審査員物語67 人生いろいろ

16.02.22

*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。但しここで書いていることは、私自身が過去に実際に見聞した現実の出来事を基にしております。

審査員物語とは

三木が出社するのもあと1週間足らずとなった。退職するまで審査する予定もなく、机上の片づけも終えたし、挨拶回りもしたし、もうすることがない。時間をつぶすだけだ。
とはいえ途切れなく同僚が雑談に来るので退屈はしない。
今日もヒマなのを見込まれて頼まれたデータの取りまとめを終えると同時に、潮田取締役がやってきた。

潮田取締役
「三木さん、お忙しいですか?」
三木
「忙しいわけありませんよ」
潮田取締役
「じゃあちょっとお話しできますか」

ふたりは空いている会議室に入る。
潮田取締役
「三木さんのご意見を伺いたいと思いましてね」
三木
「どんなご用件でしょう」
潮田取締役
「ウチにいる審査員は、社員が約80名、契約審査員が約100名、以前は社員の割合も多かったですし、合計230名ほどいましたが効率向上を図って若干減らしてきました」
三木
「最近は認証件数も減り気味ですが、それよりも私が審査員になった10年前に比べて審査料金がほぼ7がけに下がりましたからね。売り上げは4割減ですか。
もう節約や効率向上だけでは間に合わず、費用構造を見直さなければどうにもならんでしょう。新規事業と言いたいところですがそれもなかなか難しいですし」
潮田取締役
「そうなんですよ。三木さんにそこをいろいろ頑張ってほしかったのですが、残念ですよ」
三木
「外資系ノンジャブは驚くような料金で審査していますが、どんな費用構造なんでしょうかねえ〜」
潮田取締役
「やはり契約審査員が多くを占めていること、オーバーヘッドつまり管理費用を最小にしていることでしょうね。その他、地域ごとに審査員を配置してお客様の負担を軽くするという工夫も大きいですね」
三木
「オーバーヘッドを軽くするとは、具体的にはどんなことをしているのでしょう?」
潮田取締役
「まずは事務所の家賃、JQAは丸の内だしもっとも今年神田に移るとかいう噂もあるな、その他JICQAは銀座、JCQAは日比谷公園そば、我々は赤坂、それに対してノンジャブは新宿とか遠く大宮とか家賃の安いところが多い。それにいわゆるオフィスビルじゃなくて雑居ビルとか中にはマンションを事務所にしているところもある」
注: JQAは2013年に丸の内から秋葉原に移った。
私は現役時代は相当数の認証機関をお邪魔したが、財団法人系、業界団体系は立派なオフィスが多い。ノンジャブはお客様との打ち合わせ場が個室でなく衝立だけくらいが普通だった。それが良いかどうかはともかく違いは大きかった。

三木
「確かにそう言われればこのオフィスビルはちょっと上等すぎますよね。家賃だって大変でしょう」
潮田取締役
「まあ、でもこういう商売は多少は見た目も重要だから。もっともノンジャブはその辺は割り切っているんだろうねえ。一度用があってノンジャブを訪問したことがあるけど、日本銀行近くの雑居ビルでさ、見た目もあれだけど入ってみると狭いのなんの。一流企業の人が取引したいと思うようなイメージではないね。
とはいえあれくらいでないとオーバーヘッドを軽くすることは難しいんだよね」
三木
「まあデパートとかブテックじゃないんですから銀座や赤坂の必要はないでしょう。我々も多少はグレードダウンを考えないといけませんね」
潮田取締役
「ウチの場合は客が業界傘下の会社が多いから、業界団体の協議会などと同程度の場所にないとまずいようだ。あまり立地が悪いと評判が落ちちゃうんじゃないかという心配はある。審査料金で勝負と割り切れないからね」
三木
「なるほど。
家賃もそうですが、人件費はどうなんですか?」
潮田取締役
「10年前、2000年頃は事務所のメンバーもほとんどが出資会社からの出向者だったが、今は管理職以外はみな派遣に切り替えた。審査員じゃないからね、出向者を受け入れることはないだろう。実際派遣の方が礼儀作法は行き届いているし、英語の電話だって対応できる」
三木
「それって出向者の資質が悪いってことでしょう」
潮田取締役
「そうなんだ。元の会社で使い道がないからってウチに出向させられても困るよね」
三木
「潮田取締役、それを言っちゃ私なんか行くところがありません」
潮田取締役
「いやいや私も同じだよ。その辺が難しいところだね。業界各社というか出資会社の遊休人材の活用ということが目的ならば、この会社はつぶれなけりゃいいという判断になるだろうし、この企業独自に利益を拡大していくとなると出向者を引き取るよりも新人を雇用した方が良くなる」
三木
「以前そんなことを話したことがありましたね」
潮田取締役
「あったねえ〜、もう1年以上前だと思うけど、あのときから全く進展がない」
三木
「あのときは審査の質の改善、いやより具体的に言えば苦情対応の改善という提案をしたと思いますが」
潮田取締役
「そうそう、誤解しないでほしいのだが三木さんの提案は拒否されたわけではなく、少しずつだけど実行されているよ。礼儀作法や敬語の研修なんて遅まきながらやってきている」
三木
「ISOもなんでも同じですが、活動が大事ではなく結果が大事です。その結果として改善はみられるのですか?」
潮田取締役
「審査後のアンケートではそれについてはっきりしないが、ここ1年くらいを見ると審査の苦情やトラブルは減ってきている。もちろん教育ばかりではなく、同業他社との競争や企業の認証機関の鞍替えなど審査員自ら厳しさを感じてきて、自らの行動を省みていることもあるだろうねえ」
三木
「あれですか、我々が礼儀作法とか言葉使いに気を付けろなんていうのではなく、周りから厳しく見られれば自然とまっとうになるということでしょうか」
潮田取締役
「まあそんなところもあるだろうなあ」
三木
「ところで最近は審査員登録数も減るばかりですが、審査員になりたいって人は多いのですか?」
潮田取締役
「うーん、私は三木さんよりISOに関わったのが遅いから以前のことは知らないが、減ってきているようだね」
三木
「私と同期で審査員になった人は、私のように会社から審査員になれと言われた人だけでなく、元々会社でISO担当をしていてぜひとも審査員になりたいって人がいましたが、今はそういう人はいないのでしょうか?」
潮田取締役
「皆無というわけじゃないが・・・だいぶ前は審査員とはものすごく高度な仕事と思われていたようだけど、最近はみな冷めてきたみたいだね。審査員になるよりは関連会社への出向とかの方がいいと考えているようだ。
木村さんでしたっけ、彼は審査員になりたくていろいろ工作したって聞いてましたが」
三木
「ご本人がそんなことを言ってましたね。彼の場合は会社でISO事務局をしていてぜひとも審査員になりたいと感じたそうです。2000年頃までは審査員はすごい仕事と思われていましたし、高齢になっても仕事ができると言われていたそうです」
潮田取締役
「まあそういう時代もあったということだろうね。20世紀は審査員がたいそう偉いと思われていたようで、その姿を見て審査員になりたいと考えた人も多かったようだ。それに審査員には定年がないなんて言われたが、そんなのは皆過去のことになってしまった」
三木
「認証件数が減ってきて先行きの見通しへの不安もあるのではないでしょうか」
潮田取締役
「あるだろうねえ。特に契約審査員の場合は顕著だよ。以前は契約審査員になりたいという人が行列を作っていたが、最近は十分な仕事を回せないので向こうから切られることも多い。ノンジャブの場合、ウチよりは仕事を出せるからね」
三木
「ノンジャブの方が日当は安いんでしょう?」
潮田取締役
「それはそうだが・・・ウチは最近では資格維持のための仕事さえ出せないこともあるんだ。主任審査員の資格を維持するには年に何回リーダーを務めなければならないというきまりがあるのは知っているだろう、リーダー役は社員を優先するので契約審査員までリーダー役を回せない。それに私もだがウチでは管理職以上は全員主任審査員の資格をもっているのだが、そういった人たちが審査に行くときは常にリーダー役をするから、その分減ってしまう」
三木
「ああ、そういえばリーダーをさせるから代わりに日当はただなんていう話をしているノンジャブがあるとか聞いたことがあります」
潮田取締役
「それは本当だ。いくらなんでもただではなく少しは日当を出すのかと思ったが、まったくのただ働きだってさ。それでも主任の資格を失いたくないからリーダーをさせてもらったなんて話を聞いたよ」
三木
「えっ、そんなこと法律上大丈夫なんですか? 研修を無給でさせてはいけないはず、それに最低賃金法とかありますでしょう」
潮田取締役
「私も良くは知らないが税理士など実務経験を積むために無給で税理士事務所で働くってのはあるようだな。採用を前提とせず、単に実務経験を積む機会を提供するならかまわないのかもしれない。
そういや以前からサラリーマンの審査員補に審査員になるための審査経験を積ませるって商売をしているところがあるよね、あれは無給どころかお金を取っていたぜ」
三木
「うーんなるほど、世の中は甘くないか。
あれ、ウチは他社との掛け持ちは禁止だったんじゃないですか?」
潮田取締役
「今どきそんなこと言ってらんないよ。専属だと言っといて仕事をちゃんと出せなければ他に移ってしまうし、ウチとしては契約審査員がいなければ人件費が薄まらない」
三木
「いやはや大変ですね」
潮田取締役
「大変だよ。以前は出向者の人件費の半分が補てんされるから安心なんて考えていたけど、最早そんなこと言っていられない。赤字垂れ流しでは出資会社から叱責どころか潰されてしまう。
実はさ、最近聞いたんだけど小規模な認証機関はそれどころじゃないよ」
三木
「ハテ?」
潮田取締役
「社長や幹部がひたすら審査をして審査員の人件費を節約しているって話だ。実際その社長にもう疲れ果てたって愚痴を聞かされたよ」
三木
「そんな方法ではいっときは何とかしのげるかもしれませんが、長続きしないでしょう。
しかし小さな認証機関のほとんどは、元大手認証機関で幹部だったとかカリスマ審査員と言われていた人ですよね。そういう人は何を目的に自分で認証機関を立ち上げたのか、そしてそれが実現できたのかと考えないといけませんよ。単に銭金を稼ぐためなのか、あげくにそんなことまでして事業を継続するってのも主客転倒、変な話と思いますね」
潮田取締役
「まさにそうだ。だが今を乗り切らなければ明日がない」
三木
「目の前の問題にあわてるのではなく、認証機関はどうあるべきかということをじっくりと考えないといけませんね」
潮田取締役
「そうなんだけど・・・もう激流をゴムボートで流されているようで、岩にぶつからないように転覆しないようにと、その場その場の対応で精一杯だよ。ウチは大手と言われているけど、状況は全く同じだよ」

潮田は相談というよりも単に愚痴を語りたかったのだろう。三木は潮田にもいろいろあるのだろうと思う。
しかし会社にいたとき営業で物を売っていた潮田と自分が、この年になってISO業界で悩むとは思いもよらなかった。三木は営業にいたときISOなんてものは関心がないどころか存在も知らなかった。自分が勤めている会社がISO認証を受けていて毎年審査を受けていることさえ気づかなかった。役職定年になって出向して審査員になってくれと言われて初めてISOなるものの存在を知った。
他方、木村は元々工場でISO担当をしていたという。そして審査員がかっこよく見えたのか、あるいはいやな思いがあってそれに反発したから審査員になろうと思ったのか、まあそんなところだろう。
そういえば先日会った外資系認証機関で取締役をしていた菅野という女性はISO9001の認証が始まった頃、英語ができて規格を知っているからと認証機関からスカウトされたと聞く。彼女は普通の企業にいたなら総合職とはいえ管理職になるのは難しかっただろう。しかし語学の力か時の運か、今では小さい会社と言えど取締役だ。世の中何があるかわからないものだ。
ところで三木は定年になって引退しようとしている。しかし同期で審査員になった島田は元々は町のコンサルで自営業だから、契約審査員として使ってくれる限りは審査員を続けたいという。ウチでは67歳で契約審査員を切るというが、ノンジャブではほかの認証機関をやめた人を採用しているから、そんなところで働き続けるのだろう。 まさに人生いろいろだなあと三木は思う。

潮田はしばし沈黙していたが口を開いた。
潮田取締役
「三木さんは宇多田さんのことを覚えているかい?」

覚えているどころではない。三木は宇多田を柴田や須々木と同じく、日本のISOをダメにした元凶の一人と思っている。
三木が宇多田をどうしようもないと思ったのは、たまたま宇多田がリーダーで三木がメンバーとして審査を行ったとき、宇多田が「環境方針の中に枠組みという言葉が入っていない」ということを不適合としてとりあげたからだ。クロージングの前に三木は別室でそんなことは規格要求ではないから不適合ではないと口を酸っぱくして説得に努めたが、宇多田はガンとして受け入れず不適合にした。
その会社も只者ではなく、審査後すぐに苦情を言ってきた。ISO-TC委員にも問い合わせて不適合でないことを確認したという証拠を突きつけてきたと潮田から聞かされた。それを聞いて宇多田も尻尾を巻いて不適合を取り下げた。ところが、その後、宇多田と三木のペアで審査したとき全く同じ不適合を出したのだった。三木はそのときはもう口を挟まなかった。その会社は異議を唱えることなく、是正処置として方針の中に「枠組み」という語句を入れ込んだ。そんなことが環境保護や遵法に関係するはずはなく、いったい宇多田がなぜそんなことに拘ったのか三木には理解できなかった。
ところで「承認審査員」というものをご存じだろうか? 審査員登録機関というのは審査員登録の申請を受けて審査と登録をするだけでなく、審査員研修機関の審査と承認をしている。当然「承認審査」というのをするわけだ。そして承認審査をする人が承認審査員ということになる。
三木はあるとき宇多田が承認審査員をしていることを知った。それを知って三木は日本のISOのレベルが低いのは当然だと思った。そして日本の第三社認証は良くなるはずがないと絶望した。
注: 承認審査員といってもたいしたことではない。普通の審査員が審査員登録機関と契約して承認審査をしているだけであり、認証審査員以上の資格も力量も要求されていない。
ちなみに普通のISO審査をする人は、認証のための審査を行うから「認証審査員」と言う。
さらに蛇足だが認定機関が認証機関を審査するときの審査員を「認定審査員」という。認定審査員がすばらしいか力量を持つかというとどうだろう。知り合いの会社が審査を受けたとき、認定審査員が同行してきたそうだが、認定審査員が「認証審査員が『有益な環境側面に言及していない』から審査が不適合だ」と言っていたと聞いた。イヤハヤ認定審査員の力量はその程度らしい。
認定審査員を審査する審査員はおらんのかね?

宇多田氏のモデルは実在する。実を言って氏名以外は実話である。一時期私は彼と一緒に仕事をしていたので彼のトンデモエピソードには事欠かない。彼は2014年に引退したが、まさにISOの黒歴史である。
しまった!私の過去がばれそうだ

潮田取締役
「あの時は困ったねえ〜、まあ今となれば笑い話だが・・・」
三木
「私はもう1年くらいお会いしてませんが、宇多田さんは今でも審査員をしているのですか?」
潮田取締役
「やってるよ。名物男だし承認審査員をしているということでこの業界ではネームバリューもある。それに彼はいくら審査を入れても文句を言わないんだ。使う方としてはありがたい」
三木
「宇多田さんは私よりいくつか上でしたよね。年配ですから連泊のお仕事は大変でしょう」
潮田取締役
「そういうことに文句を言わないのが取り柄だよ。彼には年120日くらい入れているんだ。だから三木さん会わないんだろう」
三木
「120日ですって! それじゃ、まともな審査はできないじゃないですか」
潮田取締役
「まあ引き受けてくれるんだからいいじゃないか、ノンジャブと競争していくにはそれくらいじゃないとやっていけないよ」

年に120日というと毎週2・3日審査ということになる。移動とか事前調査、報告書なんて考えるとまず無理な数字だ。陣笠ならともかく主任ならまともな準備はできないだろう。

潮田取締役
「それで宇多田さんは67を過ぎているんだけど、継続して契約審査員をしてもらうことにしているんだ」
三木
「島田さんは67で終わりと言われたとか聞きましたが」
潮田取締役
「島田さんは口が悪いなんて苦情は受けたが、審査の方は手抜きをせずにしっかりやる人で、その分使いにくいんだよ。正直言ってもう少しいい加減に手抜きをしてくれたほうが使いやすくて契約審査員を継続してもらうのだが」

なんだかんだ言いながら潮田も安易な方向に流されているのだなと三木は思った。
三木
「潮田取締役、ちょっと思ったのですが、ISO審査員といってもいろいろな人がいますね。私のように子会社の定年になればすぐに引退する者もあり、契約審査員をずっと続けたいという人もいる。使う側から見た審査員像もあるでしょうし、審査員の目的というか価値観の違いによる審査員自身の考え方もバラエティに富んでいるのでしょうね」
潮田取締役
「そういうことを深く考えたことはないけど・・・」
三木
「ウチの創立時の柴田取締役とか須々木取締役なんていましたよね、覚えてらっしゃいますか?」
潮田取締役
「覚えていますよ。私が来たときは既に取締役ではなかったけど、顧問とかなんとかいう名前で机を持っていて、用もないのに毎日会社に来ていたね。当時65くらいだったんじゃないかな」
三木
「彼らは今でもISOに関わっているのでしょうか?」
潮田取締役
「どうなんだろう? 須々木さんは今エコアクションの審査員をしているはずだ。柴田さんはご病気されたとか聞いたことがある。その後は知らないな」
三木
「ちょっと思ったのですが、審査員をしている人たちは審査を通じて社会に貢献していると考えているのでしょうか? あるいは社会に貢献するために審査員になったのかなと」
潮田取締役
「そりゃあれだろう、三木さんも私も営業だったけど、営業を通じて社会に貢献しようとか、社会に貢献しようとして営業を希望したわけじゃないでしょう」
三木
「なるほど、我々の仕事はたまたまその職に就いたということですか」
潮田取締役
「たまたまというと受動的で、主体性がないから、我々が仕事は選ぶときは賃金や将来性は考えたけど、社会に貢献するかどうかあまり深く考えなかったということじゃないですかね」
三木
「なるほど、そう言われるとISO審査員だからと特に力むこともありませんね」
潮田取締役
「ISO審査員も普通の職業も同じだと考えると、審査を通して会社を良くするなんていう論理がハチャメチャに聞こえるね。営業の取引を通して御社の経営に寄与しますとか、宅配便の請負で御社の物流改善に寄与しますなんて考えているはずがない。審査なんてコンサルじゃねーんだから」
三木
「アハハハハ、なるほど、ISO審査だから経営に寄与しなければならないというか、寄与できるという発想がそもそも自大思想でしょうね」
注:「自大」とは尊大な考えや態度であり、某議員は自大思想だよねという風に使う。
同じ読みだが「事大」とは弱者が強者におもねることで、中国に対する韓国の対応はまさにそれである。日本は韓国と違い聖徳太子の時代から中国と対等と考えていた。
潮田取締役
「とはいえキャッチフレーズだけでも他社に差を付けたいという男心というところかな」
三木
「潮田取締役のお話を聞きますと、このビジネスは認証件数が減っているので先細りかとは前から思っていましたが、損益など内部的にもいろいろ問題がありますね」
潮田取締役
「昔さ、1970年頃ULの検査とか一般企業ができない測定などを請け負ってたJMI(日本機械金属検査協会)てのがあった。当時は試験主体の本当の現場的な団体だったと思う。それがJQAと名を変えて、しゃれたところに住み作業服からスーツに着替えると考えも行動もイケメンになったのはいいけど、中身まで変わってしまったんだろうねえ」
三木
「それはJQAだけでなく我々も同じですよね。どの認証機関もISO審査とはホワイトカラーの仕事と思ったんでしょう。審査員は工場に行ってもネクタイを締めてスーツを脱がず」
潮田取締役
「そうだなあ〜、ISO審査なんて上品なことじゃなくて、企業の現実を知り評価することなんだから、ネクタイもスリーピースもいらないんだよね。きれいな服を着ているから汚れる仕事が嫌になり、オフィスで書類を見るだけに堕してしまったんだ」
三木
「知り合いから聞いたことなんですが、1992年頃ISO審査に来たイギリス人は床を這いまわってアースを確認したとか、ひたすら伝票をめくっていたとか聞きました。三現主義が審査の基本で、きれいなことじゃないんですよね。
とすると本質的なこととして認証機関の風土改革とか審査員の意識改革をしなければならないことになる」
潮田取締役
「そうなんだろうなあ〜、細かい帳票じゃなくてマネジメントシステムを見るんだと力説する人もいるけど、そのシステムが適合かどうか、適正かどうかを確認するには大局的に見るのではなく、こまかい証拠、現場をみないと判定できないはずだよね。
でもこの姿で20年もしてきたのだから今更そういう風に考えを変えることができるのかと思うと無理じゃないか。あまりにも今までのISO審査、審査員というものが本来のあるべき姿ではなかったということになる」

潮田は立ち上がった。
潮田取締役
「三木さん、お忙しいところありがとうございました。三木さんと話をすると自分の考えがまとまってくるような気がします。とはいえ問題はクリアになっても打開策はなかなか見えないですわ」
三木
「ここを離れても、当社がこれから良くなることを祈念しております」

うそ800 本日の言い訳
このところ同じところをぐるぐると回っているようです。まあ現実がそうなんだからしょうがないか、

えっ、今日は絵が一つもないって!?
それは単なる手抜きですわ


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