ISO第3世代 47.環境監査教育1

23.01.30

*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。

ISO 3Gとは

大山 「発言させてください。今ご説明あった環境監査の考えは全く間違っています。そういうのは監査じゃありません。監査というのはISO規格に基づいて行わなくちゃならないんです」

ここはスラッシュ電機本社ビルの会議室である。グループの環境監査についての関連部門の調整がついて、いよいよ監査の準備段階に入った。今日は各工場と関連会社から監査員候補者を派遣してもらい、教育開始の初日である。
講習会 参加者30数名、そして主催の監査部、支援の生産技術本部などが出席している。

監査部の設立趣旨説明が終わり、最初の環境監査についての話を磯原がしていたときである。浜松工場から参加した大山氏が突然立ち上がり、磯原の説明を遮って話し始めた。

磯原は驚きはしなかった。というのは以前工場にいたとき節電とか電気安全の教育で、自分が話しているとき受講者が断りなく質問や突っ込みをすることはよくあった。だからまたかと思う程度である。
そして大山氏の発言内容は十分予想していたことで、対応も考えていた。

大山 「そもそも監査とはシステムを見ることです。そんな法を守っているかとか、伝票を何百枚も点検するようなことは監査じゃありません」

磯原 「ええと、浜松工場の大山さんですね。ご質問というかご意見というか、ありがとうございます。質問は後で受けようと思いましたが、これは非常に基本的なことなので、この時点で説明させていただきます。

監査とはISO規格が新たに決めたことではありません。既に世の中で確立された業務のひとつです。監査が考えられたのは何千年も前で長い歴史がありますが、とりあえずそれは省きましょう。今、世の中で監査とはどのようなものと考えられているか、それをお話しします。

監査とは国語辞典を引けば『組織において業務の執行や財務状況について、法令や組織のルールの遵守状況や有効性を調査して報告すること』となっています。
環境監査とは環境に関する法令や会社のルールについて調査することになります。よろしいでしょうか?」

大山 「それは一般論ですね。環境監査で調査することは、環境方針があるのかとか、文書管理とか、環境側面を決めているとかを調べることでしょう」

磯原 「大山さんはISO14001をイメージされていると思います。序文でISO14001規格は、社会経済的ニーズとバランスをとった環境保護の枠組みが作れ、リスク及び機会に効果的に取り組みことができるとありますね」

大山 「そうありますね」

磯原 「お互いの認識が一致しているので安心しました。ISO14001は組織が備えるべき環境に配慮した仕組み定めています。ISO認証とはその仕組みが規格要求を満たしているかを確認することで、満たしていると確認されるとISO認証となるわけです。
ここまでよろしいかと思います。

しかし我が社の監査部が求めることは、仕組み、つまりマネジメントシステムがISO規格要求を満たしていることではありません。監査部の知りたいことは、工場や関連会社が環境に関する法令を守っているか、事故が起きないかということです。
監査とは先ほど言いましたようにいろいろな種類があります。今回研修を行い今後実施予定の監査は、会社の仕組みを調査するのではなく、その結果が期待とおりであるかを調べることです。
それをご理解いただきたいのです」

大山 「結果を達成したか/しないかを調べるよりも、しっかりした仕組みを作ることが正しいと思います」

磯原 「機械でも人間でも、計画し実行するだけでなく、その結果を検出して前にフィードバックすることが必要です。完璧なシステムでもエラーとか外乱で目標とずれが出ますからそれを補正しなければなりません」

大山 「マネジメントシステムではチェック機能が監査であり、その結果を是正処置でフィードバックかけています」

磯原 「ISO規格の監査は遵法監査ではないのはご存じですね。それだけでなくパフォーマンスも見ていません」

大山 「とんでもない、しっかりパフォーマンスも見てますよ」

磯原 「確かにパフォーマンスは各項番の要求事項にあります。しかし監査の要求事項にはありません。目標の達成状況は常に監視測定をして異常があれば是正処置をするとは書いてあります。 目標未達は監査では良し悪しの対象外です。監査で見るのは監視測定をしているか、是正処置をしているかだけです。

省エネが未達だとして、それを不適合にはできません。是正処置に問題があれば不適合でしょうけど、気候や業務繁忙ならそもそもISO規格の外。仕組みが良くて、異常を見つけて、みんな頑張っても良くならない、それはISO14001の範囲外なのです。
簡単にオーディオ回路に例えてみましょう。音声信号をアンプで大きくしスピーカーを鳴らします。通常は歪を抑えるためにアンプの出力を入力側に戻してネガティブフィードバックをかけています。

フィードバックの例
フィードバックの例

しかしアンプの出力以降の外部内部の歪を除去するには、もっと後ろ、スピーカーからの音声出力をフィードバックしたほうが良いはずです。
ISO規格の監査はアンプの出力をフィードバックかけているだけです。この監査はアンプ出力からではなく、真に目的とするスピーカーの音をとらえてフィードバックをかけるような大きなループだと考えてほしい」

注:電気信号が音となった後、それを検出してフィードバックをかけることをモーショナルフィードバック(モーションフィードバック呼ぶ人もいるが英語ではMotional Feedbackが正しいようだ)と呼ぶ。ステレオでは昔からあったアイデアで、各社からいろいろ製品化されたがメインにならない。余計な部品、回路が必要になること、アンプやスピーカーが高性能になり余計なことをしなくてもよい音が聞けるようになったからか?

大山 「それはISO規格の監査と違いますね。なぜそうする必要があるのですか?」

磯原 「会社では『頑張りました』ではダメなのです。結果を出さなければなりません。
経営層に『この会社の仕組みはISO規格通りでした』報告しても意味がありません。報告すべきことは『法違反があったのかないのか、事故の恐れはあるのかないのか』なのです」

大山 「そんなのはISO規格の求めるものではありません。ISO規格と関係ない監査なら私は関わりたくないです。失礼します」

大山は身の回りを片付けて退席してしまった。周りはあっけにとられている。
壇上の磯原は佐久間が大山の後を追って会議室を出て行くのを見て、再び話を始めた。



磯原の環境監査の内容説明が終わり、休憩時間となった。
監査部と他部門のメンバーは会議室を出ていく。もう彼らは顔を出さないだろうと磯原は思う。

佐久間が部屋に戻ってきたので山内のところに集まる。

山内参与 「ハプニングだったな。ありゃ、いったいどういうことだ?」

佐久間 「追いかけて話をしてきました。どうもこの監査は彼が思っていたようなものではなく、がっかりしたというか不満を持ったようです。もう受講する気がないと言います。今回の催しは本社が監査員を募集して研修をするという形ですから、辞退するなら止めませんと了解しました。
ここからは私の推測ですが……実は私は彼を以前から知っています……彼はISO第一世代なんですよ。ISO認証のプロと言ってもよいでしょう」

山内参与 「ISO第一世代とはなんだね?」

佐久間 「話せば長いんですが……ISO9001が制定されたのは1987年ですが、日本に上陸したのは1993年頃でしょう。EUの旗 EU統合をご存じでしょう。条約発効が1993年で実際には1994からでしたか。
統合されるとEU域内でのヒトとモノの移動は自由化されるという話でした。ただなんでもOKというわけでなくISO9001認証していることが必要でした」

山内参与 「20年以上前か?」

佐久間 「古い話ですね。ISO認証の条件は域内だけでなく、域外からの輸入品にも適用されました。それで欧州に輸出している企業はこぞってISO認証をすることになった。そのときの担当者を私はISO第一世代と呼んでいるのです」

山内参与 「要するにISO認証に長年関わってきたベテランということか」

佐久間 「そうです。そしてISO規格至上主義という意味もあります。彼は元々品質管理か何かだったはずです。ISO9001の後にISO14001が表れたとき、その経験を生かしてISO14001認証も彼が中心で行った。
彼はISO規格なら何でも知っているでしょうけど、環境については素人なんですよ。法律も知らない、廃棄物も知らない、排水も騒音も省エネも知らない。想像ですが今回もISO規格通りの監査だろうと考えて、それなら知っているからかっこいいところ見せようと思ってたんじゃないですか。ところが内容が全然違ったので……」

山内参与 「なるほどな」

佐久間 「あっ、想像ですよ、想像」

山内参与 「分かっている。彼の発言でもめるかと思ったが、磯原君がうまく対応してくれて良かったよ」

佐久間 「ISO規格の要求事項はそれなりに意味はあるでしょうけど、実戦的じゃないですよね。曖昧模糊な文書管理、記録管理の規格を読んで、ああだこうだと解釈するなんて無意味です。私は脇で見てきましたが呆れましたね。

私は環境の実務で数多の失敗を重ねてきました。文書のバージョン管理を怠けて問題が起きた、記録が退色して証拠能力がなくなったなど肌身で知ってます。そしてまたそういう対策はISO規格でない方法でも対応できるし、ISO規格通りでは問題が出ることもある。現実をもとに是非を考えてました。
ISO規格の文言をひたすら解釈する大山先生は、私とは水があいません」

山内参与 「ここに来たメンバーはどうなんだろう?」

佐久間 「応募者の経歴を見ると、ほとんど環境屋です。ISO認証では私の言うところのISO第一世代が晴れ舞台にいて、環境担当は冷飯食いでしたからね。ですから磯原君の話は理解したでしょうし、大山さんには賛同しないでしょう。
もちろん私もISO第一世代ですが、元はボイラー屋でしたからばい煙だしたら即苦情が来るという仕事でした。そんなわけでISO規格だけしか知らない人間とは違い、結果がすべてという人間です 受講者たち

受講者たちがぞろぞろと入ってきた。トイレを済ましてきたのだろう。
数人が席に向かわず、3人のところにやって来る。

横田 「磯原さんでしたよね、初めまして福岡工場の横田といいます。廃棄物を担当してます。環境監査の講習会ですと、どこでもISO規格の話ばかりでつまらないし、仕事に役立ちません。今日の話は仕事に密着していてとても面白いです」

磯原 「ありがとうございます。それを聞いて安心しました。話はできるだけ面白くというか興味を引くように努めます」

横田 「大山さんにはISO審査トラブルでよく相談に乗ってもらっていました。彼はISO規格には詳しいけど環境管理の実務経験はないですから、今日の話に興味がなかったのでしょう」

福田 「文書管理とか力量なんて議論してもあまり意味ないですよ。問題が起きないように、そして問題が起きたら素早く対応することがすべてです。ISO審査なんて現実離れしたお芝居にしか思えません。
あっ、僕は岡山工場の福田といいます。担当は植栽です」

磯原 「ISO認証は意味がないとは言いにくいですけど、目的は結果ですからね。
あぁ私は福島工場から昨年本社に転勤になりました。工場では電気主任技術者をしてました。電気は環境とは言えませんが、省エネは環境の範疇でしょう」

佐久間 「そういう意味では福田君の植栽はズバリ環境じゃないか」

福田 「植栽が環境に良いかっていうと、どうなんでしょうねえ〜。だいぶ前のこと、
アホー、アホー
ビオトープ
自然を大切に
草草草草 草 草草草
ビオトープ 早い話が 雑草地
カラスもアホーと鳴いている
詠み人知らず(環境嘘歌集より)
もう3年位前かな、近くの工場で、予算がないからと工場緑地の手入れを止め、ビオトープって看板掲げたところがありましたよ。
雑草ぼうぼう、池も掃除せず、荒れるがままにしてました。ビオトープを作ったと聞いた近くの小学校が見学に来てほめてました。
草木に手を入れるのは環境に悪いようです。アハハハ」



次は佐久間の話だ。

佐久間 「磯原君の話のとき浜松の大山さんから疑問が出された。それで私からも監査の考え方について説明する。
そもそもなぜこのような環境監査をするようになったかというと、先ほど監査部の方からも話があったが、露骨に言えばISO審査もISO14001の内部監査も役に立っていないことだ。
驚くことはない、諸君もそれに気が付いていて、どうしようかと考えあぐねているはずだ

ISO認証はマネジメントシステムができているか否かだ。だがマネジメントシステムが立派なことは目的ではない。目的は、違反しないこと、事故を起こさないことだ。そして立派な環境マネジメントシステムがあれば、事故も違反もないという理屈もない。
諸君もテレビや新聞報道で見ているだろうが、環境法違反や環境事故は結構な頻度で起きている。そういったときISO認証機関はどうするかといえば、審査した後で事故を起こしたり違反が見つかると、審査でうそをついたのだ、虚偽の説明をしたのだという。
君たちはそういうのをどう思う?

結局、ISO認証は何の意味もないと俺は思っている。ISO認証すれば事故が起きないわけでもない。ISO認証していると事故が起きる確率が低いというデータもない。そして事故が起きた時、ISO認証していれば罪一等減じるということもない。むしろマスメディアではISO認証しているのにと、認証しているほうが罪が重いように報道される。それじゃ、一体全体、ISO認証とは何だろうと考えてしまう。

ビジネスをする上でISO認証が必要という意見もある。ISO認証を要求することは独占禁止法に反するという見解が出ている。だからグリーン調達では、ISO認証を要求できない。ISO認証またはその他の環境認証を受けていることという表現をしている。その他の認証なら効果があるという証拠も聞いたことはないがね、

という訳でとりあえずISO14001は置いといて、遵法と汚染の予防を果たすには、別の方法を考えねばならない。
我々は、法に違反していないか、事故が起きる恐れがないかを徹底的に点検する環境監査を制度化した。これは俺が決めたということではなく、関係部門で検討して執行役会議で決裁されたことだ。つまり業務命令だ。

だから環境監査といってもISO規格でいうものとは大きく違う。監査方法も監査基準もね。
この監査は基本全数監査だ。帳票は抜き取りでなく全数点検する。施設が複数あれば、全箇所点検する。

監査基準も違う。監査基準とは『監査の際に合否を判断するための基準』だ。監査基準は監査によって異なる。ISO審査においてはISOMS規格と会社が定めたルールになる。

我々の行う環境監査は、監査基準は法令と会社の規則だ。
法令とは法律、施行令、施行規則、そして条例だ。条例は県条例と市町村条例がある。田舎に行くといくつかの自治体が共同して一部事務組合を作っているところがある。そういうところは消防組合規則とか廃棄物処理規則が条例に相当する。

会社が定めたルールといってもひとつではない。
まず会社規則がある。会社規則は工場の人にはあまり関りがないかもしれない。工場では、それを工場に合うように具体的にした工場規則を制定している。工場規則はみな知っていると思う。
それから各部とか各課で定めた部の規則、課の規則があるかもしれない。多くの部や課では文書管理をするのが手間なので、それを工場の規則として制定することが多い。
基本的に部内にしか適用しないなら部の規則とすべきだが、工場の規則としても悪いことはない。ただ工場の規則となると決裁が文書管理担当部長となるから、自分の部のことでも改定時はその決裁を受けなければならないことになる」



佐久間 「ハイ、質問どうぞ」

福田 「先ほど環境監査は結果だけを見るとおっしゃいましたが、結局文書を見るのでしょう?」

佐久間 「見る順序というか考えが違うんだ。我々はまず結果を見る。つまり煙突からの排ガス測定結果を見たとしよう。異常があれば担当者の力量、教育訓練、要領書はどうか、規則はどうかとたどる。 煤煙 問題が起きたからにはその連鎖の中に原因があるはずだ。
もちろん煙突の排ガスに異常がなければそれでおしまいだ。

ISO審査では著しい環境側面とされれば、手順書を定めたか、それに基づき教育訓練をしたか、担当者は力量を持っているか、運用の監視測定はとたどる。そして異常があれば是正処置はどうしているか、完了していればオシマイというわけだ。
我々の行う監査は結果だけだ。もちろん法律で定めてある手順書は制定されているかいないかを見る」

福田 「よくわかりました」

佐久間 「ほかに質問あるか?」

? 「そうしますとISO規格による内部監査と補完的な関係になりますね。この監査だけでは足りず、マネジメントシステムが規格を満たしているかの確認も必要と思います」

佐久間 「口だけではわかりにくい。先ほど磯原君が見せたフィードバックの図で考えると、我々の考えている監査は内部をブラックボックスとして大きなループを回しているとも言える」


フィードバックの例
フィードバックの例

佐久間 「ISO規格のフィードバックは狭い範囲で回しているわけだ。本来の目的、つまり遵法と汚染の予防を実現するには大きなループのフィードバックが必要だ。そう考えると君のいう補完的とも解釈できる。
ともかく結果が問題であれば小さなループではどうにもならない。

検査に例えてみよう。製造工程の検査で不良が発見されたら前工程にフィードバックして対策しなければならない。これも大事だが、この小さなフィードバックは必須ではない。最終検査の大きなフィードバックは最後の砦でなくせない。そんなイメージだな」

詳しくはこちら ⇒ 監視についての雑談

? 「わかりました」

福田 「現実には決裁印欄が部長や課長って書いてあっても、先輩が代印を押しているのが普通なんですが…」

佐久間 「そういうことは、まずは上司に聞いてみるんだな。
廃棄物でも公害測定でもボイラーでも、記録作成を誰が作成し誰が決裁するかを工場規則で決めているはずだ。場合によっては法規制があるものもある。
但し何事にも例外があり、決裁者不在の場合はどうするかも決めているはずだ。更に拡大解釈して問題ない平常時は誰々に委任すると決めているかもしれない。決めていないかもしれない。
それはケースバイケースで確認しないと分からない」

福田 「分かりました」

横田 「帳票を全数検査するそうですが、時間がかかると思います」

佐久間 「いやいや、大したことはない。環境関係で一番量が多いのは廃棄物のマニフェスト票だろう。でももう半分は電子化されているから紙のものは年に100枚はないだろう。それなら30分でできる」

注:マニフェスト票は時とともに電子化の割合が増加している。この物語の2017年(平成29年)では55%であった。
参考:電子マニフェスト登録件数

横田 「冗談でしょう、できるわけありません」

佐久間 「えっ、君は無理か……やればできるさ。
指サック 排水や大気の測定データも月ごとにまとめたものでなく日々の生データを見る。月ごとにまとめたものは嘘かほんとかわからないからな。
そうそう、監査に行くときは指サックを忘れるなよ」



冒頭に上げた大山さんのような見解を持つ人はけっこういます。上に書いたのは私の現役時代の体験です。そういう方はISO規格が聖書かお経のように、ありがたいものだと信じているようです。
別の人ですが、ISO規格なんぞ忘れて遵法と事故のリスクをしっかり見てほしいと何度言っても納得しません。
どうしたかって?
監査員をやめてもらいました。それしか方法はありません。宗旨替えは非常に難しい。信仰心が強い…いや執着が強いのでしょう。

しかしなぜそれほどISO規格がありがたいのでしょうか? 私は何年経っても理解できません。ISO14001の意図は「遵法と汚染の予防」ですし、私もそれにに賛同しないわけではありません。
しかしその実現にはいろいろな手段があるはずです。そして事実ISO14001は序文で、「目的を達するにはいろいろな方法がある。ISO14001はその一つだ」と語っています。別の方法では悪いとは言っていません。
方法がいくつもあるなら選択の余地があり、その選択は好みにより状況により変わるはずです。
ISO14001に書いてある方法が唯一最良とは限りません。

そもそもISO規格だって何度も改定されていますから、ISO規格がすばらしいといってもどのバージョンが素晴らしいのでしょうか?
「私はISO教徒だ」といっても「2004年版ISO教徒」なのか「2015年版ISO教徒」はたまた「1996年版ISO教徒」なのか。
もし常に最新版の信者というなら、また疑問が湧いてくる。規格改定のときは、疑問を持たずに古いものを捨てて改宗したのだろうか。信仰が強ければ簡単に変えずに、30年くらい宗教戦争をしなくちゃいけませんよ。

ねじ回し ISO規格なんて信仰の対象じゃありません、単なる道具です。役に立つなら使う、役に立たないなら捨てる、良いものが現れたらそれに変える、そんなものです。
だれがねじ回しが立派だと思いますか。そりゃねじを締めるときは必要です。でもね、ありがたがるものではないでしょう。ISO14001は項目が漏れてないか確認するには役に立つかもしれないが……いや漏れているのがいくつもありそうだ、だめだこりゃ

それにね、内緒ですが……ISO14001が実際には「遵法と汚染の予防」に有効ではないようですよ、御利益ごりやくのない宗教を信じてもお金を巻き上がられるだけ……


うそ800 本日の思い出

講習会などすると必ずISO至上主義者がいました。ISOのためなら違反でも捏造でもするっていう熱意ある人もいるのです。
彼らは遵法と汚染の予防というISO14001の意図の実現より、ISO規格要求事項を満たすことが大事なのでしょうか?

そういう輩は絶滅危惧種ではなく、絶滅必達種ですね。レッドデータブックならぬデスノートにリストアップしなければ……


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外資社員様からお便りを頂きました(23.01.31)
おばQさま いつも有難うございます。
>大山さんのような見解を持つ人はけっこういます。
ISOではありませんが、私も体験してびっくりしました。
個人の費用で受講しているならば、個人的感情で怒って帰ろうが自由ですが、会社の業務として参加しているならば、最後まで聞いて、その上で意見を述べるべきでしょうね。
何より、その人だけの時間では無いのですから。

私が体験したのは「グローバルビジネス時代のビジネス英語」という表題で、大手出版社が開いたセミナー講師での体験。
英語の勉強と誤解を受けるから「ビジネス英語」ではなく「ビジネスマナー」としたいと何度も言ったのですが、開催側に押し切られてしまいました。
案の定英語のお勉強と思ってきて、私は英語は専門で無いし内容もビジネスマナーや習慣が中心なので「英語のレベルが低い」と怒って帰った人がおりました。
その人も、会社の名前で申し込んでいるから、会社の金で来たのでしょうね。満足できなかったのは拙い講師は私の責任と思いますが、ビジネスマナーを期待してきた人が殆どだったので、概ね満足のアンケートは頂きました。

何が言いたいかといえば、仕事の場なのに「個人的感情や価値観を最優先する人」がいるのですね。
もちろん私も立派な人間ではありませんから仕事の場で怒りたい場もありますが、とりあえずは我慢します。
でも一定数「大山氏」のような人間がいて、周囲も「動機が純粋ならイイじゃないか」と寛容だったりする。
以前に陸軍下剋上がおきたのはマネジメントの欠如だと書きましたが、それを支えたのが「動機純粋論」。私的な利益で無く、不公平に憤慨する純粋な動機に寛容、だから青年将校の行動に山ほど除名嘆願が集まった。
一方で会社は「人のお金を預かって利益を出す」のが役割だから、動機よりも利益が重要。
それに付随して「法を侵さず公序良俗に反しない」という条件がある。
マネジメントの根幹は、結局 ここに尽きる気がします。 動機は、従業員のやる気とかモティベーションの問題ですから、不要では無いが部下のマネジメントの問題。
現実の仕事は好きなことだけでないから、嫌だろうがやらせるのは上司の役割。
大山氏の行動は上司も知るところになるから、その時に彼の上司が、どう対応するかが楽しみです。

外資社員様 毎度ためになるお話ありがとうございます。
人間誰しも人から認められたいという、マズローでなくてもそういう思いはあると思います。
ISO認証なんて会社の根幹と関係ないですし、品質保証とか環境なんてのも1990年以前は現役で使えない人が配属されるのが常でした。そういう人たちがISO認証しなけばならないというビッグチャンスに巡り合い舞い上がってしまった時代があったのです。今考えると「あれはなんだったのだろう?」としか思えません。
そういうビッグウェーブに乗った人たちは「俺が会社を動かしている」「俺が会社の仕組みを作った」なんて妄想というか暴言を吐いているだけでなく、ネットで情報発信、社外の会議に出る、本を書くなどして大御所とみなされたりしました。
そういった人たちの上長は、舞い上がった人たちの以前の行状を知ってますから、何も言わずに掌の上で躍らせていたと思います。
2010年を過ぎて、もうISOの時代じゃないということは皆さん認識していますから、勘違いした人たちも夢から覚めまともに戻ったと思います。運のよい人たちは2010年頃までに退職したでしょう。私もその一人かもしれません。ただ単なる勘違いで終わらず、あれは勘違いだったのだと語り伝えようと思います。

なお、私の知る限り結論とか実績を出す会議や研修会でなければ、その結果や成果をフォローされることはあまりないのではないでしょうか?
20年も前はWordも使えないのか! それじゃ社外のWord講習会に行ってこいなんてことありました。今ならオフィスソフトを使えて当然でしょうけど。
そんな人たちが真面目に講習会に行ったかどうか分かりませんが、その後もちっとも上達してないっていうのもオヤクソクでした。


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