話が違う 10.01.09

最近、某ブログに「ISOの制度や規格を批判する人はたくさんいる」と書いてありました。私を名指しではないが、まあ私のような者を叩いているつもりなのでしょう。実をいってそれを読んだ時に、いろんな人がいるものだと哂ってしまったのです。
笑うではなく哂う、つまりおかしなことを語っていると含みわらいをしたのでした。
しかしよく考えると嗤う・・つまり間違っているとあざ笑うべきだったのかもしれません。
今考え直しても、正直言ってどういうリアクションを取るべきなのか判断に迷います。哂うでもなく、嗤うでもなく、真正面から反論すべきかもしれません。

振り返ると過去9年間もの永きにわたり、私はインターネットでISO第三者認証制度の問題を提起し、その改善を提案してきました。でも単に愚痴をこぼしたり、恨みつらみを語ってきたわけでもありませんし、「ISOの制度や規格を批判」したことはなかったように思います。
    私のスタンスを旗幟鮮明にいたしますが、
  1. 現行のISO規格を批判したことはありません。
    もちろん「ISO9001は87年の初版から改定されるたびに劣化している」と語っているのは事実です。だが規格改定について己の見解を表しても、それは悪いことと言われる筋合いはありません。単に規格に対してネガティブなコメントだからと断罪するなら、「ISO規格は素晴らしい」とポジティブに語ることも同様に断罪しなければならないでしょう。
  2. ISO第三者認証制度を批判したこともありません。
    2008年のJAB/ISO9001公開討論会で「第3者認証というビジネスモデルには審査の質が低下するような構造になっているのではないか」なんて論が語られていましたが、私はその反対にISO第三者認証制度の問題ではないという立場で語っています。
  3. もちろん問題があるから私は語っているのでありますが、審査員の倫理や力量の不足や認証機関の管理の問題を提起しているのです。それは証拠に基づいており、思い込みや虚偽ではないのです。
  4. 私は、間違った解釈でISO規格を貶める審査員やコンサルがいること、ISO審査においてトンデモナイ判定をしている審査員がいること、無礼を働く審査員がいることを問題提起し、それを改善してほしいと熱烈に求めているのです。
私が非常に不思議に思っていることですが、ISO第三者認証制度の体制側の人たちは、間違った解釈を広めISO規格を貶める審査員やコンサルがいること、トンデモナイ審査をしている審査員がいること、無礼を働く審査員がいることに気がつかないのでしょうか?
私の語っていることが嘘だとお思いなら、各認証機関の審査報告書を1000件くらい集めて読んでいただきたい。
1000件とは膨大だなんて驚くことはありません。といいますのは多くの認証機関の審査報告書は枚数は少なく記述している文字数も少ないですから、読むのに時間はかかりません。
おもしろいことがあります。ISOの審査工数は組織の人数と環境負荷で決定されます。(cf. 「マネジメントシステム認証機関に対する認定の基準」についての指針JAB MS305-2009)
しかし審査報告書の枚数は50人の組織でも3000人の組織でも同じということは不思議なことです。
みなさんはそれを不思議と思いませんか?
そして100万とか200万支払った審査結果の審査報告書がたかだか3ページです。審査費用が150万とすれば審査報告書の1ページに50万円の価値がなければなりません。そうしますと書かれた1文字が500円から700円くらいになります。1文字にそれだけのありがたみがあるのでしょうか?
それらの審査報告書がISO19011やISO17021に則って記述されているか、判定は規格を正しく理解しているかをチェックしていただければ、私のいうことが正しいか間違っているかわかるでしょう。
現地審査の日数だけでなく、書面審査を含めるとその3倍程度の時間がかかっていることは存じております。(話は逆ですが、CEARは審査実績として書面・事前・事後の時間を現地審査までしか認めない。ということはMAX4倍までになる。cf.ADF1205)更には認証機関の家賃や管理部門などの間接費用も含んでいることも分かります。
しかし原価を基に値付けしても、市場では通用しません。市場価格というか相場があります。このときの相場とは、ISO認証機関同士の比較ではありません。経営コンサル、ISO以外のエコステージやエコアクションあるいはその他の公的な認証審査の費用、各種専門家の相談料、講演料など他の知的サービスと比べなくてはなりません。例えば弁護士に相談するより、審査を受ける方が時間当たり費用が高いのです。
最近はISO審査費用の値崩れ、値引きが激しくなってきましたが、それでも一人一日13万円とか18万円という単価は非常に高いと思います。

審査側の規格の理解が正しいのかどうかも検証してください。
「すべての部門で環境目的・目標を持たなくてはならない」と語っている認証機関が44社のうち13社もあるという事実をどうみるのでしょうか?
4.3.3 目的、目標及び実施計画
組織は、組織内の関連する部門及び階層で、文書化された環境目的及び目標を設定し、実施し、維持すること。

この文章をどうしたら「組織は、組織内のすべての部門及び階層で、文書化された環境目的及び目標を設定し、実施し、維持すること。」と読めるのでしょうか?

これは明白な規格に適合していない判断です。このような現実を見れば、審査員個人の問題ではなく、認証機関のレベルで規格の理解が正しいか間違っていないかを審査しなければならないのではないでしょうか?

審査員の態度についても申しあげております。これは継続的に改善されてきているのは確かです。2000年に牛肉をごちそうになったとか話題になりましたが、今ではあつものに懲りてなますを吹いているようでお弁当持参の方もいます。それで最近は確かに、酒を飲ませろとか、飯がまずいというようなことは聞きません。しかし審査後、買い物をするから遠くの店まで送ってほしいと言ったというのは今でもあります。
審査時の態度や言葉使いについてはあまり改善されていないと感じております。

誤解はないと思いますが、私は規格の批判とか第3者認証制度の批判ではなく、このような運用レベルといいますか、即物的なレベルの問題を申し上げているのです。

今現在、第三者認証制度の公式見解は「ISO第三者認証制度の信頼性が低下しているのは企業が審査で虚偽の説明をしているためである」ということになっています。
私はそのような結論を出すに至った情報をぜひとも知りたい。のどから手が出るほど知りたい。まちがいなく関係機関は、虚偽の説明を受けた件数、騙された件数、見破った件数、虚偽の内容、具体的にどのようなウソをついたのか、法に照らしてどのような環境犯罪だったのか、などをしっかりと調査して把握していることと思います。
はたして虚偽の説明は審査の何パーセントあったのでしょうか?

では先ほど述べた、審査の問題についてはどうでしょうか?
前述した環境目的・目標の理解を誤っていたのは30パーセントもあるわけです。この数字は虚偽の説明があった割合より大きいのでしょうか? 小さいのでしょうか?
本当は審査員が間違った判定をしたこととか、認証機関が規格の理解を誤っていたことによって、第3者認証制度の信頼性は損なわれているのではないでしょうか?
現在の第3者認証の信頼性を損なっているのは企業側の虚偽の説明なのか? 審査側の誤り、力量不足によるものなのか? どうなのでしょうか?
もちろん想定される原因が二つしかないわけではありません。その他の理由もあるでしょう。一緒に考えませんか。

本日のタイトル
私はISO審査における問題を提起しているのであって、「ISOの制度や規格を批判」をしていません。
どうもいっていることが違うような気がします。
これって 虚偽なんでしょうか?


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