ISOライフサイクル2

11.07.16
いつも似たような駄文を書いているものの、なるべくテーマがダブらないようにはしたいと思ってはいる。とはいえ同じテーマでも新しいアイデアが沸きでると、またそれに関する駄文を書きたくなる。
いや、ちょっと違う、
私は世の中に発信したいから書いているので、同じテーマであろうとなかろうと、発言したいこと、みなさん知ってほしいことを書いているつもりである。
さて本日はちょうど2年前に書いたISOライフサイクルの続編である。
振り返ると、私はISOマネジメントシステム認証に関しての駄文を10年間も書いている。もう私はISOの預言者ではなく、ISO歴史の証人と呼ばれるかもしれない。
正直なところ、ISO認証制度はもう長くは続かないだろう。長くはないといっても明日にも崩壊するというわけではないが、せいぜいのところ2015年までは持たないのではないだろうか。
いずれにしても、私が生きているうちに結論を見ることが出来るだろうと期待している。
本日の駄文もその傍証となるかもしれない。ならないかもしれないが・・・
2年前に書いたときは概念だけだったのだが、具体的数値を示せればもっとISOビジネスの興隆が分かるということに気が付いた。
よく考えたら、興隆ではなく興亡である
製品のライフサイクルの横軸は時間軸と決まっているが、縦軸は作成した人や書物によって市場規模(売上金額)の場合と、売上数量をとる場合があるようだ。多くは市場規模であるが、ビジネスとしての存在意義を考えれば、確かに製品数量よりも売上金額が重要だろう。よって、ここでは縦軸にISO審査費用の年間総売上げをとることにする。

ISO審査費用はどうして分かるか、そりゃISO認証している企業なら、審査費用の請求書がくるから自分の会社の審査費用は分かるだろうし、お隣の会社と親しければいくらかかったか聞くこともできるだろう。しかし日本全国の平均審査費用はいくらかということは分からない。
ということでISO審査の費用がネットにないかと探した。
日本の行政は現在ほとんどの報告書、統計データなどを公開している。そしてその多くはネットに載っている。 産業構造審議会 新成長政策部会・サービス政策部会サービス合同小委員会(第5回)(2008)「平成20年4月22日‐配付資料4(10)」というのを見つけた。
残念ながらここでは2001年から2006年までしかない。
地震ではないが空白域、つまり2000年以前については、ISO9001が1987年に発祥したとはいえ、ISO9001が日本国内で流行したのが1994年頃からでISO14001は1997年からである。そんなことから、せめて1997年からのデータがほしい。だが、ない袖は振れない。産構審の表から審査費用を外挿すれば時代を遡るほど高額になるわけだが、私の経験からはそのようなことはない。むしろ20世紀中は高値安定の殿様商売であり値引きなんて思いもよらない時代であったのだが、21世紀になってから少しずつ値引きするようになってきたのだ。だから乱暴かもしれないが、2001年の認証単価をそのまま20世紀に適用して当時の認証件数にかけることにした。
2007年以降であるが、一例としてはJQAの環境報告書から2009年のJQAのISO14001の審査費用は平均68万であることがわかる。
JQAが日本の平均ではないが当時最大手の認証機関であったから、それを採用してもそう大きくはずれることはないだろうということでこれを使わせてもらう。
個人的体験から、上記仮定は大きく間違っていないと確信する。

最近の金額はネットからはわからない。だが上場企業や大手企業の昨年度の決算などはネットにあるので、それで正攻法といえばもっともらしいが、力仕事でいってみる。
つまり株式会社である認証機関の売り上げと認証件数から審査費用を逆算する。この方法は財団法人や規模が小さく決算書を公開していない認証機関にはわからないこと、そしてISO審査だけでなく船級検査などのその他の第三者認証や計測器校正などを行っている会社には適用できない。

業界の総売り上げは2001年から2006年までは産構審の表から引用し、それ以降は認証件数と単価の積を使って行う。お断りしておくが、このウェブサイトは研究論文でもなければ政府からお金をもらった調査報告でもないので、簡単にEMSとQMSの審査費用を一次方程式から導いて論を進める。もしこのケチなウェブサイトをみて研究のネタにされる方がいらっしゃるならその辺はしっかりと裏を取ってください。そして願わくば、その結果を教えてほしい。
ISOhiyou.jpg
 注1)オレンジに染めている部分は産構審のデータを利用した。
 注2)黄色に染めている部分はJABのデータを利用した。
 注3)その他の数値は筆者が推定したものである。

さて、でてきたカーブは製品ライフサイクルではなかった、ISO認証ビジネスライフサイクルを示してくれるだろうか?
さて準備はできた。では分析に入る。(オイオイ分析かよという声が聞こえたような気がする)

ISOhiyou2.jpg

グラフで2006年と2007年に不連続が見られるのは、産構審の数値と私の見積もった数値の差異によるものです。もし実際にはなだらかに連続しているとすれば、私の見積もりが上方にずれていることになり、実態はこのグラフより減少が大きいのかもしれない。情報をお持ちの方いらっしゃいましたら教えてください。

グラフから見る限り、明らかにISO第三者認証制度はライフサイクルの終末にいたっていると思われる。売上がまだあるから最後までがんばるぞという発想が正しいかは固定費を回収できるか否かにかかっている。事業の固定費・本社費用、俗にオーバーヘッドと呼ばれるものが非常に少ないなら、少しでも売上がある限り事業を継続する意味はあるが、固定費が大きければ売上が減少してきて、それを回収できなくなった時点で撤退するのが必定である。
2011年でも2000年より売上が大きいから・・とはいえない。当時と固定費が同じかということ点があるし、将来状況が良くなるというならジットガマンということもある。しかしISO認証が上り坂でなく下り坂である今現在、我慢する意味はない。固定費を回収できないならすぐさま尻尾を巻いて撤退するのが全うな判断だろう。
いや、それは尻尾を巻くのではなく、名誉ある英断であろう
もっと大きなことだが、このカーブは全認証機関に平等ではなく、ある認証機関にとってはこれ以上の悪化もあるだろうし、認証件数がそれほど減っていなくてまた固定費が少ない認証機関にとっては、残存者利益をかき集めるほうが良いかもしれない。個々の認証機関によって認証数の増減は異なるし、固定費も変動費も大きく異なるからだ。

とここまできたものの、ここで分かったのはJAB認定の認証機関だけだ。JAB非認定については売上も分からないが、それ以前に認証件数も分からない。
JABが一部のJAB非認定の認証機関の登録件数を掲載しているが、そもそもJAB非認定の認証機関がいくつ日本で活動しているかわからないのだから、見当も付かない。
ということは、このライフサイクル分析(オイオイ)はISO認証ビジネスのライフサイクルではなく、JAB認定スキームのISO認証ビジネスのライフサイクルであることに気が付いた。
ということは終末となりかかっているのはJAB認定のISO認証ビジネスのライフサイクルであって、JAB非認定のISO認証ビジネスについてはまったくわからない。まだ成長期なのかもしれないし、JAB認定と同じく既に衰退期にあるのかもしれない。
ご存知の方、ご教示ください。

本日の反省
いやあ、せっかくの休みにこんなことを考えていても一銭にもなりません。せいぜいが頭の体操になる程度。しかしこんなことを考えていて、私はISO認証ビジネスのコンサルタントになれるかもしれないなんて、妄想が浮かびました。経営に寄与すると自慢する認証機関の経営コンサルというのは、経営コンサルの最高峰なのでしょうか?
おっと、中小企業診断士でもなく、MBAでもない私がそんなことを語っては袋叩きにあいそうです。

振り返れば
私がこのウェブサイトを作った10年前は、ISO審査のおかしなこと、間違いをとりあげて、審査員よしっかりせよと檄を飛ばしていた。やがて審査の問題は審査員ではなく、認証機関にある、認証機関よしっかりせよと、リアルにおいても認証機関に苦情を言ったりするようになった。やがて、そういうことは認証機関の問題じゃなくて認証スキームの問題じゃないかと思うようになった。
しかし、今では認証スキームなんて小さい小さい、ISO認証制度というものがビジネスとして成り立つのかどうかということを考えるようになった。
そしてその次は・・・



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