ISO後 その2 08.07.02

この駄文は、同志ぶらっくたいがぁ氏の発言にヒントを得て一気呵成(わずか30分で)に書いた。
もちろん、文責はすべておばQにある。

ISO9001あるいはISO14001の第三者認証スキームの崩壊後を考える。 ぶらっくたいがぁさんと同様に、私はISOの第三者認証スキームはもう限界ではないかと確信に近い思いである。過去からの減少傾向に歯止めはかからず、08年第二四半期の登録件数を見ても減るばかりだ。
今の時期に審査員になられる方もお気の毒である。
もっともいやで審査員になる方もいらっしゃらないだろうけど・・

先日もそんな思いでISOライフサイクル説を書いた。
ある製品の最後はどのような形になるのか?たとえば真空管というものが昔使われていた。テレビにもラジオにもステレオにも計測器にも・・
真空管の最後は一瞬にして終わったわけではない。
テレビなどは客層が主婦や子供だったから、消費電力の少ない、立ちあがりの早いトランジスタに新製品が代わるのに時間はかからなかったが、一般家庭で使われている膨大な台数のテレビが一瞬にしてトランジスタになったわけではない。耐久消費財というように短くても数年、長い場合は10年近く寿命が来るまで使われた。
ステレオのように趣味のもので、こだわりのある製品においては更に切り替わるのに時間がかかった。真空管の方が音がいい、トランジスタの音は石の音でしかないなんて語る人もいたものだ。そして真空管を使う製品が使われる間、真空管というものも作られメーカーはその間、事業戦略を練る時間があった。
もちろん、その変化に乗り遅れて水の泡となった音響メーカーもあった。1970年前後のことである。

さて、第三者認証スキームの終焉はどういう形になるのか?と想像をめぐらした。
真空管のような物と違い、こちらはものでなくシステムというか制度である。そして過去なかったわけで、これがないと世の中が動かないというものではない。
つまり次のものに切り替わるのに時間がいるとか、現行品の処分が必要ということがない。
真空管と違い、切り替えややめることに時間を要しない。

とはいえ、一企業の損得計算だけではその企業が認証をやめるという決断をするのはやはり困難というかハードルが高い。なにしろ日本は横並び意識が強く、隣の子が塾に行っているなら我が子も塾に、お隣で3ナンバーにしたなら我が家も車変えましょうよ・・
「社長、ISO認証していてもお金の無駄ですから認証返上しましょう」
「同業他社の様子を見てくれ。○○工業はどうだ?株式会社△△がやめたならうちもやめるか」てなことが現実です。
しかし、見方を変えると誰かが止めたと言えばみながそれに続いて、あっというまにパラダイムというほどではないが状況が変わってしまう可能性があるということです。
「そのとき」は、ある日突然やってくるような気がします。
それは超大手企業の認証返上が引き金となるのか、複数の中小企業の返上がトリガとなるのか、政府高官の発言か、消費者団体の製品の偽装や品質問題へのテーゼによるのか、何とは言えないがそんなものがきっかけになって雪崩は起きるだろう。
既に雪は不安定な状態だから、大音響が響いただけでも・・

しかし雪崩が起きるのを論じても面白みはない。興味があるのは雪崩が起きてからどうなるかだ。
ISO認証企業はいくつかのカテゴリーに分けられる。
認証を目的にしていた企業は認証制度がなくなる、あるいは重要性が著しく低下した場合、どうおってことなく従来の管理方法に戻すだろう。あるいは、もともと従来からの仕組みで動いていて、ISOはバーチャルだった可能性が高い。二重帳簿を止めることができて経営に寄与することだろう。
そんなところの事務局は周りから長い間お疲れ様、明日から現場で本当に経営に寄与する仕事を一緒にしようと言われるだろう。

ISOを基に会社を良くしようという仕組みを作っていた会社ではどうだろうか?
なんも困ることはないだろう。ISO規格と第三者認証制度は直接的につながっていない。その会社は今まで通り、ISOの精神を具現化した会社の仕組みを回していけばよい。
決して「定着した会社の管理システムまでもが無用とばかりに機能しなくなる」なんて心配はないでしょう。
従来と異なるのは、外部の人が定期的に仕組みをチェックに来るか来ないかだけです。
でも真に内部監査と順守評価が機能しているなら、そのような検証はもともと冗長だったはずです。

では、ISO認証しているけれど、もとからの会社の仕組みを一切変えていない企業はどうでしょうか? なんもしないで良いではありませんか。
ISO規格はなんといってもグローバルスタンダードです。世界の英知が作った一定基準を過去から満たしていたというなら、それは何も言うことはありません。
きっとISO事務局なんていう盲腸はないはずです。環境目的・目標なんてのもないですよね、環境側面なんて計算でしているわけがない。過去よりしっかり管理していたものを審査のときだけ相手に合わせて環境側面と言っていたはずです。

20年前、ヨーロッパではISO認証制度はホワイトカラーの失業対策といわれたそうだ。
だから、会社に貢献しない無駄な仕事をしていた事務局の方は失業を心配しないとならないかもしれない。でも品質を良くしたり、環境リスクを低減する活動をして会社に貢献していた事務局は、制度が変わろうと決して失業しないだろう。
おっと、認証機関とそこで働く審査員、コンサルタントの方々、ISO維持管理サービス会社の方々はどうなるだろう? いや、私は心配していない。 彼らは我々より優秀で行動力にあふれている。きっと活路を見出すだろう。 
ところでいつ破局が来るかひとつ賭けませんか?
地球温暖化によって、海面上昇が起きたり、生態系は崩壊するよりは間違いなく早いでしょう 



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