ISO第3世代 2.初出勤

22.07.11

*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但し引用文献や書籍名はすべて実在のものです。


ISO 3Gとは

磯原は4月1日に本社に初出勤した。普通の人は異動日の前後は引越し休暇を取って休むものだ。 オフィスビル 磯原も引っ越ししてから市役所の手続きとか近所挨拶で前日までいろいろあったが、その性格から初日に顔を出さないという選択はしたくなかった。

工場にいたときは毎朝、始業時間より2時間くらい前に出社して仕事をしていたが、就業規則では就業時間より30分前以前・以後の入場は禁止だ。工場では、特に施設管理部門は異常があれば24時間出社しなければならないこともあり、入退場はユルユルだったが、本来はちゃんと手続きしなくてはならない。
本社に来てすぐにトラブルはごめんだ。それにまだ担当の仕事の詳細を知らないのだから働き始めるわけにもいかない。ということで第一日目は始業30分前に本社ビルに着くように家を出た。


稲毛駅の乗車時刻は本社到着から逆算して決めたのだが、乗ってみれば思いもかけずというべきか当然というべきか、ちょうどラッシュアワーのピークだった。
磯原は生れてから大学まで秋田県であったし、社会人になってからは結婚などで引っ越すことはあったがずっと福島県在住である。田舎はどこも車社会だから電車に乗らないというか、そもそも電車の路線が数えるほどしかないがない(注1)だからラッシュアワーなどテレビでしか知らなかった。
総武快速に乗ってみれば、とても毎朝夕これには耐えられない。転勤の送別会で、同僚から痴漢に間違えられるなよと半分本気、半分冗談を言われたが、こんな身動き取れない中では痴漢もできないだろうと思う。

総武快速総武快速総武快速総武快速総武快速

本社はフレックスタイム制度があると聞くので、明日からフレックスを利用して早めに出なければいけないなと思う。


磯原の勤めている会社はスラッシュ電機(注2)という。それで本社ビルはスラッシュビルと呼ばれている。といっても会社所有ではない。土地も建物も財閥系の不動産会社の持ち物である。なんでもビルのフロアを半分以上借りると、借りた会社の名前を名乗ることができるらしい。

そして実際、ビルの半分近くは他の会社、証券会社とか、外資系コンサル会社とかが入居しているし、それに地下と1・2階は店舗や飲食店である。早い話が雑居ビルで、1階には入居している会社の数だけ各社への入場口がある。
面白いことに入退場の際のセキュリティーチェック方式は各社違う。スラッシュ電機はJRのスイカカードと同じものを使っているが、同様にタッチ式であるがカードの規格が異なるもの、指先の血流認証、昔ながらに身分証明の写真をガードマンが目視チェックする会社もある。

スラッシュ電機の入場口には、まだ入場できる時間まで数分あり、10人ほどの行列ができていた。
大川常務 磯原が列の最後尾に並んだとき、前に並んでいるロマンスグレーが振り向いて磯原と顔があったので、磯原は丁寧に頭を下げた。本社は偉い人が多いから、下手な人に憎まれてはあとあと災難だ。愛想よくしておこう。磯原はそういうところはしっかりしている。

開門と同時にぞろぞろと中に入り目の前のエレベーターを待つ。エレベーターは大きく、行列を作っていた人たちはみな同じ篭に乗ることができた。磯原が職場の11階を押そうとしたら、既に誰かが押したようでランプがついている。
11階で降りたのは磯原とロマンスグレーだけだった。先日挨拶に来たので場所はわかっている。なぜかロマンスグレーも同じ方向に歩く。
磯原がドアの磁気センサーに社員証をタッチしようとしてロマンスグレーの社員証をぶつかった。磯原はニコリとして自分の社員証をひっこめた。愛想よく愛想よく…
ロマンスグレーが磯原に声をかけてきた。

大川常務 「初めて見る顔だが、今度 転勤してきたのかね?」

磯原 「今日付けで福島工場から異動してきました磯原と申します」

大川常務 「ああ〜そうか、君の名前は聞いていたよ。私は大川だ」

大川って生産技術本部長で常務執行役だ。この会社は委員会設置会社だから取締役は経営がまともに行われているかを管理監督するだけで、会社を経営するのは執行役である。大川といえば社長から数えて何番目かの大御所ではないか。
歩きながら、磯原は挨拶した。

磯原 「よろしくお願いします。生産技術部施設管理課で省エネを担当します」

大川常務 「福島工場は東日本大震災では大変だったろう」
 このお話は2016年、まだ大震災は記憶に新しい。

磯原 「個人的には家族も無事で自宅も大きな被害はありませんでした。しかし工場の破損は大きく、私は設備管理でしたから工場建屋の再建から、まあ〜いろいろありました。
今はもう平常です。ここまでこられたのは本社をはじめ多くの方のご支援のおかげです」

大川常務 「大変だったろうねえ。まっ、頑張ってくれ」

大川は手を振って、生産技術本部のフロアの中に、ガラスで仕切られた本部長室に入っていった。気さくな人らしい。
本部長室の広さは20坪くらいだろう。ガラスを通して中が見える。本部長の机と応接セットがある部屋と、10人程度入れる小さな会議室、そして出入り口の小部屋に秘書が座る机がある。通常は外から中がのぞけるが、場合によっては目隠しできるよう内側全周にブラインドが付いている。

ちなみに本部長室所属の面々は、その本部長室の中でなくその外に、一般社員と机を並べている。今はだれも座っていないが、頭上に「生産技術本部長室」と書いた看板がぶら下がっている。


先日来たとき磯原の席は教えられていた。本社は場所を節約するためだろうが、男性はロッカールームがない。上着は椅子の背もたれにハンガーが付いていて、そこにかけるのだ。磯原はスーツの上着を脱いでそこにかける。

注:丸の内なら月の賃料が坪10万でもおかしくない。オフィスは通路や会議室を含めれて一人当たり3坪くらい占有するから、事務員一人当たり月30万くらいかかる計算になる。
もちろん神田とか上野あたりになると坪1万そこそこになる。とはいえ一人当たり家賃が3万は安くはない。
通常の衣類を入れるロッカーのサイズは幅30センチ、奥行52センチ、高さ180センチである。もちろん着替えをするにはその前に一人立つスペースがいる。仮に幅はロッカーと同じとし、奥行きを70センチとすると、一人当たりロッカーのスペースは0.1坪、坪10万とするとロッカーのスペースでひとり月1万かかることになる。それならロッカーなしにするだろう。
ちなみにオフィスの一人当たり面積というのは法律で規制されていない。その代わり一人当たりの気積を10立方メートル以上確保するよう労働安全衛生法で定められている。

椅子にどっかと腰を下ろして、持参した省エネ法関係の書籍や文房具を机に収めた。
オフィスチェアー そこで座っているのがアームチェアであることに気が付いた。
工場では技術系でも事務系でも平社員はひじ掛けがなく、係長になるとひじ掛けがつき、課長になるとひじ掛けも背板も大きめになり、部長になるとひじ掛けと背板がUの字の椅子になる。数年前、磯原が係長になった日に、総務の担当者がひじ掛け部分とねじ回しをもってきてひじ掛けを取り付けた。そのときそういうルールと聞いて呆れた思いがある。そこまで差別をしたいのだろうか。嫌味としか思えない。
本社はそんなあほらしい差別をしないようで、見回すと部長も課長も庶務担当も同じ肘掛の付いた椅子である。

個人に割り当てられたパスワードもメールアドレスも転勤しても変わらないと聞いていたので、机上のパソコンをONする。いつもつかうソフトを立ち上げていたら、背の高い女性が現れた。

柳田ユミ 「磯原さんですね? 私はこの職場の庶務担当の柳田です」

磯原 「磯原です。よろしくお願いします。実は今朝、入口で大川常務に会ってしまいました。お車での送迎はないのですか?」

柳田ユミ 「常務は社有車の送迎が嫌いなのよ。だから毎日電車で通勤しているの。
磯原さんは常務と面識があったのですか?」

磯原 「いえいえ、社内広報誌で写真を見たことがあるだけです。一緒にゲートを通りましたが、この事務室まで来てから常務と知って驚きました」

柳田ユミ 「私たちとはあまり関わりないですから、挨拶だけしていれば無難ですわ、ハハハ
私は常務の秘書がお休みのとき、代わりにお茶とかコピーとかしますけど」

磯原 「常務となれば、さすがにお茶やコピーは自分ではしませんか?」

柳田ユミ 「そりゃそうよねえ〜、役員ですから」

柳田さんと雑談していると、だんだんと出社してきた。

柳田ユミ 「おっと今日から新年度なので、ホールで社長挨拶があるの。本社に来たなら一度社長の新年度の挨拶を聞いておいたほうがいいわ。誰でも出席できるけど、顔を出す人は1割くらいかな。あまり聴講者が少ないと、生産技術部長あたりから苦情を言われるわ。
磯原さんは顔を出しておいたほうが良くてよ。早く行ったほうが良い場所で聞けるわ。上着を羽織っていってね。シャツだけだと悪目立ちするから」


柳田のアドバイスに従って上着を羽織って大ホールに行く。まだ早いようであちこちに三々五々散らばっている。磯原は田舎者の特権とばかり最前列に立つ。心臓が強いというよりおのぼりさんで興味津々である。

社長の挨拶というか新年度の方針を聞きながら考えた。田舎の工場では社長の挨拶は各職場でスピーカーから聞かされた。まあ真面目に聞きもしなかったけど。
あのときは社長なんて見たこともないし、自分とつながりがあるなんて思ったこともない。そして社長方針が各事業本部から工場にきて、部、課と方針展開されてくるわけだが、正直言って社長方針などどうでもよくて、直属上司の課長方針を聞いて自分の立ち位置から何をすべきかを考えれば十分だ。

社長方針が展開されて課長方針になっているなんて思っていない。サラリーマンは偉い人の言うことを聞かなくちゃならないが、偉いというのは職階が高いことではなく、自分の査定をする人のことだ。

それはともかく、社長が演壇で語りかけてくるのを聞くと、やはり感情移入して感化されやすい。それは会社の仕事への熱意になるだろう。それだけでなく工場勤めより本社勤めのほうが情報も多いだろうし、やりがいはあるだろう。


社長挨拶が終わると自席に戻る。
生産技術部の庶務の女性から、部員全員 部長席の前に集まれと声がかかる。
社長方針の後は部長の方針かと磯原は心中ゲッソリしたが、もちろんそんなことは顔に出さない。愛想よく愛想よく…

だが部長の話ではなかった。4月1日付けの人事異動の説明があり、異動してきた人が5名ほどいて、ひとりひとり自己紹介をさせられた。
そして驚いたことに、施設管理課には磯原のほかに、アメリカ人の女性がいたことだ。


部の全員集会が解散すると、今度は施設管理課のミーティングである。階層毎に周知と情報共有が必要なのは分かるが大変だなと磯原は思う。

鈴木課長 「先ほど部の集会で周知したが、磯原君がエネルギー管理担当として着任した。ざっくばらんに言えば省エネ担当だな。本部長室に山内参与がいるので仕事の取り合いなど調整してほしい。それから磯原君にはISO14001関係のまとめをしてもらう。
先日磯原君が来たときに話すのが漏れてしまったが、実は本社と支社は一体でISO14001の認証を受けている。当然毎年審査があるのだが、ここは毎年秋に受けている」

磯原 「えっ、そうなんですか?」

鈴木課長 「すまん、先日話すのが漏れてしまった。本社のISO事務局は職制改正前まで環境部だった。そのときは全社のISO支援・指導をしていた者が本社の事務局を担っていたが、先月に定年退職してしまった。
過去の文書や記録を見てなんとかやってくれ」

磯原 「ハハハ、分かりました。なんとかします」

鈴木課長 「ありがたい、頼むよ」

磯原は腹の中で、鈴木課長もタヌキだなと思う。それとも天然なんだろうか?
とはいえ磯原はどんな仕事でも、他人ができるなら自分にもできると考える自信家であった。

鈴木課長 「それから先ほど部長から紹介あったアメリア吉本だ」

アメリア 「アメリア・吉本です。父は日本から進出した工場の技術者でした。母はアメリカ人です。でも母も別の会社でしたが日本企業で働いていたので、日本語を話せました。私は小さい時から両親と日本語で話していたので、半分日本語のネイティブだと思います。
会話は速くても聞き取れると思いますが、難しいというか、流行語や専門語は分からないかもしれない。読み書きは難しい漢字以外は大丈夫です」

山下一郎 「アメリアさんは研修と紹介されましたが、どんなことを?」

鈴木課長 「わが社は北米事務所というのがあって、そこが現地での公式な対外窓口だったのだが……実際のビジネスは、向こうの工場を作った事業本部がしていた。そのためビジネスの運営上ギクシャクすることもあった。それで北米事務所を広報や商談窓口だけでなく、北米における本社機能にするよう組織替えがあった。
北米のビジネスも工場経営も商品開発など全体を北米事務所が見るということだ。
それで環境広報や環境問題対策など各工場とその事業本部でしていたのを、引き継ぐことになり、大学院で環境コミュニケーションを学んでいたアメリアがサステナビリティ担当役員(CSO)の下でアシスタントマネージャーになる予定だ。
ということで、1年間うちで本社の環境部門はどんなことをするのかの研修だ。
チューターとして山下君頼む」

山下一郎 「ちょっと待ってください。環境の本社機能といいますと、以前の環境部ならそのものずばりだったでしょうけど、現在の施設管理課では環境の本社機能のほんの一部しか担当していません」

奥井正和 「そういうことなら、むしろ広報部で研修したほうが良かったのではないですか?」

アメリア 「環境部が組織替えになることは聞いていました。ただ工場を持てば広報だけではすまず、エアポリューションとかウェイストなどの重要性が高まるでしょう。ですから私は現在の施設管理課の業務を重要視しています。
もちろん今回の研修で元の環境部のお仕事を引き継いだ部門でも順次研修というか見学をしていくつもりです」

山下一郎 「なるほど、そうするしかないですね」

鈴木課長 「それじゃ山下さん、アメリアと学ぶべきこと、見学場所などを決めてくれ。それには移管した業務について移管先の関係部門と調整してほしい。調整がついたら日程計画を立ててアメリアと私に説明会をしてほしい。
調整がつくまでかかるだろうから、それまではこの課の業務について各担当が時間を取って説明とか実地見学など企画してほしい。うちの内部を調べるだけでもけっこう仕事量はあるだろう」

アメリア 「じゃ鈴木さん、山下さん、よろしくお願いします」

鈴木課長 「ええと、それじゃ当面の仕事だ……廃棄物とかPRTRなどの報告は6月までだったよな。山下さん、奥井君、遅れないように頼むよ。磯原君は本部長室の山内参与と調整してほしい」

山下一郎 「課長、PRTR報告は生産技術部の化学物質課に移りましたよ」

鈴木課長 「ああ、そうだっけ」

奥井正和 「課長、しっかりしてください」

鈴木課長 「そうそう、転勤者の歓迎会を計画してほしい。幹事は奥井君だな」

奥井正和 「また僕ですか……毎度毎度、飲み会の万年幹事ですよ。磯原さんも年上だし、早く後輩を入れてください」

アメリア 「まあ、歓迎会とかしてくれるんですか?」

柳田ユミ 「アメリカだって歓迎会や送別会はあるでしょう?」

アメリア 「ウェルカムパーティーとかフェアウェルパーティーをする会社もあるでしょうけど、私が勤めているところでは歓迎会も送別会もありませんでしたねえ〜。なにしろ、ものすごく出入りが激しくて、何週間どころか何日もしないで辞める人もいましたし。
日本人は仲間内でしていたようですけど」

山下一郎 「異動が激しすぎるのもなんだが、私はこの部署にきて10年になるよ。根が生えたようだ。磯原君がうらやましい」

奥井正和 「僕も飼い殺しかなあ〜」

鈴木課長 「じゃあ、解散」

アメリア 「柳田さん、とても背が高いですね〜」

柳田ユミ 「アメリカ人はみなさん背が高いのでしょう」

アメリア 「男も女も平均身長は日本人と5センチくらいしか違いませんよ。アメリカの成人女子の平均身長は162センチです(注3)私は160で少し低いです」

柳田ユミ 「あら、そうなの? 映画とかテレビドラマだとみんな背が高く美人なのよね」

アメリア 「そりゃドラマだからですよ。日本だってテレビドラマは背が高い美人ばかりでしょ」

柳田ユミ 「アハハハ」

ぞろぞろと会議室から出る施設管理課のメンバーを眺めて、なんかギクシャクしていると磯原は感じた。
鈴木課長は権威がないし、奥井さんは不満分子のようだし、山下さんはどうなんだろう? 柳田さんも真剣なのかそうでないのか、雑談好きなようだし……施設管理課は大丈夫かと心配になる。


さて、ともかく自分の仕事の範疇の確認と、それぞれの手順書あるいは過去の成果物を眺めておかねばならない。
まずは省エネ法だ。昨年の報告を眺めて、どんな処理をするのか調べよう。手順が分かれば、あとは各工場の尻を叩いてデータを集めれば最悪二日三日徹夜すれば終わるだろう。その手の仕事はドンとこいだ。

それからISO審査というものを調べておかねばならない。柳田さんに聞いて昨年のお金の動きを調べるのが最初だな。予算などは取っているだろう。取っていなければそのときだ。

それから脇で話を聞いているとアメリアがこちらで学びたいというか、こちらの状況を知りたいと考えていることは、本社で仕事をしていく磯原にとっても必要な情報だ。彼女と話をして、なるべく打ち合わせなどに陪席させてもらうようにしよう。

今日は一度山内参与に挨拶だけでもしておくか。
思い立ったらすぐやる人間である磯原は山内参与宛にちょちょっとメールを書いて発信した。首をのばせば山内参与らしき人が20mほど先に座っているが、歩いて行って話をするのが良いのか、メールを打っておくのがいいのか分からないので、とりあえずメールでジャブを入れた。

山内参与殿
本日付けで生産技術部施設管理課に異動になりました磯原です。
当社のエネルギー管理を担当しますので、これから山内参与の下で仕事することが多くなると思います。よろしくお願いします。

早速ですが、できるだけ早く昨年の当社のエネルギー状況をまとめ行政報告の資料を作らねばなりません。省エネ法対応で仕事の取り合いとか計画など教えていただけますでしょうか。
7月の早くには行政に報告したいと思います。
できるなら山内参与のお手すきの時に打ち合わせをお願いしたい。日程のご連絡をお願いいたします。
以上

注:参与って何よ?と思う人もいるだろう。
人間えらくなると肩書を付けなくちゃならない。部長、課長なんてのは、部や課があるとき、その管理者に付ける肩書だ。中小企業にいくと、部がなくても部長なんてのをよく見かける(笑)
それで職階についてない人を処遇するために組織と無関係な肩書を付けることになる。会社によっていろいろだが、多く見かけるのは参与、参事、主事なんてもの。上下は大体どこも同じだが、参与がとんでもなくえらい会社と、そうでない会社があるから要注意。
現役時代、客先で参与なんて人を相手に打ち合わせをした。当時私が勤めていた会社では参与は工場長レベルだったので緊張したが、その会社では課長級だという。
なお、会社によっては個人の資格級を参与、参事などとして、職階とは別のカテゴリーとしているところもある。つまり参事の部長もいるし、参与の部長もいるという感じ。自衛隊で2等陸佐の大隊長もいるし、3等陸佐の大隊長もいるというのと同じかな?


しかしなんだね、奥井って奴は文句ばかりいうものだ。とはいえもう何年も宴会の幹事をやらされているようで文句も言いたくなるのだろう。
ひょっとして奥井がいなくなると、一番の若輩となる自分が万年幹事になるのかなと苦笑いする。とはいえ会社員をやっていれば幹事であろうと、雑用係と呼ばれようと、泥臭い仕事をするのは当たり前だ。

課長と出張に行けばタクシーを呼んだり訪問先で受付したりするわけだけど、部長と課長が出張に行けばそれを課長がするのも当たりまえ。……万年幹事が嫌だと文句を言うのもおかしなことだ。


うそ800 本日は順調? 不調?

サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ〜♪(注4)なんて歌もありました。それほど気楽ではないでしょうけど、我らの磯原君は本社でもスイスイと泳いで行けるでしょう。

ところで本日の文字数は8,000字です。この物語は1話6,000字に抑えるといいましたが、初回も6,700字で二回目もこれほどオーバーしては順調ではありません。

うそ800 本日の工夫

会話部分の表示を今まではテーブルを使って描いてましたが、今回はPタグを使ってみました。
まあ、書くほうの好き嫌い程度かもしれませんが、見た感じ前のほうが良かったら戻します。ご意見ください。


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注1
東北地方というか群馬県や栃木県以北では、JRのナントカ本線とかそこから派生するわずかな線路しか存在しない。だから西武鉄道とか江ノ電のような鉄道会社は東北地方には存在しない。いまどきの名前の付いた路線や会社はみなJR解体後にできた第3セクターである。
私は映画やテレビで町中を走る私鉄を見て、本当のこととは思えなかった。ましてや踏切のカンカンする音を聞きながら銭湯に行くなど信じられない。だって私が子供時代から50歳まで住んでいたところでは、鉄道線路とは町からはるか離れた田畑や林の中を走っているものしかなかった。それは遠くに行くときに乗るものであり、通学とかお買い物に利用するものではなかった。

注2
会社名をいい加減につけてから、大丈夫かと気になってネットをググった。
(株)スラッシュという会社があるが、電気工事店のようで業種が違うから良しとする。
会社法が改正されたのは2010年頃だったと思うけど、それ以降は同じ住所で同名の会社が登記されても問題はなくなったはずだ。

注3
注4
「ドント節」作詞:青島幸男、作曲:萩原哲晶、歌:ハナ肇とクレージーキャッツ
1961年のヒット曲




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