「瀕死の中国」  宮崎 正弘
出版社ISBN初版定価(入手時)巻数
阪急コミュニケーションズ 4-484-05208-32005/05/271600全1巻

私は現役の会社員である。当然、同業他社、取引先、そしてまた環境管理やISOを通じての知り合いなど多くの方とのお付き合いがある。
最近はどこでも中国に進出しているからそんな知り合いからいろいろな情報が入ってくる。
    中国に進出といっても、私が関わっている人たちは中国で生産して日本や西欧への輸出がほとんどであり、中国国内向けという製品は少ない。中国の市場というのが言われているほど大きくはないからだ。

  • 停電が多くて工場が突然止まるんだよ、まいったね。
  • 中国では新築ビルでもすぐにあちこち壊れたりほころびが出てくる。築7〜8年も経ったビルだと崩壊するんじゃないかと怖くて入りたくないよ。 mankomatta.gif
  • 一歩外に出ると空気が汚れていて、喉が痛くなる。
  • 仕事を覚えていい工員になっても2年過ぎると田舎に帰らなくてはならないんだ。常に教育訓練をしているようでたまらん。
  • 環境問題を語るような、とてもそんな価値観の世界ではないよ。ゴミは捨てればよいだけ
  • 食べ物が怖いね。日本で時々、中国からの輸入野菜に使用禁止の農薬が見つかり輸入禁止とか報道されているけど、俺たちは毎日それを食べているわけですよ。
  • ヨーロッパに続いて中国でも電気製品に使用禁止物質規制をするなんていうけど、そんなことできるわけないじゃない。
私は幸いというか残念というか、まだ中華人民共和国という国に行ったことはない。
しかし、多くの方から聞くお話を総合するとまだまだ中進国段階、先進国とはいえないようだ。そしてやはり一番の問題は独裁体制ではないのだろうか?
タイや台湾と比べると政治体制や所得の差は非常に大きい。もっともタイや台湾の人件費高騰で、多くの企業が(タイや台湾の企業も)中国に進出して行ったわけだから比べることが間違っているのかもしれない。
中国にとっての問題は、単に今現在開発が遅れているとか、インフラが整っていないということではなく、所得格差の拡大、食糧危機、水不足、環境の悪化、エネルギー不足などなどの問題によって現在の社会に不満を持つ人が非常に多いということ、そして現在の状況すら維持できなくなりつつあるということだろう。
私はいつも大局的にものごとを考えようと語っている。ひとりの人やひとつの工場あるいは一都市を見ても大局はわからない。エネルギー収支、食料生産高、廃棄物の状況なんてことは、わざわざ中国に行くまでもなく、年鑑とかインターネットですぐ分かる。そして、過去現在の数値のトレンドを把握して外挿すれば近い将来は予想できる。

過去より中国はバブルだ!いつか崩壊するぞと言われてきた。
このウェブで取り上げている本でも「覇権か崩壊か、2008年中国の真実」やレスター・ブラウンの『誰が中国を養うのか』などがある。
このように、世界の多くの人は中国は崩壊する、中国バブルは破裂すると読んでいる。
論点は中国のバブル崩壊、カタストロフがいつ、どのような形で起きるか?ということだろう。

womankomatta.gif もちろんこのようなことは多数決で決まるわけではないので、多くの学者や評論家が語っても真実となるわけではない。 
嘘を1000回言えば真実となると信じたのは、ナチ、北朝鮮、韓国、そして中国だけである。


ソ連崩壊が想像もつかないほど突然だったことを覚えていらっしゃるでしょうか?
reagan.jpg 80年頃に小室直樹がソ連は崩壊すると語ったとき、話題にはなったが信じた人は少なかったと思う。私も信じなかった。
82年頃レーガンがスターウォーズを唱えたときソ連は強大でした。
89年にベルリンの壁が崩されたとき、それから2年後にソ連が崩壊すると想像した人はどのくらいいただろうか?

日本のバブルが崩壊する直前まで「あがる!あがる!」と叫んでいた経済評論家、株評論家はどれほどいたかご存じか?
化学反応でも核分裂でも社会現象でも病気の流行もいったん始まれば爆発的に進行する。ものごとはそのようにできているらしい。

では中国はどうなのだろうか?
私は以前このホームページにも書いていたが、2008年のオリンピックまではもつだろうと考えていた。
この本を読むと、どうもオリンピックまでもちそうないような気がしてきた。
というか、この本では中国という国は実はないのだと語っているような気がする。日本人は国というのは国境という目には見えなくとも国と国の境がはっきりしていて、そこまではひとつの体制で行政が行われていると考えやすい。実は国境というのが明確になったのはそんなに昔のことではない。中世ヨーロッパでは公国とか教会領とかがいりくんでおり、現在の国家というイメージとは程遠い。
中国とはなんぞや?と考えると中国と呼ばれる広大な土地の中で、各地からの出身者、軍閥、閨閥が権力を取り合っているという状態ではないのだろうか?
それは国家ではなく連邦でもなく、ミニ国連のようなものかもしれない。もっともその権力闘争は平穏なものではなく、紅衛兵や天安門からも分かるように常に武力行使を背景にしている。
とすると、中国の崩壊とはソ連の崩壊のようにパラダイムが変わるのではなく、統治者、権力者が代わるだけのことかもしれない。
ただし、食糧危機、エネルギー危機、環境破壊という事実は権力の移動だけでは変えようがない。
そのために崩壊後の権力者は現在中国と呼んでいる地域全体の統治を目論むのではなく、自分に有利なところのみをつまみ食いするという形になるのかもしれない。
過去より中国と呼ばれた地域は固定されたものではない。時代と共に変わってきた。満州が中国となったのは第二次大戦後のことだ。実を言って台湾が中国であったことは過去一度もない。おお、沖縄も中国に含まれていることを忘れないでほしい。
中国とは中国で権力を持つ人間が「ここは中国だ」と宣言したところを言うらしい。
とにかく時代が下がるほどに、中国の指導者(独裁者)が中国とみなす範囲は拡大する一方だった。
しかし、まもなく来る中国崩壊後の指導者は開発の進んだ地域のみを中国と規定して、規模ではなく豊かさを求めるのかもしれない。
じゃあ、そのとき残りの地域は100年前の軍閥の乱立するパールバックの「大地」に戻るのだろうか?

中国の現体制がオリンピックまでもつのか?崩壊するのか?
専門家でもなく、中国に行ったことさえない私が論評することはできない。
しかしリスクを回避するためには、中国崩壊に備えておくことだ。
国家として、企業として、個人として