紙ごみ電気を越えて 2006.08.06
「紙ごみ電気」といえば、これは言わずと知れた、我が愛しきISO14001の典型的な活動テーマである。
しかし典型的ではあるが、理想的な活動テーマであるはずがない。
おっと、冒頭からそう断定してしまうと、後が続かない。
話のネタは小出しにしないとだめだ。特に私の場合は・・

ご存じない方に簡単に説明する。
俗に環境ISOなどと呼ばれているISO14001って聞いたことがあるでしょう。
最近では私立大学、市役所、スーパーマーケット、銀行に至るまでISO14001認証が流行(はやり)です。
これはISO規格で決めている仕組みを作って環境活動をしているかどうかということを、第三者機関(要するに金儲けだ)に調査してもらい、合格すると登録してくれるという仕組みで、登録してもらうことを俗に認証という。
☆☆「わが社はISO14001認証しました。」
man7.gif ☆☆☆ハア、認証すると何かごりやくがあるのでしょうか?
☆☆「私たちの大学はエコキャンパスです。」
☆☆☆エコキャンパスって一体なんですか? 
☆☆「○○市は地球に優しいISO14001認証してます。」
☆☆☆いったい地球に優しいってどういうのでしょうか?
とにかくわけもわからずみなさん流行に乗かっているのだ。

認証してもらうと何かいいことがあるのか? 世間では会社の評判が良くなると理解しているようだ。
もっとも報道されている環境事故や法違反からみると、認証してもしなくてもあまり変わらないようである。
まあ、ISO14001を認証しているということは、環境にお金をかけているということに違いない。
それはよい、しかしいったいどのような活動をしているのか? と見て見ますと、どこも「紙ごみ電気」のオンパレードでございます。
実際の話、「ISO14001」というと「紙ごみ電気」といわれるくらい、密接な関係にある。
工場でも環境負荷の大きなものの改善などともに必ず「紙ごみ電気」が付いてくるし、オフィスでは「紙ごみ電気」がメインというのが現実である。
2004年版改定というビッグイベントがあったにもかかわらずである。
紙を減らすことが悪いわけではありません。ゴミを出さないのが悪いわけでもありません。電気をこまめに消すのも決して犯罪じゃあありません。
でも、せっかく環境に何か良いことをしようっていうのなら、もちっとためになることを考えてみようじゃありませんか。

「紙ごみ電気」の効果を考えて見ましょう。
オフィスでも工場でもあるいは大学でもお店でも今ではPPCと呼ばれる紙を大量に使います。
☆☆PPC:(Plain Paper Copier)コピー機対応の普通紙。
私がどのくらい使っているか数えたことがあります。毎日A4サイズの紙を60枚くらい使っています。そうしますと年間15,000枚くらい使う勘定になります。
大体A4サイズの紙12,500枚で直径14cm、長さ8mの丸太1本に相当するそうですので、私は毎年そのくらいの丸太1本ちょっと消費していることになります。
話は変りますが、割り箸は直径30cm長さ6mの丸太から29,000膳とれるそうです。直径14cm長さ8mに換算しなおすと11,000膳となります。
☆☆ところでなぜ林野庁が出すデータで比較する丸太の太さや長さが違うのでしょうか?
私は毎日1膳使うとして、年間丸太1本の3パーセントしか使いません。確かに紙のほうが割り箸よりも環境影響が大きそうです。
でも、ちょっと考えてください。
PPC用紙A4 500枚のお値段は、量販店で400円です。私が湯水のように使っている紙代は年間たったの12,000円です。すると紙使用量を1割2割減らしても大して経済的な効果がありません。ケチケチして年間2・3千円削減するよりも、その労力と注意力を仕事の質向上や、納期厳守に注いだ方が会社のため、世のためだとに感じるのは私だけでしょうか?  
40年も昔読んだ社会人の心得帳で、落ちたゼムクリップを拾っちゃいかんというのがありました。
なぜか?
ゼムクリップは1個1円もしない。月給20万の新入社員だって毎秒30銭かかっているのだ。拾おうとして3秒かかると会社は損してしまう。落ちたのは見捨てて新しいのを使う。落ちたのは掃除のとき掃きとってしまうのが正しいと書いてあった。
お金だけじゃないんだ・・・という声が聞こえてきそうですが、それならどんな尺度で評価するのでしょうか?
紙を減らせというのは、精神論にすぎないのではないかという気がします。
精神論ではものごとは成りません。竹やりでB29は墜せませんでした。

第二のテーマでございます。
ゴミを減らす!?
知り合いが会社のゴミを減らすために、昼間に食べたホカ弁当のカラとか読み終えた新聞を持って帰り、帰宅途中の駅とかコンビニのゴミ箱に捨ててますが・・・・・私にはその意図が理解できません。
packer.gif

どこで積んでも行き先は同じさ
ゴミはなぜ出るのか? なんて哲学的なことを考えるまでもありません。まあほとんどのオフィスワーカーの方はビルで働いているでしょう。ビルごとにゴミの分別などが決めてあります。それに従って捨てるだけでよいのではないかと思います。
だって出るゴミを減らすということは生活様式を変えないと変わりません。ホカ弁当を買う代わりに家から弁当を持ってくるのか、レストランで食べるのか、あるいはとにかくゴミの出ないような方法にしないとだめなのは自明です。
単に所在しているビルのゴミ箱に入れず、駅のゴミ箱に入れるのだったら・・・・ゴミを運ぶだけロスではありませんか?
経済的な観点から見ると、一般のオフィスからのゴミ処理費用はビルの家賃に入っており、極端に減らなければ費用削減になりません。もちろん分別してリサイクルに努めるのはけっこうなことです。しかし所在する自治体の指導に従って、またビル管理会社だってバカじゃありませんから、安い廃棄物業者を探しているでしょうし、リサイクルに努めているでしょう。
休日出勤のホカ弁の容器を駅のゴミ箱に捨てるという行為が神々しいこととは決して思いません!

第三のテーマ、電気でございます。
電気を使わないことは良いことです。夏はエアコンを使用するためジャンジャンと電気を使います。特に甲子園の試合時が年間で最大電力となるそうです。
オフィスであろうと家庭であろうと大学であろうと、電気を使わない方が間違いなく良いことです。
知り合いの会社では昼休みビル全体を消灯するので、みなが電気スタンドを買ってきて机においているそうです。計算すると天井の照明よりも電力を食います。そして天井の蛍光灯ほど明るくありません。
友達から聞いた話です。とにかく消灯が徹底している職場なそうですが、残業時に会議室にいるのを知らず全部照明を落としてしまったそうです。会議室にいた方が驚いて出てきて通路で転んだそうです。幸い無事だったそうですが、怪我でもしたら労働災害です。その会社の総務部は安全衛生の指導をしていなかったのでしょうか?
似たような例ですが、昨今冷房温度をあげようという運動(行政指導?)があります。某社では空調温度を上げたものですから、みなが個人用小型扇風機を買ってきたそうです。最近はパソコンのUSB端子から電源をとる小型扇風機もあります。それでもってみな扇風機を使ったものですから・・・電気は食うし、パソコンもファンが回ってマスマス室温が上がった・・・かどうかまでは聞いてはおりません。 
okane.gif
おっと、電気を減らすとどのくらい現世のご利益が得られるのでしょうか?
概算ですが東京のオフィスで一人当たりの電気代は月3千円くらいでしょう。お疑いならあなたが勤めている会社の経理にでも聞いてみてください。
そうしますと、徹底的にケチケチして1割削減したとして月300円、年間3千円の費用削減でございます。はっきりいいます。とてもそんなもの効果とはいいません。毎月タバコひと箱減らすことが家計の改善になると思います?
タバコ止めるならスパットやめなさい。
ちょっと観点を変えます。あなたが占有しているビルの家賃ってどのくらいですか?
東京のオフィスビルの家賃ってどのくらいでしょうか? 丸ビルで坪30万月と聞いたことがあります。まあ、それは別格でしょう。ふつうのオフィスビルは坪月1万数千円から2万というところでしょう。一人が机を置くだけでなく、会議室や共用のプリンタや通路を考えると2〜4坪くらいになるそうです。そうしますと、あなた一人分の家賃は4万ないし8万円。これに比べれば、「紙ごみ電気」なんてかわいいかわいい・・・
先ほど申しましたように、「紙ごみ電気」を一生懸命に節約して、月600円程度、家賃の1パーセントでございます。
いえ、家賃を下げるように事務所の密度を上げようなんて提案するつもりはありません。

インターネットや雑誌の質問欄で次のような質問をよく見かけます。 私から見るとゼーンブ勘違いとしか思えません!
私たちは環境運動をするのが目的じゃないんです。会社に貢献するために、社会に貢献するための一環として環境活動をしているのです。
woman7.gif なにかないかなあ? とあたりを見回すこと自体おかしいと言いたいのです。
まずISO認証しているとおっしゃいますが、基本である環境側面を全然把握していないのでしょう。己の会社が、あるいは自社の製品が、はたまた自社が買っているもの、提供しているサービスが環境といかなるかかわりを持っているのか? ということをご認識していないに違いない。
反論するなら、次の問いに答えてからにしてください。
☆☆貴社の環境側面はどのようなものがありますか?
☆☆それはどのような方法で調査し、決定したのですか?
☆☆それは常識から考えて妥当ですか?
おのずと真の環境側面が見えてくるはずです。
本当の環境側面を理解すればその環境影響を改善しようと思うでしょう。
どこに「なにかいいテーマはないかなあ?」と悩むことがあるのでしょうか?

真の原因は環境側面を把握していないということなら、規格を満たしていないのだから不適合であることは間違いない。
じゃあ、紙ごみ電気以外にいい活動テーマはありませんか?と尋ねる人は出発点で間違っているのだ。
世の中で「紙ごみ電気」をテーマにしている企業は規格不適合なのだ。
そういった企業、学校、行政に認証を与えている審査登録機関は認定取り消しなのだ。
バカボンのパパなのだ 

反論をお待ち申し上げます。
紙ごみ電気の功罪を多いに論じましょう。
もし、本当の環境活動のテーマを考えたいというのなら、ご相談に応じます。
コンサル費用は・・・出精値引きいたします。(冗談です)


いやしくも環境に関わる人なら、メドウズの「BEYOND THE LIMITS(限界を超えて)」くらいは読んでいるでしょう。

よって本日のまとめは

「BEYOND THE 紙ごみ電気」





Yosh様からお便りを頂きました(06.08.07)
とうた様
本日のとうた様の論説中
”大体A4サイズの紙12,500枚で直径14cm、長さ8mの丸太1本に相当するそうですので、私は毎年そのくらいの丸太1本ちょっと消費していることになります。
話は変りますが、割り箸は直径30cm長さ6mの丸太から29,000膳とれるそうです。直径14cm長さ8mに換算しなおすと11,000膳となります。”
とありますが。
すこし変な換算ですね、それは丸太そのものをつぶして紙にしているようにとれます、またどのやうな樹を紙や箸にしているのでせうか?
私の知る範囲では針葉樹(広葉樹では紙にならんやうです)の丸太を製材するときに出る鋸くずや端材のチップを用いて紙の材料にしているとおもいますが。
昔、日本の杉の箸は根元の建材に適しない部分だったとおもいます、いわゆる端材の有効利用です。
私が日本に居った時に聞いたのは、割り箸は樹種名ははっきり知りませんが日本名で「どろ」多分英語の一般名のCotton wood(綿の樹)と言う建材などに使用できない兎に角成長するのがWeedのやうに早い樹なのです。それを今でも割り箸にしている、とおもいます。
建材のことですが、’いわゆる樹の種類では広葉樹のWeed(成長が早い代わりに樹齢が短い)の昔なら野ざらしで捨てられて使わなかったものを現在チップにして板状にしたPlywoodの代用品が現在住宅の材料に使用されています。それに針葉樹でも小径木で昔は捨てられていた樹も有効利用の技術が進歩して活用されています。これに反対する人達がおるやうです。野山にそれらの樹が枯れ腐り大地に栄養分を与えるとか小動物の繁殖の地になる、それを妨げると。
とうた様この点お調べになられることを望みます。

Yosh様 いつもご指導ありがとうございます。
紙というのは繊維の状態にして水に分散し漉きあげればできあがりです。今現在、紙の原料はほとんど北米の針葉樹だそうですが、紙を作るには針葉樹でも広葉樹でも草でも竹からでもできます。現在の工業レベルの製紙はまさしく「丸太そのものをつぶして紙にしている」のです。
検算してみます。
上記直径14cm長さ8mの丸太の重さは、14×14×3.14÷4×800×0.55=67,700gです。
比重を0.55としました。含水率によって違いますが、倍は違わないでしょう。
A4サイズのPPCは1枚4gですから、67,700g÷4=16,900枚となります。これは前述の12,500枚より多いですが、まあ歩留まりもあるでしょうから妥当なところでしょう。
また、割り箸の95%が輸入、ほとんど全量中国からだそうです。(但し木製だけでなく竹製もあります)
中国では割り箸を間伐材や端材ではなく丸太から作っているといわれています。(伝聞です。詳細データは見当たりません)
Yosh様がおっしゃるように、端材から割り箸を作った時代もあったでしょうが、現在はかなり様相が異なるようです。
ということでご理解いただけたでしょうか?


Yosh様からお便りを頂きました(06.08.09)
とうた様、
現在の工業レベルの製紙はまさしく「丸太そのものをつぶして紙にしている」のです。
これはどうも理解できません。
私の観たパルプの工場では一本の丸太も見たことはありません。また丸太を細かく砕く機械装置もありませんでした。鋸くずとか木の皮が大量に搬入されて一時的に貯蔵されていました。何処かで丸太を鋸くずだけにしているのでせうか。
私の取引先の極めて小さな製材所でも製材過程で出る丸太の皮、製材の時に出る鋸くず、端材の木切れを砕く装置からでるチップと選り分けて40尺のコンテーナーに積載していました。私は鋸くずはPaper Millに行くと聞いています。

当地の大企業の一つに森林製品で木材からパルプまで扱っているところがあります、その一つの研究所では従来の方法でないパルプの製法を研究しているようです、知人が勤務していました。丸太そのものをつぶしてとは聴いていません。理屈はよく判らんかったのですが、簡単な説明では”鋸くずを極小さな隙間を通過させて繊維にする”ことで、彼はその適切な隙間の研究開発をしていると言ふておりました。

それにシナ製の割り箸の樹種はやはり昔日本でも使ったものとおもいます。あの割り箸の樹種で家を建てることは出来んでせう。

Yosh様、ご指導ありがとうございます。
私の論も乱暴というか、極論でありました。訂正します。
まず紙の原材料についてですが、これは繊維であればなんであろうと作れます。
次に現実の原料はどうかといいますと、材質用途にもよりますが、紙の原料の半分以上はリサイクルされる古紙です。
私の持っていた本は98年頃のデータでしたのでネットを探しましたら日本製紙連合会に下図がありました。
08_graph.jpeg
更にYosh様がおっしゃったように、紙を作るのに建物が作れるような太くて大きな丸太を使用してはいないようです。それで上記の林野庁のたとえも直径14センチとしているのでしょう。直径14センチでは柱はとれそうありません。
以上Yosh様がおっしゃるとおりなのですが、環境保護の効果を算出するときは丸太から紙を作っていることになっています。
なぜかといいますと・・・私の想像ですが
紙の半分以上がリサイクルしていて・・・PPCも再生紙ですから・・・新しいバージンパルプの原料も細い木材や端材を使っているといったら、もう紙を節約する効果が非常に少なくなってしまうからでしょう。
でもはじめからそれを言いますと、紙ごみ電気のトップバッターがアウトになってしまいます。

話は変りますが、現在は梱包用に木材を使わないと宣言している企業が増えていますが、林業の団体は梱包用の木材は間伐材などを利用しており、森林保護という観点からでは間違っていると表明しています。

ふっくん様からお便りを頂きました(06.08.09)
「紙ごみ電気を超えて」読みました。
お世話になります。先日は、丁寧な対応有難うございました。お返事を待っております。
さて、面白い記事?が載っていました。自治体がISOの維持管理にお金がかかるので返上するという記事です。私がこれについて云々言うことはできませんが、ただ単にブームで取ったとしたのなら、その結果がこれではなぁと寂しい気もします。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060809-00000003-yom-soci
私の会社も「紙ごみ電気」は目標に挙げていないものの「薬品の管理」とか「汚泥の管理」など、我業界の「紙ごみ電気」に近い項目をやっています。これも多分2〜3年経てば達成できるでしょうし、逆に達成しなければ本当に環境の会社か?って疑問視されるでしょう。そして2〜3年後の目的目標がなくなって、通り一遍なものを立てて形骸化し…。
そうなる前に…と、ふっくんもない知恵絞って「(有益な)著しい環境側面」をもっと重要視しようと言いました。うちの商品をよりよく改善することを目的・目標に立てたり、それを用いた浄化を推進すること(商売ですね)を目的目標に立てれば…と視点を変えています。負の環境側面を立てるのがほぼ常識に近いISO14001で、これが正しいかどうかはわかりませんが、正直、真剣に取り組んでいない従業員への啓発でもあります。会社の事業と直結すれば少しは取り組むかなっと。 それでも取り組まないようなら…私たちの会社も同じような運命をたどるのでしょうか?そのときの私の運命は(笑)?
週末から夏休みです。久しぶりにお星様観察ができそうで楽しみにしています。それでは失礼します。

まいどありがとうございます。
私はISO審査を馬鹿にしているととられているかもしれませんが、自分では「日本で一番ISO14001を愛している男」だと自負しております。
だからこそ、規格も知らない審査員、法律も知らない事務局、会社に会わない指導をするコンサルを見ると頭に血が上ってしまいます。笑
ISOを返上するもよし、維持するのもよし、いずれにしても会社、自治体、社会に役立つようなことをして欲しいと願うばかりです。

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