学ぶ・教える・15薄く繰り返せ

21.10.14

学校に通っている人だけでなく、我々一般人も生涯勉強だ。勉強法にもいろいろある。
50年以上前 私の通った工業高校は成績は良いが金がないのが行く学校だった。だから進学校と同じくらい勉強はした。
平日は勉強するけど日曜日は農作業を手伝うからできないという同級生もいたし、平日はクラブで遅くなり家では寝るだけで日曜日にまとめて1週間分の復習と予習をするという奴もいた。
朝夕の通学の列車の中でするというのもいた。当時の列車の社内灯は一両に数か所白熱電球があるだけで暗く、小さな活字は読めなかった。下校時の車内は暗くて教科書は読めなかったと思う。
まだ東北本線は蒸気機関車が走り、週休二日制など遠い夢の時代である。

勉強 そのほかの点でも人によって勉強法は違った。
一つの科目に複数の参考書を買っていたのもいたし、教科書一筋でボロボロになるまで練習問題、応用問題、章末の問題をしているのもいた。

教科書には書き込みを一切せず、ノートにいろいろと書くやつもいた。反対にノートをとらずひたすら教科書に書き込んでいる奴もいた。そいつは一度練習問題を解いても忘れてしまうからと、メモ紙に解法を書いて問題のわきに貼りつけた。それで教科書の厚さが倍くらいになっていた。いかにも勉強したように見える。
まあ好き好きだし、どのような方法でもその人に向いているならどうでもいいことだ。

私ですか? 私の教科書は真っ白、ノートにはいろいろ書きこんだけど、メモ扱いで二度と見ることはなかった。私は葉隠と同じく、一度読んだり書いたりしたものには二度と手を付けない。

注:「葉隠」とは江戸中期に佐賀鍋島藩 山本常朝が武士の心構えを述べた書物。その中の「武士道と云ふは死ぬ事と見付けたり」の言葉は有名。
また本を読むときは「二度と読みなおさない、読み終えたら捨てる覚悟で読め」とある。
あっ、私は違いますよ。勉強が嫌いなので二度と読まないだけです。


ただ私の経験では勉強とは<薄く繰り返す>のが鉄則だと思う。本日はそれを語る。
毎度のことだが、つまらない話から始まる。
何事か新しいことを勉強したいとか、勉強というほどではないが地元の歴史を学びたいなんてときは、手始めにどんなことをするだろう?
チーバ君 私の場合、まず図書館の蔵書検索で「千葉県+歴史」をキーワードに検索する。今パソコンでやってみると1190件ヒットした。私の住んでいる市図書館の蔵書が70万冊とか言われるから、700冊に1冊は千葉県の歴史に関わっていることになる。仮にヒットした1000冊以上を片っ端から借りて読むとなると、毎日1冊読んでも3年かかる。きっと面白い本より面白くない本が多いだろう。

私は検索上位から100冊くらいタイトルを見て、特定のことについてのものを除き、入門書、児童向けから10冊選んで借りる。10冊とは一度に借りられる限度だ。

<特定のこと>とは「千葉県教育史」とか「下総台地開拓の歴史」あるいは「更級日記」といったようなものだ。もちろん元々必要というより好奇心ではじまったわけで、それにヒットしたものに興味を持てばそこから取り掛かってもよい。
ここでは仮に千葉県の一般的な歴史を学ぶとする。

そして借りてきた児童向けあるいは初心者向けの本をザっと読む。文字通り斜め読みでよい。数冊も読めば大体のことはわかる。10冊全部読まなくてもよい。そしたらもっと千葉県の歴史を学ぶ気があるかないかを考える。
もうたくさんと思うならそれでおしまいだが、もっと知りたいならば、最初より少しレベルアップしたものをまた10冊借りてきて読む。だんだんと興味というか知りたいことが具体化してきたらそれに関するものを読む、そんな風に進めるだろう。
そうなっても一字一句読み理解するということでなく、ザっと目を通すとか斜め読み、あるいは興味のある章だけ読む。なにも遊び紙から遊び紙までめくらなければならない義理はない。


お掃除 話は変わる。
あなたは掃除機をどのようにかけるか?
私は日々お掃除をしているが、掃除機を部屋全体均一にかけるということはしない。まず部屋を片付けたら軽く部屋全体に掃除機をかける、それから汚れている個所とか細かいゴミとかあれば掃除機では取れないから、濡れた布で拭くとかコロコロ(正式な名称は粘着カーペットクリーナーというそうだ)で取り除く。ハイ、一丁上がり。

さらに縁のないような話だが、塗装をするときどうするか? 片方からしっかり塗っていくなんてのは素人も素人。どんなものでも薄く何度も塗る。
トヨタ・ヴィッツは一度に厚塗りしてしまうとか聞いたことがあるが、よほど塗装条件を管理する必要があるだろう。薄く何度も塗ればいろいろごまかしがきく。それは手作業だけでなくロボット塗装でも同じだ。

言いたいことは、とにかく全面的に軽く様子を見て、重要さとかおかしな点とか興味あることを見極めるということだ。
勉強もそれと同じ方法がよいのではないだろうか?

本屋とか図書館で本を探すなら、私ならまず目次を見る。大体何が書いてあるのかを把握する。それから「はじめに」を読んでどんな読者を想定しているか、どのレベルまでなることを期待しているか、特色は何か、そんなのを把握する。もうそれだけで読むべきか、買うべきかは判断できる。

数学の参考書を買ってきたとして、第1章からじっくりと問題を解いていくって方法は、あまり良い使い方ではないと思う。
これも私ならまずは軽く読む。問題と解答例などを眺めて例題はスルーでよい。そしてどんなような問題を解けるようにする本なのかを把握すれば十分だ。
大人の勉強は数学なら解けるようになることではない。どのようにすれば解けるのかということを知るだけでよい。大人になっても二次方程式の公式は覚えているかもしれないが、忘れてもいいのだ。

ax2+bx+c=0矢印x=?

驚いたことに、ネットには二次方程式を解くサイトもある。いやいや、三次方程式、四次方程式まで係数を入力すると答えが即でる。
さすがに五次方程式は載ってないが、その理由はわかるよね 💗
となると仕事で二次方程式を解かねばならないときは、方程式をたてさえすれば良い。
ましてや微分とか積分などその意味さえ理解していれば、実際にそれを使うときは参考書を引っ張り出せばよい。

注:この「Ke!san 生活や実務に役立つ計算サイト」にはありとあらゆる計算式が載っている。年金の計算とか定期乗車券を解約した時の払い戻し額など有用なものもあるが、エアコンを気温何℃で何時間使ったときのCO2発生量とか、捻りすぎて使い道のなさそうなのも多い。


私の先輩が「本を読んで覚えなくちゃならないことは、どんな問題が起きたらどの本を見ればよいかだ」と語った。確かに小説とかでなく技術参考書とか機械のマニュアルであればそれを読む目的はそうだろうと思う。

最近はパソコン検定なんてものがあって、WordやExcelの様々な使い方を習得したか試験して、あなたはこれだけの力量がありますと証してくれるらしい。
私はいまだにWindows3.1のWord5.0から進歩していないからリボンなど使いこなせない。だがキー入力と書式を整えるのはWord2016の知識がなくても特段不自由はなくできるし、分からないことがあれば右クリックでググって解決しない問題はない。全部頭に入っているのは素晴らしいが、知恵があれば知識がなくても仕事はできる。

ところで、
私はマイクロソフトがオフィスソフトをリボンと呼ばれる形式に変えたのは過去最大の改悪だと思っている。リボンなど場所ばかり食って良いことはない。なぜに昔ながらのツールバーを続けなかったのか。
私は従来のGUIが良くて、外観が同じチャイナの怪しげなオフィスソフトとかオフィス2000など旧バージョンなども使ってみたが、互換性という非関税障壁に負けて結局MSオフィスソフトの現行品を使わざるを得ない。マイクロソフトは悪徳業者だ。

要は使い方を覚えるのではなく、使い方を知る方法さえ覚えていれば間に合う。とっさのときに間に合わないと言われるかもしれないが、何度も起きることならそのたびにググれば覚えてしまうはずだ。
なにしろ目的はWordとExcelを使うことでなく、WordやExcelを使って生み出すことにあるのだ。

学ぶこと覚えることといっても、それには真に自分が納得し身につけなければならないこと、例えば思想とか理念とかというものもあるだろう。もうひとつは純粋にツールを扱う方法であると思う。そして我々が学ぶことのかなりの部分は後者だろう。
そのためだけなら1から順に理解し覚えることではなく、全体的な構成とか体系を理解し、あとは参照する文書、マニュアルを覚えておけば間に合う。

もちろん覚えることに価値がないわけではない。昔のパソコンはRAMが少なく、何かあるとすぐにハードディスクがカチャカチャと動いていた。今はRAMもキャッシュも大容量だ。
人間が記憶することはキャッシュを大きくすることと同じで、外部の情報を参照する手間が省けるメリットは大きい。





CPU 疾走 キャッシュ 走る メインメモリ
RAM
歩く ハ-ドディスク
SSD

頭脳 疾走 記憶力 走る 机上の書籍 歩く 図書室の書籍
読込・書込
の速さ
直ちに速やかに遅滞なく

注:法律では届け出や報告を行う時間的即時性の表記が決められている。
「直ちに」とはなにをおいても今すぐやれ、「速やかに」は他に緊急な仕事があればその次に、「遅滞なく」は事情の許す限り早く(普通に)という意味。
上長から指示を受けたらその即時性を確認するのがまっとうな仕事人。納期を指定されても「直ちに」なら期限前に実行して報告しよう。あなたが昇進や昇給をゲットするために。

短時間で多くの問いを処理するには図書室まで歩いては手遅れになる。常時使う本なら机上に置く、常に会話で使う用語や寸法は暗記する。
めったにというかまず使わないWord Artの飾り付けなど覚える必要はないが、常時使うIMEパッドIMEパッドの使い方は覚えておいたほうが良い。もっともいつとなしに覚えてしまうだろうけど、


昔ISO9001の審査が始まった頃、「品質記録は維持しなければならない」という要求があった。いまもか?
知り合いが働いている会社のISO審査で、記録は何分以内に出さないと「維持されていない」という理由で不適合になったと聞いた。当時はそういった理屈の不適合はたくさん出ていた。

ISO審査
それで品質記録を提示する制限時間は規格で決めてあるのか疑問が沸いた。

審査に来た某認証機関のエライさんが教えてくれたが、記録を提示するまで何分以内ということはない。記録が離れた場所にあっても、保管場所が明確にされていて妥当な時間で提出できるなら問題ないと。
となると知り合いの会社で、出てくるのが遅いと机を蹴とばした審査員は何を根拠に怒ったのか?
ちょっと待てお客様の会社に来て、机を蹴とばす業者しんさいんがいていいのか
そんなことされて次回の審査までに認証機関を替えるかその審査員を拒否しなければ、ISO9001:2015 8.4.1c)で不適合にされちゃうぞ(笑)。ひょっとして審査員は企業がISO規格を理解しているか確認するために机を蹴飛ばしたのか?

ISO9001:2015 8.4.1c)
プロセス又はプロセスの一部が(中略)外部提供者から提供される場合(中略)組織は外部提供者の評価基準を決定し適用しなければならない。
おっと、1987年版/1994年版では4.6.2、2000年版/2008年版では7.4.1で同じことを決めていた。


学ぶとは教科書に書いてあることを全部頭に入れることではないはず。
学ぶことの多くが、必要な時に情報を参照できることなら、それに見合った方法の学び方があるはずだ。
それは薄く繰り返すことであろうと考える。


うそ800 本日の方言

最近本を読んでいたらDone is better than Perfect. (完璧を目指すより、まず終わらせろ)という言葉があった。
上司から○○について調査してくれと言われたら、何日もかけて立派な報告書を作るのでなく、さってばさで1ページのサマリーを出したほうが喜ばれる。もし更なる詳細報告が必要なら上司とサマリーを見ながら打ち合わせたほうがいい。方角を間違えて駆け出しても、ロスであるし上司の覚えも良くない。

注:「さってばさ」とは福島弁で「すぐさま」とか「急に」という意味です。
「さってばさでやれ」とか「さってばさで言われても困る」というふうに使います。


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