映画館で見た映画



2022年に映画館で見た作品です。

【さがす】(8/10)
監督・脚本:片山慎三
出演:佐藤二朗、伊東蒼、清水尋也、森田望智、他
製作国:日本
ひとこと感想:【岬の兄妹】の片山慎三監督作。父を捜す娘、秘密を抱えた父が関わるサイコパス。二転三転する物語に引き込まれ、最後まで引き付けられた。これをサスペンスとしても人間の物語としても描き切る力量は凄い。惜しむらくは清水尋也さん演じるサイコパスがどういう人物なのかよく分からなかったことで、そこはもう少し深掘りして欲しかった気もするが、主人公はあくまで佐藤二朗さん演じる父親なので、これはこれでいいのだろう。娘役の伊東蒼さんがまた本当に素晴らしかったが、一部で言われている通り、彼女がある人物に胸を見せるシーンは本当に要らなかったんじゃないかと思う。

【フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊】(6/10)
原題:【The French Dispatch of the Liberty, Kansas Evening Sun】
監督・脚本:ウェス・アンダーソン
出演:ビル・マーレイ、ティルダ・スウィントン、フランシス・マクドーマンド、ジェフリー・ライト、オーウェン・ウィルソン、ベニチオ・デル・トロ、エイドリアン・ブロディ、レア・セドゥ、ティモシー・シャラメ、リナ・クードリ、マチュー・アマルリック、スティーブ・パーク、エドワード・ノートン、シアーシャ・ローナン、クリストフ・ヴァルツ、アンジェリカ・ヒューストン、ジェイソン・シュワルツマン、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:アメリカの地方誌の話かと思いきや、アメリカの新聞社のフランス支局の話とか。これのどこがフランスやねん、なんて言うのは野暮で、ウェス・アンダーソン監督の脳内世界を微に入り細に入り堪能するのがきっと正しい見方なんだろう。でも最近の監督はあまりに自分の趣味に耽溺してしまっていて、正直私は、ついていくのがちょっと辛い。

【国境の夜想曲】(6/10)
原題:【Notturno】
監督:ジャンフランコ・ロージ
(ドキュメンタリー)
製作国:イタリア/フランス/ドイツ
ひとこと感想:ジャンフランコ・ロージ監督が、イラク、シリア、レバノン、クルディスタンの国境地帯で撮影した人々の姿。誰もが多かれ少なかれ辛い状況にあるはずなのに、監督の眼を通すと、どのシーンも高潔で厳かに映る。監督が人間というものをそう捉えているからではないかと思う。

【選ばなかったみち】(7/10)
原題:【The Roads Not Taken】
監督・脚本:サリー・ポッター
出演:ハビエル・バルデム、エル・ファニング、ローラ・リニー、サルマ・ハエック、他
製作国:イギリス/アメリカ
ひとこと感想:今まで結構好き勝手生きてきた認知症の父親は、仕事や生活を犠牲にしても世話してくれている娘さんのことは眼中になく、遠い昔に亡くした息子さんのことばかりを嘆いている。病気だからと言っても、何だか理不尽。娘さんに幸あれ。ところで、サリー・ポッター監督は若年性認知症だった弟さんを介護した経験を基に本作を創ったとのことだが、それなら本作も弟さんの話にするべきではなかったか。姉・弟と父・娘では力関係の在り方が違うので、大分ニュアンスが変わってしまうのではないかと思うのだが。

【白い牛のバラッド】(6/10)
監督・脚本・出演:マリヤム・モガッダム
監督:ベタシュ・サナイハ
出演:アリレザ・サニファル、プーリア・ラヒミサム
製作国:イラン/フランス
ひとこと感想:夫を冤罪に陥れた判事の正体は……。夫がいなくなったからって言い寄ってくる義弟や娘の親権を奪おうとする義父のうっとおしさに、イラン社会における女性の大変な生き辛さを感じながら、ここまで来てそっちに行っちゃうの !? という結末にどっしぇーーーっ!となった。彼女の気持ちはよく分からなかったけど、彼女には彼女の義があるってことなんだろう、かな……うん。

【英雄の証明】(2/10)
原題:【A Hero】
監督・脚本:アスガー・ファルハディ
出演:アミル・ジャディディ、サハル・ゴルデュースト、アリレザ・ジャハンディテ、マルヤム・シャーダイ、モーセン・タナバンデ、サリナ・ファルハディ、サレー・カリマイ、他
製作国:イラン/フランス
ひとこと感想:借金を返せずに服役している男が仮出所し、ちょっとした善行から世間の注目を集め、借金を返して自由の身になれそうな目処が立ったと思いきや……。ストーリーを思い出すために改めていろいろ読んでみたら、こんなに複雑な話だったかしら、と驚いた。こんな手の込んだ話をすんなり頭に入るように構成して演出している、その力量はさすがと言えるかもしれない。ただ、このストーリーが盗作だったと後から聞いてしまっては。そういえば前作の話も少し苦し紛れな印象があったし、よほど次回作のネタに困っていたのかもしれないが、まぁ論外だよね。

【TITANE チタン】(8/10)
原題:【Titane】
監督・脚本:ジュリア・デュクルノー
出演:アガト・ルセル、ヴァンサン・ランドン、
製作国:フランス/ベルギー
ひとこと感想:事故のため頭にチタンを埋め込まれた少女は、やがて嬉々として人を殺しまくるサイコパスになるけれど、やがて潜伏先で予想外の運命に辿り着く。ずっと不機嫌な主人公が、今度はいつ誰を殺すのかと、とにかく不穏な展開が続いてちっとも気が休まらない。が、終わってみれば、あらゆる限界や境界線をぶち壊す愛の物語になっていた。驚愕。え、愛?これは愛なの?……そうだな、少なくとも愛としか呼べない何かであることは確かだと思う。

【ナイトメア・アリー】(7/10)
原題:【Nightmare Alley】
監督・脚本:ギレルモ・デル・トロ
共同脚本:キム・モーガン
原作:ウィリアム・リンゼイ・グレシャム
出演:ブラッドリー・クーパー、ケイト・ブランシェット、ルニー・マーラ、トニ・コレット、ウィレム・デフォー、リチャード・ジェンキンス、メアリー・スティーンバージェン、他
製作国:アメリカ
ひとこと感想:第二次世界大戦開戦頃のアメリカ。ショービズの世界で身を立てようとした男が、やがて詐欺的な案件に手を染めるようになり、妻にも協力者の女にも見限られて破滅する。ラストシーンのブラッドリー・クーパーの表情に唸った。ギレルモ・デル・トロ監督はこんなに骨格のしっかりしたいわゆる物語らしい物語も書けるのか、と感心していたら、原作つきでござったか。

【とんび】(6/10)
監督:瀬々敬久
脚本:港岳彦
原作:重松清
出演:阿部寛、北村匠海、薬師丸ひろ子、安田顕、大島優子、杏、麻生久美子、麿赤兒、濱田岳、宇梶剛士、田中哲司、豊原功補、尾美としのり、吉岡睦雄、宇野祥平、嶋田久作、村上淳、木竜麻生、井ノ脇海、田辺桃子、他
製作国:日本
ひとこと感想:大ヒットドラマと同じ原作の映画化で、どうしてそこでもうちょっとコミュニケーションを取る努力をしないのかという、何とも無骨で不器用な父親の話。なぜ今のタイミングで、しかも瀬々敬久監督で映画化されたのかは謎。

【名付けようのない踊り】(8/10)
監督:犬童一心
(ドキュメンタリー)
出演:田中泯、ライコー・フェーリクス、他
製作国:日本
ひとこと感想:映画のタイトルの「名付けようのない踊り」は、田中泯さんが尊敬するフランスの哲学者が泯さんの踊りを見て発した言葉なのだそうだ。泯さんは、海外にいた方が評価が高かったかもしれないし、流派を作るとか学校で教えるとかした方がもっと経済的には安定していたかもしれないのに、そういう誘いや申し出は下劣だと断ったらしい。そして、踊りのためだけに作った身体で踊ることは何か違うんじゃないか、という気持ちから田舎で農業を始め、農作業で出来上がった身体を使って今も踊り続けている。その踊りは、その場から得たインスピレーションを身体的に発散させるという「場踊り」といい、その「場」には踊りを見る人の存在が含まれることもある。このような表現する人とそれを見る人との関係性は、表現するということの本質の一部なのかもしれない。こうしたことを少しずつ語る泯さんは随分詩人っぽいなと思ったが、泯さんは実際、自らの身体を通して踊りという形の詩を紡ぎ続けている人なのかもしれない。

【死刑にいたる病】(6/10)
監督:白石和彌
脚本:高田亮
原作:櫛木理宇
出演:阿部サダヲ、岡田健史、岩田剛典、中山美穂、宮﨑優、鈴木卓爾、佐藤玲、他
製作国:日本
ひとこと感想:死刑が決まっているシリアルキラーから「最後の事件だけは自分がやったのではない」ことを証明してくれと依頼された主人公が、事件を調べるうちに、やがてもっと異常な真相と対峙していくことになる……。他者をマインドコントロールすることで狂った欲望を満たし続けてきた人物を演じる阿部サダヲさんが本当にもう絶品で、この特異な物語に絶大な説得力と吸引力を与えているのが凄い。そういう意味ではとても見応えはあったけど、この人物はどこまで行っても煮ても焼いても食えない胸糞野郎なので、見終わった後はただひたすら気持ち悪さだけが残ってしまった。

【流浪の月】(7/10)
監督・脚本:李相日
原作:凪良ゆう
出演:広瀬すず、松坂桃李、横浜流星、多部未華子、趣里、三浦貴大、白鳥玉季、増田光桜、内田也哉子、柄本明、他
製作国:日本
ひとこと感想:これ自体はとてもよく出来ている作品だと思うし、それぞれの登場人物の思いもとてもよく理解できる。が、虐待されていた少女とそれを救った少年の純愛(その時点では性的要素を含まない)が誘拐というレッテルを貼られて引き裂かれる、というレアケースの物語が、世に数多ある幼女誘拐という犯罪の心情的なエクスキューズとして悪用されたりしないのか、という危うさがあるような気がする。かつて痴漢の冤罪を描いた某映画が、その何千倍、何万倍あるのか分からない痴漢という犯罪全体の心情的なエクスキューズと化してしまった時と似たような懸念を感じてしまうのである。

【シン・ウルトラマン】(8/10)
総監修・脚本:庵野秀明
監督:樋口真嗣
出演:斎藤工、長澤まさみ、有岡大貴(Hay! Say! JUMP)、早見あかり、田中哲司、西島秀俊、山本耕史、岩松了、嶋田久作、益岡徹、長塚圭史、山崎一、和田聰宏、他
製作国:日本
ひとこと感想:庵野秀明氏による、ウルトラマンってこういう話だったのか~という再解釈。ウルトラマン役の斎藤工さんとメフィラス星人役の山本耕史さんの宇宙人感が何と言っても白眉だけど、他にも様々な見どころがあり、特に禍威獣特設対策室(禍特対)メンバーの活躍などは楽しかった。しかし、地球人類をそこまでして救ってくれようとするウルトラマンはいい奴すぎ、地球人類に果たしてそれほどの価値があるのか?という疑問は残るので、その問い掛けは大切にすべきなんじゃないかと思う。

【犬王】(8/10)
監督:湯浅政明
脚本:野木亜紀子
原作:古川日出男
出演:アヴちゃん(女王蜂)、森山未來、柄本佑、津田健次郎、松重豊、他
製作国:日本
ひとこと感想:原作は実在した能楽師に想を得た小説。湯浅政明監督作品なので、アニメ表現としての面白さや質の高さは納得なのだが、様々なテーマが盛り込まれすぎていて、一回観ただけでは咀嚼しきれない印象も受けた。監督はインタビューで「どの人にもよき理解者がいたほうがいい」というのがテーマだとおっしゃっていたのだが、そうした理解者を得たことで自己実現をして、あるべき自分を阻害する父親や権力とは決別する……成程、書いてみたら少しすっきりしてきたかもしれない。監督のことだから、何回も観てもらうことは前提として盛り込みたいことは総て盛り込み、噛めば噛むほどスルメのように味が出てくるような映画を最初から目指していたのかもしれない。

【ベイビー・ブローカー】(7/10)
原題:【브로커 (Broker)】
監督・脚本:是枝裕和
出演:ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、イ・ジウン、ペ・ドゥナ、イ・ジュヨン、他
製作国:韓国
ひとこと感想:赤ちゃんポストから子供を盗んで売りさばくブローカー、子供を捨てに来た母親、そしてブローカーを負う刑事達の話。人身売買の問題や、女性が自分で育てられない子供を産むことを余儀なくされてしまう問題が存在していることを描くことには意味があるのだと思うけど、出てくる人達がみんなどこか“いい人”すぎると感じられて、現実はそんなに優しくないのではないかと思ってしまった。でも、シビアすぎる現実をそのままシビアに提示しても仕方ないので、人間の良心でどこか救われるような物語を監督は敢えて作ったのかもしれないけれど。

【峠 最後のサムライ】(5/10)
監督・脚本:小泉堯史
原作:司馬遼太郎
出演:役所広司、松たか子、香川京子、田中泯、永山瑛斗、芳根京子、坂東龍汰、榎木孝明、渡辺大、AKIRA(EXILE)、佐々木蔵之介、仲代達矢、芥川比佐志、吉岡秀隆、仲代達矢、他
製作国:日本
ひとこと感想:幕末の長岡藩家老・河井継之助の物語。どうも冗長に見えてしまうのは、小説が原作とはいえある程度は史実を踏まえざるを得ないからだろうか。幕末にあまり詳しくない自分には、当時当然の常識とされていることがよく分からないからか、主人公の偉大さが今ひとつよく伝わってこないように感じられて残念だった。

【さかなのこ】(8/10)
監督・脚本:沖田修一
共同脚本:前田司郎
原作・出演:さかなクン
出演:のん、柳楽優弥、夏帆、磯村勇斗、岡山天音、三宅弘城、井川遥、宇野祥平、豊原功補、鈴木拓(ドランクドラゴン)、賀屋壮也(かが屋)、長谷川忍(シソンヌ)、他
製作国:日本
ひとこと感想:さかなクンをモデルにした主人公を女の子でも男の子でもない存在として描いているのにまず度肝を抜かれる。好きなことを好きでいることに男女の別はないもんね。おそらく周りから浮いているところもある存在だったさかなクンが、「好きこそものの上手なれ」を極めた結果、誰もが認めるひとかどの人物になったというのは今や日本の誰もが知るストーリーになったけど、現実には簡単にはいかないことも多々あったということもしっかり描いているのがいいと思った。だからこそ好きなことを貫くことはなお大切だし、それを受け入れてくれる人達もきっといるということも。沖田修一監督の映画はいつも不思議なファンタジーみたいに、、人生に絶望する必要なんてないんだよとそっと背中を押してくれる。

【LOVE LIFE】(8/10)
監督・脚本:深田晃司
出演:木村文乃、永山絢斗、砂田アトム、嶋田鉄太、田口トモロヲ、神野三鈴、山崎紘菜、他
製作国:日本
ひとこと感想:今よりずっと矢野顕子さんの大ファンだった頃に聞いていた名曲が、30年以上経って映画に翻訳されるとは、全く想像もしていなかった。主人公が誰よりも愛していたに違いない息子を失うという衝撃の展開から始まってしまい、一体これ以上何が起こるというのだろうと戦々恐々としていたが、深い喪失感の中にいる主人公が愛とは何かという答えを必死で探し続けるというような、そんな物語だった。こんな難役を演じきった木村文乃さんに惚れ直した。が、ストーリーの都合のためにあっさり子供が(作者に)殺されてしまう展開が、最後までどうしても受け入れ難かった。

【川っぺりムコリッタ】(8/10)
監督・脚本:荻上直子
出演:松山ケンイチ、ムロツヨシ、満島ひかり、吉岡秀隆、緒形直人、柄本佑、江口のりこ、田中美佐子、知久寿焼(パスカルズ)、他
製作国:日本
ひとこと感想:刑務所帰りの青年が辿り着いた、川っぺりの「ハイツムコリッタ」。一見わびしい佇まいだけど、生活の一つ一つを丁寧に積み重ねることで紡がれるささやかな幸せがここにはある。松ケンさんが、この世の至上のごちそうというふうに心から味わいながら美味しそうに白米を食べるシーンが素晴らしく、私はこういう等身大の青年役の松ケンさんを見たかったんだ!と強く思った。まるで彼岸の風景のようにも見える、この世のものではないような祝祭感にあふれたラストシーンが秀逸。ところでムコリッタって、仏教用語の時間の単位なんですね。勉強になったわ~。

【ヘルドッグス】(8/10)
監督・脚本:原田眞人
原作:深町秋生
出演:岡田准一、坂口健太郎、松岡茉優、MIYAVI、北村一輝、吉原光男、金田哲(はんにゃ)、大場泰正、大竹しのぶ、酒向芳、木竜麻生、村上淳、他
製作国:日本
ひとこと感想:そうそう、私は岡田准一さんに、こういう本格的アクションバイオレンス巨編に出て欲しかったのよー!あとは本編を見てくれという感じだが、特筆しておきたいのはキャスティングの妙。ヤクザ組織のカリスマ的なトップのMIYAVIさんとか、その部下の吉原光男さんとか最高。はんにゃの金田哲さんもインテリヤクザ役がぴったりで大抜擢じゃん!原田眞人監督は、本当に朝から晩まで映画のことしか考えてないような人なんじゃないかと改めて思った。

【百花】(7/10)
監督・脚本・原作:川村元気
共同脚本:平瀬謙太朗
出演:菅田将暉、原田美枝子、長澤まさみ、永瀬正敏、北村有起哉、岡山天音、長塚圭史、河合優実、板谷由夏、神野三鈴、他
製作国:日本
ひとこと感想:こう言っては何だが、前に見た川村元気氏原作の映画が大概ひどい出来だったので全然期待していなかったのよね……。キャストがあまりにいいものだから散々迷って見に行って、そして今回は割と大丈夫でよかった。認知症が進んでいく母親に対し主人公がどこかよそよそしいと思っていたら、実は過去にいろいろあったということが明かされていくのだが、そんな母親に何を思いどう接するかという、その距離感がかなりリアルなんじゃないかと思った。菅田将暉さんと原田美枝子さんという鉄板のキャストには、期待以上のケミストリーがあった。

【土を喰らう十二ヵ月】(7/10)
監督・脚本:中江裕司
原案:水上勉
出演:沢田研二、松たか子、西田尚美、尾美としのり、瀧川鯉八、檀ふみ、火野正平、奈良岡朋子、他
製作国:日本
ひとこと感想:ジュリーが演じるザ・ていねいな暮らし。沢田研二さんという存在の素晴らしさが余すところなく引き出されているので、もうそれだけで十分。でも私はハピエン厨なんで、ここまできてこのエンディングじゃなくてよくない?というところだけがちょっと不満だった。

【あちらにいる鬼】(9/10)
監督:廣木隆一
脚本:荒井晴彦
原作:井上荒野
出演:寺島しのぶ、豊川悦司、広末涼子、高良健吾、村上淳、蓮佛美沙子、他
製作国:日本
ひとこと感想:不倫関係にあった井上光晴氏と瀬戸内寂聴氏、その関係を淡々と受け止めていた井上氏の妻の三人をモデルにした、井上氏の娘さんによる小説を原作とした一編。トヨエツ演じる井上氏をモデルにした作家は、女なんてヤリ捨ててなんぼくらいに思っているマジのクソ野郎なんだけど、寺島しのぶさん演じる瀬戸内氏をモデルにした女性作家が、そのクソっぷりをすべて許容して受け入れることで井上氏と他には代えがたい関係を築く様子が想像を超えていたし、おそらくすべてを察していながら敢えて何も見ようとせず、すべてを受け流している広末涼子さん演じる妻の姿は、一種の狂気を孕むほどの底知れない恐ろしさを感じた。「あちら」ってどちらが「あちら」なのか。その三人の関係性は他の誰にも立ち入ることが出来ず常人には理解しがたいものだと思うけど、それをそのまま理解しがたいものとして描き出しているのが凄いなぁと、ただただ感服した。

【すずめの戸締まり】(8/10)
監督・脚本:新海誠
(アニメーション)
声の出演:原菜乃華、松村北斗、深津絵里、染谷将太、伊藤沙莉、花瀬琴音、花澤香菜、神木隆之介、松本白鸚、他
製作国:日本
ひとこと感想:期待を裏切らない出来栄え。記憶の扉を開け、つらい記憶と対峙してまた扉を締め直す、そんな話かなと思った。

【ある男】(9/10)
監督:石川慶
脚本:向井康介
原作:平野啓一郎
出演:妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝、小籔千豊、坂元愛登、山口美也子、清野菜名、仲野太賀、眞島秀和、きたろう、でんでん、真木よう子、柄本明、他
製作国:日本
ひとこと感想:亡くなった後にその名の人物とは別人だと判明したある男の正体を探る、というミステリーの形を取りながら、出自がどうでも関係なくないか、目の前に確かに存在していたその人の温かさや優しさがすべての真実なんじゃないか、という帰結を突き付ける尖った話だった。何が本当のことだろうと揺れ動きながら真相を探ろうとする弁護士役の妻夫木聡さんも、謎の男の妻役の安藤サクラさんも期待以上の素晴らしさだったけど、謎の男を演じる本作の窪田正孝さんはもう!本当に!最高だから!日本全国津々浦々の人に是非見てもらいたい気持ちでいっぱいである。

【パラレル・マザーズ】(5/10)
原題:【Madres Paralelas (Parallel Mothers)】
監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
出演:ペネロペ・クルス、ミレナ・スミット、イスラエル・エレハルデ、アイタナ・サンチェス=ギヨン、ロッシ・デ・パルマ、フリエタ・セラーノ、他
製作国:スペイン/フランス
ひとこと感想:娘のDNAを鑑定してみたら自分の子供ではないと分かり、昔子供を産んだ産科医で子供の取り違えがあったのではないかと判明する、というどこか既視感があるようなストーリーがどうも取って付けられたもののように感じられてしまい、最後まで感情移入ができなかった。アルモドバル監督のストーリー作りは年々硬直化していっているように感じているのは私だけだろうか。これにフランコ独裁政権時代の行方不明者の遺骨発掘の話がくっつけられているのが、部外者にはますます理解しがたいように感じられた。

【マイ・ブロークン・マリコ】(7/10)
監督:タナダユキ
脚本:向井康介
原作:平庫ワカ
出演:永野芽郁、奈緒、窪田正孝、尾美としのり、吉田羊、他
製作国:日本
ひとこと感想:随分前に原作を読んでいたのだが、自分の中では、永野芽郁さんは主人公のシイノさんのイメージでは全く無くてむしろマリコさんの印象に近かったし、奈緒さんは奈緒さんで、マリコさんの陰影を演じるには若干フラットすぎる印象で、むしろシイノさんの真っ直ぐさの方が合ってるんじゃないかと思った。なので、もしかして最初は逆にキャスティングされていたんじゃないか、という仮説すら勝手に立ててしまった。実際、奈緒さんが『ファーストペンギン』の主役を演じた後でなら、逆のキャスティングも可能だったんじゃないだろうか。内容的には、原作を下手にいじらず誠実に映画化しているところに好感を持った。窪田正孝さんの演じるマキオさんが、風貌は違うのに役柄のイメージにぴったりすぎてのけぞった。

【ケイコ 目を澄ませて】(8/10)
監督・脚本:三宅唱
共同脚本:酒井雅秋
原案:小笠原恵子
出演:岸井ゆきの、三浦友和、三浦誠己、松浦慎一郎、佐藤緋美、中島ひろ子、仙道敦子、渡辺真起子、中村優子、他
製作国:日本
ひとこと感想:聴覚障害がありながらプロボクサーになった女性の自伝を元にした話。彼女が聴覚障害者であるという側面も丁寧に描かれているのだが、彼女が自分の中の得体の知れないもやもやした気持ちを何とかしようともがき続ける姿の方がむしろ印象に残った。この役は岸井ゆきのさんでなければ演じられない役だったかもしれないし、この役を確実にたぐり寄せた岸井さんという人は俳優として生きる運命を持った人なのだな、という思いが改めて胸に刻まれた。



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