ISO第3世代 7.ISO認証機関説明会

22.07.28

*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但し引用文献や書籍名はすべて実在のものです。


ISO 3Gとは

スラッシュ電機では本社が社内全事業所と主たる関連会社数十社をとりまとめ、スラッシュ電機グループの環境行動計画を策定して、社外的には大々的に広報している。
そしてグループに入った工場や関連会社は、全社の環境行動計画に基づき工場の環境行動計画を策定して環境負荷低減を進めている。計画には種々環境法規制対応も含んでいる。

環境行動計画の図
環境行動計画


法律では、大電力消費事業所に省エネを義務としているが、同時にまた企業としても削減義務がある。そのとき削減活動は事業所個々でなく、企業あるいは企業グループを一体とみなして良いという添え書きがある。つまり企業全体として法で定めるように削減していれば、事業所個々の削減には凸凹があっても良いとしている。

スラッシュ電機グループでも製品の種類や製造工程によって、今後削減代のあるところと、既に省エネは限界というところもある。
またなにごとも少額の投資では大きな改善が見込めないから、ある程度のスパンで大きな投資を行うのが当然であり、工場における省エネは毎年少しずつ積み上がっていくのではなく、投資後は一挙に改善し、それから次の投資までの削減はわずかというのが実際だ。

スラッシュ電機グループはそのような仕組みで活動している。しかし工場や関連会社の中には、本社との同意を得て策定した工場/関連会社の環境行動計画でなく、ISO向けにまた別の省エネ計画を立てているところもある。
なぜかというとISO14001審査では、省エネ法に基づき毎年エネルギー原単位当たり1%削減しているかを調べられる。だがグループの環境行動計画を展開した工場の環境行動計画では、それを満たさないことがあるからだ。

もちろん投資計画は本社認許を得ないと実行できないし、お金も出ない。だから工場独自作成のISO用の省エネ計画は初めから実体のない絵に描いた餅なのである。
もちろんISO審査において審査側が法律の定めと企業全体としての活動を理解していれば問題はない。だがそうでないことが多いから猫を追うより皿を引くのである。


本社のエネルギー管理企画推進者である山内参与が、本社が決めた計画と違う書類を作ることを問題として、磯原に改善を命じたのである。
省エネ法で定めるエネルギー管理体制は、トップが生産技術担当役員である大川常務であり、エネルギー管理企画推進者が山内参与である。そして山内参与の手足が磯原ということになる。

省エネ法で定める、企業におけるエネルギー管理体制
エネルギー管理体制
社長
大川常務
山内参与
磯原

出典:工場等判断基準についてよくあるご質問(経済産業省資源エネルギー庁 平成27年)


山内参与と磯原が考えた策は、ISO14001の審査では当然であるが全項目で規格適合か否かを判定してもらいたい。
順守義務の項目では、適用される法規制やその他の要求事項を把握してそれらをどのように適用するか考慮することが規格要求である。よってISO審査では「スラッシュ電機グループの環境行動計画を順守対象と認識しそれを内部展開していること」の審査を要求するというロジックである。

認証機関との交渉方法はいろいろ考えた。当初は、認証機関への依頼は個々の各認証機関に行う案だったが、最終的にすべての認証機関にスラッシュ電機の本社に来てもらいまとめて説明会をすることにした。
理由としては審査基準とか審査に係る基準は認証機関共通であること、そして認証機関が揃い踏みすれば当社はできないとは言えないだろうし、回答を躊躇することもないだろうと考えた。
それにスラッシュ電機グループの環境行動計画に参画している工場と関連会社をISO14001の認証しているのは認証機関4社と少ないこともあった。


4月下旬、スラッシュ電機本社ビルの会議室に認証機関4社の営業担当者とこちらはエネルギー管理企画推進者の山内参与と磯原が待ち受けた。
なお認証機関へは当方がISO審査についてのお願いをしたいということで、ある程度の判断ができる責任者を要請した。
4社とも欠けることなく顔を出してきた。

出席者は次の通り

ジキルQA橋野取締役 ジキルQA 橋野取締役 外資系老舗認証機関

品質環境センター鈴木取締役 品質環境センター 鈴木取締役 業界設立認証機関

大日本認証吉野部長 大日本認証 吉野部長 元は試験検査業だった日系認証機関

真実QA原田部長 真実QA 原田部長 外資系老舗認証機関


対してスラッシュ電機側は

山内参与山内参与 磯原磯原

注:企業同士の会議では職階合わせが必要である。相手が課長ならこちらも課長、相手が取締役ならこちらも取締役。もっとも下請けの部長ならこちらは購買課長、社長ならこちらは部長とかになる。
山内は大手企業の事業所長級であるから、小企業の認証機関の取締役よりは格上である。


まずは山内参与が現状説明をする。そして今の問題を解決するためにISO審査の遵守評価の項番において、企業グループの環境行動計画や本社の通知などを遵守事項に含めて、それをどのように考慮しているかを審査してほしいと語る。

山内参与が話を終えると、早速、品質環境センターの鈴木取締役から発言が出た。

品質環境センター鈴木取締役 「ISO審査とは順法点検をすることではないのです。そもそも規格には法違反はいけないともありませんし、審査が順法を点検するわけではありません。更にISO17021にも審査は抜き取りであり100%は保証しないとあります(注1)私どもの審査員は企業さんの環境管理体制ができているかの確認であって、法を守っているかの確認ではないのです」

山内参与 「ISO審査が順法点検でないこと、また100%保証しないことも存じております。しかし私どもがお願いしているのは鈴木部長さんがおっしゃった、まさに環境管理体制そのものを見てほしいわけです。つまり順守すべきものを把握する仕組みがあるか、把握したものをどのように内部で考慮しているかです」

品質環境センター鈴木取締役 「そういう意味では、弊社は過去より十二分にその観点で審査をしてきているつもりであります」

山内参与 「ええとそうしますと当社グループは環境行動計画策定を策定し工場に展開する仕組みになっているわけですが、真にそれを工場内に展開しているかどうかを確認しているということでしょうか?」

品質環境センター鈴木取締役 「さように認識しております」

山内参与 「磯原君、当社グループの環境行動計画と不整合な環境実施計画を策定していた工場と認証機関との関係を説明してくれ」

注:ここで「環境行動計画」というのは一般名ではなく、スラッシュ電機グループが作成している計画の呼称である。多くの会社や企業グループでは工場単位でなく、一体となって活動しているが、それらの計画にはいろいろな名称がある。
また「環境実施計画」とはISO14001規格で企業が策定すべき環境改善計画を意味する言葉である。
ISO審査に見せる資料の名称が環境実施計画でなければならないということはないが(注2)環境実施計画という名称の代物が存在するなら、それはISO審査のために作られたものであることは明白である。

磯原 「弊社の工場は30か所ありますが、すべてここにおられる認証機関に依頼しております。当社グループの環境行動計画を工場の環境実施計画に展開していない工場が22か所あります。
認証機関さん4社がどのように対応するかといいますと、図にしますと……」

認証機関による不整合率
認証機関 整合 不 整 合認証件数整合比率
ジキルQA303100%
品質環境センター115166%
大日本認証26825%
真実QA21366%
合計8223027%

山内参与 「この表を見ますと、御社つまり品質環境センターさんが一番悪そうですね。
いやもちろん悪いのは弊社の工場です。ですが見逃しが9割もあるとは抜き取り云々ではないでしょう。環境行動計画と環境実施計画の齟齬ももちろん問題ですが、万が一、問題が起きたときは、認証機関はどこかということが騒がれると思います」

品質環境センター鈴木取締役 「うーん」

ジキルQA橋野取締役 「弊社が良い成績だったことは、大変うれしい。もちろんこれは偶然ではありません。ご存じと思いますが初版と2004年版では、アネックスに組織が上位組織を有するか、あるいは大きな組織の一部である場合は、組織全体の方針を反映すべきという語句がありました(注3)
私どもでは従来から審査員に規格は本文だけじゃない、序文もアネックスもよく理解しておけと周知しておりますし、機会があれば規格解説しております。幸いそれが功を奏したようです。
また弊社では単に提出された資料を見るだけでなく、社会に広報された計画やいろいろな場での経営層の発言なども考慮するよう審査員を指導しているつもりです」

真実QA原田部長 「いや、橋野さんのおっしゃること、特にアネックスの扱いに同意です。弊社も同じ見解でありましたが、ジキルさんのように末端まで徹底できずにいたということは慙愧に堪えません。本日スラッシュ電機さんからご指摘頂いた件は、速やかに社内に徹底いたします」

大日本認証吉野部長 「いや、橋野さん、原田さんといった業界の大御所からお話がありましたが、まさに正論です。当社がジキルさんや真実さんに劣っていたということを謙虚に認識し対策したいと思います。
ところでお願いですが、この件は外部に公表しないということをお約束願いたい。ぜひ我々に改善の機会を与えて頂きたいと」

山内参与 「もちろんです。誰が悪いかといえば弊社が悪いのは間違いない。本社の通知が末端まで通るようにするのは我々の責任であることは重々承知です。
ただ認証機関さんにお願いしたいことは、ISO審査で仕組みだけでなく順守対象を把握しているか点検してほしい。正直言えば、仕組みを評価するとは仕組みを見るだけでなく、その仕組みのインプット・アウトレットを見なければ判断できないようにも思います。
我々としては過去がどうあれ、これから対外的に公表している当社グループの環境行動計画は、当社グループが順守すべきものであると認識しているかを見てほしいということです」

品質環境センター鈴木取締役 「すみません、質問させていただきます。御社の環境行動計画が存在すること、それが御社グループの工場や関連会社が順守すべきものであると認識しなければならないという前提があるようですが、どうしてなのだろう?」

磯原 「御社は、弊社グループの環境行動計画を察知する方法がないということでしょうか?」

品質環境センター鈴木取締役 「そう思うのだが」

ジキルQA橋野取締役 「それを言い出すと審査というものの根源的なことになりますね。あっ、脇から口を出してごめんなさい。
そもそも順守義務の項番をどのように審査するのかという問題になります」

品質環境センター鈴木取締役 「そりゃ組織が提示する環境該当法規一覧表が、該当する法規を網羅しているかどうかを見るわけだ」

磯原 「発言してよろしいでしょうか?」

ジキルQA橋野取締役 「どうぞ、どうぞ、余計なことを言ったのは私で、主催者はお宅だ」

磯原 「ありがとうございます。鈴木取締役さん、環境該当法規一覧表が、該当する法規を網羅しているかどうかどのように審査するのですか?」

品質環境センター鈴木取締役 「そりゃあれだ、現場を見たり著しい環境側面一覧表から、どのような法規制に関わるかを推定する。そして審査員が推定した法規制が、該当法規制一覧表に記載されているかどうかを見るわけだ」

磯原 「ありがとうございます。となると審査前に当社の環境活動を概要だけでもご覧になられていると思います。その時点で当社の……工場でなく全社の環境方針を知り、また当社グループの環境行動計画の存在と進捗を把握されているのではないでしょうか?
そして社内で調査をしましたところ、どの工場でもISO審査前に当社の環境報告書や過去1年間の主たる環境広報をまとめて審査員の方に送付しています」

ジキルQA橋野取締役 「私も調べてきた。当社の審査員は御社の環境報告書、正しい名称は環境CSR報告書のようだが、それと直近1年間の環境広報の概要をいただいているとのことだ」

真実QA原田部長 「私も審査員をしているが、現実問題として該当法規制一覧表など無用とは言わないが、なくても審査は困らない。だって一覧表を出されて、それを基に審査をしても意味がない。トートロジーですな。
自分の目で現場を見て、該当法規制を考え、それに関わる実施事項を遵守しているか否かを見るしかない」

ジキルQA橋野取締役 「そういうことでしょうね。そもそもISO14001ではマニュアルも法規制一覧表の要求もありませんし、審査で提示される法規制一覧表など組織内での使い道はないだろう。
特定施設だってそれぞれ届け出とか有資格者などの手順や基準を決めているだろうけど、それをまとめて一覧表にするなんてことは、ISO審査員のためにしていることは明白だ」

真実QA原田部長 「おっしゃる通りですね。弊社では環境マニュアルの提出以前に、作成を求めておりません」

ジキルQA橋野取締役 「おお、そうですか、弊社も要求していません。もちろん保有している設備などは事前に情報提供をお願いしていますが、それは審査工数にも関わることですから」

品質環境センター鈴木取締役 「話の趣旨としては理解いたしました。ただマニュアル不要論とかになりますと、どうでしょうか」

真実QA原田部長 「2015年版ではマニュアルという語句が規格から消えましたので、これからは必須というと、客が逃げていく恐れもあります」
 注:このお話は2016年です。

品質環境センター鈴木取締役 「いやもちろん、弊社としてもマニュアルがなくても審査は問題ない。だがマニュアルや種々の一覧表を用意してくれれば、審査が効率的に進められ、ウィンウィンの結果になるだろうと考えている」

ジキルQA橋野取締役 「まあ審査というのもサービス業ですから、客に手間をかけさせるのはネガティブ要素ではありますね。マニュアルも法規制一覧表もいらないといえば、中小の場合審査を受けるハードルは下がるでしょう」

大日本認証吉野部長 「おっしゃることはわかりますが……我々から見れば審査を受ける側が現状を理解するために必要かと思います。要するにあまりにもレベルが低いといいますか、ボロボロなところが多いので受験勉強というか予習にはなると思います」

ジキルQA橋野取締役 「確かにそれはあるでしょうね。でもそれはコンサルが考えることかなと思います。認証機関がそこまで考えるのは、いささか筋違いでしょう」

磯原 「話は出尽くしたように思います。そろそろ結論をまとめてもよろしいでしょうか?
弊社としてはISO審査において全社に係るような計画などを順守対象とみなしてほしいということ、もちろん全社の方針と工場の活動に齟齬があれば、順守事項の特定が不完全として不適合にしてほしいこと、ご了解いただけたでしょうか?」

ジキルQA橋野取締役 「よろしいのではないですか」

大日本認証吉野部長 真実QA原田部長 「異議ありません」

品質環境センター鈴木取締役 「基本的には同意しますが、今までOKしていたものを、突如 不適合とするのはどうだろう……」

磯原 「弊社内のことでしたら、この場で打ち合わせた結果を社内に周知しますので、その心配は無用です。
蛇足ですが、他社さんの審査においても同様な見解で審査をしないと、後々弊社と同じく問題になるかもしれませんね」

ジキルQA橋野取締役 「確かに、至極もっともなことだ」

品質環境センター鈴木取締役 「検討させていただきます」

山内参与 「鈴木取締役は即実施できないということでしょうか?」

品質環境センター鈴木取締役 「持ち帰り検討いたします」

山内参与 「我々としては極めて重大なことと受け止めております。ここでイエスと回答がいただけなければ前に進めません。
特に御社は当社の認証数の多くを占め、かつ先ほどのデータからももっとも改善を図ってほしい認証機関であるわけです。御社が対応できないなら、場合によっては認証機関を変えることも考えております」

品質環境センター鈴木取締役 「それは簡単にはいかないでしょう。御社としても、出向者を出しているわけで、そうなれば出向者の扱いも……」

山内参与 「そういう……」

磯原 「山内さん、ストップ願います。それはまた別途ということで。
鈴木取締役さん、それではご回答は可及的速やかにということでお願いいたします」


その直後解散し、磯原は認証機関の4名をビル1階のスラッシュ電機受付まで見送った。
ほっと一息ついて受付からエレベーターホールに戻ろうとするとスマホが鳴った。発信者を見るとジキルの橋野取締役だ。数日前に認証機関の4名から参加のメールをもらって、スマホに登録していたのだ。電話に応答する前に振り向くと、10mほど先でこちらを見てスマホを耳に当てている橋野取締役が見える。橋野氏はすぐに電話を切り、受付まで歩いてくる。

ジキルQA橋野取締役 「せっかくですから、もう少し磯原さんと山内参与さんとお話しできませんか?」

コーヒー 確かに会議案内の終了時刻まであと30分ある。ということは山内さんも空いているはずだ。
磯原が山内参与に電話をすると、まださっきの会議室にいてコーヒーを飲んでいるという。山内参与に橋野取締役が会いたいというので、そこで待っていてくれと頼み、橋野取締役と会議室まで戻る。

ジキルQA橋野取締役 「お忙しいところ済みません。30分だけ時間をいただけますか」

山内参与 「既にいらっしゃっているのだから今更ですね」

ジキルQA橋野取締役 「話は簡単です。本日の会議の結果、審査員のレベルに問題を感じてらっしゃるなら、ぜひ弊社に替えることをお願いしたい」

山内参与 「そういう話だと思ってました。しがらみがなければ即OKしたいですが、品質環境センターは業界設立の認証機関で、弊社は10%株主なんですよ。それで出向者も10名ほど出してますし、非常勤取締役も出しています」

ジキルQA橋野取締役 「存じています。業界設立とおっしゃいますが、大手通信機器会社がやはり10%株主でしたが、その会社はあそこから大日本認証に切り替えてますよね。もう10年も前です。前例がないわけじゃない」

山内参与 「その代わり出向者を出すことはできなくなった。まあ日本は業界設立の認証機関が多くて、認証よりも有休人材の受け入れ場所の様相を…いや、まあ」

ジキルQA橋野取締役 「仮に今回品質環境センターの16社の認証を移したとして、年間5000万の売上げですか。出向者の費用負担を50%として10人は受け入れできませんね。
まあ認証機関との審査契約はいつでも解除できます。ですから品質環境さんが良い返事をしなければ弊社への乗り換えをご検討ください。
場合によっては全部でなくとも、1・2か所だけ移転というのもありでしょう」

山内参与 「お灸をすえるというわけか」

ジキルQA橋野取締役 「まあ審査の質向上は御社にとって喫緊の課題でしょうし」

山内参与 「考えておくよ。しかし先日お前からメールが来て、今認証機関にいるとは驚いた。それも取締役とはすごいね。大学のときは石油会社に入って砂漠で石油を掘るとか言っていたが。
俺は研究所所長までいったが、もう役職定年で先の見込みがないどころか既に会社人生は終わりだ」

ジキルQA橋野取締役 「あれから35年、まあ長い年月だったね。そのうち飲もう。そいじゃ失礼するよ」


その後、山内参与と磯原が生産技術本部に戻る道々話をする。

油井 山内参与 「あいつは大学で一緒だった。彼は学部から石油プラント会社に就職してアラビア半島で石油プラントを作ったりしたようだ。話から想像すると、いつなのかプラント建設からプラントの検査に転身したようだ(注4)
私は院に進んで、付き合いはそれっきりだ」

磯原 「なるほど、プラントの建設からその審査に、そしてISO審査員になられたのですか。ISO審査員といってもいろいろな経歴の方がいるのですね」

山内参与 「昔はアラビアの砂漠なんかに行ったら、インターネットもなく、酒も飲めず、休日といっても周りが砂漠で遊びに行くところもない。そんなところで10年も仕事してれば大抵のことにたまげなくなるだろう」

磯原 「今日は橋野取締役が話を進めてくれて良かったですね」

山内参与 「品質環境センターの鈴木取締役一人が悪者になったようだが、橋野がそうなるように話を進めたという感じだな。もちろんなにも決定もできない鈴木取締役では会議に出るべきではなかったが。
ともかくあの鈴木センセイの方はなんとかすることにして、社内に通知文を出すからドラフトを作ってくれ」

磯原 「承知しました」

さあ、次は工場への説明会だ。
もし工場が文句を言ってきたら磯原が説得しなければならない。もちろんその分の給料はもらっているわけで、逃げるわけにはいかない。


うそ800 本日、思い出したこと

私の知り合いが、石油プラントの建設に従事していた。もっとも既に引退している。
日揮のアルジェリア人質事件(2013)(注5)のとき、彼の知り合いが殺されたと語っていた。大変なお仕事だ。そういう人たちのおかげで、私たちが石油を使えていることを忘れてはいけない。

絶対にしてはいけないこと
お話のモデルになった認証機関と幹部の名前を考えてはいけない


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注1
ISO17021-1:2015
4.4.2 いかなる審査も、組織のマネジメントシステムからのサンプリングに基づいているため、要求事項に100%適合していることを保証するものではない

驚くことに、この文言を知っている審査員は多くない。それどころか某認定機関の理事長という人も知らないようだ。困ったことだ。

注2
ISO14001:2015 アネックスA.2参照のこと

注3
ISO14001:2004 アネックスA3.2参照のこと

注4
1990年代初めのISO審査員は船級検査とかプラント審査から移ってきた人が多かった。そういう人はもう肉食動物のような感じだった。
審査後の接待では、アフリカの山奥に行ったとか、砂漠の真ん中で暮らしたとか、サルを食ったとか、奥様と離れた暮らしが長く離婚されたとかいろいろである。
おっと、審査後に接待など昔のこととなった。

注5
アルジェリア人質事件とは、2013年にアルカイダ系のイスラム聖戦士血盟団が。アルジェリアのリビア国境に近い天然ガス精製プラントを襲撃した。その施設はアルジェリア国営であったが、アメリカ、フランス、アイルランド、イギリス、ノルウェー、日本などが参画して経営されていた。戦闘で多くの人が亡くなり、また人質にとられて拘束された。
最終的に37人が死亡し、うち日本人は10人であった。




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