ホームモニター日記




※家のテレビモニターで鑑賞した作品やコンテンツに関する感想のまとめです。(映画に限らず何でも話題にしています。)

※映画館や配信サイトでの公開から約1年以内くらいの映画は、新作映画と考えて簡単な作品情報を載せています。(何の根拠もない独自ルールですみません……。)


U-NEXTで視聴:

【ほつれる】:浮気はともかく、自分の感情に向き合えなくて気楽な関係に走るという人の気持ち、多分自分には一生分からない。本作の脚本も担当している加藤拓也監督は新進気鋭の劇団主宰者とのことで、彼の『滅相も無い』というドラマも見てみたんだけど、どうも今のところ、自分とは相性がよくないようだ。
【こんにちは母さん】:いい歳こいた息子が、未亡人になって久しいお母さんに男性の影を見て動揺するって、その筋書きはさすがにキモい……。山田洋次監督、いくら何でもマザコンが過ぎるんじゃないの?と思ったけど、それこそお歳がお歳だから今更改まらないだろうなぁ。
【アンダーカレント】:封印された過去の記憶に苦しむ女性と、彼女に関わるある男性。何だか複雑な筋立てだなと思ったけど、今泉力哉監督作の中では登場人物の気持ちが比較的分かるような気がするのは、真木よう子さんと井浦新さんの力業だろうか。
【白鍵と黒鍵の間に】:夜の銀座のジャズピアニスト(の卵)の話。70年代くらいの話かと勝手に思っていたら、昭和63年という設定だそうでのけぞった。この手のカッコつけは苦手というか、あんまりついていけないなぁ。

【ほつれる】(5/10)
監督・脚本:加藤拓也
出演:門脇麦、田村健太郎、黒木華、染谷将太、古舘寛治、他
製作国:日本

【こんにちは母さん】(6/10)
監督・脚本:山田洋次
共同脚本:朝原雄三
原作:永井愛
出演:吉永小百合、大泉洋、永野芽郁、寺尾聰、宮藤官九郎、田中泯、YOU、枝元萌、加藤ローサ、田口浩正、他
製作国:日本

【アンダーカレント】(7/10)
監督・脚本:今泉力哉
共同脚本:澤井香織
原作:豊田徹也
出演:真木よう子、井浦新、リリー・フランキー、永山瑛太、江口のりこ、中村久美、康すおん、内田理央、他
製作国:日本

【白鍵と黒鍵の間に】(5/10)
監督・脚本:冨永昌敬
共同脚本:高橋知由
原作:南博
出演:池松壮亮、仲里依紗、森田剛、高橋和也、クリスタル・ケイ、松尾貴史、松丸契、川瀬陽太、杉山ひこひこ、中山来未、佐野史郎、洞口依子、他
製作国:日本

【夜を越える旅】:新鋭の萱野孝幸監督作。心の旅を描くようなよくあるタイプの話かと思っていたら、途中からあらぬ方向に進み始める……えっ、これホラーだったの!びっくり!
【背中】:去った男を待ち続けながら男の親友と関係を結ぶ女……う~ん、いかにも越川道夫監督らしい話かな。
【麻希のいる世界】:塩田明彦監督作。21世紀になってからもう大分経っていることだし、女の子に降りかかる非現実的な悲劇性の中に世界の不条理を投影するような作劇は、そろそろやめて戴けないものでしょうか。
【正欲】:朝井リョウさん原作。水にしか性欲を感じないことに苦しむ新垣結衣さんと、正しさに過剰にこだわる検察官の稲垣吾郎さんが話の中心(で合ってるかな?)。人に何て言われようが好きに生きればいいじゃんと思うのだが、普通なる概念はいろんな人の心をそんなに縛っているものなのか……いろいろと大変だ。
【愛にイナズマ】:石井裕也監督作。松岡茉優さん演じる主人公が映画監督になる夢に挫折しかけ、疎遠になっていた実家を題材に映画を撮ろうと思いつく。前半はちょっと辛いし、後半は何だかしっちゃかめっちゃかに進んでいくけれど、何だか謎のパワーに満ちていて、不思議な元気をもらってしまった。
【ほかげ】:終戦直後の闇市に生きる女性や戦争孤児の姿を通して戦争の影を描く塚本晋也監督作。この空気感の創出は凄いけど、話は少しとりとめがないような気がした。まぁ塚本監督が創るお話って、物語性はいつもそんなに高くないか。
【花腐し(はなくたし)】:原作は芥川賞の小説で、荒井晴彦監督がピンク映画業界の斜陽というモチーフを取り込んだそう。しかしおっさん同士で過去に韜晦して愚痴り続けるというクソみたいな展開は、いかに綾野剛さんと柄本佑さんでも救えなかったですね……。
【怪物の木こり】:久々に拝見した三池崇史監督作。けど、脳にチップを埋め込まれてサイコパスになった人達が殺人をしまくるという中二……いやいや、SF的な展開に、頭の固いオバサンはついていけず。でも亀梨和也くんが最後に取った選択はちょっとよかったなと思いました。

【正欲】(6/10)
監督:岸善幸
脚本:港岳彦
原作:朝井リョウ
出演:稲垣吾郎、新垣結衣、磯村勇斗、佐藤寛太、東野絢香、山田真歩、宇野祥平、渡辺大知、徳永えり、他
製作国:日本

【愛にイナズマ】(7/10)
監督・脚本:石井裕也
出演:松岡茉優、窪田正孝、佐藤浩市、池松壮亮、若葉竜也、仲野太賀、趣里、高良健吾、MEGUMI、三浦貴大、北村有起哉、中野英雄、益岡徹、他
製作国:日本

【ほかげ】(6/10)
監督・脚本:塚本晋也
出演:趣里、森山未來、塚尾桜雅、河野宏紀、利重剛、大森立嗣、他
製作国:日本

【花腐し(はなくたし)】(4/10)
監督・脚本:荒井晴彦
共同脚本:中野太
原作:松浦寿輝
出演:綾野剛、柄本佑、さとうほなみ、吉岡睦雄、川瀬陽太、MINAMO、Nia、マキタスポーツ、山崎ハコ、赤座美代子、奥田瑛二、他
製作国:⁠日本

【怪物の木こり】(5/10)
監督:三池崇史
脚本:小岩井宏悦
原作:倉井眉介
出演:亀梨和也、菜々緒、吉岡里帆、染谷将太、中村獅童、渋川清彦、柚希礼音、堀部圭亮、他
製作国:日本

【タゴール・ソングス】:タゴール・ソングに魅了された佐々木美佳監督が制作したドキュメンタリー。インドのベンガル地方では大詩人タゴールの詩を歌にしたタゴール・ソングなるものがポピュラーに歌われているんだそう。インドの未知の側面を新たに知ることができてよかった。
【バーナデット ママは行方不明】:リチャード・リンクレイター監督作。ケイト・ブランシェット御大演じるバーナデットさんは、傍から見ると結構厄介で、そんな自分を自分でも持て余しているようなタイプの人。そんなバーナデットさんが自分個人の様々な問題に向き合う話なのに、「ママ」って属性だけを前面に出してしまうほがらかな邦題はどうもそぐわない。でも終盤、彼女が人生のバランスを取り戻して元気になっていくのはよかった。
【苦い涙】:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督が自分の戯曲を映画化した【ペトラ・フォン・カントの苦い涙】をフランソワ・オゾン監督がリメイクしたもので、原題はズバリ「ペトラ・フォン・カント」なのだそう。しかし、今回オリジナルの方も見たけれど、やはり1972年作というある種の昔っぽさは否めない。オゾン監督がオリジナルにいかに思い入れがあったのだとしても、今これをリメイクするのはいろんな意味で難しかったんじゃないのかなと思った。

【バーナデット ママは行方不明】(7/10)
原題:【Where'd You Go, Bernadette】
監督・脚本:リチャード・リンクレイター
共同脚本:ホリー・ジェント、ヴィンス・パルモ
原作:マリア・センプル
出演:ケイト・ブランシェット、ビリー・クラダップ、クリステン・ウィグ、エマ・ネルソン、他
製作国:アメリカ

【苦い涙】(5/10)
原題:【Peter Von Kant】
監督・脚本:フランソワ・オゾン
原作:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
出演:ドゥニ・メノーシェ、イザベル・アジャーニ、ハリル・ガルビア、ハンナ・シグラ、ステファン・クレポン、アマント・オディアール、他
製作国:フランス

【アイ・アム まきもと】:独りで亡くなった方を埋葬する役人ってなーんか聞いたことがある設定だなと思ったら、【おみおくりの作法】のリメイクだったのか。周囲の無理解にもめげず最後の一人の埋葬にまで粛々と向き合う阿部サダヲさんの姿は悪くないなと思った。
【シャイロックの子供たち】:ある銀行で起こった現金紛失事件。池井戸潤印だけあって面白い筋立てだったし、キャストも阿部サダヲさん(こっちもか)を始めとする演技巧者揃いで悪くない。何か食指が湧かないと毛嫌いせずにもっと早く見ればよかった。
【ぜんぶ、ボクのせい】:児童養護施設で暮らす少年が、あるホームレスの男性と心を通わせるも……。タイトルは、世界の不条理を自分の存在の否定に結びつけるしかない少年の心の叫び。苦いエンディングはあまり見たくない今日この頃だけど、この話はこの終わり方でなければ不誠実だっただろう。オダギリジョーさんを始めとする俳優さん達が脇をがっちり固める中で繊細な演技を見せてくれた主演の白鳥晴都くんのお名前は、松本優作監督と共に覚えておきたい。
【コンビニエンス・ストーリー】:山奥のコンビニからシュールな異世界に入り込んでしまうという三木聡監督作品。こういう作品はもう好き嫌いしかないよね。私はちょっと苦手だったかな。
【夕方のおともだち】:表向きは公務員として地味に暮らすドMの男性と、SMの女王様の不思議な恋愛譚。今まで見た廣木隆一監督作品の中でもこれはかなり上位の作品という気がする。村上淳さんが主人公を演じる姿も久々に拝見させて戴けてよかった。
【雨に叫べば】:1980年代、新人女性映画監督が映画を完成させるべく奮闘する。内田英治監督作も合う時と合わない時があるのだが、この筋立ては面白かった。

高い前評判を耳にしつつ長らく未見だった【オオカミの家】がやっと配信に。【コロニアの子供たち】でも描かれていたチリのピノチェト軍事政権下の『コロニア・ディグニダ』をモチーフにしたアニメーション。思えばシュヴァンクマイエル作品などが繰り返し上映されていた時代も少し昔になってしまったので、こういう映画が新鮮な驚きを持って迎え入れられて上手い具合にヒットしたのはいいことに違いない。
年末年始のテレビで放送していた【時の支配者】の録画を鑑賞。うん、ルネ・ラルー印だな。
マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルというオンラインの映画祭で上映していたらしい短編アニメをまとめて鑑賞。【イヌとイタリア人、お断り!】【アトミック・チキン】【新凱旋門】【ダンスの中に】【ふたりは姉妹】【二匹は友だち】など。【イヌとイタリア人…】は20世紀の初めにフランスに渡ったイタリア人一家の一代記を描いていて興味深かった。

【オオカミの家】(6/10)
原題:【La Casa Lobo】
監督・脚本:クリストバル・レオン、ホアキン・コシーニャ
(アニメーション)
製作国:チリ

Netflixで視聴:

【アリスとテレスのまぼろし工場】:街がまるごとある時空に閉じ込められてしまって時が進まなくなる、というSF設定にもう既についていけず(年寄りなので)、その後の展開も話半分で見てしまう。でも、ある女の子が泣きながら愛の告白をするシーンはさすがだなと思った。岡田麿里監督は、少年少女の感情がぶつかり合うシーンの描写が非常に鮮やかで素晴らしく、何ならそういうシーンを描きたいがために表現活動をしているのではないかと思うくらい。いかにもアニメらしい設定の方が企画が通りやすいのかもしれないが、もっと現実に寄せた設定の中でのそういった描写を見てみたいかなと思った。
【パレード】:藤井道人監督作も好きな作品とそうじゃない作品の落差が激しいかも。死んだ後あの世に行く前の世界で生前の未練をどうこうするって話、なんか最近多いような。それもある種のSF設定だから、本筋に入る前にしらけちゃうんだよね。
【カラオケ行こ】:和山やまさんの原作を山下敦弘監督が映画化。原作の絵を見る限り、綾野剛さんの狂児さんなんかはかなり雰囲気が違うんだけど、高校生と関わりを持つヤクザというキャラクターをちゃんと成立させているので、これはこれでありなのでは。聡実くんを演じた齋藤潤さんも大変よかった。この主人公二人の造形が成功しているので、この映画は成功していると思う。
【シティーハンター】:冴羽獠役に鈴木亮平さんをキャスティングした人、天才!実写の冴羽獠を彼以上に演じ切れる人が地球上にいるとは思えない。薫を演じる森田望智さんとのコンビネーションも抜群で、お話もテンポよく進んでほぼ文句なし。唯一気になったのは、何だか緑がかっていて安っぽい感じがする画面。ネトフリの日本制作作品って時々こういう色味の画面を見かける気がするのだが、何なんだろう。
『T.P.ぼん』:藤子・F・不二雄先生原作のアニメシリーズだけあってさすがの面白さだったけど、終わり方があっさりし過ぎててちょっと寂しかったかな。

【アリスとテレスのまぼろし工場】(6/10)
監督・脚本:岡田麿里
(アニメーション)
声の出演:榎木淳弥、上田麗奈、久野美咲、林遣都、瀬戸康史、、他
製作国:日本

【パレード】(5/10)
監督・脚本:藤井道人
出演:長澤まさみ、坂口健太郎、横浜流星、森七菜、寺島しのぶ、田中哲司、リリー・フランキー、他
製作国:日本

【カラオケ行こ】(8/10)
監督:山下敦弘
脚本:野木亜紀子
原作:和山やま
出演:綾野剛、齋藤潤、芳根京子、橋本じゅん、やべきょうすけ、吉永秀平、チャンス大城、RED RICE(湘南乃風)、坂井真紀、加藤雅也、北村一輝、他
製作国:日本

【シティーハンター】(8/10)
監督:佐藤祐市
脚本:三嶋龍朗
原作:北条司
出演:鈴木亮平、森田望智、安藤政信、木村文乃、杉本哲太、華村あすか、水崎綾女、迫田孝也、橋爪功、他
製作国:日本

アマプラで視聴:

【鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎】:『ゲゲゲの鬼太郎』のオリジナルストーリーによるスピンオフ。今更『ゲゲゲの鬼太郎』のシリーズでヒット作が生まれようとは全く思ってもみなかったが、日本人のDNAには犬神家みたいな話を定期的に見たくなる性癖が組み込まれているのかもしれない。
【ゴジラ-1.0】:【シン・ゴジラ】後、新たなゴジラの企画に手を挙げる人が全くいなくなってしまったんだそうで、山崎貴監督がしぶしぶ(?)火中の栗を拾ったんだとか。だから今までのゴジラの前日譚というちょっとトリッキーな切り口にしたとのこと。ここに特攻の生き残りというテーマを絡めたのもよかったと思うが、アカデミー視覚効果賞をくれたアメリカの人々にはどこまで伝わったのだろうか。まぁ、ゴジラは恐い神様だというニュアンスだけでも感じ取ってもらってればよしとするべきか。
【Winny】:ファイル交換ソフト「Winny」の開発者が著作権法違反幇助の容疑で逮捕され裁判を受けた事件を映画化したもの。「Winny」を悪用して違法コピーをばら撒いた人がいたからといって、その開発者まで罪に問われるのはナンセンスで、この映画はきっと、このおかしな経緯を風化させたくないと思った人達の執念で成立したのだろう。けれど、出来る限り事実に即した形で描こうとしているからか、話が専門的になりすぎて、私のような部外者には少し分かりにくかったかもしれない。
【地の群れ】:熊井啓的世界全開な熊井啓監督作品。
【すべてうまくいきますように】:安楽死を望む親にとまどいながら、最後はその要望を受け入れる女性をソフィー・マルソーが熱演。気がつくと、かなり前のめりになりながら観てた。親と仲違いでもしていない限り、親からそんなこと言われたらそりゃ苦悩するだろう。今までのフランソワ・オゾン監督作品でシンプルに一番好きだったかもしれない。

【鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎】(6/10)
監督:古賀豪
脚本:吉野弘幸
原作:水木しげる
(アニメーション)
声の出演:関俊彦、木内秀信、種﨑敦美、小林由美子、白鳥哲、飛田展男、中井和哉、沢海陽子、山路和弘、皆口裕子、釘宮理恵、石田彰、沢城みゆき、野沢雅子、他
製作国:日本

【ゴジラ-1.0】(8/10)
監督・脚本:山崎貴
出演:神木隆之介、浜辺美波、山田裕貴、青木崇高、吉岡秀隆、安藤サクラ、佐々木蔵之介、他
製作国:日本

【Winny】(6/10)
監督・脚本: 松本優作
共同脚本:岸建太朗
出演:東出昌大、三浦貴大、皆川猿時、和田正人、木竜麻生、池田大、金子大地、阿部進之介、渋川清彦、田村泰二郎、吉岡秀隆、渡辺いっけい、吹越満、吉田羊、他
製作国:日本

【すべてうまくいきますように】(9/10)
原題:【Tout s'est bien passé (Everything Went Fine)】
監督・脚本:フランソワ・オゾン
原作:エマニュエル・ベルンエイム
出演:ソフィー・マルソー、アンドレ・デュソリエ、ジェラルディーヌ・ペラス、シャーロット・ランプリング、エリック・カラヴァカ、他
製作国:フランス/ベルギー

NHKの『広重ぶるう』めっちゃ面白かった~。今まで歌川広重を主人公にした話って見たことなかったけど、ストーリーに見応えがあり、阿部サダヲさんもさすがの役作りで唸った。

話題の『勇気爆発バーンブレイバーン』をAmebaで視聴。こっ……これは一体何を見せられているのか。愛だよな愛。うん、きっと愛だ。

U-NEXTで視聴:

【キリエのうた】:こんなことを言ったらものすごく失礼なのかもしれないが、私はアイナ・ジ・エンドさんの歌声にはある種の痛々しさを感じてしまって少し苦手なので、映画の内容まで気持ちが入っていかなかった。岩井俊二監督は、どこかに少女性を残すようなある種のアーティストの神秘性に何かを仮託するような映画をたまに作ろうとするよね。正直、そんな映画の作り方はもうそろそろ卒業した方がいいんじゃないかと思うんだけど。
【首】:北野武監督の最新作、正直あまり期待していなかったんだけど、これがべらぼうに面白い!血まみれの狂気のユーモアに、侍なんて偉そうにしててもご大層なもんじゃないという冷めた人間観察。群雄割拠する名優達の中でも特に、歴代最凶レベルのイカレポンチの織田信長を演じた加瀬亮さんにはのけぞった。本作は【HANABI】以来の北野武監督作品で一番好きだったかもしれない。似たようなテーマばかりで退屈な戦国大河ドラマはもう要らない。次回からは毎週HNKでこの映画を流せばいいんじゃないだろうか。

【キリエのうた】(5/10)
監督・脚本:岩井俊二
出演:アイナ・ジ・エンド、松村北斗、黒木華、広瀬すず、村上虹郎、松浦祐也、笠原秀幸、粗品(霜降り明星)、矢山花、七尾旅人、ロバート・キャンベル、大塚愛、安藤裕子、江口洋介、吉瀬美智子、樋口真嗣、奥菜恵、浅田美代子、石井竜也、豊原功輔、松本まりか、北村有起哉、他
製作国:日本

【首】(9/10)
監督・脚本:北野武
出演:ビートたけし、西島秀俊、加瀬亮、中村獅童、木村祐一、遠藤憲一、勝村政信、寺島進、桐谷健太、浅野忠信、大森南朋、六平直政、大竹まこと、津田寛治、荒川良々、寛一郎、副島淳、小林薫、岸部一徳、他
製作国:日本

ジャック・リヴェット監督の【修道女】(理不尽)、韓国映画の【タチャ イカサマ師】などを視聴。

浅田真央さんのアイスショー『Everlasting33』の配信、仕事の合間を縫って通しで3回見てしまった。どのプログラムも本当に本当に素晴らしかったけど、田村岳斗先生とHideboHさんの各演目には特に心が鷲掴みに。そして大トリの真央さんのボレロ。この気持ちを述べる語彙力が足らない。

「オブリビオン」では昔ピアソラ沼に落ちるきっかけになった【タンゴ ガルデルの亡命】という映画のことを思い出した。(その映画にこの曲は出て来ないのだが……。)今まで見たことのあるどのプログラムよりも濃厚にリアルなタンゴのエッセンスを感じさせてくれる演目だった。

アマプラで視聴:

今泉力哉監督のドラマ『1122 いいふうふ』……2話くらいで絶え切れずにドロップアウト。夫婦のうだうだとかどうでもいいわー!大して見たくないわー!というのもあるけれど、夫婦の倦怠感を描くならせめて主役の二人は結婚経験者にすべきじゃないか。当時未婚だった高畑充希さんと岡田将生さんというピカピカのカップルに演らせるのはいくらなんでも無理があったのではないかと思った。
【映画 窓際のトットちゃん】:まだ初版の頃の『窓際のトットちゃん』を読んだのはかれこれ40年以上前のことだが、あの時の新鮮な驚きと感動は未だによく覚えている。今回のアニメ版は、最初本を読んだ時には想像し切れていなかったあの時代の空気感のようなものまで見事に描出していて、なかなかいいアニメ化なのではないかと思った。
【終末の探偵】:入管法や在留外国人などの今時の問題を扱ってるけど、うらぶれた裏町の探偵とかヤクザとか完全に昭和の世界観で懐かしさ満載。でもこういった手触りの映画ってもうそろそろ作れなくなるんじゃないかな。そう思うと何だか悲しくなった。
【春に散る】:またボクシングもの?と思ったが、さすがは瀬々敬久監督、そこはきっちり面白かった。特に横浜流星さんと、ライバルの窪田正孝さんの試合のシーンは凄かった。最近、窪田正孝さんが出ている作品は当たりの確率が高いなと思っているところ。(そう言いながら彼の朝ドラは途中で挫折してしまったが。)
【20歳のソウル】:筆者のご近所の市立船橋高校の応援歌「市船SOUL」が出来上がるまでを描いた小説の映画化。実話ベースの話の実写化のご多分に漏れずちょっと冗長だったかも。

【映画 窓ぎわのトットちゃん】(7/10)
監督・脚本:八鍬新之介
共同脚本:鈴木洋介
(アニメーション)
原作:黒柳徹子
声の出演:大野りりあな、役所広司、小栗旬、杏、滝沢カレン、他
製作国:

【終末の探偵】(6/10)
監督:井川広太郎
脚本:中野太、木田紀生
出演:北村有起哉、松角洋平、武イリヤ、青木柚、髙石あかり、水石亜飛夢、古山憲太郎、川瀬陽太、高川裕也、麿赤兒、他
製作国:日本

【春に散る】(7/10)
監督・脚本:瀬々敬久
共同脚本:星航
原作:沢木耕太郎
出演:佐藤浩市、横浜流星、橋本環奈、山口智子⁠、窪田正孝、片岡鶴太郎、哀川翔、坂東龍汰、松浦慎一郎、尚玄、奥野瑛太、坂井真紀、小澤征悦、他
製作国:日本

U-NEXTで視聴:

【PERFECT DAYS】:こんなふうに日々を地道に生きてきたおじさんが親戚にいて、まるでその人の話みたいだなと思った。本人が納得しているのであればそんな生き方もいいのだろうと思う。
【一月の声に歓びを刻め】:三島有紀子監督による3つの物語のオムニバス。それぞれ印象に残る小編なのだが、三島監督はきっと3話目の性暴力に関する話を一番世に出したかったんだろう。だから全体のバランスはあまり取れていない気がするけれど、それでもなお、この話は描く価値のあるものだったと思う。
【52ヘルツのクジラたち】:自分を虐待から救ってくれた人を死なせてしまうという辛い体験を持つ女性が、他の誰かを救おうとすることで再び生きていく力を得る話。一歩間違えればお涙頂戴や過剰なエピソードの羅列に陥ってしまいかねない話が、杉咲花さんを始めとするキャストの皆さんの丁寧な演技で繊細に綴られていてとてもよかった。けれど、志尊淳さんが(決して悪くなかったんだけど)どうしてもシス男性に見えてしまうのはいかんともし難い。でもここに実際のトランスジェンダーの俳優さんを持ってきても、それで映画が成立するかといえば別問題なので難しいところ。あと、宮沢氷魚さんがあまりに完膚なきまでのゲス野郎だったので、いくら役柄上のこととはいえ、いささかダメージを受けた。
【夜明けのすべて】:三宅唱監督作で、PMSが重すぎる女性(上白石萌音さん)とパニック障害を持つ男性(松村北斗さん)が、同じ職場で互いに支え合う関係を築くという話。男女が主人公でも恋愛をテーマにしない作品が日本で創られるなんて、そのこと自体に感動した。

【PERFECT DAYS】(7/10)
原題:【Perfect Days】
監督・脚本:ヴィム・ヴェンダース
共同脚本:高崎卓馬
出演:役所広司、田中泯、中野有紗、柄本時生、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、三浦友和、他
製作国:日本/ドイツ

【一月の声に歓びを刻め】(7/10)
監督・脚本:三島有紀子
出演:前田敦子、カルーセル麻紀、哀川翔、坂東龍汰、片岡礼子、宇野祥平、原田龍二、他
製作国:日本

【52ヘルツのクジラたち】(8/10)
監督:成島出
脚本:龍居由佳里、渡辺直樹
原作:町田そのこ
出演:杉咲花、志尊淳、宮沢氷魚、小野花梨、桑名桃李、西野七瀬、金子大地、真飛聖、余貴美子 、倍賞美津子、他
製作国:日本

【夜明けのすべて】(7/10)
監督・脚本:三宅唱
共同脚本:和田清人
原作:瀬尾まいこ
出演:松村北斗、上白石萌音、光石研、りょう、渋川清彦、芋生悠、藤間爽子、他
製作国:日本

【瞳を閉じて】:映画監督が失踪した俳優を探す旅に出るというビクトル・エリセ監督最新作!……なのだが、おぉやっと監督の新作を見られたぞ!といったような特異的な感動のようなものはあまり無かった。非常に内省的な内容ということなのだが、これまでの彼の映画のディテールを一から十まで語ることができるような人でなければ、その意味を隅々まで読み解くことはできないかもしれない。
【枯れ葉】:アキ・カウリスマキ監督作で男女が恋に落ちる話は案外多いが、この話が悲劇にならなくてよかった。今こんな世の中だからこそ、監督は、彼の映画の中だけでも守られるべきものを守りたかったんじゃないかと思う。
【落下の解剖学】:2023年のカンヌ映画祭のパルムドール受賞作。雪の山荘である男の転落死事件が起こり、ベストセラー作家である妻に殺人容疑が掛かる。真相は闇の中だが、視覚障害のある彼らの息子はどんな証言をするのか。裁判は二人のこれまでの生活の、できればそっとしておきたかったようなあれやこれやまでほじくり返して暴き出す。本当に容赦ない。えげつないものを見せられ、真実なるものの曖昧さを突き付けられて、見終わってもちっともスッキリしないという凄すぎる作品だった。
【ペルリンプスと秘密の森】:正反対の世界から来た二人がペルリンプスなる謎の存在を探す。理屈が先行していそうなプロットで分かったような分からんような。絵はとてもきれいだったけど。

【瞳を閉じて】(6/10)
原題:【Cerrar los ojos (Close your. Eyes)】
監督・脚本:ビクトル・エリセ
出演:マノロ・ソロ、ホセ・コロナド、アナ・トレント、他
製作国:スペイン

【枯れ葉】(7/10)
原題:【Kuolleet lehdet】
監督・脚本:アキ・カウリスマキ
出演:アルマ・ポウスティ、ユッシ・ヴァタネン、他
製作国:フィンランド/ドイツ

【落下の解剖学】(7/10)
原題:【Anatomie d'une chute (Anatomy of a fall)】
監督・脚本:ジュスティーヌ・トリエ
共同脚本:アルチュール・アラリ
出演:ザンドラ・ヒュラー、スワン・アルロー、ミロ・マシャド・グラネール、アントワーヌ・レナルツ、他
製作国:フランス

【ペルリンプスと秘密の森】(5/10)
原題:【Perlimps】
監督・脚本:アレ・アブレウ
(アニメーション)
製作国:ブラジル

『新宿野戦病院』、3話で視聴を終了した。クドカンさんの前作もコンセプトを聞いてこりゃnot for meだとあきらめたけど、本作もテーマの扱い方が微妙かも。でもそれ以上に、これは演出に難があるのでは。クドカンさんのドラマって、表面上はおふざけに見えても根底にはリリシズムがあって、そこをどう見せるかがキモだと思うんだけど、ここまでコメディに寄せ切ってしまっては下品なドタバタにしかならないというか。フジテレビはクドカンさんの扱い方を全然分かってないのでは、と思わざるを得ない。

最重要キャラの一人であろう小池さんの英語、決して下手ではないけれど、残念ながらネイティブの発音には聞こえない。元岡山県人からすると岡山弁もかなり難ありで、英語と岡山弁のダブルで耐え難いのはちょっと無理。どうしてもこの設定にしたいならキャスティングを間違えてるし、どうしても小池さんでいきたいなら脚本上の設定を少し変えるべきだったのでは。小池さんの頑張りが勿体なさすぎるよー!

Neflixで視聴:

『三体』『忍びの家』『ワンピース』『PLUTO』『鵜頭川村事件』(Wowowのドラマ)などに興味があったんだけど、全部にはついていけなくてパス。
『地面師たち』:綾野剛さん、豊川悦司さん、ピエール瀧さん、小池栄子さん、北村一輝さんに山本耕史さんというミラクルキャスト!実話ベースというお話の展開が分かりやすくてめっちゃエキサイティング!面白すぎて一挙に見てもうた。大根仁監督は今後も何作かNetflixで創る契約をしているそうだけど、控え目の予算でもしっかり管理して結果を残してきたタイプの映画制作者の皆さんには、結果も求めるけど予算は出してくれるNetflixはとても合っている気がする。
【屋根裏のラジャー】:スタジオポノックの最新作……なのだが、何で誰かに想像された客体が意思を持つねん、そんなこと起こり得ませんー!というところで最近の持病の老人性SF拒絶症が出て来てしまい、話に入って行くことができず。これは完全にnot for meだった。本当にごめんなさい。

【屋根裏のラジャー】(4/10)
監督:百瀬義行
脚本:西村義明
原作:A・F・ハロルド
(アニメーション)
声の出演:寺田心、鈴木梨央、安藤サクラ、仲里依紗、杉咲花、山田孝之、高畑淳子、寺尾聰、イッセー尾形、他
製作国:日本

パリオリンピックの開会式。ネットでアントワネットがかわいそうと言ってる人がたくさんいたそうだが、戦国時代や明治維新みたいな死屍累々の血みどろの時代が大好きで、その時代をテーマにした小説やドラマやゲームを未だにせっせとこしらえ続けている国の民が何を言っても、あんまり説得力がないと思うのだが。

フランス革命も、戦国時代や明治維新も、それらの血みどろの時代が現在のそれぞれの国の姿の基礎を形作っているという意味では共通点があるように思った。

パリオリンピックは、東京オリンピックほどの恨みつらみもないので割とせっせと動画配信を見た。どちらかというと、日本であまりメジャーでない競技を見る方が楽しい。と言いつつ、ベルサイユ宮殿の森が素敵!とかいって総合馬術のクロスカントリーを見てたら何か日本が3位になっててそのまま銅メダルという快挙を達成するし、エアピストル男女混合の決勝に出てたトルコのおじさんカッコいいとか言ってたらなんかえらくバズってたし、セーリングの会場はマルセイユか、気持ちよさそ~とちょこちょこ見てたら日本人ペアがメダルを取ったし。サーフィンは残念だったけど、ビーチのそばまで緑の山があるタヒチの高い波に、時折虹が掛かっているのは本当に美しかった。

メジャーな競技を見るのがなんでイマイチなのかというと、ヒステリックなまでの過度な日本贔屓で外国人のアスリートを添え物程度にしか映さない、という昔からある問題に加えて、最近、スポーツエージェンシーを通して広告代理店が大々的に介入しているという問題もあるらしいと気づいた。あまり期待を掛けすぎると選手が萎縮してしまって実力が出せない、というのは昔からあったけど、儲かりそうなスポーツでは事前にテレビクルーを貼り付けて特集番組を組ませるとかCMに出させるとかしてあまりにちやほやするから、10代とか20代とかの人生経験の少ない若い選手は、過度に持ち上げられた自己イメージと絶対に勝たなきゃいけないというプレッシャーでメンタルがおかしくなってしまうのでは。実際、そうした競技では期待の割には成績を残せない場合も多くて、中には明らかにメンタルの問題だというケースも見受けられるような。
JOCは代表選手に対して問題を起こさないようにとかいろいろレクチャーしてるんでしょ?メンタルの持ち方の問題にももっと本気で取り組んで教育した方がいいと思うのだが。

昨日たまたまある番組を見たんだけど、外国人観光客に適当にインタビューして「日本スゴーイ」とか言わせて喜んでるお安いクソ番組とかは全部滅べばいいと思う。

Disney+で視聴:

【哀れなるものたち】:死んだ妊婦に胎児の脳を移植、という設定がまず奇矯。そうして生まれてしまったヒロインがほぼセックスのことしか考えていないような化物に育ってしまったのがキモくて無理ー!と思ったが、そこからどんどん知恵をつけ学習を重ねて賢くなり、最後はすっかり慈愛に満ち溢れた成熟した人間に成長したのが妙に痛快だった。ヒロインが自らの力で「哀れさ」を克服する一方、他の登場人物もそれぞれがどこかに「哀れさ」を持った存在であることが明らかにされていくのが、ランティモス監督が言いたかったことなのかなと思った。

【哀れなるものたち】(7/10)
原題:【Poor Things】
監督:ヨルゴス・ランティモス
脚本:トニー・マクナマラ
出演:エマ・ストーン、マーク・ラファロ、ウィレム・デフォー、ラミー・ユセフ、クリストファー・アボット、ハンナ・シグラ、他
製作国:イギリス

『ムービング』:テディベアみたいにほてほて歩くキム・ボンソクくんと転校生チャン・ヒスちゃんの関係がかわいくてキュンキュンする。お話は、アベンジャーズみたいなハリウッド王道のヒーローものの基本パターンをいくつか組み合わせて韓国ドラマのバックグラウンドにうまく着地させた感じ。主人公達の親の世代まで遡って一人一人のバックグラウンドをじっくり描くのは、深く掘り下げたいファンには好評かもしれないけれど、なかなか話が進まなくてしつこい感じも受けたので良し悪しかな。でも基本面白かったっす。
『七夕の国』:あの謎の黒球の描写さえなんとかなればいい線行く可能性はあるのでは?と思っていたが、実際、超能力と田舎の村の因習と宇宙人が組み合わされた原作の抜群の面白さが損なわれておらず、うまく映像化できていたのではないかと思う。惜しむらくは、丸神頼之氏のご尊顔があまりにも作り物っぽかったことと、幸子ちゃんがボブじゃなかったこと。原作のビジュアルイメージはもう少し大切にして欲しかったけれど、主人公のナン丸くんは、原作とは少し違ってても、大らかで気のいい奴のオーラが出ていて悪くなかった。
『フクロウと呼ばれた男』:台詞回しがえらく翻訳口調なところが多いので、この脚本兼製作のデビッド・シンなる人は何者なんだろう?と思って調べたのだがよく分からない。お話は、昔のいくつかの映画やVシネなどで見るような設定を切り貼りした感じ。登場人物にほぼ感情移入ができないので、田中泯さんがたっぷり見られるというアドバンテージを差し引いても見続けるのが辛くて、ドロップアウトしました。
『SHOGUN 将軍』:真田広之さんが尽力したというだけあって、昔の『SHOGUN』や【ラストサムライ】みたいな胡散臭さはかなり払拭されているような。スコセッシ監督の【沈黙】みたいな作品もあったので、日本国内の人材をうまく活用して日本が舞台の物語を制作するノウハウも少しずつ蓄積されてきているのかもしれない。しかしそもそも、創作系の歴史ドラマはあんまり得意じゃないので、10話を続けて見るのはちょっと辛かったかな。

U-NEXTで視聴:

【美と殺戮のすべて】:【シチズンフォー スノーデンの暴露】のローラ・ポイトラス監督によるナン・ゴールディンのドキュメンタリー。事前の宣伝ではオキシコンチン(オピオイド)中毒に対する反対運動が大きくフィーチャーされているけれど、それだけに留まらず、彼女のこれまでのアーティストとしての歴史や、彼女の強烈な個性がしっかり描かれているので、一見に値すると思う。
【シモーヌ フランスに最も愛された政治家】:フランスで最も高名な政治家の一人とされているというモーヌ・ヴェイユを描いた話。彼女らが1975年にフランスでようやく成立させたという中絶法案の話が中心だけど、それ以前の彼女の歩みを描く中で、彼女のナチス収容所での体験談が出て来たのに驚いた。1970年代だと、戦争を経験した後に政治家になった人達がまだ一定数いた時代で、そういう人達の世の中をよくしたいと思う信念の強靱さは、今の時代の政治家とは全く質が違っているのかもしれない。
【大阪カジノ】:これはどう見ても、大阪のカジノ推進派の大手パチンコ店経営者から自分の立志伝を好意的に描いてくれと資金提供されて作った映画にしか見えないのだが。石原貴洋監督作品らしい独特の味は健在なんだけど、大阪にカジノを建てる云々という話は個人的な道義にあまりにも反する。けれど、大阪でカジノや万博やらを推進している人達がどういうメンタリティの持ち主なのかということを少しでも垣間見ることができたので、これも貴重な体験になったかもしれない。
【月】:石井裕也監督はこの豪華キャストを使って一体何をしたかったのか。原作を読んでないからなんとも言えないけれど、この話を、子どもを病気で亡くした夫婦がもう一度子どもを生むかどうか悩むという美しい物語に収束させてしまい、介護施設の暗い側面をまるでリアリティのない背景に矮小化させてしまうのは得策ではなかったのではないか。こういった話を扱うのであれば、ある登場人物が、意思疎通の出来ない障害者は人間じゃないので殺すべきという短絡思考に走る、そのプロセスこそをじっくり描いて欲しかったように思う。

【美と殺戮のすべて】(8/10)
原題:【All the Beauty and the Bloodshed】
監督:ローラ・ポイトラス
(ドキュメンタリー)
出演:ナン・ゴールディン、他
製作国:アメリカ

【シモーヌ フランスに最も愛された政治家】(7/10)
原題:【Simone, le voyage du siecle】
監督・脚本:オリビエ・ダアン
出演:エルザ・ジルベルスタイン、レベッカ・マルデール、オリヴィエ・グルメ、エロディ・ブシェーズ、他
製作国:フランス

【大阪カジノ】(6/10)
監督・脚本:石原貴洋
出演:木原勝利、大宮将司、橘さり、他
製作国:日本

【月】(6/10)
監督・脚本:石井裕也
出演:宮沢りえ、磯村勇斗、二階堂ふみ、オダギリジョー、長井恵里、大塚ヒロタ、笠原秀幸、板谷由夏、モロ師岡、鶴見辰吾、原日出子、高畑淳子、他
製作国:日本

Netflixで視聴:

【ミッシング】:冒頭からある子どもが行方不明になってしまい、その母親である石原さとみさんが必死で探す。時には狂気じみているくらいのその必死さに目が離せなくなる。今までの石原さんだったらまず演らなかったのではないかというようなシーンもあり、これは確かに石原さんの新境地だと言っていいだろう。その上で、人間の嫌らしい側面が純粋さと表裏一体になっている様を描こうとする、吉田恵輔監督のいつもの切り口が光っていた。
【湖の女たち】:大森立嗣監督作。個人的には、冤罪を人になすりつけようとする刑事(浅野忠信さん)と、それに真っ向から立ち向かう女性(財前直見さん)が完全に主人公で、福士蒼汰さんと松本まりかさんの変態SMプレイは趣味の範疇の味付けといった感じ。ただ、福士蒼汰さんも、今後のことを考えるとこういう役にチャレンジしておくのもいいかもしれない。(女優さんの方は、単に性的に消費されて終わるだけの可能性もあるから何とも言えない。)第二次大戦中の細菌部隊の話は、原作にあるのかもしれないけれど、取って付けたようで分かりにくかった。総じて、何か不穏なものを見た気はするけれど、論理的に説明されてなくて不親切な映画だったのではないかという気がする。
【不死身ラヴァーズ】:ある男性に何度も恋をしてしまう女性、というあらすじを聞いてあまり食指が動かなかったのだが、後半のびっくりするようなどんでん返しに思いっきりのけぞった。この荒唐無稽なヒロインを演じている見上愛さんが滅茶苦茶いい。松居大悟監督は、主人公の性別すら変えてしまうなど原作をかなり改変しているらしいけど、原作の骨子は大切にしているから原作者も納得しているとのこと。原作つき作品の映像化にあたって制作者サイドが手前勝手に改変するのがいろいろ物議を醸している今日この頃だけど、原作に対するリスペクトが何よりも大切なのだと改めて強く感じた。

【ミッシング】(8/10)
監督・脚本:吉田恵輔
出演:石原さとみ、青木崇高、森優作、小野花梨、細川岳、中村倫也、他
製作国:⁠日本

【湖の女たち】(6/10)
監督・脚本:大森立嗣
原作:吉田修一
出演:福士蒼汰、松本まりか、福地桃子、財前直見、三田佳子、浅野忠信、近藤芳正、平田満、根岸季衣、菅原大吉、土屋希乃、北香耶、大後寿々花、川面千晶、呉城久美、穂志もえ、奥野瑛太、他
製作国:日本

【不死身ラヴァーズ】(7/10)
監督・脚本:松居大悟
共同脚本:大野敏哉
原作:高木ユーナ
出演:見上愛、佐藤寛太、青木柚、前田敦子、神野三鈴、他
製作国:日本⁠

アマプラで視聴:

【あんのこと】:入江悠監督作。劣悪な環境で生まれ育った主人公が絶望の中で死んでいくしかなかった、などというひたすら暗いバッドエンドの作品なんてあまり見たくもないが、これが実話ベースだというから何ともやりきれない。主人公の河合優実さんも勿論よかったけれど、史上最悪レベルの毒母を見事に演じてみせた河井青葉さんがとてつもなく素晴らしかった。
【碁盤斬り】:白石和彌監督作で、元いた藩を追われても武士の矜恃を持ち続ける主人公を草彅剛さんが演じる。普通に面白かったのだが、この主人公の頑なさがさっぱり理解できないという若い皆さんの意見を散見し、そうか、今の若い人達って忠臣蔵とかあんまり見たことないんだ !! と思い至った。江戸時代辺りの時代劇を海外に持って行く時のネックにもなると思うのだが、かの時代の武士の、主人のためなら命も捨てるという過剰な滅私奉公ぶりを知らなければ、彼らの行動原理が理解できるはずもない。これは結構ゆゆしき問題なのではあるまいか。時代劇を後世に残すため、テレビ局は各局持ち回りで毎年必ず1回は忠臣蔵を放送するとかした方がいいんじゃないのかな?
【あまろっく】:東京の仕事をリストラされ尼崎に帰ってきた中年女性の主人公は、父親が20歳の相手と再婚したことに驚く。彼らがどんなふうに家族になっていくのかという過程はとても面白かったけれど、いくら特殊な事情があったからって、中条あやみさんが笑福亭鶴瓶さんに惚れて結婚するなんて、いくら何でもリアリティがない。もう高齢者の域にあるような男性が何十歳も年下の若い女性と恋愛関係になるというテンプレをあまりにも無邪気に再生産するのは、ちょっと思い止まってみて欲しいなぁと思った。

【あんのこと】(7/10)
監督・脚本:入江悠
出演:河合優実、佐藤二朗、稲垣吾郎、河井青葉、広岡由里子、早見あかり、他
製作国:日本

【碁盤斬り】(8/10)
監督:白石和彌
原作・脚本:加藤正人
出演:草彅剛、清原果耶、國村隼、中川大志、斎藤工、小泉今日子、奥野瑛太、音尾琢真、市村正親、他
製作国:日本

【あまろっく】(7/10)
監督:中村和宏
脚本:西井史子
出演:江口のりこ、中条あやみ、笑福亭鶴瓶、松尾諭、中村ゆり、中林大樹、駿河太郎、久保田磨希、高畑淳子、佐川満男、他
製作国:日本

オドオド×ハラハラが終わってしまった。この座組がなくなるのはもったいないなーと思うけど、最近の企画(ラスト2回を除く)は低迷していたので仕方ないか。プレーンがギリギリまで頭を絞る努力をしていない番組は画面に分かりやすく現れてしまうと思う。

私にとっての『虎に翼』は物言う女の物語でした。誰に何を言われても自分の頭でとことん考えて発言し、誤りがあると分かれば素直に認め、理想と現実の狭間でもがき苦しんでも前に進み続ける寅子さんは、私の中で朝ドラ歴代No.1の主人公になりました。寅子さんありがとう!さよーならまたいつか!

それにしても。このドラマや寅子さんを蛇蝎の如く忌み嫌って攻撃する人達が一定数いたのが、逆にこのドラマの立ち位置を明確に示しているようで、いっそ清々しかったです。

U-NEXTで視聴:

【朽ちないサクラ】:警察の事務員の女性がある事件に遭遇し、警察内部の腐敗などにも直面しながらも、警察官を志すようになる。【孤狼の血】と同じの柚月裕子さんの原作だけど、これだけだと何か煮え切らないパート1といった趣きで、杉咲花さんが警察官になってからの方が圧倒的に面白そう。しかし本作自体がさほど話題にならなかった気がするので、続編は望み薄かもしれない。
【水深ゼロメートルから】:山下敦弘監督、もしかして裸足の女の子達を映したかっただけなのでは……?宣材写真を見て一瞬【リンダリンダリンダ】のテイストを期待したけれど、シチュエーションが全然違うし(ほぼ空のプールを掃除するワンシーンのみ)、ほぼ会話劇だけでもたせなくてはいけないにしては彼女らの演技が下手すぎる。大変申し訳ないけれど、これは見ているのが苦痛なレベルだった。

【朽ちないサクラ】(6/10)
監督:原廣利
脚本:我人祥太、山田能龍
原作:柚月裕子
出演:杉咲花、萩原利久、豊原功補、安田顕、他
製作国:日本

【水深ゼロメートルから】(3/10)
監督:山下敦弘
原作・脚本:中田夢花
出演:濱尾咲綺、仲吉玲亜、清田みくり、花岡すみれ、三浦理奈、さとうほなみ、他
製作国:日本

【響け!情熱のムリダンガム】:太鼓の一種のムリダンガムをフィーチャーしたインド映画。
【エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命】:19世紀のイタリアが舞台で、カトリック教会がユダヤ人の家族からエドガルド・モルターラという少年を連れ去ったという史実に基づくマルコ・ベロッキオ監督作。キリスト教・ユダヤ教圏の人が見たらいろいろ思うところがあるテーマなんだろうけど、日本人の筆者には正直そこまでよく分からない。ただ、主人公が育った環境に馴染んでしまったあまり、長年思い焦がれた親と分かり合えなかったというのは、あまりにひどい悲劇だなぁと思った。
【オッペンハイマー】:クリストファー・ノーラン監督の信者の皆さんはいろいろ擁護しているようだが(私自身もある時期までは監督の相当の信者だったのだが)、原爆でダメージを受けた街や人々のどういう映像を見てオッペンハイマーが自分の罪深さを思い知ったのか、オッペンハイマーの心象風景に何が映ったのか、そこを描かなければこの映画の説得力は半減すると私は思った。どういう思惑だったか知らないが、クリストファー・ノーランは、人類にとっての原爆が何であるのか、そのことを表現することから逃げたのだ。表現しきれないと思うなら彼はこの主題に手を出すべきではなかった。私はもう表現者としての彼を信用しない。I do not trust Christopher Nolan anymore because he turned his back on the agony of expressing what atomic bombs are for human beings. でもキリアン・マーフィーが好きだから、彼の分だけ評価しておくことにする。

【エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命】(6/10)
原題:【Rapito】
監督・脚本:マルコ・ベロッキオ
共同脚本:スザンナ・ニッキャレッリ
出演:エネア・サラ、レオナルド・マルテーゼ、パオロ・ピエロボン、ファウスト・ルッソ・アレジ、バルバラ・ロンキ、他
製作国:イタリア/フランス/ドイツ

【オッペンハイマー】(3/10)
原題:【Oppenheimer】
監督・脚本:クリストファー・ノーラン
原作:カイ・バード、マーティン・J・シャーウィン
出演:キリアン・マーフィー、エミリー・ブラント、マット・デイモン、、ロバート・ダウニー・Jr.、フローレンス・ピュー、ジョシュ・ハートネット、ケイシー・アフレック、ラミ・マレック、ケネス・ブラナー、ディラン・アーノルド、マシュー・モディン、他
製作国:アメリカ

ヤン・ヨンヒ監督の【スープとイデオロギー】【愛しきソナ】【ディア・ピョンヤン】がU-NEXTに来ていて一挙に視聴。自身の家族の物語を通して韓国・朝鮮と日本の関係を照射する希有な映画監督。自分語りをするドキュメンタリー監督は多いけど、自分語りに仮託して明確に論点を見せることができる彼女ほどクレバーな映画関係者は、日本にはほとんどいないんじゃないかと思う。

【ゴールド・ボーイ】:メインビジュアルに岡田将生さんがデカデカと載っていたのだが、あればミスリードだったんか。終わってみると主人公がただひたすらにクソヤローで、ここまで爽快感のないピカレスクも珍しい。それでも最後まで魅き付けられてしまう圧巻の作劇が凄いと思った。中国のドラマのリメイクらしいが、この吸引力は金子修介監督の面目躍如なんじゃないのかな。
【罪と悪】:かつてある事件を経験して今は別々の道を行く4人の青年が、過去の因縁に絡め取られる話。申し訳ないけれど全く刺さらなかった。ひたすら暗くてやたら複雑で誰にも感情移入できない話にどう対処すればいいのか分からなかったというのもあるけれど、性的被害の話を物語のフックとして気軽に使うなよ、という気持ちもある。それは被害者が男の子でも女の子でもあまり変わりはない。
【零落】:自己愛の塊の自己中な自己憐憫男を斎藤工さんが演じる竹中直人監督作。そりゃ君が幸せになれる訳ないよ、というか、君のような人に自分は不幸だとうだうだ訴えられても知らんがな、といった感じで全編見終わってしまっていた。
【サマーフィルムにのって】:高校部活にタイムトリップするSF話と分かって、この映画を見るのをなーんか無意識に避けていた理由が分かった。好きな人は無茶苦茶好きだろうと思う。私はそうじゃなかったので申し訳ない。
いまおかしんじ監督の【道で拾った女】【海辺の恋人】【遠くへ、もっと遠くへ】【甲州街道から愛を込めて】【あいたくて あいたくて あいたくて】【カタオモイ】【契約結婚】【誘惑は嵐の夜に】【半端】【愛のぬくもり】などを一挙に視聴。監督、どれだけ多産やねん。全然追い付けないわ……。
【さいはて】:居酒屋で出会った男女があてもない逃避行に……越川道夫監督作品のうだうだした側面が思い切り前面に出てしまって少々げんなり。でもあの浜辺のオルガンのラストシーンだけはやたら印象に残っている。

【ゴールド・ボーイ】(8/10)
監督:金子修介
脚本:港岳彦
原作:ズー・ジンチェン
出演:羽村仁成、星乃あんな、前出燿志、岡田将生、黒木華、松井玲奈、北村一輝、江口洋介、他
製作国:日本

【罪と悪】(5/10)
監督・脚本:齊藤勇起
出演:高良健吾、大東駿介、石田卓也、村上淳、佐藤浩市、椎名桔平、他
製作国:日本

【零落】(5/10)
監督:⁠竹中直人
脚本:⁠倉持裕
原作:浅野いにお
出演:斎藤工、趣里、MEGUMI、玉城ティナ、安達祐実、山下リオ、土佐和成、永積崇、他
製作国:日本

【さいはて】(5/10)
監督・脚本:越川道夫
出演:北澤響、中島歩、他
製作国:日本

【アイリーン・グレイ 孤高のデザイナー】:ル・コルビュジエが嫉妬したデザイナー、アイリーン・グレイの知られざる肖像に迫る……。とは言いながら、何人かの専門家がひたすら喋って静止した写真を見せるだけ。よほどアイリーン・グレイが好きな人以外には特にお勧めしない。
【ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ】:ルイス・ウェインは擬人化した猫の絵で有名なイラストレーターなのだそう。もっとほんわかしたハートウォーミングな話かと勝手に想像していたら、鬱展開のどえらく重い話でびっくりした。イギリスのビクトリア朝時代にはこんな側面もあったのだろうか。ところで、動物の擬人化といえば、ピーター・ラビットのビアトリクス・ポターが生きた年代もほぼ被るっぽくて、そういう切り口で研究したら何か興味深い所見が得られるかもしれない。
【モリコーネ 映画が恋した音楽家】:映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネ。長年ほんとに幅広い仕事を手掛けていてすごくたくさんの人に敬愛されているんだなぁ。ところで、モリコーネはエンニオさんだったんですね……今までエンリオさんだとばかり思っていてすみませんでした。
【燃えあがる女性記者たち】:インド北部のアウトカーストの女性達が立ち上げた「カバル・ラハリヤ」という新聞社を描くドキュメンタリー。様々な困難に直面し、時には命の危険にすら晒されながら、それでも声を上げることをやめない彼女達の姿に大変な感銘を受けた。日本のマスメディアの皆さんは、彼女らの何十分の一かのジャーナリズム魂でも持ち合わせているだろうか。自分達の胸に手を当てて一度よく考えてみて欲しい。

【燃えあがる女性記者たち】(9/10)
原題:【Writing with Fire】
監督:リントゥ・トーマス、スシュミト・ゴーシュ
(ドキュメンタリー)
製作国:インド

【枝葉のこと】:二ノ宮隆太郎監督の長編第2作。荒削りな印象なのだが、こういう怒りを持て余しているタイプの男性の自分語りって、日本の一部の男性映画関係者にはきっと需要があるんだろうな。
【銀平町シネマブルース】:あることがきっかけで映画を撮らなくなってしまった映画監督が、下町のレトロな名画座で働くようになり自分を見つめ直すという、小出恵介さんの久々の主演作。手作りの映画製作や上映会といった、古き良き自主映画文化を優しく描いているのはいいけれど、今の時代にはさすがに現実離れしすぎていないだろうか。
【17歳は止まらない】:畜産高校の女子高生たちの物語。タイトルはいくらなんでもダサすぎじゃないかと思うけど、思い立ったら一直線!な主人公(『虎に翼』でヒョンちゃんの娘役だった池田朱那さん)と友人達との日常の活き活きとしたやり取りがめっちゃ面白い!本作は東映ビデオの新進クリエイター発掘プロジェクトの選出作なんだそうで、脚本も手掛けた北村美幸監督はアダルトビデオ業界での20年の経歴を経てこれに応募したのだそう。人生何が起こるか分からない。このお仕事が次の良きお仕事に繋がりますように。
【白河夜船】:吉本ばななさん原作、安藤サクラさんと井浦新さん出演の2015年作。コロナ前に描かれた、このまったりとした不毛な男女関係の在り方って、何だかとてつもなく昔のもののように思える。
【愛に乱暴】:ほとんど壊れかけている家庭生活の逆を行くように「丁寧な暮らし」に執着する主人公。演じている江口のりこさんが上手すぎて、気持ち悪いほど息苦しい。けれど、あるサイトの解説よると、原作で主人公が執着しているのはあの暮らしではなくあの場所そのものが持つ記憶であり、映画では主人公の悲しみも随分薄っぺらくされてしまっているとのこと。そう聞くと、江口さんのあの熱演が単なる心理ホラーに落とし込まれてしまっているのは勿体ないような気がしてきた。
【わたくしどもは。】:見始めてほどなく、またあの世とこの世の境界線の世界の話か~となってしまった。ロケ地の佐渡島の雰囲気が画面に美しく取り込まれているのはよかったけど、このいいムードでせっかく松田龍平さんと小松菜奈さんに出てもらうなら、もっと違ったテーマで見たかったような。

【銀平町シネマブルース】(6/10)
監督:城定秀夫
脚本:いまおかしんじ
出演:小出恵介、吹越満、宇野祥平、藤原さくら、日高七海、中島歩、さとうほなみ、浅田美代子、渡辺浩之、他
製作国:日本

【17歳は止まらない】(7/10)
監督・脚本:北村美幸
出演:池田朱那、片田陽依、白石優愛、大熊杏優、青山凱、中島歩、他
製作国:日本

【愛に乱暴】(6/10)
監督・脚本:森ガキ侑大
共同脚本:山崎佐保子、鈴木史子
原作:吉田修一
出演:江口のりこ、小泉孝太郎、馬場ふみか、風吹ジュン、他
製作国:日本

【わたくしどもは。】(6/10)
監督・脚本:富名哲也
出演:小松菜奈、松田龍平、片岡千之助、石橋静河、内田也哉子、森山開次、辰巳満次郎、田中泯、大竹しのぶ、他
製作国:日本

【密輸1970】:1970年代の韓国の漁村で、海洋汚染のため失職の危機に遭い密輸に手を染めた海女さん達が、より悪い奴らと対峙していくというお話。1970年代ということが一発で分かるのでこの邦題はなかなか秀逸。日本の昭和のプログラムピクチャー全盛時代のピカレスクみたいな雰囲気を、韓国のちょっとレトロな歌謡曲の数々が盛り上げていていいと思う。
【ソウルの春】:1979年、朴正煕(パク・チョンヒ)大統領暗殺後に全斗煥(チョン・ドゥファン)が軍事クーデターを起こして実権を握った事件(翌年1980年に光州事件を弾圧して大統領になった)をモチーフに、それを阻止しようとした軍人を主人公として描いた物語。韓国のこの辺りの歴史にあまり詳しくなくて、光州事件は知っていたがその前の軍事クーデターについてはほとんど知らなかったので、もっと勉強せねばと改めて思った。先日の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の軍事クーデターが未遂に終わったのは、こういう歴史を経て創られたこういう映画をヒットさせる素養のある韓国市民が存在すればこそだったのかもしれない。

【密輸1970】(7/10)
原題:【밀수 (Smugglers)】
監督・脚本:リュ・スンワン
共同脚本:キム・ジョンヨン、チェ・チャウォン
出演:キム・ヘス、ヨム・ジョンア、チョ・インソン 、パク・ジョンミン、キム・ジョンス、コ・ミンシ、他
製作国:韓国

【ソウルの春】(8/10)
原題:【서울의 봄 (12.12: The Day)】
監督・脚本:キム・ソンス
共同脚本:ホン・ウォンチャン、イ・ヨンジュン
出演:ファン・ジョンミン、チョン・ウソン、イ・ソンミン、パク・ヘジュン、キム・ソンギュン、チョン・マンシク、チョン・ヘイン、イ・ジュニョク、他
製作国:韓国

【陪審員2番】:クリント・イーストウッド監督の最新作。陪審員である主人公が、犯人は自分かもしれないので被告は無罪だと早々に気づく一方、検察官は、出世のため是が非でも有罪を勝ち取りたい立場ながら、何かおかしいと思い始める。【12人の怒れる男】をもう2ひねりほど複雑にした感じで、いかにも現代版的な帰結になるのかと思いきや、しっかり気骨を見せるのがイーストウッド。御大もいい時とそうじゃない時の落差が激しい監督だけど、これはいいイーストウッドだった。
【人間の境界】:ベラルーシとポーランドの国境を非合法的に越境しようとする難民達と、彼らに何とか手を差し伸べようと苦闘する支援団体の人々を描く。ロシアのマブダチのベラルーシが、EUに混乱を起こす目的で大量の難民を集めてポーランド国境へ移送する「人間兵器」なる作戦があるのだと初めて知った。しかもポーランドの国境警備隊は、決死の思いで越境してきた難民達を極めて非人間的なやり方で送り返すのだという……。難民問題には現代社会の不条理が煮〆られているけれど、ポーランド国境で起こっている出来事は取り分け非人間的かもしれない。一時はハリウッドでも映画を撮っていたアグニエシュカ・ホランド監督が、近年はこんな映画を撮っている、いや、心情的に撮らざるを得ないのだろうと思うと辛い。
【リンダはチキンがたべたい!】:父親の思い出のチキン料理が食べたい女の子とその母親がチキンを求めて右往左往する、というフランスのアニメーション。そのスラップスティックぶりにちょっとだけ【地下鉄のザジ】を思い出した。
【ジェーンとシャルロット】:母親と話がしたいといってビデオカメラを取り出す人って世界の中ではおそらく超少数派で、さすがはシャルロット・ゲンズブール、両親ともに超有名なアーティストという呪われた環境を力強くサバイブしてより高みに到達した希有な女優なだけのことはある。本作の映画としての良し悪しは最早全然分からないが、ジェーン・バーキンとシャルロット・ゲンズブールの対話をシャルロット自身が映したというだけでフランス映画史に残るレベルの大事件だと思うので、もう何も言う必要はあるまい。

【陪審員2番】(9/10)
原題:【Juror #2】
監督:クリント・イーストウッド
脚本:ジョナサン・エイブラムズ
出演:ニコラス・ホルト、トニ・コレット、J・K・シモンズ、クリス・メッシーナ、ガブリエル・バッソ、ゾーイ・ドゥイッチ、セドリック・ヤーブロー、キーファー・サザーランド、他
製作国:アメリカ

【人間の境界】(9/10)
原題:【Zielona Granica (Green Border)】
監督・脚本:アグニエシュカ・ホランド
共同脚本:マチェイ・ピスク、ガブリエラ・ラザルキェヴィチュ
出演:マヤ・オスタシェフスカ、ベヒ・ジャナティ・アタイ、モハマド・アル・ラシ、ダリア・ナウス、トマシュ・ヴオソック、他
製作国:⁠ポーランド/フランス/チェコ/ベルギー

【リンダはチキンがたべたい!】(6/10)
原題:【Linda veut du poulet!】
監督・脚本:キアラ・マルタ、セバスチャン・ローデンバック
(アニメーション)
製作国:フランス

【ジェーンとシャルロット】(7/10)
原題:【Jane par Charlotte】
監督・出演:シャルロット・ゲンズブール
(ドキュメンタリー)
出演:ジェーン・バーキン、他
製作国:フランス

【熱のあとに】:過去にホストを刺して半殺しにしようとし、出所後に別の男性と結婚するも彼を愛した記憶が忘れられない女性と、そんな妻への気持ちを持て余し右往左往して苦しむ夫。この女性、傍から見ると思い込みが激しすぎて迷惑極まりない感じだが、ある時期の強烈な記憶に囚われて人生を左右されてしまうという感覚は分からないでもない。こんな情念ドロドロ系の話なのに案外スッキリしていてベタつかず、二人のそれぞれの想いにフォーカスできるのは、橋本愛さんと仲野太賀さんの卓越した演技のおかげもさることながら、自分の見せたいものをうまく制御して表現している山本英(あきら)監督の手腕もあると思う。山本監督が東京藝大の院卒だという経歴を聞いて少し納得した。これまで得たものを活かして今後もいい作品を創ってください。
【ぼくのお日さま】:【僕はイエス様が嫌い】の奥山大史監督作。ある地方のスケートリンクでフィギュアスケートの練習をする男の子と女の子と、彼らを見守るコーチの池松壮亮さんの姿が牧歌的でよかったんだけど、後半に入ると彼らの関係が捻れていってしまう。それでもあのラストには何か希望を見いだせるのだろうか。お話のプロットが弱いという批判も読んだのだけれど、子供たちが淡い光の中で氷を削りながら練習する姿それ自体が宝物のように美しかったので、それだけでも充分価値があるのではないだろうか。
【Out】:品川ヒロシ監督の今までの映画だとデビュー作の【ドロップ】に一番近い感じで、品川監督はやっぱり【ビー・バップ・ハイスクール】や【クローズ】みたいな不良がケンカするタイプの映画が一番好きなんだろうなぁ。けれど、本作では少年院出の主人公の更正を見守る大人の存在を丁寧に描いているところが、今までと少し違っていてとてもいいなぁと思った。
【ぼくが生きてる、ふたつの世界】:CODA(Children of Deaf Adults=聴覚障害者を親に持つ耳が聞こえる子ども)であった五十嵐大さんが書いた自伝的エッセイを原作にした、呉美保監督作品。CODAとして生まれ育った子どもの葛藤を描くだけに留まらず、親元を離れたある若者が苦労しながら自分なりの道を築いていき、成長した後に初めてかつてウザいと思っていた親の愛を認識する、という普遍的な過程も描いているのがとてもいい。手話には実は方言やコミュニティ内での流行り言葉や個人差などがかなりあるのだそうで、吉沢亮さんは、手話監修の人が驚くほど自然なレベルの手話を完璧に習得していたそうだ。そして【……ふたつの世界】というタイトルに違わぬように、手話という言語の世界と音声の言語の世界を自由に行き来する主人公の姿を活き活きと捉えているのが素晴らしかった。やっぱり呉美保監督の作品は間違いない。次回作をいつまでも待ってます。

【熱のあとに】(8/10)
監督:山本英
脚本:イ・ナウォン
出演:橋本愛、仲野太賀、木竜麻生、坂井真紀、木野花、鳴海唯、水上恒司、他
製作国:日本

【ぼくのお日さま】(7/10)
監督・脚本:奥山大史
出演:越山敬達、中西希亜良、池松壮亮、若葉竜也、山田真歩、潤浩、他
製作国:日本

【Out】(6/10)
監督・脚本:品川ヒロシ
原作:井口達也
出演:倉悠貴、醍醐虎汰朗、与田祐希(乃木坂46)、水上恒司、與那城奨、大平祥生、金城碧海(JO1)、⼤平祥生(JO1)、⾦城碧海(JO1)、杉本哲太、渡辺満里奈、他
製作国:日本

【ぼくが生きてる、ふたつの世界】(9/10)
監督:呉美保
脚本:港岳彦
原作:五十嵐大
出演:吉沢亮、忍足亜希子、今井彰人、ユースケ・サンタマリア、烏丸せつこ、でんでん、他
製作国:日本


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雑想ノート 映画館で見た(休止中) ろばみみ BN