「はっつあん、紙ごみ電気ってえのを知ってるかい?」
「大家さん、それは環境保護ってんじゃありませんか?」
「おお、はっつあんも博識だね。環境に良いことをしようすると、誰でもはじめにするのが紙ごみ電気だそうだ」
「そう言えば、あいえすおーなんてのをやろってえと、みな紙ごみ電気をするそうですね」
と、どこかの長屋で話が弾んでいるかどうか、私は知りませんが、環境に良いことをしようというと、まず誰でもテーマにするのが紙ごみ電気。
- 「紙」といいますのは、コピー用紙とかプリンター用紙を減らす運動。
A4のPPC用紙何枚で丸太一本になるとかいうデータはネットに転がっていますから、興味のある方は調べてみてください。
事務所で使う紙を減らせば、そのぶん熱帯林が切らないから良いということだそうです。まあ、浪費するよりしないほうが良いのは確かでしょう。
- 「ゴミ」というのは事務所などから出るゴミを減らそうという運動。
事務所からどんなごみがでるのだろうか?なんて考え込むことはありません。あなたの机の横のゴミ箱を見てください。メモ紙、出勤途中でもらってきたパチンコ屋のテッシュ、開けもしないで捨てたダイレクトメール、おやつに食べたお菓子の包み紙、爪楊枝代わりに使ったクリップ、などなど
たいていのオフィスはゴミの処理代は家賃に入っていますので、ゴミを減らしても費用削減にはなりません。
もちろん、ゴミがへればビル管理会社も自治体もコストが減り全体的には良い方向に行くでしょう。
- 「電気」とはもちろん「電気」
30年前の昔の事務所なら事務所で電気製品といえば蛍光灯と電話くらいだったでしょう。しかし、今では照明、OA機器、空調、給茶機、シュレッダーなど電気がなければオフィスは機能しません。停電に備えてUPSなんてのまで設置しておく必要があるのです。
その中で電気使用が大きいのはもちろん空調です。政府がチームマイナス6%なんて掛け声をかけて省エネを働きかけています。
無駄な電気は使わないほうがよい。みなが省エネに努めれば発電所を増やす必要もありません。輸入する原油を減らせるかもしれません。
いえ、私は紙ごみ電気を環境活動のテーマにしてはいけないなんて一言もいいませんよ、
でも本日はちょっとだけ言いたいことを・・・・結局言いたいんじゃないか、なんて決して言ってはいけませんよ
どこの工場でもオフィスでも、
アイエスオーなんて始めると、紙ごみ電気を取り上げるのはよくある話。
審査機関の中には <紙ごみ電気> を活動に取り上げていないと、それを盛り込むようにアドバイス
(強制)するところもあるやに聞いております。
私は根も葉もないことは書きません。そのような指導をしている審査機関を知っています。
はたして審査機関がそのような指導をしてよいのかどうか、いかがなもんでしょうか? ・・・これ違反だよということです
紙ごみ電気だって、それを減らそうとする運動はバカにしたもんではありません。りっぱに価値がある活動であることはもちろんです。
ただし、その工場やオフィスにとってそれが最優先事項かどうか、というのが第一の疑問です。紙ごみ電気より、もっと環境に影響を与える重要なテーマがあるかもしれません。その場合は紙ごみ電気ではなく、そちらに全力を投じるほうが環境保護に役立つと思います。
第二の疑問はちょっと違った観点からです。
どこの会社や工場でも紙ごみ電気の活動を始めると、はじめの年はものすごい成果を出すところが多い。紙といってもバカになりません。ちょっとした会社なら年間数百万円はPPC用紙を使っているはずです。それが一挙に2・3割減ったりします。年100万円費用削減といえば、ちょっとしたものでしょう。
まあ、ゴミが減っても費用的にはちょっと・・・
電気代だってけっこうな金額になります。
しかしながら、紙ごみ電気の活動をして、3年もするとどこの会社でも事務所でももう減らなくなります。この時点でアイスオーもマンネリとなり自然消滅・・・なんてことになると困るのですが。
このとき、活動している中身を良く見てほしいのです。
紙を減らそう、年間○%削減と目標を掲げていらっしゃるでしょう。
その目標に対して、どのような施策をして○%、なにをして○%という裏づけがあるのでしょうか?
私は過去いくつもの企業、オフィスの環境マネジメントプログラムを拝見していますが、施策ごとの改善効果が明らかで、その合計が目標値となっている計画なるものを見たことがありません。
ほとんどは、「紙を減らすぞ!」とあって、月々の枚数目標があり、実績を記載するところがあるというのが多い。
「進め一億火の玉だ!」大和魂はアイエスオーの時代でも健在のようです。
ちょっと考えて御覧なさい。
設備を変えず、仕組みを変えず、方法を変えなかったら何も減るはずがありません。
紙を減らそうというのなら、報告書や企画書は紙を止めてパソコンの画面で見るとか、プロジェクタを使うとか、電子メールはプリントアウトしてはいけないなんてルールを作ったり、電子決済とか紙の文書を止めてイントラネットにするとか仕組みを変えないと減るはずがありません。
電気を減らそうというのなら、休憩時間は照明を消す、定時後は空調を止めるとか、パソコンは省エネタイプに切り替えるとか、何らかの仕組みや設備を変えないと減るはずがないのです。
じゃあ、なぜ活動開始後の1・2年は大幅に改善したのでしょうか?
それは簡単です。
もともと無駄が多くちょっとした気遣いだけでも改善することができたからです。ぬれた雑巾ならしぼれば水がドンドン出ます。
しかし目に見えるムダをなくすともう改善は止まってしまったのです。乾いた雑巾をしぼっても水は出ません。
最後に長屋に戻ってみましょう。
「大家さん、紙ごみ電気は掛け声だけが多いというのはよく分かりました」
「はっつあん、紙ごみ電気くらいならまだいい、世の中には理想を語っていても、それを実現することにトント頭が回らない人がいて困るんだよ」
「大家さん、知ってまっせ、平和主義者ってんでしょう。誰だって平和がいい、戦争は嫌いだ。でも平和、平和と叫んでも平和にはならないんですよね」
「おお、はっつあん、今日は冴えているね。そのとおり、平和を実現するためにはしっかりした計画を立てて実行しなくてはならないんだよ。軍隊を持たなければ平和が来るというのは空論だよ。戦争反対だからこそ軍備を持つこともあるんだがね」
「いやあ、まったくです。ところで大家さん、あっしの家の雨漏りはいつ直していただけるのでしょうねえ」
「雨漏りよ直れ!と毎日唱えてなさい。きっと雨漏りが止まりますよ」
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おあとがよろしいようで・・・・・
テケテケ・テケテケ(太鼓の音)
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小春様からお便りを頂きました(07.08.22)
こんばんは、佐為さま。
本日職場でISOの定期監査がありました。
なお、前日から表面を取り繕っての監査切り抜けです。
あほらしい…
以前お書きになっていましたが、紙ごみ電気は一定量の成果は出ますが後は現状維持ですよね。
この暑い中、監査のためにエアコン温度を上げられ、卓上扇風機を撤去され、デスクのノートパソコンが暑くなり、またサーバーが飛ぶのではとひやひやしながら仕事していました。
大体、事務系役所でISO14001取得して何かいいことがあるのでしょうか。
ハクはつくかもしれませんが、担当職員の仕事のやりがいと無駄予算としか思えないです。
紙ごみ電気に無駄な労力をさくより、一度買えば長持ちするものを買うほうが長い目で見て経済的、環境にも良いような気がします。
今日の感想
環境に良いものが人間にも良いものだとは限らない
暑さで死ぬかと思いました…
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小春様 お元気ですか〜
そりゃ災難ですね、
人災なのでしょうか?労災だったりして??
受査するほうも受査するほうですが、審査するほうも目が見えているのでしょうか?
そのような活動で認証を認めているようでは・・・審査機関こそ認定を取り消ししないといけないようです。
無駄予算なんてあなた・・・ひょっとして税金だったりして
ともかく、小春様、死なないでくださいね
2009年の今、ISO14001の環境活動が「紙・ごみ・電気」というところはあるまいと思っていた。
しかし、私がばかだった。
世の中には、ISO認証しました、環境に配慮していますと宣言している大組織が「紙・ごみ・電気」だというようなことが現実にあるのだ。
驚き、桃の木、山椒の木というのだろう。
某大学のISO14001のウェブサイトで、ISO14001活動のページがあった。そこでは学園の環境活動のメインを「紙・ごみ・電気」においているという。
うーん、言葉が出ない。2004年改訂の精神を知らないのか!と叱咤する気もないが、ちょっと安易すぎるよ。ISOの神様がいたらお怒りになるに違いない。ネットのISO評論家を自認している私としては、ちょっとコメントしたくなる。
学園の環境側面、あるいは環境影響で大きなものが紙ごみ電気だなんて、考える人がいるのだろうか?
まあ、大会社でも紙ごみ電気をテーマにしているところがあるのだから、学生とか教員の中にはそう考える人もいるのだろう。
しかし大学には環境問題の先生もいるだろうし、ISOマネジメントシステムに関する先生もいるだろう。「オイオイ、これじゃあ大学の恥さらしだから、もうちょっとテーマを考えてみなさい」くらいは言わなかったのだろうか?
学生だけでなく、大学の質を懸念する。
突っ込みどころはそれだけではないのだ。
紙とごみは削減を進めて一定量以下になると著しい環境側面でなくなるという。これは珍しい理屈ではない。多くの審査員や講習会で教えている。
だが、私はそれはおかしな理屈だと思っている。
そもそも、量が少なくなれば著しくなくなるという理屈が正しいのかどうか?その根拠もない。量が多ければ著しいというのは点数法によればそうなるという事に過ぎない。
BV(旧BVQI)社の公式ガイドブックでは、法規制を受けるものと事故の恐れのあるものは必ず著しい側面となる。それ以外は方針で宣言しているものなど組織が定めることとなっていた。
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BV社の公式ガイドブックは私の知る限りISO14001の最高のテキストである。既に絶版、残念なことだ。
これに相当するもの、これを超えるテキストは現時点ない。
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いくら減らしても存在する限り著しい環境側面から逃れることができないもの、たとえばPCBや感染性廃棄物などがある。紙ごみ電気は一定水準を割ったら著しくないというなら、その閾値はいかなる根拠で決めたのだろうか?
恣意的なものなら、別の人はそのレベルでないところで著しい・著しくないと判断するだろうし、はたまた、困ります。
それに関連するが、そもそも環境目的とは必ずしも著しい環境側面でなければならないということもない。
ここで勘違いしては困るのだが、著しい環境側面でなくなっても、改善を進めるという事は事業としては当然あり得ることなのだ。
言い方を変えると、著しい環境側面であっても改善をしないという決定もあり得る。
実はその前提として、大きな勘違いがあるのではないだろうか?
私の本音は実は勘違いしているよという事だよ
著しい環境側面を改善しようとして、その削減あるいは改善に努めることによって、著しい環境側面から外れる前に、目的に取り上げなくてもよいという段階があるのではないだろうか?
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前に述べた私の理屈と矛盾するように聞こえるだろう。
その通り!
私は相手のレベルまで落として、あるいは相手の論理に妥協して論を進めている。
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改善によって著しい側面を決める閾値水準(そんなものがあると仮定してだが)を割りこむ前に、他の著しい環境側面がそれより重大になり、プライオリティが逆転し、著しい側面ではあっても微小なものへの対策は終えるのが経営というものだ。
まあ、そんなことを語っても始まらないし、終わりもしない。
もっとおもしろいものがある。
「PDCAサイクルを3回まわした段階で、著しい環境側面にならないレベルまで下げる。3年後から現在をみて目標決定。」
はあ?
PDCAとは1年に1回のサイクルなのか?
もう完全にISO規格をご理解されていないことは明白だ。
もう論評するのはやめよう。
と言いながら、最後にもう一言だけ、
この文章を書いた人、チェックした人は、ISOではなく、実際の仕事とかしたことがあるのだろうか?
本日の疑問
一体だれがこの大学生を指導しているのだ!?
ISOをおとしめないでください。
名古屋鶏様からお便りを頂きました(09.06.13)
佐為様
お世話になります。名古屋鶏です。
何処とは申しませんが、ある大学では、
「環境方針は出入りの業者に至るまで周知し、要求事項を理解してもらう必要がある」
としながら、
「ただし、学生は利害関係者であるから、対象範囲外とする」
というムチャクチャな理屈を教えているようです。
ISO規格は言葉遊びじゃないんですがね・・・
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名古屋鶏様 毎度ありがとうございます。
以前は、「環境方針を作ったので伝え申す、よく理解し励めよ」なんてお手紙が弊社の役員あたりに来ましたね。
まあ役員ですからそんなもの封を明けもせずあっしのところに来るわけです。私もちょっと見ただけでゴミ箱行き。こりゃ環境に悪そうです。
幸いここ1年くらい見かけなくなりました。
ISOを理解しないで環境ゴッコ、ISOゴッコするのは止めてほしいですよね
JABのみなさん、JACBのみなさん、この現実を知っているのでしょうか?
えっつ、みなさんもその程度の理解でしたか・・やはり
ぶらっくたいがぁ様からお便りを頂きました(09.06.13)
言い方を変えると、著しい環境側面であっても改善をしないという決定もあり得る。
もっと言い方を変えると、著しい環境側面であっても改善できない場合もありえますね。管理はしますが、「改善」は放置せざるをえません。
例えばウチには「PCB廃棄物の保管」という著しい環境側面があります。
液状のPCBですがポリ容器に入っているため、処分できないのです。
PCB特措法では平成28年までに事業者自身で適切に処置しなければならないことになっています。ようやくJESCOによる引取り・処理が始まったものの、ポリ容器に入ったPCBは対象外です。行政が処理方法を決定するまで保管し続けるしかありません。間に合うのかなあ?
はあ?PDCAとは1年に1回のサイクルなのか?
これは、計画というものは全て事業年度単位で回るもの、というか事業計画のサイクルと同じでなければならないという思い込みがあるからでしょうね。
現に、下記のような問答を経験したことがあります。
審「御社の実施計画は何月から始まるのですか? 4月ですか?」
私「はあ? 特に決まってませんけど」
審「そんなバカはことはないでしょう。たいていは4月のはずです」
私「たしかに中には4月から始まるものもありますがそれはたまたまであって、何月から開始というルールはありません」
審「あのね、開始月を一律に決めておかないと管理する事務局がたいへんじゃないですか」
私「じゃあ、年度途中で例えば水質が悪化傾向にあってこのままでは規制値を超えそうなことがわかって早急に改善計画を立てなければならなくなったとき、それでも来年の4月まで開始を待つんですか?」
審「むむむ・・・・」
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ぶらっくたいがぁ様 毎度ありがとうございます
もっと言い方を変えると、著しい環境側面であっても改善できない場合もありえますね。管理はしますが、「改善」は放置せざるをえません。
おっしゃるとおり
まあ、ここでは敵のアホさの事例紹介ですから、全部の事例をあげているわけではありません
はあ?PDCAとは1年に1回のサイクルなのか?
これは、計画というものは全て事業年度単位で回るもの、というか事業計画のサイクルと同じでなければならないという思い込みがあるからでしょうね。
私はそれとは別の観点から問題を提起しました。
つまり紙ごみ電気にしろ、計画を立てたらPDCAは年1回なのか?ということです。
私なら四半期のPDCAもあるだろうし、月ごと、毎日、日常のPDCAもあると思います。常に時定数の小さなフィードバックをかけなければ自動制御システムは機能しません。
まあ、いずれにしても大学生もお宅様にご訪問あそばされた審査員閣下も現実の実務をしたことがないのは明白です
きっと本を読んで頭の中で考えてISOごっこをしているのでしょう
ISO審査が良くなるわけはありませんね
おっと、私は審査員をするほどもの好きじゃありません
だってそんな大学生を相手に指導するのは疲れそうです
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