ISO第3世代 25.社内説明1

22.10.20

*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但し引用文献や書籍名はすべて実在のものです。

ISO 3Gとは

品質環境センターから帰社した磯原は、山内に首尾を報告した。山内は報告を聞くと鷹揚にうなずいて磯原たちを慰労した上で、短期的には本社・支社の更新審査の準備、中期的には工場や関連会社のISO認証の価値向上検討、そして長期的には認証の必要性の検討を命じた。


磯原は佐久間とこれからの手順を相談する。
まずはISO審査対応の大幅変更を社内に通知するために、通り一遍の通知では本意が通じないだろうから、説明会を持つ必要があるだろう。挨拶というか経緯説明は、山内参与にしてもらえば重みがあっていい。

打合せ 各部門には審査対応では新規に作るものはないが、会社規則を再読し、現在の仕事が会社規則に則っていることの確認、もし齟齬があれば業務を直すか会社規則改定をしてもらうこと。
環境のためとかISOのための仕事をしているなら止めてもらう。日々の本来業務をすれば規格要求は満たすはず。すべての仕事は仏教修行というように、すべての仕事は環境保護につながるはずだ。

それから説明会では何を語るのかの概要を決めておこう。
審査においては普段の言葉で対応する。ISO規格の用語が分からなければ分からないと答えること。規格の言葉は日常の意味と違うことなど
審査時に管理職が不在でも気にすることはない。管理者代行が決まっているはずだから、その人が対応すること。対応できないなら代行する者が力量不足だ。
よそ行きでない通常のあるがままの状況を見せることを徹底してもらう。


*****

週に2回の定例会である。以前、山内参与から毎週打合せをすると言われたのは磯原と佐久間の2名だったはずだが、なぜかアメリアも出てきた。

磯原 「アメリアさんは出なくていいよ。あなたは研修で来ており、やるべきことがあるし…」

アメリア 「与えられたことはしっかりやりますから、こちらにも参加させてください」

山内参与 「いいじゃないか、向こうでもISO認証するかもしれないし」

磯原は山内が言うならどうでもいいかと、話題を切り替えた。

磯原 「それでは私から進捗を報告します。既に報告しましたが、先週、認証機関である品質環境センターを、佐久間さんとアメリアさんとで訪問しまして、こちらの考えを説明しました。議論になるようなことはなく、ほぼこちらの希望を受け入れてもらえました」

山内参与 「言った・言わないということはないな?」

磯原 「議事録の形式で各項目のやり取りを記録しまして、先方の確認の上サインをしまして双方で保管することとしました」

山内参与 「よし。それじゃこれからの進め方だが……」

磯原 「品質環境センターでの打合結果を基に、どのようなスタンスで審査を受けるのかをまとめた資料を作成しました。佐久間さん配ってください。
この内容をできれば本日この場で決めたいと思います。
変更が大幅ですので、本社各部を集めての説明会の開催を予定してます。支社については毎月営業本部が支社・営業所を集めて定期会議を開いていますので、その場を借りて説明をさせてもらおうと考えております。
それらの説明会の冒頭に、山内さんの挨拶と切り替えた目的などをお話ししていただきたいと考えております」

山内はウン・ウンと配布資料を眺めてうなずいている。

山内参与 「概要は分かった。進め方はこれでよいと思う。説明内容にコスト的なことを盛り込んでほしい。今までの方法はいかに無駄なことをしていたか、そのための工数と費用の見積もり。これからは現状を見せて審査してもらう方法にすることにより、いかほど費用削減が見込まれるかということを入れてほしい」

佐久間 「おっしゃることは分かりますが、かなり推定となりますね」

山内参与 「それは仕方がない。切り替えることによるメリットを見せないと、皆のやる気が出ないだろう」

磯原 「逆にですね、今まで無駄なことをしていたとなると、反感を持たれないかと懸念します」

山内参与 「我々が憎まれるということか」

磯原 「説明を聞けば、多くの社員は今まで意味のない仕事をさせられていたという意識を持つでしょうし、それは事実でもあります。ISO担当部署への反感を持つだろうと思います。
とはいえ私は転勤したばかりですし、佐久間さんは応援者です。山内さんも今の職に就いたのは、昨年の審査直前と聞いてます。我々として割に合わないとは言いませんが、ツライことで…」

アメリア 「それって前任者の責任ですね」

佐久間 「とはいえ、一般の人たちはISO担当者が交代したなんて関係ないでしょう」

山内参与 「憎まれ役になるしかあるまい。今まで細々した意味のない仕事をさせていたのは事実だ。
今まで各職場にさせていたのを見たが、名刺の紙がバージンなのか再生紙何パーセントなのかとか、乾電池の使用量、ボールペンの使用本数とエコマークの有無なんぞくだらないことを、数えさせそれを記録させていたのだから。
裏紙の使用もあったな。秘の文書は裏面を黒塗りさせるとか、バカみたいだ。
今考えるとあんなものは認証機関の問題というよりも、事務局担当者の問題だな」

磯原 「まあ……憎まれ役は一度限り、悪者になるしかありませんね」

山内参与 「憎まれるのも月給の内だ」


*****

翌週、本社各部に案内を出した。事業本部レベルだと10もないが、徹底させるために部単位に案内を出したものだから70部門ほどになる。更に一部門から庶務担当など複数出席したところもあり、120名くらい集まった。
もちろん部長が来るわけでなく、ISOとなれば若いか年配の暇そうな……いや第一線でなく、何でも屋をしている人たちがやって来るのが相場だ。
とはいえ、彼らはISOだけでなく、種々雑務的なことを処理しているので、こういうことの処理は慣れている。

プレゼンテーション 磯原は山内には挨拶と概要説明を頼み、質疑応答は磯原がすると言ったのだが、山内参与はみんな任せろとすべてを話すことになった。結構彼も本気なのだと磯原と佐久間は思った。
初めに10分ほど、山内参与がISO審査を大きく変えることを説明した。
今までは環境ISOのために、何々をしてほしい、その文書を作ってほしい、審査のときはその文書を見せてしていることを説明してほしい、Q&AはISO規格用語で事例を挙げてどんな対応をするかを示していた。
今回以降は、そういうものは一切なくする。会社規則を守って仕事をすれば必要十分であること。

また審査も変わること。審査員は平易な言葉で質問するから、それに答えれば良い。環境に関してと考えることはないこと。知らない言葉であれば知らないと答えればよい。環境方針とか暗記などすることはないこと。


🙋

一通り説明すると、ザーと一斉に質問の手が上がる。
皆、新しい方法に不信感があるのだろう。それだけ真面目に聞いているということだ。

人 「審査員の質問の意味が分からないと、今までは不合格……不適合でしたっけ、そう言われましたよ」

山内参与 「心配ない。もし不適合と言われても気にしないこと。後で我々が審査員に話をつける」

人 「環境方針カードは配らないのか?」

山内参与 「今後は環境方針カードを作らない。皆、自分の上長が示した年度方針の何が自分に関わるのか、その目標、進捗などを答えれば良いる」

人 「部門の方針を覚えてないといけないのか?」

山内参与 「そりゃそうだろう、働く人なら自部門の目指すものを認識してないでどうする」

人 「自分の活動テーマが環境に関係しなくてもよいのか?」

山内参与 「問題ない。もしそのテーマを進める際に環境が関わるなら、それを考慮していると話してくれれば、なお良い」

人 「昨年まで作っていた環境目的と目標、その実現のための環境実施計画はどうするのか?」

山内参与 「今後は作らない。各部門の年度方針を達成することでよい」

人 「それで良いなら、今まで大騒ぎしていたことは何なのか?」

山内参与 「従来は認証機関にISO規格に直接対応するものを作って見せていた。それは非常に無駄だ。
それで今年から会社が従来からしている仕事を見てもらい、当社の会社規則が既にISO規格を満たしていることを確認してもらうことにした」

人 「それで問題ないのか?」

山内参与 「心配無用である。ISO規格要求はたくさんある。文書は……文書とは報告書とか各種データという意味ではなく、会社規則とか各部門のルールという意味だが、そういうものに展開されているのを我々は確認している。
ということはISOのためにしなければならない仕事は、既に会社規則に反映され具体的な手順に展開されていることになる。
だから皆さんが会社規則をひたすら守って仕事をしているなら、それはすなわちISO規格を守っていることになる。論理学の基本である三段論法だ」

人 「えっ! 会社規則ですか?」

山内参与 「日本で暮らしていくには日本の法律を守らなければならない。法律は1800もあるそうだが、日常生活では交通ルールとか支払いとか子供は学校にやらなければならないくらい覚えておけば間にあう。
右側通行とか子供が生まれたら2週間以内に届けるとか皆法律で決めてある。

同じく会社で働くには会社の決まりを知らなければならない。言い換えると皆さんは会社規則に基づいて仕事をしているはずだ。会社規則に基づいて仕事をしているなら、既にISO規格を満たしている。

しかし確認してほしいことがある。今、決裁しているのは会社規則に定めてある決裁者であるのかとか、決裁ルートは規則通りなのか、伝票は会社規則で定めてあるものなのか、その流れは規則通りなのかなど確認すべきことはたくさんある。
おっと、そもそも君たちは会社規則を読んで仕事をしているだろうね? 自分の仕事はどの規則に定めてあるのか知っているか?」

人 「実を言って私は会社規則を見たことなんてありません」

山内参与 「それはISOと関係なく当社で働く者としては問題ではないのか?
遅刻とか休暇取得は庶務担当に言われた通りしているでは困る。旅費精算をどうするのかと人に聞くのも困る。
営業部長
22.10.20

相 原
そういうのはすべて会社規則の中の就業規則や出張取扱規則に決めてある。会社規則を知り、それを守るのは社員の義務でもあり権利でもある。
日々の書類の決裁やお金の決済は誰であるのか、課長はどこまで決裁できるのか、この書類のハンコは部長なのか本部長なのか、会社規則を読んで仕事をしなければ、即 就業規則違反になりそうだ」

人 「会社規則ってどこにあったっけ? 最近見たことないわ」

人 「今はファイルじゃなくてイントラネットにアップされているわよ」

山内参与 「オイオイ、ISO認証はともかくとして、会社規則を見て仕事をしてないとはまずい。君たち、会社規則を守らないと懲戒処分だぞ」

人 「うーん、確かに会社の仕事は会社の規則に基づいてするのは当たり前ですね。でも正直言って入社してから今まで、上長や先輩に聞いたとおりに仕事をしていたのが現実です」

山内参与 「現実はそうかもしれないが、それでは困る。いつも課長のハンコをもらっていたが、
営2課長
22.10.20

小山田
実は部長のハンコが必要だったなんてことがあるかもしれない。
とすれば君たちだけでなく課長の問題でもある。
部長が権限を委譲しているとすれば、その記録も必要だろう。もちろん会社規則では、移譲できることとできないことが決めてある」

注:つまらない話であるが……サラリーマンしているとつまらないどころでなく深刻なのだが……オフィスチェアー 以前職階によって椅子の大きさとかひじ掛けの形に差がある話を書いた。同様に日付印の大きさが職位によって違うのはどこの会社も同じである。
係長より課長の日付印は大きく、部長はさらに大きい。周囲の線は係長や課長は一本線で、偉くなると二本線になったりする。
そういうのを眺めて悦に入るというのもサラリーマンの悲しい性である。

人 「山内さんのお話は良く分かりました。我々が会社規則を守って仕事をしていれば全く問題ないけれど、口伝で仕事をしていたら問題だというのはISOに限らず業務監査でも同じですね」

質問は延々と終わらず、またよく考えないと問題点が把握できないということで、磯原と佐久間が各部を巡回して質疑応答することになった。


*****

説明会は質問が多々あったが、悪い方向というか手間暇かかる方向でないことが理解され、従来から変わったことへの反発や異議はなかった。その代わり、本来の仕事を見直さなければならないという大騒ぎになった。
山内は心中、それ見たことかと思う。元々、山内は仕事とはルールを作りその通りするものという一家言を持っており、口承の積み重ねで動く組織が大嫌いなのだ。山内はISOMS規格など発祥前からISO的思想だったのである。いや、まともな人ならそうであるのが普通だ。

山内たちが説明会から席に戻ると、既に各部門からの問合せメールがたくさんきていた。磯原のメールボックスだけでも20部署くらいから問合せメールが来ている。

いやはや、どこも会社規則を読んで仕事をしていたとは思えない。
ハッと気が付いて向かい側の席にいる柳田に声をかける。

磯原 「柳田さん、ちょっと話があるんだけど」

柳田ユミ 「ハ〜イ、なんでしょう?」

磯原 「先ほどまで今年のISO審査対応の説明会をしていたんだ。灯台下暗しで自分の部署の柳田さんを呼ぶのを忘れてしまった。申し訳ない。その話をしたいんだけど」

柳田ユミ 「ああ、先ほどから私にもジャンジャンとメールが来ているわ。どうしたらいいのと私にすがるようなものばっかり、アハハハ」

磯原 「あっ、じゃあもう状況は知っているわけか?」

柳田ユミ 「要は会社規則を見て仕事しているかどうかってことですよね?」

磯原は説明資料を一部 柳田に渡す。

磯原 「それを読んだだけで問題ないなら説明するまでもないのですが、どうしましょう?」

柳田ユミ 「一応、目的から経過などをお聞きしたいわ」

磯原 「そいじゃ打合せ場でお話ししましょう」

佐久間 「それに俺も顔を出していいかな?」

磯原 「どうぞどうぞ、バックアップをお願いします」

柳田ユミ 「そいじゃ出張者のお土産のタルトを用意しましょうか」

アメリア 「タルトとコーヒーですか。私もお相伴にあずかってよいかしら?」

磯原 「君たち……まじめに仕事してほしいなあ〜」

タルトコーヒー

佐久間とアメリアが優雅にコーヒーを飲み歓談する脇で、磯原と柳田はひたすら打ち合わせを進める。

磯原 「ええと決裁者、書類や帳票のルートが会社規則通りかどうかの点検をしてほしいのです」

柳田ユミ 「私、会社規則って読んだことないのよね。前任者から引き継いだ庶務マニュアルっていうのがあって、それに私たち庶務の業務手順が書いてあるの」

磯原 「それって会社規則と一致しているんでしょうか? 会社規則って私の記憶だと5年に一度見直しをして、状況の変化に合わせて改定することになっているのです」

柳田ユミ 「ええとね、庶務担当ってこの本社ビルに何十人もいるわけよ。それでお互いに自分が関わる業務で変わったことがあると、連絡しあって常時アップデートしているの」

磯原 「とはいえそれが会社規則の最新版と、一致しているかどうかの保証はあるのですか?」

柳田ユミ 「うーん、考えたこともないわ。最近の変更は勤怠の入力画面が変わったのでそれに合わせたのがあったわ」

磯原 「どの部門も共通の庶務マニュアルで仕事しているなら、とりまとめ部門というか担当がいるわけでしょう。そこに会社規則との関係を聞いてもらえませんか?
あるいは会社規則で庶務マニュアルで仕事をすることと決まっているなら問題ないですが」

柳田ユミ 「分かったわ、総務のお局キヨちゃんに聞けばそういうことを知っていると思う。今日捕まるかどうかわからないけど、わかったら磯原さんに回答します」

磯原 「頼みます。それからですね……」

磯原と柳田がいろいろ話し合っている間、佐久間とアメリアはタルトを食べてコーヒーを飲み雑談しただけだった。


*****

磯原は、多くの社員が会社規則を見ないで仕事しているような気がしてきた。
自分は入社してから十余年、担当者、権限、業務手順、判断基準など、常に文書化された規則を見て仕事をしてきた。

磯原 なぜそうしてきたのかと思い返すと、電気主任技術者という職についていたことがある。電気事業法で電気設備がある事業所は、電圧と電力量によって決められた電気主任技術者の資格保有者を置くことが定められている。
そして事業所は電気設備の運用に関する保安規定を定めなければならない。つまり電気主任技術者であった磯原は、保安規定……それは勤め先においては工場規則として制定されていた……を基に仕事をしなければならなかった。

だから常日頃、工場の規則を読むということをしていた。長年仕事をしていれば頭に入ってしまうだろうといわれるかもしれないが、思い込みとか惰性にならないよう常に取り掛かる前に規則を読むようにしていた。

おっと保安規定そのものは経産省が雛形を出しており、会社は空白部を埋めればおしまいというしろものである。だが現実は雛形だけで済むわけではなく、その下にその会社の設備に合わせて維持管理の方法や基準を定めたものがあるわけだ。もちろん磯原が作ったものもあり、必要があれば改定をする。だけど覚えたつもりで仕事をしてはいけない。常に読み返し手順を守って仕事をする、それが基本だ。
ともかくそういう仕事をしていると、規則は飾っておくのではなく常に参照するという習慣がつく。

営業とか一般事務では、手順基準を文書化せよという法的規制がないから、そういう習慣がつかないのかもしれない。いや事細かく基準や手順を定めていなくても、支障がないのかもしれない。あるいは営業の技とかセンスは文書化できないのだろうか?
いろいろ理由はあるのだろうが、すべての仕事は手順と基準を明確にする必要があり、それは必然的に会社の正式な文書に位置付けないと、あっという間に風化してしまうだろうと思う。
そういう意味ではISOの仕組みは有効だろう。

ISO認証が始まって数年たった頃、ISO認証しても目に見える効果がなく、「ISO9001を認証して良くなったのは文書管理だけ、ISO14001を認証して良くなったのは分別だけ」と揶揄されたという。
確かに手間暇かけて仕組みを整備して、これまた高い金を出して審査を受けて、良くなったのが文書管理と分別だけでは悲しい。だが、そうしなければ文書管理は徹底されず、ごみの分別も徹底しなかったのではないだろうか。
文書管理が悪ければ古い図面で仕事をしてミスを起こすこともあるだろし、分別を間違えれば廃棄物処理業者で事故が起きるかもしれない。
それこそが文書化したルールが必要な意味だと磯原は思う。


*****

佐久間はISO認証とか維持に長年かかわってきた。認証にかかわったことも20回か30回ある。自分が勤める工場もあり、取引先や近隣の会社から支援を頼まれたこともあり、地域の公害防止の団体から頼まれたり個人的な付き合いから手伝ったこともある。
それぞれ認証機関も違い、その会社の考えも違い、環境側面の決め方もスコアリング法以外にいろいろとトライした。ISO認証なんて会社が違えば条件が違うから、一律的なひな形で認証してもうまくいく訳がない。まあいろいろしてきたつもりだ。

佐久間 とはいえ今回のように「あるがままを見せる」というチャレンジはしたことがない。ジキルQAにしても真実QAにしても、プロセスアプローチとはいえ、説明する側はISO規格から始まるというのが基本だった。
あるがままに見せるという磯原を、佐久間ができなかったことをスイスイとしてしまうということに驚くとともに尊敬する。もちろん彼は第三世代だから昔のしがらみとは無縁だろうし、おかしな審査員がうじゃうじゃいる時代ではない。まして2016年ともなると認証件数は減り続け、認証機関や審査員も20世紀のように強気ではない。顧客である被認証組織の声に耳を傾けるようになった。
だがそうだとしても磯原の考えは今までの考えから大きく飛躍している。同じ仕事をしても立ち向かう考え方、発想がいろいろあるものだ。

自分は革新的ではなかったが、仕事においては最善を尽くしてきたつもりだ。スコアリング法はバカバカしいと思っていたが、依頼先が品質環境センターを使うというならそれしか方法がありませんよと説明し、依頼先がそれで良いという場合はスコアリング法としたが、その場合でも企業の負担にならないよう簡略化したつもりだ。名刺の紙質なんて歯牙にもかけなかったし、環境方針カード配布など無駄無用と言い切り、したこともない。

常に最善を尽くしあとから依頼先から恨まれるような仕事をしたつもりはない。本社のISO認証に関わった人は真面目に仕事はしたのだろうが、そういう観点では後任から恨まれても仕方ないかなと思う。



うそ800 本日の苦情受付

庶務のユミちゃんは、いつもお茶している怠け者っていうクレームがきそうだ。いや、 柳田ユミちゃん アメリアと佐久間のほうがもっと罪が重いぞ(笑)
そんなことありません。ここに登場しないときはオーバードライブをかけて必死に働いているはずです。ですからときどき息抜きにタルトを食べコーヒーを飲むのは許してあげましょう。
私が現役時代はそんなことは決して……いや、しょっちゅうしていたような気が


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