内部監査の遍歴その4

20.11.05

前回は力量を修三しよう(熱く語ろう)としたものの、コミュニケーションだけで終わってしまった。いや、コミュニケーションも語り足りないのだが…
ともかく、今回は力量を考えたい。とはいえ今回も入り口だけで終わる予感がする。まあそのときは「その4(今回)」に続いて「その5」を書く。よく言うでしょう、四の五のって、

審査員/監査員に必要な力量は、ISO19011に定めてある。定めてあるというのも変だ。税金や制限速度と違い、必要な力量を定めたところで、それで間に合うと決まるわけではない。
法律で決められるのは必要条件であって十分条件ではない。十分かどうかは、実際に審査/監査をさせて、審査/監査ができるかどうかがすべてだ。

同じことようにものに、かって内部監査員検定なんてのがあった。あの内部監査員検定合格者が立派な監査ができるかどうかが、資格の価値を示すものだ。
資格があるなら力量があるというなら分かるが、力量がある人が資格を持っているなら資格は信頼できるとなると、主客転倒そのものだね!
おっ、ちょっと待ってくれ、となるとISO認証の価値は、認証企業が認証していない企業に差別化できるかどうかと同じだ。すなわちISO9001認証企業は認証していない企業より顧客満足が高く、ISO14001認証企業は遵法と汚染の予防において差別化できるかどうか、これは果たして……

ISO19011の2018年版では力量の概念図がなくなってしまったが、以前は下図が記載してあった。

審査員の力量

これを見れば、確かに必要十分な力量を包括的に示していると思える。
まずベースとして個人的特質があり、その上に教育、業務経験、監査経験があり、更に専門分野の知識・技能が重なるということだ。
実を言って2018年版でも、本文では同じことを書いている。旧版の時代はQMSとEMSだけだからこの図が書けたけど、今はMS規格が乱立したからこの図を廃止したのだろうか? ならば、上の「品質」や「環境」の文字を「種々MS規格」とでもすればよいと思うが、何か事情があるのだろう。


審査員/監査員に必要な力量はなにかと理論的に考えていく方法もあるが、現状の問題から不足していることを考えるのもある。ということで私が経験した種々のトラブルを上記分類に合わせてみると……

区分具体例
専門分野の知識審査する規格を知らない
関係法令を知らない
その業種の常識を知らない
審査の力量適切な質問ができない(応用がきかない)
項番順、それも規格の文言通りの質問しかできない
審査の生産性が悪い(時間当たり調査量)
証拠と不適合の違いを分からない
会話を通してコミュニケーションをとるのが不得手
相手が理解できなくても専門語を使う。
個人的特質社会人の常識を知らない
企業の仕組み、約束事を知らない
上から目線の態度
傲慢である・間違えてもそれを認めない(傲慢不遜)
己が全知全能と思っている
思い込みが激しい
人の話を聞かない
相手の事情を理解しようとしない

穏やかな性格であった、知識が深い、話をよく聞いてくれた、規格を分かりやすく説明してくれた、一を聞いて十を知る人であったという審査員に会ったのは、私の15年間の経験で数回しかない。いかに審査員というのは難しい仕事なのか……なんて思うわけはない。
そうでない審査員が多かったということは、ISO19011を満たしていないわけだ。

ともかく問題は、ISO19011にある三つの観点を満たせば良い審査員足りえるように思える。それはそんなに難しいとは思えない。
だって営業だって、宅配便の配達だって、経理だってその業務における力量として専門分野の知識・技能は必要だし、業界の知識も欲しい、そして大前提として社会人としての常識、コミュニケーション能力、協調性など仕事する上での必要条件は、審査員と変わらない。
特段ISO審査員が難しい仕事であるはずがない。

ではなぜそういった基本的な要件を満たさないのか? 個々にどうあるべきかを考えてみたい。


うそ800 本日の重要なこと
内部監査というと、ISO規格ガー、チェックリストガーとおかしな発想をしてしまう。
考えてごらん、ISO審査って会社の仕組みがISOMS規格に見合っているかどうかを調べること。その会社の仕組みは会社の規則(イクイバレント)に文書化されている。そして認証機関はその会社の仕組みの概要を記述した○○マニュアルを審査してOKになってから審査に来る。
つまり会社の仕組みはISO規格に見合っている。
それなら内部監査では、会社の規則が正しく実行されているかを確認すればいいわけだ。
そのためにはどんな力量が必要なのか?
まず、会社の規則を知っていることがある。でも内部監査をすることになったあなたは最低数年はその会社で働いているでしょう。ならば会社の規則くらい読んでいるはず。
そして監査を行う際に社会人としての話の進め方、敬語の使い方、感情的にならないこと、それくらいはできますよね?
じゃあ心配することなどありません。あなたは立派な内部監査ができます。自信をもって……いやいや、内部監査なんて覚悟して臨むほどのことはありません。お気楽に、




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