適用可能な法的要求事項 2006.04.05
ISO14001 4.3.2項に「適用可能な法的要求事項」という言葉がある。
「法的要求事項」についても説明が必要になりそうであるが、ここでは以降単に「法規制」と呼ぶ
適用可能という言葉を見て、『組織が「適用可能」だと決め付けていいものだろうか?』などとひっかかるというか疑問を感じる人がいる。私も疑問を感じた。
私は水濁法が好きじゃないから非該当に決めようとか、金を払いたくないから容器包装リサイクル法は適用しない、あるいは省エネが無理だから省エネ法は適用不可能だなんてことできるはずがありません。 「適用可能な法的要求事項」の原語は『the applicable legal requirements』である。この『applicable』を辞書で引くと「適切」である。
 「適切な法規制?」
 なんか、それもおかしい。
woman7.gif 「この設備は○○法の基準に適切だ」という表現に違和感は感じないが、「この設備に○○法は適切だ」という表現で意味が通じるだろうか?
私がISO14001に関わった97年頃に、「適用可能な法規制」ではどうもぴったりしないので「適用を受ける法規制」と理解することにした。
いやがおうでも守らなくてはならない法律であるから、「適用可能」とか「適切」ではなく、「規制を受ける」あるいは「適用を受ける」という理解が適切であろうと考えたのである。そしてそれ以来ずっとそう考えていた。
本日はそのことについて書く。

世間でISOの講釈を語っている人やウェブは星の数、中に
適用可能=順守が必須 + 組織の自主的選択
という説がある。
法律にはいろいろな種類がある。そして罰則規定があるものとないものがある。
罰則規定がある法規制でも、直罰のものもあるが、違反者の社名公表とか、改善勧告など繁文縟礼の手続きが延々と続いて罰則までなかなかたどり着かなかったり、やっとたどり着いたところでも実効ある罰則がないものもある。だから世の中の人々は法を守らないのだろうか?
もちろん罰則があろうがなかろうが法律は守らないといけません。
man7.gif 他方、「事業者は・・・に努める」とか「国民は・・・に努めなければならない」なんていうのがたくさんあります。なんでも努力義務っていうんだそうです。前述の論理によると、こういったものが自主的選択といって絶対的義務と合わせて適用可能なるということらしい。
といわれても、私にはわけがわからない。
それにはたして、そんなものが自主的に選択する余地の問題なのだろうか? そんな理解はなんかおかしい。
まして「努力義務を盛り込むことがその会社の環境経営のレベルを示す」などと言われると、そんな理屈に絶〜対に同意したくないという気がしてくる。 
それに義務だ自主だといってみたところで次元軸は同一であり、閾値・判断基準の違いのような気もする。

実はつい最近のことであるが、某販売会社でISO14001活動のお話をお聞きする機会があった。環境側面からはじまり、今までのISOの活動など話が弾んだのであるが・・・・

そこで環境法規制について非常に教えられるところがあった。
その会社では業種からいって当然、営業活動がメインであるが、もちろんそればかりではなく、ビル管理、物流を含めた商流の上流・下流の管理、あるいは車の使用など、工場とは異なってはいるが環境側面はものすごく多岐にわたっている。そして営業における環境情報の収集伝達というコミュニケーションも著しい側面としていた。
どんな業種でも環境側面に関わる法規制をしっかり把握し遵守するのは、重要であるのはもちろんであるが、また非常に困難でもある。
どこにだって悪人も善意の人もいる。 
それはさておいて、
ここで新鮮だったのは、実際に規制を受ける法規制だけでなく、ビジネスにおいて活用できる法規制を適用可能な法規制と位置づけていたことである。 要するに、商売(上品にビジネスといおう)に役に立つならなんでもありなのである。
中にはかなり強引なこじつけと思われるものもたくさんあったのだが・・・・
そのことを聞くと、「だって規格には適用可能って書いてありますよね。当社の本来業務である営業で役に立つなら環境側面に適用可能ではないですか。」
odoroki.jpg 彼らは扱っている商品にまつわってお客様が関わる環境法規制を、己の側面に適用する該当法規制とみなしているのだ。
そしてビジネスを進める上で「お客さん、いい子がいますよ」じゃなくて「お客さん、この商品はお客様に適用される法規制に役に立ちますよ」と売り込んでいるのである。
したたかというべきかハイレベルというべきか、すごいと思った。まさに守りではなく攻めへの環境法規制の活用である。
それを聞いた瞬間、私が10年間思い込んでいた「適用を受ける法規制」という理解は誤りだったと思いました。

ISO14001規格の制定者が本来はどのような考えを『the applicable legal requirements』と表したのかわからない。しかし、ISO14001が2004年に改定され、「今後チェリーピッキングはだめよ」、「本来業務でないとだめだよ」と言っている今現在、本来業務を推進するに当たって役に立つものなら、手当たり次第みんなISO活動に取り込んで良いんじゃないか?
厳しい営業戦線を戦っている組織にとって、取り扱っている商品に関わる情報が重要であり、それを収集し体系化し営業マンに教育し実践させ実績を出さないと、市場経済では覇者となれないどころではなく生き残ることもできない。
woman.gif ならば規制を受ける環境法規制ではなくても、商売する上で役に立つ法規制は「適用可能な法規制」であり、商売に利用することは「どのように適用するか」であり、法規制を利用した販売手法を教えることは「力量を持たせる」ことであり、それをなりふり構わずえげつなくジャンジャン推進することは「逸脱しないための運用」であるに違いない。
まさにISO14001規格、冥利に尽きるのではないだろうか?
これは冗談や皮肉ではなく、本音である。

実は規格の生みの親の一人、ISOTC207の委員である寺田 博さんはISO14001規格の講演で「適用可能でなく、適用されると訳しておくべきだった」と語っておられた。(2006/1/26)
しかし、私の見聞した事例から見れば『the applicable legal requirements』を「適用される法規制」とか「適用を受ける法規制」あるいは「適切な法規制」でなく「適用可能な法的要求事項」と訳したのは、ものすごい深読みで大正解だったのではないだろうか?
こりゃ、相当長い手数の詰め将棋か詰め碁って感じですね。

品質であろうと環境であろうとその他の新参ISOであろうと、ISOなんて会社本来の仕組みに内部化され、事務局も不要、審査機関も不要、息をするのと同じく当たり前のものとになり、お祭りでなくなるのが将来というかあるべき姿であろう。
そう思うと「4.3.2適用可能な法規制」に限らず、ISO規格の序文からアネックスまでどの項番も、想像力をたくましく裏から読み斜めから読み、もちろん解釈・拡大解釈、骨までしゃぶって実務(商売)に活用すべきなのではなかろうか?
規格適合性というのは儲けた金額で判断するのかもしれない。


本日の教訓

ここに揚げた事例は、規格の正しい解釈でないと言われるかもしれない。
審査機関のお目こぼしと言うかもしれない。
でもね、会社を良くし、環境に貢献するならISO規格の体現じゃないですか?


最近、某メーリングリストでこの言葉に再びひっかかったのでこの一文をしたためた。




Yosh様とのやりとりをアップいたします(2006.04.06〜10)
Yosh様
とうた様、『the applicable legal requirements』の遣われている文章はどのようになっていますか?
佐為
ご質問の文章は次の通りです。
4.3.2 Legal and other requirements
The organization shall establish, implement and maintain a procedure(s)
a) to identify and have access to the applicable legal requirements and other requirements to which the organaization subscribes related to its environmental aspects, and
b) to determine how these requirements apply to its environmental aspects.
The organization shall ensure that these applicable legal requirements and other requirements to which the organization subscribes are taken into account in establishing, implementing and maintaing its environmental management system.
Yosh様
この場合には「適切な法的必要条件」が好ましいとおもいます、が。すでに誰かが「適用可能な法的要求事項」と訳しているものが公表されているのですね?
佐為
ISO規格の原文は英語とフランス語ですが、各国はそのままでは運用できませんので、自分の国の言葉に訳します。
日本の公式訳の言葉は該当する部分は次のようになっています。
4.3.2法的及びその他の要求事項
組織は、次の事項に関わる手順を確立し、実施し、維持すること。
a)組織の環境側面に関係して適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を特定し、参照する。
b)これらの要求事項を組織の環境側面にどのように適用するかを決定する。
組織は、その環境マネジメントシステムを確立し、実施し、維持する上で、これらの適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を確実に考慮に入れること。
Yosh様
とうた様、どうも私は日本語が理解できないようになってきました。
「適用可能な法的要求事項」の意味する処は何なのでしょうか?
逆に考えて”適用不可能な法的要求事項”もあることになるわけで、それでは法的要求事項は法として役に立たないようになりませんか?
佐為
どうも私は日本語が理解できないようになってきました。
そんなことはありません。この一文をとっても現職の日本人が理解困難なのですから。
逆に考えて”適用不可能な法的要求事項”もあることになるわけで、それでは法的要求事項は法として役に立たないようになりませんか?
確かにそう考えるとそうとしか思えませんね。日本語訳がやはり適切ではないのでしょう。
だいたい環境に関する法規制を守れ!という文章がおかしいとおもいます。法律は守りなさい。一言ですみます。なぜ環境だけなのか?それが誤解とか理解困難な原因のすべてではないでしょうか?


KK様からお便りを頂きました(06.04.11)
これは私は理解というか感じ入りますね。
  1. 米軍が軍隊の派遣範囲を「暖かいスープを輸送できるところまで」と既定しているそうです。
    これに近いですね。
    食料を輸送できなければ全滅します。
    では、食料を輸送できるという物差しはで、スープなんですね。
    暖かいスープを出せないということはムリがあり運用不可能としているわけです。
  2. 日航機の逆噴射墜落事件の時、そもありなんと思いました。
    規則きそくでガンジガラメで、神経が規則を守るほうにいって、本業がお留守になるだろうと...
    このあたりのことを言っているのではないかと思いますね。

KK様、ご指導ありがとうございます。
食料の供給可能で軍隊の派遣範囲を決めているのですか!?
インパールや南太平洋の島々に派遣された日本兵が聞いたらなんというでしょうか?
軍隊でロジスティクス(兵站)は非常に重要ですが、かっての日本軍は「輜重兵(しちょうへい)が兵隊ならば、チョウチョトンボも鳥のうち」と蔑んだそうです。
これじゃあ、戦う前に発想からして負けてますよ


知動説様からお便りを頂きました(06.04.16)
4/15更新 Yosh様とのやりとり拝見しました。
お二人の知的な対論、興味深く拝聴致しました。
確かに、佐為さま仰せの通り、「法律は守りなさい」で済む話だと思います。
それを「適用可能な」などと、組織任せの表現(和訳)にしている事が、適切であったかどうか、大いに疑問が残ります。
ただ『applicable』は恐らく『application』(適用、応用)の派生語だと考えれば、普通に訳せば『適用可能』と言う訳が一番無難だったのかも知れませんネ・・・
私も「ISO」は多少業務で絡んでいるのですが、そもそも9001も14001も「何を」「どこまで」「どのように」についてはある意味、「性善説」的な発想で規定しています。(ISOは一般的には『性悪説』に基づいている管理手法だと理解されていますが・・・)
例えば「著しい環境側面」についてもそれを「決定する・・事項にかかわる手順を確立し、実施し、維持すること」とだけ要求されているわけで、そこで組織がある「側面」を恣意的に「著しい環境側面」から外してしまう危険性については、組織のモラルと審査員の力量に、委ねられています・・・・(笑)

タイプミス(?)と思われる箇所がいくつもありますので修正願います。

知動説様 ご指摘ありがとうございます。
私の英語力がバレバレでございます。早速修正いたしました。
知動説様のようにISOに関わっていることを隠している(?)方がいたのでは、今後はそうとう練って書かないと寝首をかかれそうです。
気をつけねば・・・

あらま様からお便りを頂きました(06.04.16)
佐為さま あらまです
「小生は、そろばんと、英語が嫌いです。」と、いうよりも勉強自体が嫌いなんですね。
しかし、社会に出て、いやおうなしに英語に係わってくると、あわててそれを勉強するのですが、アルコールで破壊し尽くされた頭脳では、もはや手遅れでありました。
さて、英文をはじめ、外国語が嫌いな理由は、なんでもかんでも「逆」に思えてならないのです。単語の並び方も逆のような感じがしますし、考え方も逆のような気がすることが多々あります。昔、外車といえば「ハンドルが逆」といった具合に・・・。
ところで最近、「自動翻訳」なるものが、web上でも無償で提供されているので、使ったことがありました。あれは「笑え」ますね。私が思っている「逆」を如実に反映しているようで。
佐為さまとのやり取りの様子を見て、失礼ながらフト思ってしまいました。
ところで、「スープの冷めない距離」が、「近い」と言う意味のほかに、「食料補給の可能な距離」から発展して、「交戦可能距離」までも意味するとは・・・。知りませんでした。
あらま様の論点が多々ですが、お付き合いするならば・・・
勉強とはだれも好かないことかもしれません。私は勉強が好きという人は、勉強ではなくそれが趣味なのかもしれず、趣味であればいくら勉学にいそしんでも立派だとは言わないような???
第二点、翻訳ソフトで思い出があります。もう10年以上前に何十ページもある書類の翻訳を業者に頼んだら、自動翻訳ソフトを使っているといってました。ソフトで該当する単語を羅列させてそれを人力で英語の文章として通じるようにリファインしていくのだそうです。まあねじを締めるのに手回しドライバであろうと電動ドライバであろうと役目を果たせばいいなら効率化したほうがよいのは間違いないでしょうね
話がまた変わりまして、何の本で読んだか忘れましたが、イギリス兵がロシア兵の食料を見て「こんなものを食べているなら戦争をやめる」と書いてあった気がします。まともなものを食べられないなら戦争する意義がないということなんでしょうか?
ニューギニアの日本兵、インパールの日本兵に聞かせたらなんていうか? なんて論じても意味がありませんね。
せめて今後日本の危機があれば、戦う人には最高の支援をしたいと願います。
精神的にも物質的にも

ヨネサマ様からお便りを頂きました(10.02.01)
その他要求事項の解釈について?
その他要求事項のガイドラインは?
ISO14001の認証を取得している会社の、ISO管理部に所属しています。弊社では、その他要求事項を登録簿に登録して管理していますが、登録する内容の基準が明確ではありません。判断基準について、教えて頂きたくメールいたしました。
例1:取引先から、相手先の環境方針への協力依頼文書が届き、受領書に捺印して返送した。
例2:取引先から、相手先の環境方針への協力依頼文書が届き、同意書に捺印して返送した。
例3:取引先から、相手先の環境方針への協力依頼文書が届き、相手先発注工事における具体的、活動・サービスに対する順守についての回答書に捺印して返送した。
1〜3で該当するのは?まさか、全て?
また、回答の内容にもよりますが、順守評価は、どこまで必要なのでしょう?

ヨネサマ様 お便りありがとうございます。
常識的に考えて、他社の方針に貴社が従う義務はありません。もし要求元が親会社であっても、そもまま適用することは会社法に抵触するはずです。
ISO14001のアネックスに「組織が属するより広い企業体の環境方針の枠内で、かつ、その承認を得て、トップマネジメントによって定めらるとよい(一部略)」とありますが、これはもちろん必須事項ではありません。
つまり、取引先などから先様の環境方針が送られてきても、それは向こうの都合であって、御社が従う義務はありません。
それについては以前書きましたのでこちらを参考に
いずれにしても、環境方針をいただいたのは、その他の要求事項に値しないと思います。該当しないのではなく、値しないのです。だって何をしたら良いかわからないのですから、それに従ってなにをしようもありません。
よって一番目と二番目はその他の要求事項ではないと考えます。
三番目の「工事において具体的要求」があれば、それはその他の要求事項となります。
ただ工事対応で個々の要求が異なるのが普通です。私の場合、「工事などにおける客先仕様」をその他の要求事項として、個々の工事における要求は都度対応としていました。

追加です。
順守評価ですが、自社にしろ他社のにしろ、環境方針を守っているか?ということは漠然としてOK/NG判定は不可能でしょう。
順守評価は具体的なことを、白黒つけることであり、それができないものは対象外です。
環境基本法などを遵守評価しようと言うは無理というもの
私が言っているのではありません。参議院法制局などを見てください。基本法は国民を規制するものではなく、国を規制するものです。基本法に基づき個別法を制定し、これを国民が遵守するのです。
方針も基本法とおなじようなものです。


ヨネサマ様からお便りを頂きました(10.02.03)
おばQ様
早々のご回答有難うございます。先日ご質問させて頂いた”ヨネサマ”です
環境方針への対応については、おっしゃられている通りと感じ入りました。
具体例ような表現となっている場合も同様に、その他要求事項に値しないと判断しても問題ないでしょうか?(小生は値しないと考えています)
その他要求事項に関する、概念をどのように捉えればいいのでしょうか?
判断基準としての指標や概念があればご教授お願いいたします。

1.具体例
2.また、下記@〜Eにおいて該当しないものはありますか?
小生は、
@の場合該当しないのではと考えますが?
A〜Dは該当。
Eは環境で言うその他要求事項ではないと思いますが、順守すべきものとして同様な管理をすることはいいのではと考えます。
ご意見宜しくお願い申し上げます。

記−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

@取引の基本契約書での条項について(顧客要求)
・契約の履行に関連して環境破壊につながる恐れがある場合は、環境破壊を防止するための十分な処置を講ずる
・契約の履行に関し、汚染、廃棄物、材料の無駄の排除及び省エネルギー、省資源、リサイクルに努める
・資材の納入その他の契約にあたり、法令、条例これらに基づく通達、指導、指示の遵守  公害規制物質の使用禁止
・債務履行の過程及び調達品について、環境への負荷を軽減するよう努力しなければならない
 このような条項は、その他要求事項に該当?
Aグリーン調達ガイドラインの順守(顧客要求)
BRoHS指令の禁止物質の含まない製品を納品する(顧客要求)
C大阪府流入車規制の覚書(Nox/Soxに関する行政の規制に則った、個別の顧客要求)
D「ポリ塩化ビフェニール廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」に基づく保管状況等届出書(行政からの要求)
E自動車使用管理実績報告書(行政からの要求)

以上

ヨネサマ様 毎度ありがとうございます。
正直なことを言いますと、ヨネサマ様と私の認識というか感覚というか、ちょっと違うなあと思います。
私は環境法規制というものが存在すると考えていません。企業あるいは組織において、規制を受けるのはその定款あるいは事業目的を実現するための方針であり、それに関わる規制や周囲の意見や要求だと考えています。
それにはセクハラもあるでしょうし、雇用や、近隣社会への貢献(早い話が寄付)、その他もろもろです。
そのとき、環境に関わる規制がどれだとわざわざ特定するまでもないと思っております。
現在、はるか地球の裏側のEupやRohsなどが日本の法規制と同等、あるいはそれ以上に重要な位置づけにあります。それが民間規格であろうと、グリーンピースの意見であろうと対応しなければならないものは対応しなければならないのです。
おっと、そんな例をあげると環境だけかと思われるので別の例をあげましょう。数年前、日本の企業がヨーロッパの独禁法に違反していると課徴金を請求されたことを覚えているでしょうか?
その企業はヨーロッパに輸出していませんでした。ヨーロッパに輸出していないで、なんでヨーロッパの独禁法違反になってお金を払わなくてはならないのでしょうか?
変に思いませんか?
要するに、輸出しないという判断によってヨーロッパで企業の自由競争を起きなかったために、市民や企業が機会損失という被害を受けたことは、その企業が輸出しなかったから・・という非常にスバラシイ論理だったようです。
実際には裏も表もあるのでしょうけど・・
言いたいことは、環境だけに特化して、どんな規制があるのか?なんて考えてもしょうもないのです。
その企業、あるいは組織が目的を実現するために事業活動を行うにあたって、いかなる規制を受けるのかを把握し、そして対応しなくてはならないということです。
そしてそれは法律だけでなく、市場の趨勢もあるでしょうし、お客様の要求も重要です。
但し、お客様は神様ですとは良く言われますが、実際は法律は逃れられないが、お客様を選ぶことは可能です。
小沢一郎は法律も逃れたようですが・・
だからその他要求事項については「ISO14001:2004 4.3.2 組織が同意する」と限定しているわけです。
というのが私の認識であり、この認識に基づき過去19年、私は審査を受けてきました。
そして他社の指導を行う時の、このスタンスははずしていません。
なぜなら、私にとって企業とは起業の理念を実現するために存在しているのであり、ISOなんてその活動を効率化あるいは合理化するツールに過ぎないからです。
といえば、もう答えは見えてきたでしょう。
私の価値観でいえば、これは環境に関わるから・・ですとか、これは外為法に関わるから・・なんて論は全く意味を持ちません。
事業を推進していくに当たって対応する必要があるか、考慮する必要があるか、という観点で評価し対応するだけのことです。
ヨネサン様の提示されたさまざまな事例について、それをしなければビジネスが継続できない、企業存続にかかわる、お天道様の下を歩けないというなら対応が必要です。
お客さんが「・・をしてくれ」というなら、法律や公序良俗に反せず、商売上対応しなければならないなら対応するだけのことでしょう。
それをその他の要求事項と呼ぶなら呼べばよいし、そうではないカテゴリーを設けるというならそうですかというだけのことです。
環境ISOのそん他の要求事項ではないが、営業的には対応しなければならないなんて言い方は笑い話でしょう。実を言ってこのフレーズを考えて笑ってしまいました。
実を言いまして、数日前某社の審査に立ち会いまして「文書か?記録か?」なんて論がありました。
審査員とその会社の担当者が議論していましたが、私にとってそのような神学論争は無意味というか、関心がありません。
管理しなければならなければ、自社の文書であろうと、記録であろうと、ひとさまが作成したものであろうと、ちゃんと管理をするだけです。
あまりというか、全然回答になっていませんが、私はヨネサン様のご質問が私にとってあまり意味ある質問とは考えられません。


ヨネサマ様からお便りを頂きました(10.02.05)
うそ800管理人 おばQ様
丁寧なご回答有難うございました。
おばQ様のご回答を読み進むうちに、マネジメントシステムの本筋が見てきたような気がします。
環境だの品質だのといっても、所詮企業マネジメントのごく一部の側面でしか無いのですよね。
あまりにも小さな枠組みで考えていたことに、赤面しています。

実際、「おばQ様」のおっしゃることが仕組みとして運用していければ、全く問題は発生しないと考えます。
企業活動をする上で、関係する法律(その他の規制を含め)を、順守していくことは当たり前のことです。
しかしながら、現実的にそれを明確にし対応している会社はどれほどあるでしょう?
何か問題が生じたものに対して、手を打ってるのが現実のような気がします。(不祥事を起こした企業)
そこで、対応を考えるとき”リスク”に見合った対応ということになるのでしょうか。
一つの指標として、「会社を運営(存続)していくために必要か?」ということが見えてきました。

ISOを推進していく者として、ISOのマネジメントシステムをもっと大きな視点で捉え、物事の本質を見据えた対応が出きるよう精進していきたいと思います。
うそ800、何かと興味を持って拝見させて頂いています。
これからもご教授宜しくお願いいたします。

ヨネサマ様 毎度ありがとうございます。
お断りしておきますが、私が完ぺきとか勤め先が素晴らしいということはありません。
ただ、品質とか環境とか柵で囲んでしまわないで、企業の目的という観点で考えるべきだということ、そしてそう考えると環境のその他の要求事項に該当するかしないかということでなく、企業としての義務と責任として考えればおのずから答えはあるということです。
正直申しますと、私が15年くらい前、以前の会社で工場で環境管理をしていたとき、今のような考えはありませんでした。
いろいろ事情があって現職場に流れ着き、そこでコーポレート全体を本社という立場で見るようになって今の考えを持つようになりました。人間苦労しないと学ばないようです。



適用可能な法的要求事項 その2 2009.06.06
前回述べたことの追加である。蛇足かもしれない。

ISO14001 4.3.2では環境法規制をしっかり調べろと要求しています。
別に要求されなくても法律は守らなくちゃいけません。
ところで実は単なる環境法規制ではなくて「適用可能な法規制」と形容詞句がついています。
適用可能ってなんでしょうか?
一般には「規制を受ける法規制」と読むと解されています。
でも素直に「適用可能な法規制」と読んでもおかしくないようです。

2009年春、賛否両論で大騒ぎですが、エコポイントという制度ができました。

環境省エコポイント公式サイトより
エコ・アクション・ポイントは、国民のみなさまが温暖化対策型の商品やサービスを購入する際などに付与されます。貯まったポイントで、様々な商品・サービスとの交換や、その他のポイントや電子マネーとの交換などができます。

これって、電気製品を製造販売している企業にとって十分適用可能な法規制ですよね。
いえ、私たち消費者であっても適用可能であることは間違いありません。
すると、規制を受けることだけでなく、恩恵を受けるものも適用可能な法規制に盛り込むべきです。

似たようなものはたくさんあります。
今、環境省は電子マニフェストを推進しています。その理由は多少不純かもしれませんが、なこたあどうでもいいんです。
電子マニフェストはJWNETって元締めがしているのですが、これを使いやすくするためとか連携して会社の費用などを管理するソフトはたくさん売られています。
そういうソフトハウスや販売会社にとって、環境側面に適用可能な法規制であることは間違いありません。ぜひとも電子マニフェスト推進の尻馬に乗って売り上げ拡大、利益拡大を図ってください。

エコカー減税も自動車販売会社にとっては適用可能な法規制
おっと、これは宣伝する必要もないくらい、消費者のほうが法規制を活用しているようです。

大阪府の09年4月のみなし一廃制度の廃止も産業廃棄物業者にとっては事業拡大のチャンス、適用可能な法規制
一廃業者の方々にとっては逆風ではありましたが 

環境法規制ってなにかいやなこと、ネガティブなことと思う人が多いだろう。
しかし仕事に役立つ、事業に役立つ、お金儲けに役立つなら、それらはみんな「適用可能な法規制」じゃないか。

今後、監査に行ったらその会社でビジネス(金儲け)に役立つ法規制を把握して対応手順を作っているかを質問しよう〜♪
もし規制を受ける法律ばかりでメリットのある法律がなければ法規制の調査が足らんぞ! 



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