ISO第3世代 46.環境監査検討

23.01.23

*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。

ISO 3Gとは

どんなISOMS規格でも認証している組織は、規格対応の内部監査をしなければならない。だって要求事項に「内部監査を実施しなければならない(MS規格共通 9.2.1)」と書いてあるから。
とはいえ、ISOのための内部監査をわざわざすることはない。多くの企業ではISO認証など始まる前から業務監査をしていただろう。
業務監査とは法で定められている(例外もある)会計監査以外に、法令や会社のルールを守って仕事をしているかを実地で点検することだ。

業務監査で何を見るのかといえば、通常は法令と会社規則が監査基準になる。具体的には独占禁止法に反して、取引先や製品販売を押し付けたり、
営2課長
23.01.23

大石
定められた権限者
が決裁しているか
下請けに割に合わない価格で仕事を出したりしていないか。あるいはセクハラとかモラハラなどしていないか、隠していないか。公害防止などの測定は法に基づいて行っているか、定められた人以外が決済していないかなどを調べるわけだ。

だから業務監査をしている企業なら、マニュアルに「内部監査の点検項目は業務監査で見ている」と書けばおしまいである。

この理屈は過去何度も書いているが、理解していない審査員が多いから再度書こう。
日本国内で暮らしあるいは事業を営むには、日本の法令(法律・施行令・施行規則・条例)を守らなければならない。なぜかといえば性悪説で言えば守らないと罰則があるからであり、性善説で言えばお互いに安全・安心に暮らすためには国が決めたルールを守らなければならないからだ。
会社規則も同様に会社で働く人は守らなければならない。守らないと就業規則で懲戒を受ける。守っていれば身を守れる。

さて法律あるいは他社と契約した、業務で実行すべきこと及び禁止されたことを、働く人が法律や契約書を読んで理解することは難しいし、仕事をするとき常に参照しながら行うのは効率が悪い。
そのために法令や社外からの要求事項は、会社規則あるいはその下位文書に具体的に展開されることになる。ISO規格要求も外部からの要求であり、内部文書に展開されることになる。
その結果、社内で働く人は法令も顧客要求もISO規格も気にせずに、ただ社内規則とその下位文書を遵守すれば良いことになる。

これは非常に単純な三段論法であるが、これを理解している審査員は稀有な存在である。
「ISO規格を読んで仕事をすればよい」と語った審査員もいたが、その審査員は「省エネ法」ではなく、「環境法令クイックガイド」という解説本を手にして審査していた。法令を読まず解説本を使っていることに抗議すればよかったと後で思いました。
この論にご不満のあるISO審査員の方は異議を申立てることができます

現実には審査員たちが粗を探そうとして、業務監査ではこれを見ていないじゃないか、要件を満たしていないじゃないかとケチをつけるのが常である。そう言われても腰砕けにならず、説明して断固拒否すれば良い。どうせ大したことは言ってない。

そもそもISO9001でもISO14001でも、2015年版より以前の版では序文に「既存のマネジメントシステムをこの規格に適応させることも可能である」という一文があった。
要するに規格要求事項を満たすために、以前からしていることを引用して説明しても十分規格適合であるということだ。
ついでに言えば「ISO規格の用語でなくその会社の固有の呼び方であっても良い」とISO14001:2015のアネックスA.2に書いてある。だから内部監査の代わりに、内部点検とか遵守点検などと称していてもよろしい。

もちろん審査員は名前に囚われず内容を見て適合・不適合を判断するだろう。できない人は力量がないから審査員ではない。


だから1990年代前半にISO9001を認証しようとした大手製造業は、ISOの品質監査のためにわざわざなにかしなくちゃならないとなったところは少なかっただろう。なぜかというと、官公庁、JR、NTT、電力会社といったところと取引しているところは、元から品質保証を要求されていて、品質保証体制を構築し定期的に内部品質監査をしていた(しなければならなかった)からだ。

もちろん顧客によって、要求する項目も内容も異なっていた。そのため顧客によって内部監査で点検する内容が違いめんどうであったことも事実である。もっとも顧客対応に内部監査をするのではなく、すべての顧客の要求で一番厳しいものに合わせて内部監査をしていたのは当然だ。
ともかく顧客によって品質保証要求事項が異なること、それによる非効率は世界的な問題だった。ということで品質保証の国際規格を作ろうという動きになるのは当然である。


「品質保証の国際規格」であるISO9001は、それを解消するために要求事項を標準化して1987年に制定された。
もちろん従来から品質保証を要求していた顧客はそれぞれ異なる品質保証要求事項をパッとISO9001に変えたわけではない。独自の要求事項は、それが作られたいきさつと必要性があったわけで簡単に変えるわけにはいかない。

計測器 それともうひとつ大事なことは、ISO9001は項目だけで、内容は決めていない
例えば顧客は計測器の校正間隔は〇か月と要求していたが、ISO9001では「既定の間隔で校正する」としか書いてない。また顧客はこの部品/サブアッサイはトレーサビリティを記録しろと要求したが、ISO9001では「トレーサビリティが規定要求事項である場合(4.8)」とあるだけ。

ISO9001:1987 4.11検査、測定及び試験の装置 b)では、「prescribed intervals」となっている。「Prescribed」は既定(既に決まっていること)と訳される。
トレーサビリティでは「specified requirement(指定された要求)」である。
いずれもISO9001規格以外で決めろという意味だ。

するとISO9001だけでは済まず、顧客は自分が欲する校正間隔を別途定めて要求しなければならないことだ。それってめんどくさくない?……いやいやISO9001の存在意義がないでしょう。だから元から品質保証協定を結んでいたところは、それを止めてISO9001にするメリットはなかった。
NTTなど最後まで自社のNQAS(エネカス)の方がISOより進んでいると語っていた。1993年頃の話だ。結局は長いものに巻かれてしまったけど。
もっともその後、自動車業界がISO9001じゃ全然足りねーじゃねえかとなって、紆余曲折ののち今はIATF16949になったし、通信業界用品質保証規格とかどんどん作られた。

ISOMS規格はMSの項目だけであって、MSの中身が書いてないから二者間の取引には使えない、いや使おうとするとISO9001の他に要求仕様書を出さなければならないのだ。
要するに中途半端なのよね、

これはISO9001が悪いのではないと思う。ISO9001は元々が要求項目を統一しようという意図であり、そもそも校正間隔やトレーサビリティの対象品その他詳細など決めようがなかったのだ。だからISO9001初版では実情に合わせて「テーラリング」して使えと「0.序文」に書いてあった。
つまりISO9001は第三者認証用ではないということだ。しかし第三者認証といビジネスを考えた人たちは、それを金儲けに使おうとして、結局ダメにしてしまったのだ。

ともかくしっかり業務監査をしているなら、わざわざ○○MS規格のために内部監査するなんて屋上屋を架すことはない。


門松年が明けて、
この物語では2017年になった。
門松

ISO更新審査が終わった昨年末から、生産技術本部と監査部の間で、環境監査を行うことについて協議を続けている。
基本的に環境監査を従来からの業務監査の中で行うのではなく、別個に行うこととし、かつ監査の実施に当たっては生産技術本部に協力を要請するということまでは打ち合わせする前から決まっていることである。

しかし実際に監査をするためには、さまざまなことの詳細を取り決めなくてはならない。
環境監査を今までの業務監査と同時にしないのは決定であるが、時期を多少前後にずらしたほうが良いのか、まったく別に計画したほうが良いのか、幹事部署はどこにするか、構成メンバーは、メンバーの要件・条件は、監査の日程は、報告書ルートは……取り決めしなければならないことは数限りない。


なぜそのようなことを決めなければならないのか?
会社も国と同じくルールがあって動いている。書類ばかりとか繁文縟礼はんぶんじょくれいとネガティブに見られることが多いが、客観性、公平性、永続性を持たせるには、文書化されたシステムが必要だ。それは品質や環境などISO規格で決めることばかりでなく、監査にしても同様である。

さてスラッシュ電機には監査をする部署として元から監査部がある。とすると環境監査を充実させるにはどうするかは監査部の考えることだ。生産技術本部が独自に、環境監査をするという発想はあり得ない。ありえないというか社内では通用しない。

監査部が業務監査の中で環境についても監査を行ってきた今までの方法が、会社規則から言っても理屈から言ってもあるべき姿である。
しかし昨年の更新審査からまりで、今までの業務監査では環境に関して必要十分な監査をしていないことが明らかになった。となるとその是正として環境監査を補強しなければならない。

監査部に環境管理経験者を配属するという方法もある。だが本社・支社・工場そして関連会社の環境監査を行うとして、その工数は年間1.5人工くらいだ。だが一人二人では、業務の山谷に対応できない。また目ざとさとは工場の現役環境担当者にはかなわない。
監査員としての力量のあるものを最低10名できれば30名ほど確保して、繁忙期に対応でき、そして閑散期には人がいないことが望ましい。

注1:監査に繁忙期や閑散期があるのかと疑問を持たれた方、
監査なんて受けるほうは迷惑以外の何物でもない。私は現役時代、各工場や関連会社のご都合を聞いて計画を立てていたが、年末、年度末、期末、月末、連休前後、全部だめ。年度末といっても3月末だけじゃない。冷凍年度というのが有名だが、製品によって種々の年度が使われていて、ともかくその時期は忙しいらしい(棒)
じゃあいつが良いのかといえば、やらないのがベストなんて返ってくる。
監査の日程を調整するのは監査をするより難しいことだ。

注2:なぜ関連会社の監査を行うのか、行うことができるのかという疑問はまっとうである。しかしここでは省略する。そのうち書く時が来るだろう。

そういうことは誰が考えても同じであるが、その先……工場の環境担当者の位置づけ、監査事務局をどうするか、費用の扱いをどうするかなど細かいところでは、意見の相違もあり迷うことも多々ある。
A工場が技術指導を必要とした。そこでB工場から2名をひと月間、派遣すると仮定しよう。移動の旅費、宿泊費、その間の人件費をB工場が負担するのは当然だ。
だが人の移動もすることも同じであっても、A工場の人がB工場に研修に行ったと断じれば、お金の負担は全く逆になる。
現実の世界では双方の工場長の見解で(実際はその下の判断で)、応援が研修になったりするわけだ。

また廃棄物管理をしていて産業廃棄物なら法律も施設も書類も何でも知っていベテランだが、他は知らないでは務まらない。
産業廃棄物 ひとつの分野しか監査できないなら、どんな小規模の会社や工場にも、省エネ、廃棄物、化学物質、排水、大気、騒音・振動などの専門家を各一名派遣しなければならない。それでは効率が悪すぎる。
すべての監査員は、環境全般について理解していて監査する力量があり、監査先の規模に応じて人数を変えることで対応できるのが理想だ。

理想は無理としてもふたつやみっつの分野は深く知っているのはもちろん、それ以外でも監査できる力量を持っていなければならない。そのためには単なる環境担当者ではなく、そういう監査ができるよう教育しなければならない。
そのための仕組みをどうするか、当然その費用はどうするのか、

監査員として動いてもらう人に対して、毎年法令の制定改正の教育、自社の環境事故、違法などの状況説明、前年度環境監査結果、社会的関心や要求の変化、報告書の書き方その他監査員教育をするだけで一人年間数十万はかかる。
その教育のカリキュラム、テキストの作成、教員の確保
また以前、山内参与が語ったように弁護士による法解釈の教育などもある。誰が企画して費用はどうするのか?

運用のこともある。工場や関連会社に対して環境監査実施を通知するのが監査部なら、葵の紋でひかえおろうと言えば異議はないが、生産技術本部では筋違いであり、誰も言うことを聞かない。それは実施通知だけでなく資料を送付する部門も異なるとおかしい。また監査開始の挨拶もそうだ。
となると環境監査を今までの業務監査と分けて行うにしても、主催も事務局も監査部でなければならない。すると監査部が監査員派遣を生産技術本部に依頼するのか、あるいは直接工場に依頼するのかという検討課題になる。仕事の手順は簡単であるべきだが、職制の守備範囲は決まっているので簡単にはいきそうもない。


生産技術本部代表として磯原と佐久間、監査部代表として、早川と島田が何度も顔を突き合わせて議論している。
今日はもう1時間半も話し合っていて、お互いに疲れてきた。パントリーに行って好きな飲み物を注いできた。熱い茶、ホットコーヒー、コーラ、ジュースいろいろだ。
一同座って雑談になる。

佐久間 磯原 早川 島田
山内参与 磯原 早川 島田
生産技術本部のメンバー 監査部のメンバー

磯原 「生産技術本部としては将来的に、各工場の環境担当者を管理したいのですよ。今は工場で採用した人の中から環境部門に配属されていますね。環境担当者を全社的に育成する制度もないどころか、工場ではどんな育成をしているのか、どんな経験者、資格者がいるのか把握もしていない。
願わくば、それを人事とか経理のように、本社からコントロールしたい。可能なら定期的に人事異動をする。工場から工場へ、工場から本社へそして工場へと。
それは人事の力を持ちたいとかでなく、そうすることによって各工場の環境管理レベルを一定にすること、教育して一人前にするには効率的であること、そんなビジョンを持っています」

早川 「確かになあ〜、正直言って環境管理、露骨に言えば公害屋なんて、好んでその部署を希望した人なんて少ないだろう。今の時代になって環境はもてはやされているが、ほんの数年前まで、大卒でも高卒でも採用されると、成績の上のほうから開発とか営業に配属され、次が製造部門となり、工場の施設管理なんて残った者が行くところだったな」

佐久間 「アハハハ、それはひどいと言いたいところですが、事実なのが悲しい。
以前、山内さんから環境担当者を人事担当者のように管理すべきだという話を聞いたとき、転勤族が施設管理できるのかと疑問を持って反論したんですよ。でも考えてみると工場特有の施設とか癖のある機械ではダメですね。取扱説明書を読めば誰でも動かせる設備でないとだめです。
そういうものを導入し維持する、そういう体制でないと事故防止はできないような気がしてきました」

磯原 「私は電気主任技術者でした。電気の場合は廃棄物処理とか公害防止施設と違い、地域の特性とか、設備が変われば使えないということはあまりありません。でも一つの工場に長年いれば、新しい設備に触ることもないし、省エネ技術などにも疎くなってしまいます。人間は常にリフレッシュして新しいチャレンジをしなければなりません」

島田 「そういうことをおっしゃる皆さんは、環境監査は監査部から生産技術本部に依頼して、生産技術本部が仕切る仕組みがよろしいというわけか?」

磯原 「まあ結論を言えばそうですね。事務局の作業が面倒なら、私の立場の者を監査部兼務として、事務処理させる方法もあります」

島田 「職制の名を語るために、兼務とか出向とか形だけってのも芳しくないなあ〜」

早川 「それにつけても生産技術本部直下というのがひっかかるな。生産技術本部に環境部を残せなかったのかね?」

佐久間 「そのいきさつは私も分からないのです。1993年でしたっけ? 経団連が環境自主行動計画なんて出して、各企業は猫も杓子も環境部なんてのを設立しましたよね。我が社でも環境部を作ったのはその時だったように思います。
環境部っていうからどんな仕事かと思えば、今まであった汚れ仕事を集めただけだった。
私のいた千葉工場でも環境課を作りましたが、一言で言えばボイラーの煤煙処理、廃棄物処理、排水処理、上下水道などを集めて看板を挙げただけです。工場の植栽担当なんて近所に枯れ葉が飛ぶのを謝るのが仕事でした。
施設管理から環境に名前を変えて何が良かったのですかね?」

早川 「あ〜、そういう深い意味ではなく、今生産技術本部にある施設管理課は廃棄物と公害と省エネだけになってしまったよね。だから山内さんも施設管理課を環境監査の主体にするのはおかしいと考えているのだろう。
環境としての一般的な仕事を担当しているならまた別なんだろうけど」

磯原 「なるほど、そう言われるとなんとなく納得します。生産技術本部が環境担当というのは間違いないですが、本部長の環境担当スタッフとして山内さんがいるけど、それを担うラインがありません。どう考えてもおかしい」

島田 「旧環境部から抜けた職務はいくつかある。まず環境報告書がCSR部に移ったのは妥当だろう。
環境配慮設計が各事業部に移った。これは技術も評価もアイデアや開発の時代は終わって、経産省も製品ごとに省エネ基準を作ったからもう新規のものではなく、設計に織り込まれたと考えたとしてよいのではないだろうか」

佐久間 「まあ、そうなんでしょうね
欧州から始まった化学物質管理ももうだいたい決まったから、あとは運用だけということかな。事業部でしっかりやってくださいといことだろう。
10年前PRTRも環境部がメインになって仕組み作りから報告の精度向上などいろいろやったが、今はもうルーティンだからそれと同じでしょう」

コーヒー コーヒー ミルク コーヒー コーヒー

磯原 「佐久間さんはこの仕事長いですから、生き字引ですね」

佐久間 「そうだねえ〜、環境部というものも25年の寿命だったね。俺は工場からしか見てなかったけど、本社の部とか課という組織はどんどん変わった。それは性格も変わったし名前も変わったし、やってることが数年単位でどんどんと変わっている。それは環境に限らない」

島田 「ああ、そういう見方もあるね。分かる分かる、」

磯原 「私はわかりませんが」

佐久間 「環境部ができたのが1993年かな、今から24年前だ。当時は経団連の環境行動計画の当社版を作ろうとしていたね。公害とか廃棄物なんて頭になかったようだ。そうそう、汚いものを扱う仕事だという認識がなかったと思う。当時は女性の活躍する職場なんて社内外に言ってたね。
環境行動計画を環境部全員がかかってでっちあげると、次は環境報告書というものを作ろうと頑張っていた。なにしろ当時の人は見たこともない。どんなものができたかというと、磯原君も見たことあるだろう」

磯原 「20年前ですか、まだ大学生でしたね」

佐久間 「環境も歴史となったか……ともかく当時の環境報告書はきれいな写真がたくさんあったが、数字がなかったね。廃棄物の数字が載るようになったのは1998年頃、20世紀末からだろう。それ以前は本社どころか工場だって特管産廃以外は数量を把握していなかったと思うよ」

注:マニフェスト票は1993年に義務化されたけど、当時は特別管理産業廃棄物(特管産廃と略す)だけ対象だった。普通の産業廃棄物まで拡大されたのは1998年から運用だった。
だから企業が産業廃棄物の数量を正確に把握するようになったのは1999年以降である。

佐久間 「その次は1996年末に制定されたISO14001認証の時代となった。もう環境部のメンバー全員が日本中の工場や関連会社を回って認証の指導、言ってみれば社内コンサルをしたわけだよ」

磯原 「ええと、1998年頃ですね、私が入社したのが2000年ですから、それの前ですか」

佐久間 「ISO14001認証が一巡したのが2001年くらいかな。その次は…」

磯原 「その次もあるのですか?」

佐久間 「終わりなどないさ、常にみんなで新しいテーマを追いかけるのか追いかけられているのか、そんなことをしていたのが環境部だ。
PRTRもあったし、環境事故多発もあったし、公害防止記録の改ざん事件もあったし……
まだ環境という仕事が確立していないのか……それともそもそも環境というカテゴリーはなく寄せ集めに過ぎないのか?」

島田 「ISOなどに無縁だった営業の私が、特に記憶しているのは突如非製造業にISO14001認証を拡大していったことだな」

早川 「当初は東京都がISO14001認証している企業を優遇するという施策でしたね。2000年頃でしたか。決定的なのは国交省の経審の加点ですか?」

島田 「そうそう、そして最近では欧州の化学物質規制対応と…
考えてみると営業もずいぶん環境の動きに揺さぶられているねえ〜」

早川 「しかしここ数年の状況では環境問題も一巡したからもう環境部はいらないだろう。
地球温暖化なんて一企業がどうこうできるものではないし、人類が一丸になってもどうにかなるとは思えない」

佐久間 「そう考えると、別に環境部がなくても困らないのかもしれない。ということで環境部はいらないとなったのですかね?」

島田 「昨年末にISO更新審査がありましたね。それでISO規格を読んだんですわ。序文に『環境のreviewと監査を行っただけでは、組織のパフォーマンスが法律や方針を満たすには不十分かもしれない。これを効果的にするには体系化されたマネジメントシステムが必要』という文章があった」

注:ISO14001:2004の序文である。このお話は2017年1月だから、既に2015年版が発行されていた。しかしシステム切り替えの期限は2018年9月15日だったから、この時点では旧版を持ち出してもおかしくはない。

島田 「『Review』を『見直し』と訳しているが、分析とか評価あるいは検討と訳さないと日本語にならないだろうね。
それはともかく、それを読んで私は思ったんだ。『体系化されたマネジメントシステムがあっても、組織のパフォーマンスが法律や方針を満たすには不十分かもしれない。これを効果的にするには環境の評価としっかりした監査が必要』だとね。
おっと、おふざけじゃないよ」

磯原 「どう転んでもISO認証の価値はないということですか」

佐久間 「結局、環境管理なんて泥臭いことでしかありませんよ。仕事ってそういうもんじゃないんですか」

早川 「おっ、仕事に戻ろう。俺たちが仕事しなくちゃ、環境監査が始まらない」


うそ800 本日の思い出

法律を作るのも大変でしょうけど、会社の規則を作るのも大変です。
国がなにをするにも法律がないとできないと同じく、会社でもなにかするには会社の規則で裏打ちされていなければなりません。
じゃあ作るのが大変かというと、これはもう簡単でしたね。ISO認証なんてするときは初めの頃は会社規則を50本くらい作りました。

5年もISOに関わっていると、ちょっとおかしいのではないかと思うようになりました。過去からしている仕事でISO要求を満たしているのを説明できるのではないかと考えるようになりました。
更に5年経つと、余計なことをしたくない。実際の仕事を見てほしい。審査員の仕事はケチをつけることではなく、現実がISO規格に適合しているのを確認することだろうと思うようになりました。その頃は新しく会社規則を作らず、現行のものの文章を少しいじる程度になりましたね。

おっと、お断りしておきますが、私は1993年頃から2013年まで、実際に渦中にいて認証の仕事もしましたし、指導もしていました。口ばかりではありません。
何回認証をしたかって
   星の数ですよ。


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