地球温暖化の謎

21.04.12

地球温暖化の謎といっても、なぜ地球温暖化するのかとか、地球温暖化の真偽ではない。なぜ地球温暖化ばかりがもてはやされるのかということだ。

SDGsという国際的な活動がある。SDGsとはSustainable Development Goalsの頭文字をで、最後のsは複数形のsだ。日本では「持続可能な開発目標」と訳されている。
持続可能な開発目標とは、貧困や差別など現在の世界にある問題や不合理を解消して、人間が安心して平和で豊かに暮らせるようにするための活動をいう。17色の色輪であるのは、ゴールが17あるからで、内訳は次のようになっている。

1貧困をなくそう
2飢餓をゼロに
3すべての人に健康と福祉を
SDGs
SDGsマーク
4質の高い教育をみんなに
5ジェンダー平等を実現しよう
6安全な水とトイレを世界中に
7エネルギーをみんなにそしてクリーンに
8働きがいも経済成長も
9産業と技術革新の基盤を作ろう
10人や国の不平等をなくそう
11住み続けられるまちづくりを
12作る責任使う責任
13気候変動に具体的な対策を
14海の豊かさを守ろう
15陸の豊かさも守ろう
16平和と公正をすべての人に
17パートナーシップで目標を達成しよう国連開発計画より

目標はいずれも、常識的というか大多数に支持されるようなことではある。個人的にはキリスト教的だと思うが、いちゃもん付けるほどではない。
まあそういうことを国連主導で運動しているわけだ。

ところで今世界中の政府が全力で騒いでいるのは、この13番目の気候変動だけだ。もっと具体的に言えばCO2を減らせ、出すなということだ。

話が混み入る前に整理しておく。


以下、そんな状況を踏まえて話を進める。
上記の論理の連鎖を正しいとしたとき、私が謎、不思議と思っていることがいくつもある。

最初の謎は、国連が主導しているSDGsのいくつもある項目の中で、なぜ気候変動が最重要、最優先なのかということだ。

考え中
同じ国連が、しかも各国国家首脳が同一であるにも関わらず、SDGsと地球温暖化対策が共存しているのは変ではないか?
というのはSDGsが17も目標を掲げているのに、各国の政府はそのひとつNo.13にリソースすべてを投入している。
私には13番目の気候変動が、他の項目より重要だとは思えない。

もちろん反論があるかもしれない。
例えば、貧困でも教育がなくても人間は生きていけるけど、地球温暖化になれば誰も生きていけないというかもしれないという理屈があるかもしれない。
だがそれはどうだろうか?

IPCC第5次報告書によれば、手を打たなかった場合は、21世紀末に20世紀末より2.6〜4.8℃気温が上昇するとある(注1)
過去、地球の気温は上がったり下がったりを繰り替えしてきた。もちろん恐竜時代とかそれ以前までさかのぼることはない。人類が現れてからも何度も氷河期、間氷期を繰り返してきた。
わずか7000年前の縄文時代の気温は今より2〜3℃高く、海水面も今より5mくらい高かったといわれる。千葉県は貝塚が日本で一番多い県だそうだが、我が家から散歩する範囲でも貝塚がつく地名が 10 6か所ある。今は海抜10メートルくらいあるが、当時は海岸近くで海抜数メートルだったに違いない。

注:ただし今より気温が2〜3℃上がると、海面が5m上昇するわけではない。例えばヨーロッパでは当時より2〜3mしか海面が上昇していない。それには日本列島特有の事情がある。日本列島が載っているユーラシアプレートが押し寄せてくる太平洋プレートの上に乗り上げているために、当時より陸地が隆起しているからという。
縄文人 それが本当かどうか? まして数千年でヨーロッパと日本の差である2m以上も隆起するのか私にはわからない。まっ、そういう説もある。
ともかく縄文時代は、東京はもちろん千葉県、埼玉県の大半が水没していたのは事実だが、それが温暖化による海面上昇とはイコールではない(注2)
ということはこれから気温が縄文時代と同じくらい上昇しても、日本の海岸線が縄文時代のときほど陸側に侵入することはないということだ。

ともかく今より数度気温が高かった縄文時代に、古代日本人が死に絶えたわけではなかった。気温が高くても決して人間が暮らせないとか、植物が枯死してしまうことはなかった。そして当時の花粉などから今と植生が大きく異なっていないことも分かっている。

言いたいことは、SDGsの他の項目よりも「No.13気候変動」が喫緊で重大であるということはなさそうだ。
喫緊というなら新型コロナウイルス流行対策であろうし、フランスでイエローベスト運動の「1世紀先の地球温暖化より今月末の支払いが問題だ」に表される経済の問題もある。前者はSDGsの「No.3すべての人に健康と福祉を」であるし、後者は「No.8働きがいも経済成長も」にあたる。

日本でもすごいベストセラーになった「ファクトフルネス」という本がある。この本は行動する前に、現実をよく見ろと語っている。そして現実社会の多くの問題、教育や医療を受けられない人々、水や薪を得るために遠くまで行かなければならない人たちのことを書いている。
しかし地球温暖化については1ページも費やしていない。
この本は2018年にスウェーデンで発行されている。そのときはIPCC第5次報告書が出た後である。ということは著者ロスリングは、地球温暖化を水や薪より重要な問題ではないと考えていたわけだ。
フランスのイエローベスト運動と同じく「1世紀先の地球温暖化より、今飲む水、夕餉を作る薪が重要だ」と考えたに違いない。


次の謎は根本的なことだ。
半世紀も前にローマクラブが依頼して、メドウズ夫婦をはじめとするメンバーが研究した「成長の限界」という報告書があった。
資源の枯渇、エネルギーの枯渇、環境悪化など、これでもか、これでもかと成長の限界どころか、文明が終焉する要因をとりあげて説明している。
その結論は<文明は永続できない>ということだ。その結論には誰も反論できないだろう。なぜならその論理がもっともだから。
私も文明には寿命というか時間的限界があることに同意する。

いくつも持続可能を阻害する要因があるのに、その中の気候変動だけを取り上げて「大変だー」という意味が分からない。
資源枯渇だって大変なのだ。化石燃料も金属資源もリンなどの肥料の原料も、採掘し尽くせばなくなってしまう。

もちろんリンは元素だから消滅はしないが、自然界に拡散してしまえばないのと同じだ。
例えば海水中に溶けている金は50億トン(人間が今までに採掘した金は16万トン)というけど、1トンの海水に1mgと薄く分布しているので取り出すことができない。それはないのと同じだ。ちなみに鉱石の場合採算が取れるには1トンあたり2gといわれる。微量ではあるがそれでも海水に溶けている金のの2000倍の濃度だ。

金属はリサイクルできるというかもしれないが、一旦合金としたものはバージンとは違い成分調整などが難しく求める規格通りの配合には作れない。

太陽光発電は、その設備の生産・維持に、太陽光発電のエネルギーだけで対応できるのだろうか?(反語です)
人口増加がほぼ現状で停止しようとも、70億もの人間の暮らしを永続的に支えることができるのか?(疑問です)
もちろん資源もエネルギーも21世紀末には終わるわけではない。だが数世紀以内には間違いなく終末を迎えるだろう。

そのほか、環境汚染、廃棄物問題、砂漠化など多岐にわたっている。
なぜ地球温暖化だけなのでしょうか

今2050年までにCO2をゼロにすると掛け声がかかっている。仮にそれが実現したとしても地球温暖化論者の語るには、なにもしなければ21世紀末の気温上昇が2℃であるところが1.5℃になる程度だという(注3)
その理屈はおかしくない。何事にも慣性があるし、今からCO2ゼロを実現しても産業革命以前より高くなったCO2濃度は短期間では戻らない。

地球温暖化を信じているなら、成長の限界も信じているだろう。ならば21世紀末の危機だけを考えるのでなく、なぜ2世紀後にやってくるより大きな危機を考えないのだろう?
ものすごいリソースを投入して大気の気温上昇を21世紀末に1.5℃に抑える(もちろん22世紀末には2℃くらい上昇になる)ことより、とりあえずCO2に手を打たず22世紀末に3℃上がるのを覚悟して、SDGsの17項目を総合的に考え妥当なところに着地させるべきではないか?

気温上昇を止めたら、フランスのトラック運転手だけでなく経済が崩壊して人間全部が餓死したら意味がない。

成長の限界が全体図とするなら、SDGsは全体の包括的な目標であり、地球温暖化対策はその一項目の対策なのだ。
洪水を防ごうと堤防の一か所だけを補強しても意味がない。弱いところがないようにしなければならない。

ちなみに
昔、勤めていた会社で、ある日、部長が事務所のみんなに集まれという。なんだなんだと部長席の周りに3・40人集まった。
スクーター 部長は設計者を集めて一説ぶった。部長の奥さんが乗っていたスクーターが壊れたという。彼は壊れたことが不満だったのではない。
「ホンダはすべての部品の寿命が一斉に来る。お前たちもそういう設計をしろ」と語った。
物に評価項目がいくつもあるとき、すべてがクリアする必要はあるが、それ以上であることは無駄でしかない。
地球温暖化ばかり騒いでいる人を見ると、その話を思い出す。

ちなみにその部長は、定年退職後に大学院に入りドクターになった。その歳になって博士になっても……なんて言ってはいけない。人生は死ぬまでチャレンジだ。
私はその姿に触発されて、定年後に大学院に行った。残念ながら博士コースに来いと言ってくれた先生はおらず、修士で終わったけどドクター

地球温暖化対策が最重要だというなら、SDGsの他の項目より重要で優先する説明を示すべきだ。そして国連開発計画(UNDP)のテーマを17個から「No.13気候変動に具体的な対策を」ひとつに修正すべきだ。


うそ800 本日の謎

どう考えても現代文明は永久に成長できるとは思えない。それを前提としてどうするかを考えるのが人間だろう。
地球温暖化を心配している人は、政治家とか官僚とか研究者とか、私より頭がいい人ばかりのはずだ。成長の限界を知らないはずはない。
にもかかわらず、地球温暖化だけ対策しようというのはどうしてなのか?
それが本日の謎である。

私の想像である。頭の良い人たちはこう考えているのではないだろうか?
この世は銭がすべて
この世は銭がすべて
温暖化もその一つ
どのみち成長の限界はあり、数世紀後に今の文明はいきづまる。だがそれは自分たちが生きているうちにはこない。だから長期的なことは放っておいて、自分たちの金儲けのためには温暖化対策だけさせることだと考えたのではないか?
2世紀あるいは3世紀後に文明を維持できなくなり問題が具現化するときは、地球温暖化を叫んだ自分も子供も孫も死んでいるだろう。それより遠い子孫のことは知らないよという論理ではないのか?




注1
「IPCC第5次評価報告書の概要」、環境省、2014、p.38

注2
縄文時代の海岸線を示す地図はネットに多数ある。一例を示す。
縄文海進と貝塚分布
細かく状況を知りたいなら、floodmapで知りたい場所にして海面上昇の数字を選べばよい。

注3




ななし様からお便りを頂きました(2021.03.12)
散歩する範囲に貝塚が10ヵ所あると書いていますが、本当にそれほど沢山ありますか?

ななし様、お便りありがとうございます。
お便りをいただきまして、市の地図を広げ私の住まいを中心に半径1キロ以内の名前がついている貝塚を数えました。6か所でした。10個数えるには半径2.2キロまで広げないとなりませんでした。
いい加減なことを書いてごめんなさい。


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