認証ビジネス2014

15.01.04
注:
このデータは2014年までのものです。
2015年までのものはデータアップデイト2015にあります。ご参照願います。

2014年を振り返ってみると1年間で世の中いろいろ変わった。政治もはやり歌もファッションも変わったが、ISOはどう変わっただろうか? いやISOだけでなく、簡易EMSの状況はどうだろうか?
年の暮れからお正月にかけて、そんなことをのんびりと考えた。
私は元々認証認定制度側の人間ではないし、会社員を引退して2年半もたっており、最新の情報があるわけではない。私の情報源と言えば、一般書籍、ネット、知り合い、行政や企業の広報資料などしかない。とはいえそれだけでもものすごい量のデータがある。
さて、データは溢れるほどあるが、その真偽は定かではないものが多い。絶対に間違いないと言えるのは認証件数くらいだろう。とはいえこれもJAB認定だけでノンジャブの件数はほとんどわからない。あげくにJAB認定の登録件数だって2012年頃だがJABの広報数値が突然大きく変化したことがある。要するに公表された数字であるというだけで信頼できるのかどうか確信はない。
だけどいろいろ考えると何も進まないからJAB認定の登録件数から考えてみよう。

JAB認定ISO認証件数推移

注1:各年第4四半期の数値を使用した。
注2:2013年のISO9001のグラフのへこみは何かわからない。処理上のミスなのだろうか。
2003年のへこみはITバブル崩壊の影響とみられる。だが、リーマンショックの傷がないのもおかしいなあ〜

上のグラフを見てどんな感じを持たれるだろうか?
2014年も順調に登録件数を減らして、1年前に比べてISO9001が566件減(−1.6%)、ISO14001が379件減(−2.0%)となった。グラフから見ても、ここ数年減少傾向は変わっていない。
2008年頃、2次曲線のように左右対称で減少していくかと想像したが意外としぶとくロングテールを引きずっている。ともかくここで減少が止まり再び増加することは100%なさそうに思う。

ISOの認証件数が減っているが、じゃあ、簡易EMSの方はどうだろうか?
こちらは統一された基準でのデータがなく、それどころかそれぞれ公式な認証件数のグラフがないので、あちこちから数字を集めて私が作ったのが次のとおりである。

簡易EMS認証件数推移

注1:各簡易EMS同時の登録数とするために1月時点の数値を使用した。
ISOのグラフとは違うが、大勢に影響はないだろう。

KESのカーブが2014年春に私が作ったのと異なっているが、これは当時と今の見つけた元データが異なるので異なるとしか言いようがない。まあ公的な制度でもなく、公表する義務もないのだから、時と場合によって広報される数字が異なるのもアリなのかもしれない。いや、私の責任を転嫁するつもりもないが・・
ともかくこれを見るとISO認証ほど悲観的減少傾向にはないが、どうみても増加しているとは思えない。いやいずれの簡易EMS認証制度も減り始めているように見える。
ともかく、このグラフを見ると簡易EMSももう終わりだということにご異議はござらんでしょう。
実を言って、新たに簡易EMS認証制度を立ち上げようと考えている人たちを知っている。私はもうダメだよ、将来性がないよとアドバイスしたが無視されてしまった。まあ囲碁でも将棋でも3手先が見えない人もいるのだから、しょうがない。

参照ウェブサイト
エコアクション21http://www.ea21.jp/list/ninsho_search.php
エコステージhttps://www.ecostage.org/org_search.html
KEShttp://www.keskyoto.org/about/registration.html

ではISO審査員はどうだろうか?
ISO9001の審査員登録は日本規格協会のJRCAが、ISO14001は産業環境管理協会のCEARが行っている。外資系とかJICQAなどは審査員登録を日系ではなくIRCAで行っている。こちらの増減は分らないというか調べるのもめんどくさいのでとりあえず省略
さて、JRCAではもう何年も前から審査員登録データを公表するのを止めてしまった。あまりにも減少して公にするのが恥ずかしいのだろうか? 私の記憶であるがISO9001審査員のJRCA登録数は2006年頃が最大で14,400人くらいいたように思う。公表していた最後は2009年でそのときは7,000人くらいだった。あれから5年経つから5,000人くらいかもしれない。多くても7,000人はいまい。
CEARの方は公明正大に今も数字もグラフも公開している(下図)。2014年末時点で5,762人である。こちらも最盛期は2006年で11,000人くらいだった。ISO9001はこれ以上の割合で減少しているのは間違いない。

ISO14001審査員推移
CEAR http://www.jemai.or.jp/cear/ems/list/transition.html

以前、日本では何人審査員が必要かということを考えたことがある。
2012年の試算ではISO9001が1,700人、ISO14001が900人いれば間に合うという結論だった。今は2012年よりも認証件数が1割減だからISO9001が1,500人、ISO14001が800人くらいが必要数かもしれない。とすると一層の減少が予想される。
いや私の推定値は仕事量から考えたので、審査員を職業ではなく趣味とか名誉と考えるならもっと多いかもしれないが・・

認証の売上規模はどうだろうか?
下図は2年前に想定した認証ビジネスの売上推移である。

認証ビジネス売上推移

ISO9001とISO14001の認証ビジネスの売上は2004年から2007年頃をピーク(というかプラトーplateau)として2008年からは急激に減少してきた。上図は2012年1月時点の推定であるが、そのときは登録件数をISO9001が35,406件、ISO14001が19,236件としてグラフを描いた。2014/12現在までを見るとほとんど予想通りの推移である。しかし契約審査員の日当の情報などを基に考えると認証件数は予想通りとしても、現実の審査単価が減少しているようで売上はグラフよりも下方に推移しているように思える。
経産省などが認証ビジネスについての白書などをまとめてほしいところである。

ISOビジネスは審査登録だけではない。書籍、雑誌の売り上げもある。現在ならウェブの法令サービスなどもあるだろう。しかし出版される本はここ7・8年減少している。グラフはタイトルにISO9001またはISO14001がついている書籍の出版数である。ISO規格改定があった翌年は多い。2015年はまた多くの本が出されると思うがそれも1年限りだろう。

ISO書籍出版数

ISOの雑誌はどうだろうか?
アイソムズ誌もISOマネジメント誌も廃刊(休刊)となった今、アイソス誌だけだ。アイソス誌はどうかと言えば発行部数はだいぶ減ってはいるが頑張っているようだ。だが発行部数が6,500部というのは少ないような気がする。それが損益分岐点以上なのかどうか、素人の私は分らない。大変だろうとは思う。
アイソス誌発行部数
システム規格社媒体資料による
200810,500部
2010/49,500部
2011/127,500部
2012?部
2013/047,000部
2014/046,500部
2015/016,500部

とはいえ、そもそもISO認証制度というものの規模が小さく、認定機関、認証機関の人が何万人もいるわけではないから購買層がそんなに多くない。そして今のアイソス誌はISO業界といっても、認証制度側の視点や記事ばかりで、コンサルタント業務についてもなく、認証を受ける企業や利用する人々の視点もあまりないというかほとんどない。もしアイソス誌が発行部数を大きく増やそうとするなら、編集方針を大きく見直さなければならない。だが売上を伸ばそうとすると認定機関や認証機関だけでなく、企業や市民団体そして消費者まで考えなければならない。それではISO規格の専門誌ではなく、カイゼンか品質保証あるいは環境管理などカテゴリーが異なってしまうだろう。現在の性格を維持するなら現状の部数でもやむを得ないのかもしれない。

ISO専門ではないが環境の雑誌、日経エコロジーはどうか?
日経エコロジー発行部数
ABC認証部数(1月〜12月)による
200816,632部
200915,981部
201014,759部
201113,790部
201212,201部
201310,360部
これもISOに関する連載記事もあるし、2014年末からISO14001の2015年改定についての解説記事も連載しているから関係があるだろう。
みると毎年1000部ずつ減少して来ていたが、2013年は2000部の減となっている。アイソスに比べて日経エコロジーは損益分岐点が高いし専門性がないからもう少し、思うに1万部を切ったら廃刊になるのではないだろうか?
となると2015年内には? そんな気もする。

まとめであるが、第三者認証制度というものは先細りであることは間違いない。そしてそれは今突然そうなったわけではなく、そういう傾向になってから、もう10年近くになるということだ。そしてそれ以前のことであるが、認証制度というのは安定して継続できるビジネスなのか、規模としていかほど確保できるものなのかも定かではなかったのではないだろうか?
この状況を見て、第三者認証制度に関わる人たちは、それぞれどう考えているのだろうか。
認証機関、認定機関、審査員、審査員研修機関、審査員登録機関、コンサルタント、認証を受ける企業、認証を利用する企業そして一般市民はこの制度に何を期待し、これからどうなってほしいと思っているのか、私はぜひ知りたい。

うそ800 本日の言い訳
毎回、くだらないことを続けているとお思いの方・・・確かに頭も使わずあちこちのデータを探して切り貼りして羅列しているだけです。
しかし、2014年現在、ISO認証件数とかISO認証制度に関する数値やグラフを一覧しているところはほとんどありません。アイソス誌も以前は毎号の後ろに登録件数などを載せていましたが、だいぶ前に止めてしまいました。グーグルで登録件数や審査員数をググルと出てくるのは私のウェブサイトだけです。ですから私は毎年こういった数値データを調べてアップしておくことが価値があると思っているのです。
将来・・・ISO認証制度の盛衰を研究する方が現れた時、このウェブサイトはお役にたつのではないかと…まあ、100%ないでしょうけど
でもひょっとして、こんなことを真面目にまとめれば修士論文くらいにならないだろうか?
全国の経営学部あるいは環境関連学科のどなたか、ぜひとも「ISOMS認証制度の盛衰」という研究をまとめていただきたい。そのときは末尾で「このアイデアをいただいたのはネットの『うそ800』のウェブサイトである」と記してもらえたら感激である。
いや引用文献に載せていただいただけでも感謝です。

うそ800 もう一つの言い訳
私が書くものは、第三者認証制度について批判ばかりじゃないか、憎しみがあるのかとお思いの方へ
そうかもしれません。でも第三者認証制度というものを立ち上げて、日本経済、日本の産業界に具体的貢献もせずに、先細りとなっている今、過去20年間を振り返って反省してほしい。
第三者認証制度って何だったのですか?
仮にISO認証制度ではなく、省エネをガンバローとか、事故を起こすな、品質保証体制をしっかりしろ、などということに努めていたら、ISO認証制度の壮大な茶番よりもはるかに日本に役立ったと思うのです。

うそ800 最後の言い訳
毎回同じようなグラフを載せていると思われたお方・・・
数字やデータの最新化はしてますよ。それぞれのグラフも2014年までになっていることをご確認願います。



出すと困んだー様からお便りを頂きました(2015.01.09)
おばQ様、こんにちは。
身の程知らずの時代に取り残された人達

おばQ様のご主張がなかなか理解されないとお嘆きのようですが、難しいでしょうねぇ。
日本のトップは馬鹿じゃないですよ。
審査を受けてみて、全然役に立ちそうにないけど、認証の看板は必要なのね、じゃあそれなりの担当を付けといて
・・・これが最初で最期の、真のマネジメントレビューのアウトプット
だったでしょう。

なのにいまだに事務局仕事に恋々としている人たちがいますねぇ
そういう人たちには最早、一生分からないでしょうし、分かる人はそもそも、おばQ様のお話は当たり前すぎて、今更興味を惹かれないでしょう。
そういうことではないでしょうか。

出すと困んだー様 毎度ありがとうございます。
結局、ISOというのは初めから足元を見られていたということですか・・・
確かにどの会社だってISOなら適当にあしらっておけ、ISO担当にはいてもいなくても良い奴をあてろてなもんですからね・・
でも、今更興味を惹かれないでしょうでは悲しいですね。
とはいえどの会社にもISOしか寄るべきところがない人間が多々いるようで・・


出すと困んだー様からお便りを頂きました(2015.01.20)
妄想
おばQ様こんにちは。
先生とコンサルたちがある組織の売上拡大策を指導するとします。
組織の事業にかつて存在した競合はもういないと仮定します。

ならば、いまの事業のノウハウを生かした新たなことを始めればよいというシンプルな結論が思い浮かびます。
このときにもし、なぜか競合でもないところが発信する情報などを競合として定義したりすれば、袋小路にはまってしまいますね。

教わるほうも教える側も、事業の対象を崇めるあまりとりつかれると、組織の核となるノウハウが何かを見誤ってしまいます。
自分たちだけが取り残されたことに早く気がついたほうがよいということになりかねません。

話は変わりますが、次期改訂版でリーダーシップが云々とされていますね。
こういうのを見て、真面目で勉強熱心なんだけど本質的には○○な人はついつい、リーダーシップをトップに使ってもらおうとか言い出すんでしょうね。
なんというか、ビジネス常識の欠如なわけで、勉強する方向性が間違ってるんでしょうね。
部下がトップに対して「リーダーシップを活用してください、要求事項ですから」と指導するのでしょうか?
そんな人が現れないことを願っています。

出すと困んだー様 毎度ありがとうございます。
お話が二点ありますね。
ひとつめ、
競合他社のないとき事業拡大をどうするかとありますが、基本は需要があるかないかでしょう。
コンペティターがいなくても需要がなくてはどうにもなりません。今の事業のノウハウを生かしてとおっしゃいますが、そのノウハウでできるものが売れるかどうか前提が分りませんので何とも言えません。
現実にはコンペティターがいない事業分野というのはたくさんあります。アメリカで戦闘機や旅客機を作っている会社はもう一社くらいしかないようです。存在するための最小事業規模が大きくて、その規模で需要を賄いきれるのであれば二社存在できません。日本だって製鉄や造船など競合他社と合併していくばかりです。
ということで前提条件あるいは現実次第でまったく変わってしまいますので、仮定の話は意味がないと思います。

ふたつめ
2015年版のリーダーシップですが、リーダーシップとは何でしょうか?
この場合、広辞苑などを引いても意味がありません。いや英英辞典をひいてもダメです。
ISO規格でいっているリーダーシップとは規格で書いていることそのものです。
つまり、
    5 リーダーシップ
  • マネジメントシステムの有効性に説明責任を負う
  • 方針、目的を決めること
  • 事業プロセスと環境マネジメントシステムを統合する
  • 資源を確保する
  • 要求事項に適合する重要性を周知する(方針にもありました)
  • 成果を出す
  • 人々を指揮し支援する
  • 改善を促進する
  • 管理者を支援する
これをみますとなにも肩に力を入れるようなことじゃなくて、当たり前のことばかりのように思います。
というか2004年版と少しも変わっていないような気もします。
まあ2004年版どうこうはともかく、経営者には規格に書いてあるリーダーシップを大いに発揮してもらわないといけません。
    つまり、
  • 責任はしっかりとれよ!
  • どっちに進むかはっきりせい!
  • 仕組みやルールはちゃんと決めろ!
  • 人もの金は準備してね!
  • 守るべきことははっきり示せ!
    納期優先で品質優先でコスト優先なんて無茶言うな!
  • 業務をよく見て問題あれば手を打てよ!
  • 責任逃れするなよ!
  • 常に顔をあげて前を向け!・・・これだけがリーダーシップと言えるかな?
  • 部下をちゃんと管理しろ!
おお、これはやはり経営者にリーダーシップをとっていただかないと・・・


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