前回は習い事つまりサービスの契約時に、提供するサービスの仕様や達成レベルなどが、不明確なことが問題であると述べた。
スイミングスクールを例にして説明したが、別にスイミングスクールが悪いということではなく習い事一般にいえることではなかろうか。英会話教室や料理教室その他も同じではないかと思う。
勉強会のようなものは、主催者が勉強会で講師を招聘するわけで、講演の内容が希望と異なれば、主催者と演者のコミュニケーション不足だろう。
というわけで今回はどうすれば良いかを考える。何をもって良いとするのかは簡単明瞭である。顧客が満足することだ。具体的に言えば、顧客が3か月でTOEICを100点アップする要求なら、それを満たすことだ。
注:顧客とは製品やサービスを受け取る人を言う。仕様を決めたりお金を出す人ではない。
ディズニーランドに三代そろって行くとき、祖父祖母はお金を出す人、父母は仕様の決定、子供が顧客ということになるのかな? 場合によっては父母が顧客で子供は建前ということも。
本日は前回の続きというか増補である。
前回は習い事というサービス提供時の問題をいくつか取り上げたが、今回はそれを防ぐために……前向きに言えば、顧客満足を向上させるために行うべきことを取り上げる。
そんなの無理だよと言ってはいけない。サービス業とは顧客が期待する役務を提供するのがレーゾンデートルなのだ。3か月でTOEICの点数を100点アップするという期待に対しては、毎月何点アップさせるか、アップしたか分かる仕組みがないと受講者は安心できない。
もちろん上達はリニアでなく例えば階段状になることもある。だから最初の月は20点、2か月後50点、3か月後30点アップということもあるだろう。もちろんそのときは1か月後に20点アップする計画を見せ、実際に1か月後に20点アップしなければ教える側の責任を果たさない。
要するに顧客に要求を満たすことを説明し納得を得ることだ。
おっと、大事なことがある。計画は顧客の期待に応じたものでなければならない。平泳ぎ初級コースといっても、入会する一人一人の要求は異なるはずだ。競技を目指しているなら、ルールに則った泳ぎ方を教えなければならない。
あるいは今年の冬家族とハワイ旅行に行くのでそれまでに下手でも泳げるようになりたいなら、ルールや速さなど関係なく浮き方と形はどうあれ泳げるようにする。それが顧客満足だろう。
もちろん客の期待に応えることができないこともある。客の期待が途方もないことなら、教えるほうから、実行可能な案を逆提案する。どうしても折り合いがつかないなら契約できないのはしかたない。客が無茶なのか、教える法の力不足なのかはともかく、のちに問題になるより良い。
できもしないことを約束するのはISO9001の「顧客とのコミュニケーション」における不適合だ。
私が期待したことは次のようなことだ。
四半期ごとに、前回より○○項目ではこういう点が伸びたとか、会話のスピードを毎分〇語から〇語にアップしてもついてこれるようになったとかコメントがあっても良いのではないか?
水泳などなら、開始前に示した計画において、こことここが塗りつぶされましたという評価などがあるだろう。
もちろん時が過ぎたから塗りつぶしただけでは困る。生徒が塗りつぶしたところは確かにマスターしたと認識していなければならない。
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注:どこでも計画を書いたガントチャートに進捗を染めていくだろう。PERTの方がクリティカルパスや問題がわかりやすいが、時間的なイメージはガントチャートがわかりやすい。
自動制御にはクローズドループとオープンループがある。今時はオープンループの機械なんてないとは思うが……
プログラムやセンサーからの入力を受けて何らかの動作をさせたとき、動いた動作/位置を検出し比較して指示との差を修正を行うのがクローズドループであり、それがないのがオープンループである。
教育の目的は生徒を目的のレベルにすることだから、教えればおしまいではない。教育した結果、英会話や水泳がいかほど上達したかを評価して、それを教え方に反映し目標を達せなければならない。
当然そのためには定期的あるいは継続的に評価を行わなければならない。
入力 | 比較 | 実行 | 成果 | |||
計画 | 計画と成果を 評価する |
決定に基づき 実行 |
上達/記録 | |||
成果の把握 上達/記録 | ||||||
検出 |
もちろんスポーツでも英会話でも、レッスンにおいて教育と同時にフィードバックをかけているだろう。しかしそれだけでなく計画との差異を把握して、全体的な計画の進捗へのフィードバックをかける必要がある。
つまり手足の動きが不適切ならば正しい方法を教えるのは当然だが、その結果を教育計画に反映し期間を延長するとか別の方法を取り入れるとかの検討が必要だ。もちろんそのことを生徒/受講者に伝達し、その事実を認識させ計画修正を納得させなければならない。
それはコーチサイドの問題もあるだろうし、本人の問題もあるだろう。レッスン後の自己練習が足りないなら練習量を増やすよう指導しなければならない。
もちろんそういったことを生徒に要求するのは開始前に説明していたはずだ。だから生徒がそれを守っていないのか、当初の計画が不適切ということになる。そういったことの責任の所在ははっきりさせなければならない。
そんなことをしたらがんじがらめで面倒が増え、やりにくいといわれても困る。目的は顧客満足である。そして顧客満足とは顧客要求を満たすことだ。そのためにはあらゆる手段を使い計画通り目標達成するために努力しなければならない。コーチも生徒も、
ともかくスイミングスクールなら、あなたは平泳ぎのコースを修了したので卒業ですとすべきだろう。
そしてまた上達せずに何年も在籍している人もいるが、高校は6年、大学8年と同じく、スイミングスクールなら同じ級に2年いたらダメとしてもおかしくない。そのためにはコーチも生徒も真剣にならなければならないし、それが双方の幸せにつながるのではないか。
注:通信制高校には在籍期限の規制はないそうです。但し学校独自に定めることは可能。
現実はいつまでも習い続ける人がいる。前に通っていたフィットネスクラブでのこと。私より高齢女性が何年もスイミングの毎週個人レッスンを受けていた。脇で見ていたが全然進歩がなく年年歳歳同じことをしていた。
あるときその女性がスパッと習うのをやめた。スイミングを習うのを止めてもフィットネスクラブにはいたから、どうしてなのかと話を聞いた。なぜかスイミングを習うのが無駄だと目が覚めたのよね、と言う。百万くらい無駄使いしちゃったと笑っていた。
本日の言い訳
本日は前回書いたことの増補というか繰り返しですが、一応言っておかねばと思いました。
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