2015年規格改定

13.03.05
今現在、ISO認証件数は減少する一方、それだけでなく認証の価値はゴムが切れた靴下のように下がる一方、審査員の登録者数も減る一方のようだ。
まもなくQMSとEMS規格が改定されるが、それをというかその影響をISO関係者はどう考えているのだろうか?
2015年の規格改定を干天の慈雨と待ち望んでいるのだろうか?
しかし聞くところによると、2015年を機会に止めてしまおうと考えている企業もあるという。うーん、とすると規格改定は両刃の剣
もともとダモクレスの剣の下にいるのだから両刃くらいに驚かないか?
はたしてどうなるのか? それには非常に興味がある。
本日はISO9001とISO14001の2015年改定の影響を愚考する。

そもそもISO規格が改定されるとして、それはどのような影響を与えるだろうか?
そのインパクトは利害関係者によって異なるだろう。では利害関係者ごとに考えてみたい。
認証制度の利害関係者といっても多様である。次のようなものが考えられる。

経済産業省
産業技術環境局
日本工業標準調査会
認定機関(JAB・UKAS・・)
認定機関の幹部
認定審査員
認証機関
認証機関の幹部
認証審査員(いわゆる審査員)
審査員研修機関連絡協議会(JATA)第三者認証制度日本マネジメントシステム
認証機関協議会(JACB)
審査員研修機関審査員登録機関
JRCA・IRCA・CEARその他
経団連
各種業界団体
国際認定機関フォーラム(IAF)
ISOコンサルタント
ISO認証代行業
内部監査員教育業
内部監査員検定(今もあるのか?)
ISO関連雑誌・書籍
日本規格協会
アイソス誌、日経BP社、日科技連
機関投資家
個人投資家
近隣住民
所在地の自治体
認証を受ける企業・団体認証を活用する企業・団体
入札に認証を盛り込んだ行政
一般市民
消費者団体
消費者個人

利害関係者が非常に多いが、大きくくくると次のようになると思われる。
 1.認証制度及びそれに付随する企業や団体
 2.認証を受ける企業や団体
 3.認証を参考にする企業や個人
一般消費者や近隣住民はどこに入るのかと言えば上記にはないが、言い方を変えるとそのカテゴリーには何らインパクトがないとも言えないだろうか?
なぜなら今までISO認証を活用あるいは参考にしていない企業や個人は規格が改定されようとまったく関係ないのだから。
え! ISO認証を活用していた一般消費者や近隣住民もいるだろうって?
そういう方はいたのでしょうか? そういった人々が多ければ認証制度が廃れることはなかったように思います。

では各分野について順次検討を進める。

  1. 認証制度及びそれに付随する企業や団体
    過去何度か規格改定はあったが、そうなるとまず規格改定説明会、規格票、対訳本、解説書、審査員の規格改定研修などなどが発生し、それらの売り上げが一時的にものすごく増加する。過去ISO関連書籍が規格改定のあった翌年に急増しているのは以前言及した

    ISO本出版数
    ISO9000sの改定は、1994年、1998年(JISの文言のみ改定)、2000年、2008年である。
    ISO14001は1996年制定、2004年改定である。

    しかし規格改定の翌年は発行件数が急増しても1年でおしまいというのが悲しい。一発屋の芸人のようだ。
    書籍だけでなく講習会も同様の曲線を描いたであろうことは間違いない。もっともISO14001の2004年改定の時は小改訂だったから規格改定対応の審査員研修は特になかったかもしれない。忘れました。

    しかしいくつか疑問を呈する。
    規格というのはその意図を規格の文言に織り込まなければ規格たりえないことはご同意いただけるだろう。規格を解説するとか説明することが必要なら、その規格は未完成、不完全で失格だ。
    またISOとはキリスト教の世界で文字解釈しかないから、そもそも審査員たる人はいかなる規格であっても読んで理解でき、わざわざ研修を受けなくても審査できるはずだ。
    変な講習会を受けると、間違った解釈を覚えこむ可能性もある。
    ISO-TC委員であろうとなかろうと、規格解説などする必要はないのだ。もしISO-TC委員が解説しなければならないなら、その規格は出来が悪い。

    だから私は2015年版の審査員資格なんてものが存在するはずがないと愚考する。
    そう考えると審査員に規格票や対訳本が売れるだろうということは予想がつくが、解説書とか規格改定説明会あるいは規格改定対応の研修などが必要とは思えない。だがたぶんそういうことは実施することになるだろう。そうでなければ審査員研修機関、審査員登録機関、出版社その他の売り上げが伸びない。
    いやそういった機関の売り上げを上げるために規格改定を目指しているのかも?
    審査員登録機関も審査員が2015年版対応になったかを審査し、適合判定された審査員の審査員登録証の色を変えたり表示を追加したりすることになるのだろう。それも売り上げ増加に寄与するだろう。

    審査員からみれば新しい規格のための研修や書籍購入は負担になるが、認証制度の興隆・・・現実にはせいぜいがカンフル剤程度かもしれないが・・・そのために出費するのはやむを得ないと思うだろう。それに認証機関所属の審査員は自腹ではなく会社が出すだろう。
    契約審査員であれば研修や書籍購入は必要経費と考えるしかない。
    まさか認証機関が規格改定を機に事業撤退ということはありえないが、契約審査員や年配の審査員の中には「ヤーメタ」という人がいるとは思える。
    1年ほど前のこと、大手認証機関は審査員登録を止めるといっていたが、実際にしたのかと調べてみると審査員登録は止めていない。やはりJRCAとかCEAR登録というのは権威があるのだろうか?
    だが損益がますます苦しくなってきた現在、規格改定対応で外部の審査員研修や登録書き換えをするのは負担が大変だ。仮に200人も審査員を擁していればその費用だけで1千万にはなるだろう。それに耐えきれない認証機関はこの際審査員登録を止めてしまい認証機関が認定する方式に切り替えるかもしれない。とすると規格改定は審査員研修機関や審査員登録機関にとって干天の慈雨どころではなく、かえって終わりのない北風になる恐れもある。

    審査員補に登録している人は、認証件数がますますシュリンクしていくのをみて、規格改定対応に資格をバージョンアップする必要はないと考える人も多いだろう。というのは審査員補の資格保有者はいつかは審査員になりたいと考えている人が多いだろう。(私の知り合いの中では)しかし審査員の需要が少なくなるとともに、認証機関が審査員を認定することになれば、審査員補の資格は大幅に価値が減る。
    またおもしろいことに大企業では内部監査員に審査員補の資格を取らせて、しかも審査員、主任審査員と資格をアップさせているところもある。会社名は言えないが100人とか審査員を登録している会社もあるのだ。私から見るとムダ金としか思えない。そういった会社は事業の損益と審査員登録の価値を天秤にかけて今後を考える必要があるだろう。もっともそんなことは規格改定前から考えているだろうし、規格改定はそのトリガになるだろう。
    このように企業で審査員補あるいは審査員登録している人たちは本人が審査員登録を止めると決断したり、会社が審査員登録の金を払うのは止めるとなる可能性は高い。間違っても規格改定を機に審査員登録をしようと考える人はいないだろう。

    このようにみてみると、認証制度内部の機関や人たちでも、立場によって規格改定によって売上が伸びる人と、負担を負うだけの人がいるようだ。もっとも負担があっても、それが新しいビジネスチャンスへの投資と考えなければならないが、規格改定が新しいビジネスチャンスになるかどうかはよく分らない。

  2. 認証を受ける企業や団体
    ISO認証を受けている企業や団体といってもいろいろあるだろう。
    まず行政機関や自治体がある。わが市、わが町は「ISO14001認証を受けています」なんてのが130組織ある(2013/2/28時点)。多くはないが少なくはない。行政機関にとって、ISO認証なんて見た目だけだ。その街の住民はそういうことに疑問を抱かないのだろうか?
    市民の税金をそのようなことに払うことは正当なことなのか?
    自治体やその下部組織は一般企業と違う。なぜ違うのかと言えば代替えができないのだ。「この市役所はサービスが悪いから隣の市民になるわ」とか「このごみ処理場は環境配慮が足らないから委託するのはご遠慮します」なんてことはできない。だからISO認証は競争力向上とか差別化にならない。
    そして行政機関はその管理手順や基準は元々決められているし、内部牽制が不足していたならそもそもが間違いなのだ。
    ゆえに、ISO認証の価値、意義はまったくない。速やかに認証を止めることが必要だ。住民は税金の無駄使いを指摘しなければならない。
    規格改定を機に速やかに認証を止めるべきだろう。というのは私の見解だが、実際の規格改定ではどうなるだろうか?
    そういう意味では規格改定が大規模でハードルが高いほど好ましいように思う。そうすれば自治体はもう手間ひまをかけるのは止めようと判断し、認証は減るだろうと期待する。
    デフレが10年も続いているいまどき黒字でウハウハなんて自治体などない。驚くことに赤字マッカッカ、橋下市長のおひざ元でも下水道とかごみ処理場でISO14001認証しているところがある。赤字財政を改善するために少しでも無駄を削るべきだ。

    ISO認証がビジネス上要求されている会社もある。この場合ははっきりいって認証は商売の必要条件であり手段である。継続するしかない。しかし対応は必要最小限、そして本来の会社の仕組みをそのまま説明する方法が好ましい。規格改定を機会にそうすべきだろう。
    とは言っても、現実には規格改正対応の認証機関の説明会やコンサルの指導を受けて、ますます重厚長大、現実とは無縁のバーチャルなものになるのだろう。
    マニュアルの書き換えだけでも大騒ぎになるだろう。まあ、笑ってみていることにしよう。
    おお! 規格改定の意図とは正反対のようだ。

    ISO認証がビジネス上有利になる会社もある。国土交通省の入札条件などのケースである。
    先のことはわからないが、アベノミクスとか国土強靭計画で国内建設工事など忙しくなればISO認証の必要性は失せるだろう。しかし同時に事業が拡大すれば認証の負担は軽くなる。だが規格改定対応の手間ひま、そして現実からかい離している企業の場合は特に「ヤーメタ」というケースが多くなるのではないだろうか。
    いずれにしても認証の効果と維持更には規格改定対応の負担を天秤にかけることになる。

    じゃあ一番多い、ISO認証がビジネスと無縁の会社はどうだろうか?
    ISO認証が無縁の会社ってあるのかい?と懸念するお方もいらっしゃるかもしれない。あります。たくさん、そしてこれが一番多いだろう。
    私がというか、私の家内がちょくちょく利用しているダイエーという会社がある。もちろんISO14001認証している。おおっとNTTドコモも東京三菱UFJ銀行も郵便局株式会社も・・
    歩いて数分のところにある小さなスーパーはどうかと調べたら、ISOではないがエコアクション21の認証をしていた。
    ではこれについては次項で考える。

  3. 認証を参考にする企業や個人
    認証を参考にしている企業というのが存在するのかどうか、私は疑問である。グリーン調達の要件としている企業はなくはないが、そんなに多くはない。


    おばQ調べ

    グリーン調達する企業はほとんどがISO認証していて、その内容を知っているから形を要求しても意味がないことをよく理解しているのではないか。今欧州や生意気にも中国が化学物質管理を要求しているが、それへの対応はISO認証すればすむとか認証していれば少しは効果があるというようなものではない。
    棚を分けろ、ラベルを付けろ、作業の際一個一個確認しろという管理が必要なのだ。だからISO認証など無意味であり、それとは別世界の識別管理やトレーサビリティ管理が必要だ。
    グリーン調達においてISO認証要求が低迷しているのはその現れだろう。

    愚妻である

    ISOを参考にするかって?
    冗談でしょ
    ISOを知らないだろうって?
    宿六がISO担当だったからあんさんよりよう知っとるわ
    では認証を参考にして買い物やサービスを選んでいる人がいるだろうか?
    はっきり言って我が愚妻が、ISO認証とかエコアクション21を認証しているかいないかで、買い物先を選択しているはずはない。そして一般顧客の99%はそんなことを気にもしていないだろう。
    選択の基準は、価格、サービス・・・実際はお店の雰囲気、従業員の対応、そしてなによりもアクセスの良さである。
    お断りしておくが、ISO規格に適合した組織と、ISO認証はまったく意味が異なる。ISO規格に適合した仕組みと運用は悪いことではないが、認証は悪いことなのだ。
    なぜかといえば、その費用はまわりまわって、我々消費者や銀行や郵便局を利用している人の負担になるからだ。スーパーがISO規格に適合した環境管理をすることは悪いことではないが、わざわざ外部の認証機関にお金を払って免状をもらうくらいなら、そんなことを止めて、安全で良い商品を売ることに専念してもらう方がありがたい。その分値段を下げろなんては言わない。だからダイエーもドコモも東京三菱UFJもISO14001認証なんておやめなさい。
    規格改定を機に認証を返上してもらいたい。
    問題は認証を受けている企業が、認証とは何かをどう考えているかということだ。社会で高く評価されているという幻影を持っているなら・・・その可能性は高いが・・・規格改定になって面倒が増えても免状を維持するだろう。
    ぜひとも顧客に
    「当社がISO認証していることをご存知ですか?」
    そして答えがYESの人に
    「当社がISO認証しているからお選びいただけたのでしょうか?」
    更に答えがYESの人に
    「当社がISO認証を止めたら同業他社に切り替えますか?」
    と聞いてみてほしい。
    たとえば東京三菱UFJ銀行を考えてみよう。我が家は貧しいが一応この銀行と取引があるのだ。わずかな残高の普通口座があるだけでも取引があるといって嘘ではなかろう。
    では上記質問の答えは
    一問め「NO」たったいまJABの登録企業検索でISO認証していることを知ったくらいだ。
    二問めは聞かれることはないが「NO」であることは言うまでもなく、三問めももちろん「NO」である。
    次に携帯電話について考えると、私のスマホはNTTドコモである。
    一問めから三問めまで東京三菱UFJと全く同じだ。
    郵便局については考えるまでもない。
    私は東京三菱UFJがJQAに払っているムダ金をやめて、少しでも金利を上げてほしいが、それは無理なお願いだろうか?
    私はNTTドコモがロイドに払っている無駄金を止めて、少しでも通話料金をさげてほしいが、それはお門違いなのだろうか?
    郵便局には・・・・アイデアが尽きた。

    認証を受けている企業がISO規格改定を機にどのような対応をするかはわからないが、私は一消費者、利用者として早急に認証を止めてほしいと願う。
    もちろん認証を止めるのはいつでもいいのだが、規格改定は認証の必要性を再考する機会になるだろうと期待する。

    つまりこのカテゴリーを考えることはなさそうだ。
誤解なきよう
環境配慮、遵法、パフォーマンス向上は絶対に必要である。そのためにISO規格適合のシステムは有効だろう。しかし認証はそれとは無縁であるということだ。

今回のISO14001規格改定の目的は、他のMSSとの整合性を向上させるという実務的なことを除いて、パフォーマンス向上、遵法を確実にすることであると聞いた。
ちょっと待ってくれ
規格の文言を書き換えればパフォーマンス向上や遵法が確実になると考えるのはおかしいというか間違いだろう。そもそもMSSにできること、できないこと、いやMSSの守備範囲というものがあるのだ。ライトのイチローにレフトフライを捕ることは期待していない。MSSにパフォーマンス向上や遵法向上を期待するのは間違いです。
おっと反論があるでしょうけど、こちらをお読みください

とここまで来て、ちょっと気が付いたことがある。
ISO9001であろうと、ISO14001であろうと改定を望んでいる人がいるものだろうか?
少し論理的に考えてみよう。
私が論理的に考えることができるのか否かは私も自信がない
取引に当たってISO9001もISO14001も絶対条件としているケースはない。もしそうならば独禁法違反の恐れがある。だから、取引にISOのMSS規格を求めている会社というものはない。とすると取引対象に対して厳しい要求をしたいからISO規格改定を求める会社はありえないことになる。
よろしいか?
では次に行こう。
自分の会社をよくするためにISO規格及びISO認証を活用しようとする会社があったとする。もしその会社が規格文言が変わっただけで改善が進むと思うなら、事業を止めた方が良い。会社を良くする・・・つまり組織の見直し、管理水準向上、社員のモラル向上、技術向上力など・・・をするならISOではなく経営コンサルを頼んだほうが直接的だ。
省エネをするなら怪しげな審査員の言葉を承るより無償の省エネセンターの指導をお願いした方がはるかに良い。

本日は競馬に倣ってISO規格改定後の動向を予想してみた。
あくまでも私の予想であるから苦情を言ってはならない。
発走 2015中山 愛江酢王賞 1600メートル(芝)





 54
ユーユーユメヒラク規格改定を機にドンドンと登録件数大増加
56
テンポラリーイケイケ改定時に一時だけ盛り上がるがすぐまた減少傾向になる


 56
サムタイムローズ規格改定によって登録件数の減少傾向が止まる。
55
アイソヨレヨレ規格改定に関わらず減少傾向は変わらない。


 57
ヤレヤレサッチャー規格改定によって審査が厳しくなり認証の信頼性が高くなる。
55
ローローボーイ規格改定によって登録件数の減少傾向がさらにひどくなる。
 
 
    

◎:本命、○:対抗、▲:単穴、△:連下

うそ800 本日の疑問
じゃあ、ISO規格を改定する意味はなんなんだ!
ISO規格改定とは、ISO関係者が職を失わないために行うものだろうか?

うそ800 本日の結論
ISO規格改定が認証制度に与える影響はどのようなものか、私には見えない。
それはもちろん単純な物理現象ではなく、関わる人たちの行動なによりも努力にかかっている。だが、これで一発逆転ということは絶対にないだろう。ISO認証制度の崩壊を早めるか、先延ばしするかのどちらかだろう。もしなんの影響もなかったなら、規格改定は壮大な無駄だったということだ。


名古屋鶏様からお便りを頂きました(2013/3/5)
おばQ様が競馬に精通されているとは知りませんでした。
鶏は対抗馬のアイソヨレヨレに勝馬投票券を買いたいと思います。
仕事の確実性ではなく適合そのものを重視するという本末転倒な視点でしかモノを見れない審査員には規格の改定なんて全く意味をなさないでしょう。
まして、字を書いたらパフォーマンスが上がるなど(ry

まいど! 鶏様
競馬場は近いので時々行きます。でも正直言って、馬券を買ったことはありません。まあそこは単なるダジャレです
しかしアイソヨレヨレよりもテンポラリーイケイケが一着の希ガス



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