駄排除であったり、危険防止であったり、整理整頓の一環であったりした。
だがそれをISOと結びつけたのは、人を動かすことができなかったからではないのだろうか。
分別をしないと危険だから種類ごとに分けて、それなりに保管しそれなりの業者に渡す必要があるのだと説明し実施すれば済むことだ。だがそれができない人が「ISOが要求しているから」という理由で実施させたのではないのか?
お手上げ 実は私はそういう事例を多々見ている。

ひょっとしてだが……
世のISO事務局は己の仕事が偉大であり価値があると言いたい、あるいは自分自身を説得したいから、そんな誇大妄想を語っているのだろうか?

優秀な人は己の仕事をなくすために働きます。己の仕事が重要だ、人を増やそうなんて考える人はダメな人です。
ISO事務局が優秀であれば、1年以内にISO事務局を廃止するでしょう。できない人は優秀じゃありません。これ間違いない事実です。私はISO事務局ですと語る人は、私は無能ですと語っているのです。


うそ800 本日の要旨
この「うそ800始末」では、ISO認証が如何にダメだったかということを書いている。しかしISO第三者認証が元々ダメな星の下に生まれたのではない。本来はメシアになるべきものを、間違った解釈、間違った扱い、それを利用して己の利益を図った者ども、そういう阻害要因によって成功しなかったのだと私は思っている。
今回もISO事務局を茶化しているのではない。ISO事務局の存在を糾弾しているのだ。
およそ会社の付加価値に寄与しない、自己満足、誇大妄想のISO事務局なるものは猛反省して、まっとうな仕事をしろと語ったつもりである。

まっとうな仕事とは、会社に必須な本質的なお仕事を言います。


うそ800 本日の反省
今見返したら、なんと12年も前に同じことを語っていた。
ISO事務局講座 レッスン18 事務局のお仕事
わたしこそ「10年目のISO事務局批判」とか批判されてしまいそうだ。





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