Keisuke Hara - [Diary]
2002/03版 その2

[前日へ続く]

2002/03/11 (Mon.)

image of chessboard 三条で所用を果たし、三条大橋のSBUXで珈琲豆を買い、 山科経由で大学へ。午後から臨時の学系会議。 明日も教授会で、会議続きである。

夕方には用を済ませ、自宅に帰る。 それほど仕事をしたわけでもないのだが、 まだシンポの疲れが残っているようで眠くてしょうがないので、 少し仮眠を取る。 夕食は梅干し、若布とお揚げの味噌汁、野菜炒め少しと清貧。 夜はチェロを弾いたり、翻訳の仕事など。

昨夜の久しぶりの執事とのチェス。 白番、レティ・オープニング。序盤、 中盤とマスの色(*1)に注目したポジショナルな作戦をうまく進めたが、 時間を使い過ぎた。 持ち時間各30分のギロチンだったので、時間切れの負けか、 良くてパーペチュアルチェックの引き分けが相場であったが、 黒が一手詰めを見逃し、残り10秒で勝ち。

*1: マスの色:例えば、ビショップは斜めにしか移動できないため、 黒マスのビショップは永遠に黒マスの上にある。 このような斜め移動の性質に注目して、 チェス盤のパリティ(黒白)の独立に根拠を置く作戦。


2002/03/12 (Tues.)

Image of Unagi-ya Kaneyo 今年も真面目に確定申告を提出して市民の義務を果たし、 四条から三条へと歩いて、山科経由でBKCに出勤。 途中、鰻屋「かねよ」で昼食を取る。 「かねよ」と言えば名物はきんし丼(*1)だが、 年末年始の美食三昧が響いて金欠気味なので、 昼時メニューのかねよ丼 (鰻がかなり控え目な感じの鰻丼、お吸いものと漬物つきで税込み850円) をいただく。

河原町の本屋で「イマージュ」(J.D.ベール、河出文庫)を買う。 と言うのも、ごく最近なぜかこの本のことが気になって、 大判のハードカヴァーを持っていたはずなのだが書庫にも見あたらず (きっと引越しの時にでも誰かにあげてしまったのだろうが)、 今日たまたま本屋で文庫を見つけて購入したのである。 そして買ってみて、 やっと何故この本のことがひっかかっていたのかが判明した。 馬鹿馬鹿しい話だが、最近、ふとした折に執事と、 しばらく前にやっていたB級深夜ドラマ「嫉妬の香り」のことを話していて、 そのドラマに出てくる「ジャルダン・バガテール」 という香水のことを話題にした。 麝香の香りがする人間が実在するのか、とか、 あれはどこの香水なのか等と言う議論をしていたのだが (ちなみにゲラン社が80年代に出した香水である)、 「イマージュ」の中に「バガテル庭園の薔薇」という章があるのであった。 意識の表面ではすっかり忘れていたが、 おそらくこの二つをニューロンがつなげたのだろう。

午後は今年度最後の教授会。 教授会の後は全員が招待されている恒例の宴会があるのだが、 大人数のパーティなどが苦手なので、今回もパス。 実際、私はR大学就任以来、一度も出席したことがない。 しかし、出席した人の話ではそれなりに楽しめるものだそうだ。 この費用は給与から天引きされているらしいので、 この宴会の料理の一部は非出席者からのおごりと言えなくもないですか?

*1: きんし丼: 鰻丼の上に、 丼と同じサイズのだし巻き卵がそのままどんと乗っていて、 鰻丼が完全に隠れてしまっている「かねよ」の名物メニュー。 「きんし」が錦糸(金糸)卵のことだとすると、 千切りにする手間を省略しているということなのだろうか。 贅沢な気がして美味しいのだが、 多分、普通の鰻丼の隣に別の皿でだし巻き卵を添えて出した方が ずっと美味しいだろうとも思う。


2002/03/13 (Wed.)

昨夜のチェス。黒盤。負け。 いきなり第一手の応手で タッチアンドムーヴのルールのため謎な手を差さざるを得ず、 良いところなしの序盤の後、早速クイーンのフォークを見逃し必敗。 リザインすべき所を随分頑張ってみたが、 やはり戦意を失なっており力及ばず。

毎日、画像を入れようかな、と思ってもみたが、 結構容量が大きいので、例えば数年分も溜ってしまったら、 ディスクが一杯になってしまうなあ、と。 せいぜい気が向いた時に画像付き、くらいが無難か。


2002/03/14 (Thurs.)

一昨日、今年度最後の教授会を終え、 後は卒業式以外には特に大学の用事はなくなった。 いわゆる春休みである。 しかし、個人的にすべきことはまだあるので、 それを片付けていたらもう月末の数学会になってしまう。 結局、今年の春休みは事実上、ない。

昨日から二日間、無理矢理フル休暇にあて、遊びまわっていた。 昨夜は魚三昧。お造りはもちろん、 とびうおの白焼、 太刀魚で蕎麦を巻いた揚げ物など美味なり。 今日の昼は、モッツアレラとトマト、ルッコラのサラダ、 トマトベースの煮込み、菜の花のおひたし、など。 読書は「あと千回の晩飯」(山田風太郎/朝日文庫)、 「仰臥漫録」(正岡子規/岩波文庫)、 「文人悪食」(嵐山光三郎/新潮文庫)、 の関連三冊を一気に読破。正岡子規は凄い。 正直、あまりのすさまじさに驚愕した。 夜はチェロの練習。

驚くべきことに先日、 掲載した私の正妻マダム・クロ(ソフスキ)の画像に、 見知らぬ方までもから次々に、かわいい、美しい、 とお誉めのメイルを頂き恐縮する。 我が家では既に愚妻、駄妻としての評価が主従から固定しているのだが (主に、時に信じられぬ程、だらけきっているのと、 また時に悪人顔をしていることが原因である)、 「その美しさにこころ打たれた」とまで激賞されて、 少し考え直してきた。


2002/03/15 (Fri.)

午前中は寝台で学内広報紙の原稿を書き、メイルで提出。 昼食にペペロンチーノを作って食す。 午後はチェロをさらって、夕方から膳所にレッスンに行く。 今日は先生が上の二弦を裸のガットにしていて、 マルチェロのソナタなど良い感じであった。 私のチェロも現在、下の二弦だけがガットコアだが、 やはり裸のガットよりは扱いやすいぶんだけスチールっぽい音がする。 ちょっと弾かせてもらったが、 反応が良過ぎて相当に弓使いが上手くないと扱えないなあ、 と言う印象だった。

チェロのレッスンの帰りに某所で土釜を見る。 これで御飯を炊くと非常に旨いと聞いたのである。 今まで何度か手には取ったのだが、 あまりに重いのでその度に延期してきたのだった。 しかし、見ているとますます試してみたくなってきて、 チェロを担いでいるだけで充分重いのに、 さらに土釜を購入して抱きかかえるようにして帰り、 早速、自宅で御飯を二合炊く。 中火にかけ蒸気が吹き出してきたら、 さらに2、3分待ってから火を消し、そのまま10分放置して蒸らす。 合計で約30分。簡単だ。蒸らしている間に味噌汁と梅干しを用意し、 出来あがった御飯とともに夕食にする。 結果。うますぎる…二合食べてしまいました。 お櫃を買った時に優るとも劣らぬ感動。


2002/03/16 (Sat.)

早めに起床。寝床でしばらく読書。珈琲を淹れて、翻訳の仕事。 食材を切らしていたので、 昼食は近所の定食屋で(おそらく通常の計量で二人前)取り、 午後も翻訳の仕事。夕方から食材の買い出しに行く。 夕食はドライカレー。大蒜と生姜のみじん切りを炒め、 さらに玉葱のみじん切りを大量にじっくりと弱火で30分ばかり炒める。 豚ひき肉を入れ、カレー粉、唐辛子等で味つけし、 先に作っておいたガーリックライスに塗り、生卵の黄身を乗せる。 ワインをグラス二杯。

嵐山光三郎は正岡子規の「仰臥漫録」を読んで、 拒食症におちいったそうだ。さもありなん。 しかし、どうも私には逆作用をもたらしたようで、 食欲が増進して困る。


2002/03/17 (Sun.)

午前起床。昼食、うるめ鰯、生卵、胡瓜の漬物、葱と豆腐の味噌汁。 午後は自宅で翻訳の仕事。夕食のメインは麻婆豆腐。

どうも我が家の日記サーバがたまに重いなあと思っていたら、 昔作った謎のジョブを crond が日曜日ごとに定期的に 走らせていたことに気付いて調整。 当時は軽い作業だったのだが、 ディレクトリ構成の変更が原因で異常に重いジョブに肥大していた。

他学科の先生から学生のことでもらったメイルで少しブルーになるが、 マルクス・アウレリウスの「自省録」をひもとき心を落ちつける。 世界中の腹を立てている不幸な人たちが、心の平安を得られますように(合掌)。

Coffee Saucer 学生時代から(おそらく二十歳の頃から)ずっと愛用してきた珈琲カップを朝、 寝床から出る時に割ってしまった。 久我山、下北沢、山科、壬生と三度の引越しを生き抜き、 常に私とともにあったが、形あるものはいつかその形を失なう。 何となくしみじみとした気持ちになったことであった。 ソーサーの方は助かったので、小皿にでもして使おう。 二代目を探さねば…

この感想の元ソースは引用しないが、 この十数年間に公の初等中等教育で育ってしまった人たち、 ほとんどまるごと一世代出来てしまった、 この世代になにか呼名がつくのではないだろうか。 きっと「団塊の世代」みたいに特徴的な名前が出来て、 将来辞書にも載ると思うなあ…


2002/03/18 (Mon.)

午後から奈良女子大にTK大のS先生の談話会を聞きに行く。 ランダムウォーク関連の最近の発展を解説しておられた。 内容は非専門家向けの易しいものであったが、 なかなか勉強になった。 夜はS先生と、 奈良女の確率論スタッフのTさん、S君、幾何の方と一緒に飲みに行く。


2002/03/19 (Tues.)

大学へ。たくさん、たくさん事務をした。 事務をすると不思議な充実感がある。 やった分だけ済むからである。 数学者の本分は数学であるが、 数学においてはやった分だけ済むことなどほとんどない。 骨折り損のくたびれ儲け、が代名詞のようなものである。 昨日、奈良女に行ったからではないが、 数学における「ほんとう」は百に一つの、 そのまた百に一つもないのであって、 毎日ノートに繰り返される無駄な計算と論理の上澄みとして、 (さらに、幸運ならば)微かな成果があがるのである。

ヴィトゲンシュタインを学ぶ哲学の徒の高槻T部長が、 数学の勉強をしたいと言うので、 ブルバキの集合論を読んだら、と気軽に言ったのだが、 今日、図書館で「集合論 I」を借りてみたら、ほとんど基礎論だった。 基礎論の準備が終わったあと、後半からようやくその一応用として、 集合論が始まるのである。 まあ、ブルバキズムに興味があるようなので、丁度よかろう。


2002/03/20 (Wed.)

breakfast ようやく春休みという感じ。 昼食は家で取り、午後から烏丸に出て、 輸入食器屋で新たな珈琲カップを探す。 しかし、十二年以上使った先代の代わりになるようなものが見つからない。 また先代と同じジノリを買おうか、と思いもしたが今回は見送った。 と言うわけで今日もお客用のイノダの珈琲カップを使う。 クラシッコは漬物皿として活躍中…(左画像参照)。

暗号の教科書を書いている出版社から、 著者略歴を送ってくれとか連絡があって、 ずいぶんほうったらかしにされていたが、 一応出版に向けて進んではいるらしい。

最近、執事も副業のゲームプログラマの方が一段落つき、 リリースしたばかりのゲームの評判を 掲示板でチェックしているくらいで暇そうなので、 比較的よくチェスをする。 向こうは精神的に余裕があるようで、一方こちらはあまりないので、 少々分が悪い。昨日は一勝一敗。 とは言え、負けは酷いタダ取られだったし、 勝ちの方は相手に持ち時間がないのを見こして、 自分でも効いてるのか効いてないのか謎のポジショナルサクリファイス(*1) を連発して相手に考えさせるという、 卑怯な勝ち方をしたので、どちらも内容は散々だった。

*1: ポジショナルサクリファイス: サクリファイス(捨て駒)の中で、 チェックメイトの筋に直接関係がなく、 駒損と引き換えに得られる利益が駒の配置の良さであるような、 戦略的なもの。 ファイル(縦のライン)やダイアゴナル(対角線)を開く、 パスポーン(敵ポーンに前進を邪魔されないポーン)を作る、 などの直接的なものから、 タダ取られにしか見えないが何故か盤面が有利になるような、 微妙かつ茫洋として深遠なものまで範囲は広い。


[後日へ続く]

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Keisuke HARA, Ph.D.(Math.Sci.)
E-mail: hara@theory.cs.ritsumei.ac.jp
kshara@mars.dti.ne.jp (for private)

この日記は、GNSを使用して作成されています。