ISO第3世代 26.社内説明2

22.10.24

*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但し引用文献や書籍名はすべて実在のものです。

ISO 3Gとは

各部門を集めての説明会から数日が経った。あれから磯原はたくさんの質問を受けた。簡単なものはeメールや電話で回答し、それで済みそうのないところには出向いて個別に説明会をしている。
今日、磯原と佐久間は総務部から呼ばれて説明に出向いている。

総務部といっても会社によって仕事の内容は異なる。なにしろ総務とは総(すべて)を務(つとめる)であるが、要するに他の部署がしないことをする部門なのである。
この会社では人事と総務は別であり、研修とか健康診断などは人事部が担当している。それで総務部がISO要求に関わるのは、まず文書管理である。工場では文書管理の主たる部門は技術部にある技術管理課とか文書課あるいは規格課と呼ばれる部署だが、本社や支社の場合、文書管理は総務部である。
もちろん各部門内の文書はそれぞれが管理するわけだが、部門が作成する文書の文書体系とか採番方法、管理方法などは総務部が定めている。

もちろん総務部のお仕事はそれだけではない。
賃貸ビルであるから建屋の管理そのものはビル管理会社であるが、管理会社のルールとか業務をブレークダウンして社内に通知するのは総務部である。
またオフィスから出る廃棄物の処理、什器やOA機器その他の固定資産管理、使用するエネルギーの管理もある。エネルギーの管理というと曖昧だが、要するに照明・冷房・暖房・コンセント・エレベーターが壊れたとか、定期点検とかとなんでも屋だ。

総務部は災害時に活躍します ISO14001関係だと防災全般の担当である。災害時の避難とか職場消防体制、医療体制、災害時に帰還困難者対策、近隣会社や通行人の助け合いなど多岐に渡る。

社宅や寮あるいは健保会館があればその管理も総務部となる。そういうのもISO14001の認証範囲であれば結構大変だ。
とはいえ時代が変わり、今では社宅とか健保会館を保有するところはどんどん減っている。スラッシュ電機は本社が東京のオフィス街だから、健保施設を賃貸ビルに設けるたらとんでもない家賃となる。だからない。飲み会するなら居酒屋でやってくれってことだ。

その他一般的なコミュニケーション、行政や近隣住民の苦情や地方祭や行事への参加要請などの対応も総務である。
本社は所在地が都のオフィス街なので近隣住民とか地方祭などはない。支社ならば結構大変だ。大手企業の支社長ともなると、地方では名士扱いで獅子クラブとか回転クラブなどその対応もある。
その他、社有車の事故とかあれば総務が対応となる。
普通はコミュニケーションが環境に関わることはないが、プラスの口実にできることもある。


磯原の相談相手は、総務部庶務課の吉田課長と若手の山本それに庶務の猪越である。
猪越の下の名はきよこで、柳田がおつぼねキヨちゃんと呼んだ人である。とはいえ柳田41歳に対しキヨちゃんはまだ26歳、お局と呼ばれるには年齢が逆だ。
柳田が言うには猪越がまだ新入社員のとき、何かの打ち上げで、ルーキーにも拘らず会議の仕切りと飲み会の幹事の手腕が見事なことを皆がほめると、猪越が「これから私のことをお局様と呼びなさい」と冗談を言ったことに由来するそうだ。仕事熱心で勉強家の彼女は、先輩より会社や世の中のルールに詳しく、今はよい意味のお局様なのだそうだ。

吉田課長 山本 キヨちゃん 磯原 佐久間
吉田課長 山本 猪越きよこ 磯原 佐久間

磯原 「先日の説明会でこれからは、ISOのために余計なことをしない、審査では日頃の仕事そのものを見せてほしいとお願いしました。お宅からは猪越さんが出ていたと思いますが、なにか説明不足なところがありましたでしょうか?」

吉田課長 「いやね、猪越さんから報告は受けましたが、あまりにも何もしないでOKというので、それで良いのかと心配になったのですよ」

山本 「具体例として環境方針カードを作らない・配らないと聞きまして、周知をどうするのかと思いました」

キヨちゃん 「カードを持ってても周知したことにならないってお話ししたでしょう」

山本 「いや、僕はISO事務局に直接確認したいんだ」

磯原 「まず、ISO認証とは我が社が、ISO規格を満たしているかどうかの確認です。ISO規格は環境方針を周知しなさい要求があります」

山本 「だろう、そのためには環境方針カードを作って配布するしかないんだよ」

磯原 「すみません、まだ私の話は終わっておりません。ええと環境方針とは何かといえば、環境方針名前が付いてなければならないわけではなく、年度方針でもなんでも良いわけで、その中にISOの要求である法を守れとか改善活動のテーマとかを盛り込んであることが必要です。

今年は我が社のISO担当が代替わりしましたので、無駄を排除することを目的にしました。それで今回から環境方針なるものをわざわざ作ることをせずに、生産技術本部長が毎年出している『品質環境の年度方針』をこれに充てることとしました。生産技術本部長の方針は、生産技術本部に限らず全社の品質や環境に関わる人に対する指示ですから皆さんにも適用されます」

山本 「あれ!そうなの? でも生産技術本部長は組織上我々の上長ではないよ」

磯原 「輸出管理とか知的財産の方針あるいはコンプライアンス方針など、それぞれの担当役員から出されますが、すべての部門に適用されますよね」

山本 「あ〜、そうだね」

磯原 「ですから皆さんには、生産技術本部長の品質環境方針を理解すれば良いことになります。
そしてそれは例えば総務部においては、わざわざ生産技術本部長の品質環境方針を見ていただかなくても、総務部長がそれを見て総務部に関わることを総務部の方針に入れ込んでいるはずです。
つまり総務部においては総務部の年度方針を見て理解すること、それがすなわち環境方針の周知であるとお考え下さい」

山本 「えぇ〜、そうなるの?
それじゃ総務部の年度方針をカードにして総務部内に配らないとならない。だって俺は総務部の年度方針なんて知らないよ」

吉田課長 「おい、総務部の年度方針を持ってこいや」

キヨちゃん 「ここにあります」
(そういってノートのトップページに貼り付けられた紙を示す。)

吉田課長 「ええと、いろいろ書いてあるが、環境に関わることって何だね?」

キヨちゃん 「今年度の重点実施事項を10項目挙げています。私が思うには……
3番目の、ビル管理会社との連携を密にして、省エネ、廃棄物のリサイクルや削減に努めること、
4番目の、オフィス町内会、行政の主催する社会貢献や環境活動等に積極的に参加すること、
7番目の、事務処理における電子化を推進し、諸手続きにおけるペーパーレスとスピードアップに努める、あたりかなと思います」

山本 「とにかく僕は総務部方針を忘れていたから、総務部にも忘れている人は多いでしょう。総務部方針をカードにして皆に携帯させましょう。
方針を覚える必要がない、グッドアイデアだ」

佐久間 「方針を周知するとは、カードを持つこととか暗記することではありません。また方針を一字一句覚える必要もない。
大事なのはその内容を理解して実行することです」

キヨちゃん 「私もそう思います。そして方針に書いてあることでも人によってすることは違うと思います」

山本 「人によって違うって? 方針なんだから皆同じことを言ってくれないと困るよ」

キヨちゃん 「例えばこの方針にある廃棄物のリサイクルに努めるのも、立場や仕事の違いですることはそれぞれです。
私は文具を担当していますが、転勤するとか不要になったといって私に返してくる人って結構います。返されたボールペン、ファイル、定規、メンディングテープなどはお菓子の箱に保管してます。新たに買ってほしい依頼があれば、まずそれを使ってほしいとお見せしています。

でも普通の人ならペットボトルはゴミ箱でなく自販機脇のペットボトル回収箱に入れることがリサイクルに当たるでしょう。人によりできることをすればよいと思います。
だから審査員に方針を実行しているかと聞かれたら人によって回答は違うでしょう」

佐久間 「いやあ〜、すばらしい。猪越さん、あなたはISOの申し子だ」

吉田課長 「なるほど、分かりやすい話だ。ともかく我々は環境方針とは何かと聞かれたら、この3件を説明すれば良いわけか」

磯原 「私は総務部の方針の他の項目を存じませんが、そういう考えでよろしいです」

山本 「でもそれでは磯原さんがISO要求とおっしゃった遵法が入ってませんよね?」

キヨちゃん 「我が社において遵法に努めることはわざわざ年度方針で毎回取り上げなくても、会社規則の「遵法に関する規則」で定めています」

山本 「会社規則が方針なの?」

磯原 「ISO要求では別に環境方針名前のものがあることや、それにISO要求すべてを書き込めとは言っていません。複数の文書で構成されても、あるいは環境以外のことが書いてあっても悪くありません。
あるいは環境方針が毎年変更されないなら、環境方針を会社規則にしても良いでしょう」

吉田課長 「なるほど、磯原さんおっしゃることはわかりました。
ところで私も疑問があるのですが、生産技術本部長の方針には環境に関わることとして総務部に関わらない環境技術開発とか諸外国の環境法規制への対応とか環境投資において評価方法の見直しなどを挙げていますが、我々には周知されなくても良いのでしょうか」

磯原 「知らなくてもよろしいです。と同時に、総務部に関わることは総務部長方針だけを覚えてもらっても不足なのです」

吉田課長 「はっ、どういうことでしょう?」

磯原 「生産技術本部長の方針で省エネや廃棄物削減があり、総務部長方針でそれはビル管理会社との連携を密にして、省エネ、廃棄物のリサイクルや削減に努めると具体化されているわけです。
ですから皆さんは自分がその何を担当しているのか、どのようにしていくのかを周知するだけでなく、方法を考えて実際に実行しなければならないことです。
さっき猪越さんが語ったようなことを、各人が認識していることが必要です」

キヨちゃん 「でも総務部といっても色々な仕事がありますから、全員は関わりませんよね?」

磯原 「もちろんです。株主総会とか業界団体対応などのお仕事をしている人は無縁でしょう。そういう方は実行部門からの指示を受けて実行すればよいです。例えばごみの分別方法を変えた通知があればそれに従うことですね。これもさっき猪越さんがおっしゃったとおりです。
ISOは仕事をもとにして考えてますから、全員参加なんて求めていません。良くISOは全員参加だなんて語る審査員とかコンサルがいますが、彼らはISO規格を理解してないんじゃないかな?」

注:ISO9001でもISO14001でも「全員参加」など求めていない。「ISO規格は全員参加を要求している」という方がいるなら、どのshallが該当するのか教えてほしい。
日本ならともかく、全員参加なんて外国で通用するはずがない。おっと、日本でいう全員参加とは皆が集まることではなく、皆が同じ行動することだからね。
以前書いたものです⇒ 全員参加の謎

吉田課長 「なるほど、磯原さんの話は論理的だな。そしてそれは会社の仕事のありようそのままだ」

山本 「ちょっと待てよ、ビル管理会社との連携を密にして、省エネ、廃棄物のリサイクルや削減に努めるって、キヨちゃんの仕事だろう。今年も半年過ぎたけど何をしてきたの?」

吉田課長 「オイオイ、その担当は山本君だぞ。君は半年なにをしていたの?」

山本 「あっ、そうでしたっけ? ISO事務局から何も指示がありませんでしたので特に何も……」

佐久間 「ISO事務局なるものがあるとは知りませんでした。組織規則を見てもISO事務局はありません。
また会社の仕事は組織規則の職務分掌に基づきます。そして組織規則によると、オフィスの建屋及び器具備品に関する管理は総務部とするとあります。ですからISO14001認証と関係なく、ビル管理は総務部ではないのですか?」

キヨちゃん 「佐久間さんがおっしゃる通りじゃないですか。山本さん、しっかりしてください。毎月このビルの協議会が開かれていますから、それに山本さんは参加しているでしょう」

山本 「ビル協議会?……ああ、ビル管理会社と店子の集まりか。あれに俺は出てないんだ。いつも葵ちゃんに出てもらっている」

吉田課長 「葵ちゃん?、鈴木さんのことか。君はちゃん呼びは止めたほうがいい。いや、止めなさい。セクハラ問題になるよ。総務部でセクハラ出したら笑いものだ。
鈴木さんからは毎月、協議会議事録と報告書が来ていて私は読んでいる」

山本 「あっ、そうでしたっけ」

吉田課長 「山本君、しっかりしてくれよ。担当は君だよ。代わりに鈴木さんに出てもらうのはともかく、そこで何があったのか把握して対応するのは君の職分だぞ。
ええと、先月は、電力使用量がオーバーしたこととその内容、そして対策を打ち合わせている。廃棄物については業者を読んで意見交換をしていたな」

山本 「ああ、良かった」

吉田課長 「良くない、君がちゃんと把握していないとまずいだろう」

磯原 「この打ち合わせはある意味、ISO審査の予行演習でもあります。自分の仕事なら間髪を入れずに答えてほしいですね。 といいますか、山本さんはご自身の職務についてよく理解しておいてください」

佐久間 「ISO審査では鈴木さんに出てもらった方が宜しいでしょう」

吉田課長 「アハハハ、言われちゃったなあ〜、山本君」

キヨちゃん 「総務部がISO審査と関わるメインは文書管理です。今日は文書課が出ておりませんが、頼まれていたことがあります。 ええと、先日お宅の柳田さんから問い合わせがあった庶務マニュアルのことです」

磯原 「ああ、私も気にしていました。柳田さんからは検討事項がいろいろあってちょっと時間が欲しいといわれておりました」

吉田課長 「庶務マニュアルがどうかしたのかね?」

キヨちゃん 「会社の仕事は会社規則に基づくのは当然です。業務の決裁、勤怠の許可、旅費精算、すべて会社規則に決めてあります。
ところで各部門には雑用といいますか庶務を担う庶務担当がおります。みな女性で入社すると見習い期間もなくすぐに各職場に配置され仕事をするので、会社規則を勉強する間もありません。それで過去の先輩たちが会社規則から庶務担当に関わることや、突発的な対処しなければならないことなどをまとめた庶務マニュアルが作られています。

新人が入ると、庶務担当が作っている非公式な庶務業務勉強会に入ってもらいます。そこで庶務マニュアルを配布して仕事の仕方を教えています。
そして会社規則の制定や改定があれば改定版を作成し、勉強会を開催してその説明をしております。
その他、庶務のお仕事でのトラブルも、庶務担当者全体の問題として検討もしています」

吉田課長 「庶務マニュアルの存在は公には認めていない、とはいえ否定もしない。各人が仕事の覚書を作っているという見解だな」

キヨちゃん 「現実問題として、庶務担当全員が使っているものですし、会社も暗黙に認めているわけでしょう。はっきりと認知してほしいですね」

磯原 「非公式のものなら、あまりそういう文書を作るのは芳しくない。ISOと関係ないことですが、会社規則から展開されていない、また認知されていない文書が存在するのは会社の文書管理としてまずい。
万が一、それに従って仕事をした結果問題が起きたら、管理者は責任を負いません。とはいえ公式な文書だけで仕事ができないなら、それは手順不足といいますが、管理不十分で管理側の責任です。
吉田課長さん、過去からの実績があり有効なものであれば、総務部庶務課が制定する正式な社内文書扱いにすれば筋が通ります。そうはできませんか?」

注:「手順不足」とは昔々、ISO9001が登場した頃よく使われた言葉だ。懐かしいと思う人もいるかもしれない。
手順(purocesure)とはで決められた方法(文書)であり、それが定められていないとか、定められていることだけでは仕事ができないことを手順不足と称した。もちろんISO規格の「手順を定めること」に不適合になる。

吉田課長 「正式な文書とすると利用者の書き込みとかアンダーラインは認められなくなる。
猪越さんどうだろう、各部門の事情により多少の変更とか必要なこともあるのではないか。それに一切書き込みはできないとなると、かえって使いにくいのではないだろうか?」

キヨちゃん 「課長のおっしゃることも分かりますね〜。でもなぜ必要かといいますと、会社規則はザクっと大きなことだけを決めています。
ですから旅費請求や精算のとき、安売りチケットを検討したかとか出張パックを使っているかのチェックまでは書いてありません。でも庶務担当は予算管理とか総務部長の通知とかを含めて、いろいろチェックをして不備のないことを確認の上、上長に決済伺いするわけで、会社規則だけでは仕事ができません」

磯原 「ええと、それはむしろ会社規則が不備なのかな」

吉田課長 「いやそういうわけでもないのだが、ええと……法律に例えれば、法律は骨組みだけですよね。細かいことで複数の省庁に関わることは閣議決定で決める施行令、省内のことなら大臣が決定する省令となる。更に細かいこととか一過性であれば局長の通知とかになるわけです。
会社規則は法律レベルなので、出張パックを使えといような通知レベルまで会社規則にするのはルールの階層が違うのではないですかね」

佐久間 「確かにそうですね。それにまた会社規則の細則にするにしても、上位規則を展開するならともかく、上位規則のサマリーとかになると細則にするのは位置づけがおかしくなりますね」

キヨちゃん 「話は飛びますが、今イントラネットにある会社規則は、Wordで作成した文書を単にpdf形式にしただけです。ですからひとつの帳票がどこで起票されどのように流れていくかは分かります。でも担当者の立場では、いろいろな帳票を扱うわけですが、自分が担当する工程しか関わらないわけです。
とすると経理課の庶務担当としては誰が起票するとかどこに流れていくかではなく、自分にくるのはどこからか、自分は何をするのか、誰に渡すのかのインプット・プロセス・アウトプットを知りたいわけです。それもすべての帳票についてです。今の会社規則の構成からでは、すべての会社規則を読まなければ自分の扱う帳票のことが分かりません。
そこでイントラネットにアップした会社規則を、方法はわかりませんがそれぞれの立場で検索すればその人用の会社規則集が作れるなら素晴らしいと思います」

吉田課長 「言っていることはわかるけど、それは難しそうだなあ〜」

磯原 「その人用の会社規則をわざわざ作らなくても帳票を電子化して処理することにすればインプット、プロセス、アウトプットは自動的に決まるでしょう。
それとpdfだと検索が難しいと思うけど、htmlにすればキーワードで検索できるだろうし、そうすればそもそも庶務マニュアルが不要になるのではないだろうか。いつでも最新の会社規則や各部からの通知をキーワードで検索して表示してくれるならプリントアウトするまでもなくモニターの中で完結できそうですね」

キヨちゃん 「まあ夢は広がりますね。でも現状は冊子にした庶務マニュアルがないと庶務担当はお手上げです。先ほども少し話しましたが、部門によって書類や帳票が流れる順序が違うとか、課によっては課長代理がいないとか二人いるとかのために会社規則の職名では分からないので、脇に決裁するお名前などをメモ書きするのは結構しているわけです」

吉田課長 「分かる、分かる。だがそうなるといったいどうしたものか?」

山本 「今年度の総務部長方針に事務処理における電子化を推進し、諸手続きにおけるペーパーレスとスピードアップに努めるというのがありましたね。
今年度は予算がついてないでしょうから、とりあえず今年は情報システム部に今キヨちゃんと磯原さんが言ったようなことを伝えて、漠然でもいいからそういうものが作れるかどうか検討を依頼したらどうでしょう」

吉田課長 「おお、山本君にしてはグッドアイデアだ。確かに難しい難しいと言っていても前進はない。プリントアウトしたりメモ書きしたりするからまずいなら、会社規則の画面でその人の立場での手順を示してくれる仕組みができないかを考えてもらうのは意味があるね。もちろんその前に庶務業務勉強会で、どんなインプットでどんなアウトプットが欲しいのかの仕様を考える必要がある」

キヨちゃん 「そんなことができたらすごいです
でも、とりあえずはどうしますか」

吉田課長 「電子化云々は一朝一夕にできない。現状の庶務マニュアルの存在の説明はどうするかな?」

磯原 「なるべく手間をかけず簡単には、こうしたらいかがですか。庶務業務勉強会で作成したものを総務部長が審査し使用を許可する。各部門で実情に合わせるために朱記訂正した場合はその部門の課長が内容を見て承認するとでもいう通知を各部門に出したらどうでしょう。
もし上位規則改定あるいは新規の通知があるときは、庶務マニュアル保有者に変更通知を出し、年度ごとに改定版と差し替える。

もちろん会社規則に全く触らないわけにはいかないでしょう。そうですね、会社規則の細則に会社規則を編集して業務に使う場合の措置とかを決めたらいかがでしょう。
どちらにしてもISOに関係なく、現状の庶務マニュアルの存在は現行の文書管理規則と矛盾します。まあそれが一番簡単な合法化でしょう」

吉田課長 「合法化より合理化てぬきのように見えるが……あっ、いやなんでもない。アドバイス感謝する」

たぬき 皆が吉田課長は狸だなと思った。自分は悪者にならず、かつ何もせず、成果だけは独り占め

【狸】(名詞)人のよさそうなふりをしていて、実際には悪がしこい者


うそ800 本日の思い出

もう10年くらい前、ISO認証を指導した会社でのこと。
担当者が方針カードを作って配りたいというと、総務課長が「環境方針カードを作る金がもったいない」という。
私が「カードを配っても周知した証拠になりません」というと、課長は喜んだ。
続いて私が「方針を周知するとは内容を理解させ行動させることです」というと、課長も担当者も腕組みして、いったいどうすればいいんだと悩む。
そんなこと悩むまでもない。日頃、上長が我々の目指すところはこれだ!みんな協力してくれと言ってれば良いわけだ。簡単じゃないか。
おっとそう考えると、方針の周知は上長の責任であり、部下の責任ではない。


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秋池様からお便りを頂きました(22.10.24)
おはようございます。
新しい週が始まりました。力作、一気に読ませていただきました。
ありがとうございます。
当社は、従業員へカードを配布しています。
記載内容は、
タイトル<方針・目標・個人カード>です。
わたしのスキルアップ目標
品質目標
 品質目標
 職場の品質目標
 わたしの品質実行目標
環境目標
 環境目標
 職場の環境目標
 わたしの環境実行目標

おもてには、
会社方針
 社訓
 経営方針
 スローガン
品質方針
環境方針

が印刷されています。

各社員個人単位で上職が管理できているのかは不明です。
毎年の継続審査を通過しているので、問題はないのでしょうかね?
ま、現役にがんばっていただいています。
老兵は。。。

秋池様 いつも大変お世話になっております。
カードを配るのがメジャーですね。管理職も安心、一般社員も安心、審査員も安心、三方良しです。
私はひねくれていますから、それが真の要求なのか、効果はどうなのかなんて余計なことを考えてしまうだけでしょう。


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