インターネット利用者意識と消費行動を探索する
Update: Mar. 15. 1998
インターネット調査といえば、まずは利用者プロフィルや利用環境、利用形態、満足度などを知ることが主な目的でしたが、最近はネット上の広告やショッピングに対する意識、法規制や検閲などの問題、さらにネチケット、ネット社会への不安要因など、インターネットに関係する個別テーマに絞って利用者の意識・考え方・行動を明らかにする調査も数多くみられます。
利用者像把握型の調査を第1段階とすれば、このような利用者意識調査はその基礎の上に築かれる第2段階であり、さらに第3段階としてインターネットを特に意識しない日常のライフスタイル調査や世論調査ができるようになった時、インターネットが調査ツールとして本当に認められたと言えるのかもしれません。
《ショッピング・電子取引》
《デジタルコンテンツ》
《インターネット広告・ホームページ評価》
《プライバシー・法規制・ネチケット》
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また「利用者プロフィルを把握する」でとりあげた以下の大規模時系列調査でも、ネット広告、電子ショッピング、ネットワーク社会への不安など利用者意識関連質問が数多く含まれています。
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なおインターネットと直接関係のないテーマでも、様々な会社、団体、個人などがウエブ上のアンケートで世論調査や意見収集を実施しようとする試みが見られます。慶応SFC出身の浜孝太郎さんが作成する次のサイトはそういったアンケートを集めたリンク集ですので、参考にして下さい。意外な組織や企業が意外な調査をやっているのが面白いですよ。
REVIEW and COMMENTARY
ECN「第11回アンケート:デジタルコンテンツ流通に関する調査」
http://www.commerce.or.jp/minfo/enq/report11/index.html
- 情報通信総合研究所の ECN (Electoric Commerce Network) プロジェクトによるオンラインアンケート。「デジタルコンテンツ流通」を「商品配送をオンラインで行う有料情報提供サービスやデジタルコンテンツ販売」と定義し、その認知度、利用経験、利用回数/金額、利用意向などを尋ねている。1997.12〜98.1実施、有効回答者数655サンプル。回答者は「デジタルコンテンツ流通に関心のある人」という条件で、実際インターネット・ショッピング経験者も53.4%をしめる。このテーマの調査は「オンラインショッピング」と共に、今後増えてくると考えられる。
- 利用の多かった上位3項目は、「ニュース速報・配信」「ソフトウェア購入」「電子メール配信サービス」。また認知経路として「新聞・雑誌(46.2%)」が最も高い点が目についた。
メーリングリスト LIFE「オンラインショッピングに関する女性意識調査」
http://www.mmci.ntt-v.or.jp/life/main/index.htm
- メンバーが女性だけのメーリングリスト「LIFE」が、97年11月に女性だけを対象として、オンラインショッピングに関する意識調査をオンラインで実施。98年2月に出版された「成功するオンラインショップ」(東洋経済新報社)の中で結果が紹介された。サンプル数1302
で、女性対象の調査としては最大規模である。
- 回答者には「LIFE」のメンバー、非メンバー両方が含まれる。「経験あり」が38%で、最初に買った商品は「書籍」「食品」「パソコン・周辺機器」が上位3項目。また未経験者の約9割が今後やってみたいと考えている。オンラインショッピングをしない理由について、非メンバーが決済や店の信用などの「不安」が上位に来ているのに対して、(インターネットの上級者と考えられる)メンバーでは「買いたいものがない」という項目に集中しているのが興味深い。
ECN「第1回アンケート:電子ショッピングに関するアンケート」
ECN「第7回アンケート:電子ショッピングに関する調査」
ECN「第10回アンケート:ギフトと贈答品に関する調査」
http://www.commerce.or.jp/enquete/kekka_1.html
http://www.commerce.or.jp/minfo/enq/report7/index.html
http://www.commerce.or.jp/minfo/enq/report10/index.html
- 情報通信総合研究所の ECN (Electoric Commerce Network) プロジェクトによるオンラインアンケート。オンラインショッピングを取り上げたのは、第10回アンケート(1997.11実施、1573サンプル)、第7回アンケート(1997.1-2実施、869サンプル)、第1回アンケート(1995.10-11、1204サンプル)で、最新の第10回の結果レポートには、詳しい時系列分析がある。
- インターネットショッピング経験者は4割近く。ちなみに同時期に実施された日経マルチメディア「第5回アクティブ・ユーザ調査」でも同じ4割という数字となっている。積極的なユーザの回答が多いオンライン調査なので、そのままネット利用者の4割が経験しているというわけではないが、下記の時系列の数字をみても明らかなように、ショッピング経験者は着実に拡大していると考えられる。
第1回調査(95.10) 10.0%
第5回調査(96.8) 23.7%
第10回調査(97.11) 38.1%
- 第10回調査は「ギフトと贈答品に関する調査」となっているが、インターネットショッピング全般の設問も多い。購入者の1年間の平均購入回数は3.1回。問題点は「商品を手に取って確認できない」67%がトップで、以下「ショップの信頼性に不安(37%)」「決済のセキュリティが不安(36%)」と続いている。またギフトのショッピングは自宅のパソコンからとの回答が約8割をしめている。
日経マルチメディア「第5回インターネット・アクティブ・ユーザー調査」
http://www1.nikkeibp.co.jp/NMM/active.html
http://www1.nikkeibp.co.jp/NMM/NEWS/9801/98010701.html
速報1(ショッピング関連)
http://www1.nikkeibp.co.jp/NMM/NEWS/9801/98010901.html
速報2(バナー広告関連)
日経BP社発行の「日経マルチメディア」誌(NMM)が半年に1度インターネット上で実施する利用動向調査。第5回調査は1997年12月に実施(1998.1月号掲載)、有効回答は5,311サンプル。詳細は「インターネット利用者プロフィールを把握する」参照。
《ショッピング関連》 インターネットによるオンライン・ショッピングの経験者(すでに買い物をしたことがあり、今後も利用したい)は、96年12月の18%、97年6月の34%から97年12月には41%に増加。ショッピング経験者のうち12%が「10回以上」買物をしており、特に女性だけに限ると「10回以上」が経験者の3割にものぼる。これらの結果は、記事のハイライトともなっている。
《インターネット広告関連》 バナー広告クリック経験者の比率は、97年6月の76%から、97年12月では80%と増加ているが、評価については、「リンクしているため一般の広告以上の価値がある」「アイコンを目にする程度の広告価値は認める」といった回答はわずかながら減少、「広告がホームページにあると邪魔に感じる」「広告としてあまり意味がない」と考えるユーザーは増加傾向にあるようだ。
Personal Notes −「日経マルチメディア」誌の良識ー
- 「日経マルチメディア」誌を発行する日経BP社のサイト「Biz
Tech」にとっては、上記のバナー広告に関するデータは、あまり都合のいいものではありませんよね。実際、フレームで固定されたバナー広告を見ながら、「広告がホームページにあると邪魔に感じる人が増えている」なんて記事を読むのは不思議な感じです(笑)。しかし、インターネット調査の手続きや解釈やらがまだ発展途上にある今は、都合のいいことも悪いこともきちんと出していくことが、結局は媒体としてのインターネットの信頼性につながると信じてます。その意味で、「日経マルチメディア」や「Biz
Tech」の編集スタッフに敬意を表したいと思います。
第一企画「第一企画WWWバナー広告調査」
http://www.dik.co.jp/knots/report/index.html
- 第一企画のホームページで実施したオンラインアンケートで、97年2月実施、2011サンプル。上記ページで詳細な調査結果・分析を読むことができる。主な結果として以下の点が上げられている。
- 「バナー広告」の認知度87%、クリック経験者98%。
- 「バナー広告があった方が良い」75%。「広告効果あり」86%。
- 男性は「パソコン関連」、女性は「化粧品」「食品」「旅行」のクリックが多い。
- バナー広告は「役に立つ」が、「リンク先の当たり外れの多さ」が問題。また「コンテンツの軽さ」と「代価」の得られることが大切。
- 調査結果はバナー広告の重要性が浮かび上がる内容であるが、ここでは「日本初」とうたわれたアンケート実施上のインターネットならではといえる「新しい試み」にも注目しましょう。(私も96年初めに書いた「マーケット・リサーチ・オン・インターネット」というレポートで、1の手法を「インタラクティブ・クエスチョネア」、2の手法を「ハイパーリンク・クエスチョネア」として紹介しましたが、さすがに広告代理店のネーミングは素晴らしいですね。)
- 1.「AIナビゲーションシステム」
- 全設問数が50問を超える長い調査であると同時に回答の分岐が複雑を極めるので、「設問→回答」の流れを、プログラムが自動的に判断し、その回答者に必要な設問のみを瞬時に判断し表示するシステム。
- 2.「ワープディメンジョンアプローチ」
- 調査の途中で関連サイトに行ってもらい、今掲載中の「バナー広告」を実際に見た上でその評価を回答してもらうことを可能とする、インターネットならではのリンク機能を生かした質問文。
- 3.「オープンマインドアプローチ」
- アンケートに答えているという抵抗感や自分は不特定多数の中の一人という、ある種の無責任感や心理的距離感をなくし、設問に対し高い関与感を持って回答してもらえる様、設問番号などは排し、問いかけの文章では、全てその回答者のお名前で話しかけるなどの手法。
ECN「第6回アンケート:インターネット広告に関する意識調査」
http://www.commerce.or.jp/enquete/report6/index.html
日経リサーチ「第3回インターネットモニターアンケート−デジタル画像の活用に関する調査」
http://www.nisiq.net/~nk-r/imq3r/index.htm
- 日経リサーチが所有するインターネット調査協力者モニターを対象としたオリジナル調査。1997年10月実施、回収は645サンプル。デジタルカメラや撮った画像の利用目的、デジタルDPEの利用状況など。
- デジタルカメラを利用していると答えた人がほぼ半数、メーカーは「カシオ計算機」が
28%で最も多く、画素数は4分の3が30万画素以上となっている。デジタルDPEサービスに関しては、「フィルムのCDやMOへの書き込みサービス」47%、「インターネットによる注文」(41%)などの利用意向が高くなっている。
日経リサーチ「第2回インターネットモニターアンケート−ホームページへの意識を探る」
http://www.nisiq.net/~nk-r/imq2r/index.htm
- 日経リサーチが所有するインターネット調査協力者モニターを対象としたオリジナル調査。1997年5月実施、回収は693サンプル。ホームページを見る目的、頻度の他、企業のホームページに期待するコンテンツや、バナー広告に対する意識をテーマに実施。
- 調査会社などがインターネット調査協力者を募集しているケースはよく見かけるが、継続的にオリジナル調査を実施し公表している例は少ない。今後ともパネル調査ならではのテーマ選定、分析を期待したい。
日経リサーチ「第1回インターネットモニターアンケート−ネット上の不安を探る」
http://www.nisiq.net/~nk-r/imq1r/index.htm
- 日経リサーチのインターネット調査パネルを対象としたオリジナル調査。1996年12月実施、回収は599サンプル。ホームページ、電子メール、オンラインショッピング、電子マネー等に関する利用者の不安・不満を探ったもの。
日本経済新聞社「Nikkei Net ネチケットアンケート」
http://www.nikkei.co.jp/topic/netiq/index.html
郵政省電気通信局「インターネット利用に関するアンケート/意見募集」
http://www.mpt.go.jp/policyreports/japanese/group/internet/kankyou-4.html
- 郵政省電気通信局による「電気通信における利用環境整備に関する研究会」(堀部政男一橋大学法学部教授座長)が「インターネット上の情報流通について」(1996.12発表)と題する報告書をまとめるにあたって実施したアンケート調査。
- オンラインによるアンケート協力募集の形で行われた「利用者調査」(受付件数926サンプル)と全国一般男女1200人への郵送アンケート(有効回答547サンプル)による「一般調査」とで構成されており、一部の質問は比較が可能となっている。いずれも1996年11月実施。回答者の意見(自由回答)の一部も読める。
- アンケートの主要テーマは、インターネット上のわいせつ情報や他人を中傷する「情報の流通」が問題とされていることに対して、何らかの対応策(自主規制や法的規制)が必要と思われているかどうかであるが、(当然のことながら)利用者と一般生活者(インターネット非利用89%)では、随分と見方が異なっている。
日本テレビ/文教大学情報学部「インターネット利用者(ベッコアメ契約者)調査」
http://www.ntv.co.jp/bekkoame/
- 最大手プロバイダーのひとつベッコアメ・インターネットの全加入者49,684人に対して、アンケートの設置してあるURLを電子メールで告知し、回答を依頼する方法で1996年8月から9月にかけて実施。
- 調査手法面からはアンケート郵送法に近いわけだが、「たまたまホームページを見た人に対してのアンケートなどはいくつかの例が見られますが、調査対象の抽出などに問題があり、客観性に欠けるおそれがありました。そこで・・・(中略)・・・社会調査法の観点からも妥当性があるといえる調査を実行」との調査意図は貴重である。有効回収数は3,358サンプルで、回収率6.8%となる。同じ手法の調査はほとんどないので高いのか低いのかはわからないが、生データからの母集団推計は難しいだろう。しかし、このような手法は今後ますます活用されていくと個人的には思う。
- むしろこの調査で注目したいのは質問内容そのものである。利用実態だけではなく意識についてもかなり興味ある質問が多い。例えば「インターネットは社会をどのように変えると思うか」「性的情報・アダルト情報や暴力的な情報の法的規制をどう思うか」「インターネットの著作権をどう思うか」など。またホームページ運用者(有効回答839サンプル、多くは個人)に対しても、「ホームページ開設理由・きっかけ
」「リンクしてる数」「 電子メールによるフィードバック 」「開設してよかった点
・困った点」など詳細な質問がなされている。
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