ISO第3世代 14.適合検討2

22.09.05

*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但し引用文献や書籍名はすべて実在のものです。


ISO 3Gとは

翌朝、始業前に昨日訪問した結果を、A4で10ページほどの本文とその冒頭に500字ほどのサマリーをつけ、山内参与と鈴木課長それにアメリアに送信する。
昨日の成果は大きい。打合せはもちろん、酒を飲みながらの話でも貴重な意見、情報があり、さすがISOに15年も関わっていると経験も知識もつくものだと感心する。


それから厚木工場で聞くべきことをまとめる。広く浅く聞くのでなく、千葉工場で情報収集が間に合ったことは省き、また千葉工場と比較できるように質問しよう。それとアプローチの違いによって、実際の作業の負荷がどのくらい違うのか、その辺を具体的に知りたい。

そうだ、忘れていた。品質環境センターの今までの審査での特徴とか認証機関としての問題点の確認もある。4月末に認証機関を集めてしっかりした審査をしてほしいと要請したが、それは反映されているのだろうか?(第7話参照)

忙しい、忙しい サーバーにアクセスして、「社内・関連会社ISO認証」というホルダーを開いて、審査予定表というエクセルファイルを開く。本社や工場約30か所と関連会社約100社がISO14001を認証しており、その審査予定日が一覧になっている。
予定表を見ると、厚木工場はなんと8月初めに審査を受けている。磯原は見た記憶がないから、まだ所見報告書が送られてきていない。それもフォローしなければならない。

何も言ってこないということは、問題がなかったということだろう。計画の見直しをしても特に審査員がコメントしなかったのか、あるいは昨年の計画をそのまま見せても審査員が何も言わなかったのか?
磯原は厚木工場に訪問したい旨のメールをしたとき、それに関して問わなかったことを悔やんだ。まあ明日には会って話せる。
果たして品質環境センターは依頼した通りの審査をしたのだろうか、その確認もしなければならない。


始業開始のチャイムが鳴るとすぐに、山内から電話があり昨日のことを聞きたいという。

山内参与 「磯原君、報告書を読ませてもらった。なかなか参考になる。だがあるがまま見せるという方法に切り替えるには、困難が多々ありそうだな」

磯原 「まず千葉工場の佐久間さんという方がISOについて非常に詳しく、良い人に会えたと思いました。彼の話を全面的に信用するわけではありませんが、現状を見せて審査してもらうというアプローチは、認証機関が品質環境センターでは無理のようです」

山内参与 「まあユニークな認証機関のようだね。ともかくあまり結論を急がずまずはもっと情報を収集しよう。
それと佐久間氏が詳しいのは報告書を読んで私も実感した。彼は役付きなのか?」

磯原 「肩書はありませんでした。既に役職定年を過ぎた歳ですが、役職に就いたこともないようです」

山内参与 「そうか……明日は厚木工場だが、あそこは例の件でも問題のあったところだ」

磯原 「存じております。ですから教えを乞うというよりも、実態を調査するという感じで話を聞こうと考えています」

山内参与 「ISO審査で見せた省エネ計画はどうだったのか、省エネ予算は間違いなく計画通り使われているかを確認してきてほしい」

磯原 「承知しました。
おっしゃるようにあまり結論を急がすに、聞き取り結果を基にどうあるべきかじっくり考えます」

山内参与 「ええと、計画では昨日はアメリアの研修開始だったはずだ。明日もアメリアは同行するのだろう。彼女の研修は君が立てたスケジュールより遅れないのだな?」

磯原 「大丈夫です。もちろん昨日と明日、彼女に同行してもらうのはISO審査の実態を知るためで、それも研修の一環です」


******

山内との打ち合わせの後、磯原は午前中、山下が講師でアメリアに公害防止の話をしているのを脇で聞いた。山下は教師が向くか向かないかはともかく、大気も水質も騒音も振動も一手に引き受けて何年も工場の指導やトラブル処理の経験があるから公害に詳しいし、経験をもとに語るので信頼感がある。磯原はこれなら問題ないと安心した。
もちろん公害防止の法規制や規制基準は、日本とアメリカの規制は異なる。まあ、そこはアメリアも大人だから理解しているだろう。そうだ、アメリアが講習を受けたことを報告書にまとめて出してもらおう。アメリアの復習にもなる。


******

翌日である。米海軍と海上自衛隊が使用している厚木基地は、厚木市ではなく厚木市からだいぶ離れた綾瀬市と大和市にまたがっている。昔々、日本海軍が飛行場を作ったとき厚木飛行場と名付けたそうだが、なぜ厚木市(当時は厚木町)から大きく離れているのに厚木飛行場と名付けたのかは諸説あるが、今はもういきさつは分からないそうだ。

ともかく厚木基地の名前が広く知られたことから、基地の近くでは厚木と名が付く企業はアツギ(株)(旧社名:厚木ナイロン)をはじめ多数ある。スラッシュ電機の厚木工場も厚木市でなく綾瀬市にある。
このへんは電車の路線も目が粗く、車を使わないと不便な所だ。私も現役時代にこの辺の会社をいくつも訪問したが、いつも移動には難儀した。
東京駅から綾瀬市まで1時間半、東京から直線では佐倉より近いが、鉄道線路は直線でないので所要時間は佐倉より長い。佐倉のときより30分早めに本社を出た。

藤井主任
ISOのプロです
厚木工場の守衛所で藤井主任を訪ねてきたというと、藤井主任が門まで迎えに来た。50くらいのおとなしそうな人である。磯原が37歳、千葉工場の佐久間が50代末、藤井が50前後とすると10歳ずつ離れているなと磯原は意味のないことを思った。

こちらは部長も課長も出てくることはなく、事務所の中にある10くらい入れる会議室に案内された。

磯原 「本社の施設管理課の磯原と申します。こちらはアメリカ法人の環境担当の吉本さん。現在日本で環境管理の研修中です。今日は話し合いを見学させてもらいます」

藤井 「本社の方がお見えになるなんて珍しいことですよ。まして外人さんが来るなんて歴史に残りますよ、アハハ」

磯原 「メールでお伝えしておりますので、用件はご存じと思います。本社のISO事務局の前任者が転勤になりまして、私が引き継ぎました。とはいえ前任者とは顔も合わせていないのです。
今、年末の審査に向けて準備しておりますが、分からないことばかりで、工場のISO担当者に教えていただこうとお邪魔しました。お宅は近場なので今後いろいろ頼りにします」

藤井 「そうですか、ISOも難しいですからね。元々、私は技術部の文書管理課にいたのですが、ISO事務局担当者が定年退職したとき、その後任として環境管理課に異動になりました。もう6・7年になりますか……
それからずっとISO事務局です。毎年度初めに環境側面の見直と法規制の最新化をして、一年間の計画を立て、計画達成の活動推進、内部監査、もちろん審査対応とその後の処置など、仕事は1年間途切れません。残業もけっこうしないと仕事が片付きません」

磯原はそれはどうなんだろうと心中思う。どうなんだろうとは、それほど負荷があるのか? その仕事は意味のあることなのかという疑問が湧く。もちろんそんなこと、口にも顔にも出さない。

磯原 「じゃあ藤井主任はもうISOのプロですね」

藤井 「そう自負しています。ご存知かと思いますが、神奈川県は公害防止活動が盛んでして、企業にISO14001認証を薦めています。ISOは重いという中小企業にはエコアクション21などを薦めています。企業の同士の連絡会も活発ですし、大企業は中小企業の環境活動の支援をしてまして、私もそれに参加しているのです」

磯原 「ほう、そういったことは存じませんでした。すると藤井主任は工場の外でも活動されているのですか?」

藤井 「そうです。エコアクションも基本はISO14001と同じで、環境側面の把握と法規制の把握から始まります。ですから認証のための仕組みつくりはISO14001と同様で、簡単ではありません。私はそのため方法とか技術的なことを指導しています」

磯原 「ほう、すごいですね。それは休日にボランティアとして行っているのですか?」

藤井 「いえ、勤務時間に公用外出して指導しています。これに結構時間を取られています。とはいえ県が大企業に中小企業を支援するように声をかけておりまして…」

藤井はとてもうれしそうに語る。磯原は、何かおかしいんじゃないかなという気がする。
まあ、ともかく本題に戻して目的を果たそう。

磯原 「ええと厚木工場では、毎年環境側面とか環境法規制を調べているのですよね?」

藤井 「そうです。毎年使用量も排出量も変わりますから、環境側面に取り上げた項目について計算しなおします。もちろん項目が多数ありますので、見直すだけで3週間はかかりますね」

磯原 「それは大変な仕事ですね。計算するとおっしゃいましたからスコアリング法ですね。それによって順位が変わるとか該当する・しないが変わるのはいくつくらいありますか?」

藤井 「まずありません」

アメリア

藤井 「元々、重要なものを選んで計算しているわけで、5%くらいの増減では変わらないのです」

アメリア 「それなら毎年計算することもなさそうですね」

藤井 「いやいや、ISO審査では環境側面をしっかりと把握しているかを見られますから、例え変わらなくても変わらないことを確認することが重要なのです」

磯原 「なるほど、それは環境法規制も同じですか?」

藤井 「そうです。法改正があれば行政から通知も来ますし、本社が説明会などを開催します。しかし直接工場の環境管理に関わらない自然保護や鳥獣保護の法律についての制定・改正情報は来ませんから、年に一度そういったものも含めて制定・改正の確認をするわけです」

磯原 「その点検結果、工場に関わらない法律で、アクションが必要になるものもありますか?」

藤井 「ありませんね。鳥獣保護といっても、都市部の工場に野生の猿や鹿が入ってくることもないですし、まあ関係はないです。
でも該当法規制一覧表を見直したことが大事なのです。それに公害関係だけでなく、環境に関わる法規制すべてをチェックしたことが大事です」

本当を言えば、市街地にある工場だから野生動物とは関係ないということもない。私の実体験だがマンションのベランダのエコキュートのタンクの下にハトが巣を作り抱卵していた。
野生動物 巣も卵も撤去してゴミに出したいところだが、法律を真面目に読むと、鳥獣保護法第8条違反で1年以下の懲役または100万円の罰金だ。人類の敵を討伐できずやさしく追い払うしかないなんて、自衛隊みたいじゃないか。専守防衛とは自殺の代名詞だ。
法律通りすれば、放置は近隣がフン公害になるし、我が家の洗濯物はめちゃくちゃになる。許可を受けた業者に頼むと数万取られるという。なお我が家ではどうしたかはコンフィデンシャルである。
なにも手を打たないと、ハトは友を呼び、マンションは汚れ価値が下がる。冗談じゃない。

実は工場でもそういうことは良くある。変電所の事故は蛇が入ってきてショートさせたというのが多い。もっとも原因不明な事故は、動物の感電とするのが手っ取り早いという説もある。
工場でも受電施設などに鳥の巣を作られると、事故防止のため金をかけても取り除かないとだめ。 猫 電気設備は金網で囲まれているので、猫などが入ってこないから鳥が巣を作るには安全で適しているらしい。

これも実話ですが、現役時代、秋葉原の総武線のホームで鳩を捕まえた東南アジア人を警官が捕まえたところを目撃したことがある。捕まった外人は、鳩を捕まえて食べることがなぜ罪になるのか分からないと言ってた。駅員も乗客も、ハトを捕ってくれてありがたかったのではなかろうか?
モグラを殺してみろ、お前は殺人罪だ おっとハトばかりでなくムクドリなどの害鳥も駆除できませんし、害獣(モグラ、アナグマ、ハクビシン、タヌキなど)を捕まえるのも罪なんです。なんて罪な法律でしょう。徳川綱吉を駆除しよう!
法律で野生動物を保護するなら、それらに被害を受けた場合の対応策や補償をしっかりと決めておかないと、人の暮らしが崩壊する。

アメリア 「もし環境側面とか法規制の見直しを毎年でなく、1年おきとかにしたらいけないのですか?」

磯原 「ISO規格でインターバルは決めているのですか?」

藤井 「期間は定めていなかったように思います。でも最新化するという要求があったような……」

そういいながら藤井は部屋を出て、すぐにISO規格の対訳本を持ってきた。

藤井 「予め定めた間隔とあるだけで、期間は決めてないようですね。私は前任者から1年で各部門を一巡するようにと教えられたのですが」

磯原 「昨年ISO規格改定がありましたが、今年は改定後の規格で審査を受けたのですか?」
(この物語は今2016年8月である)

藤井 「いえいえ、改定は昨年末ですよ。法律で制定と施行の間に期間があるように、ISO規格改定も施行まで猶予期間があります。それで今年の審査は2004年版です。来年の審査は2015年版となります」

磯原 「ああ、そうなんですか。では私も今年は旧版対応で良いのですね?」

藤井 「もちろんです。これから取り掛かる改定対応の作業には退職された前任者に手伝ってもらうつもりです」

磯原 「ほう

藤井 「彼は定年後、環境団体でアドバイザーをしています。古巣の文書の見直しを頼めばアルバイトに来てくれるでしょう」

磯原は藤井の話を聞いていて、ますます変ではないかという気がしてきた。藤井の考えは、磯原の常識とはかなり違うようだ。

磯原 「すみません聞きたいことがたくさんありますので、どんどん聞いていきます。
厚木工場では環境マニュアルで引用している文書は、すべて工場規則でしょうか?」

藤井 「いや規格対応の手順書を作り、それで規格要求を満たすようにしています」

磯原 「工場規則とその手順書の関係はどうなっているのでしょう?」

藤井 「マニュアルでは各項番ごとの手順書を参照というか引用しています。そしてそこから従来から決めてあることは工場規則を引用し、従来はしていないことはISO規格対応で作った手順書を引用しています。
従来からしていることをわざわざ新たに手順書を作ることはないですからね。ただマネジメントレビューとか内部監査などはISO規格前にはしていませんから『マネジメントレビュー手順書』とか『内部監査手順書』という名前の文書を作っています」

磯原 「なるほど、審査員から手順書と工場規則が混じっていても特になにか言われませんか?」

藤井 「文書体系がそうなっていると説明しているので問題ないです。マニュアルの中で『文書類管理手順書』というのを引用していまして、その中でこの工場の文書類の体系を定めていて、工場規則や手順書があると説明しています」

磯原 「すると元からある工場規則の文書管理規定は無視ですか?」

藤井 「無視というか、マニュアルでは引用していません。とにかくマニュアルで引用している範囲において矛盾はありません」

磯原 「分かりました。別に批判しているわけでなく、従来からの文書との関係がどうなっているか分からなかったものですから」

藤井 「これは規格改定で項番などが変わっても、社内の文書への影響を最小にする手段として考えたと教えられました」

磯原 「なるほど、ワンクッション入れることで工夫したということですね。
ところで今年春に当社グループの環境行動計画とISOの目的目標と環境実施計画を一致するようにと通知したはずですが、あれはどうしましたか?」

藤井 「いやあ、困っちゃうんですよね。厚木工場では省エネ投資計画と実際に投資したものに多少違いがありましてね、ちょっとつじつまが合わないところもあるのです。
それで説明がつくような計画を作り、審査で見せていたのが実情なんですよ」

磯原 「今年のISO審査ではどうしたのでしょう?」

藤井 「昨年提示した環境実施計画を見せて、その枠内でどのように改善が進んだか説明しました。要するに本社の通知は無視しました」

磯原 「審査員は藤井さんの説明で問題ないと判断したのでしょうか?」

藤井 「特にコメントもなくOKでした」

磯原 「今年の省エネ計画は見直したのでしょうか?」

藤井 「一応3か年計画として昨年策定したところなので、来年いっぱいは昨年策定した計画書で進めることで審査員に了解をもらっています。審査員も従来のままで問題ないと解釈していたようでした。
本社の通知ですが、一体何が目的なのか、何が問題なのか分からないですよ。あ〜、今の話はISO審査で見せる計画書の話であって、当社グループの環境行動計画は割り振られた通りに活動していますよ」

磯原 「割り振られたって……あなた、あの数字は各工場が自己申告してきたものですよ。本社が押し付けたものじゃない」

藤井 「まあ、工場が自由にしたっていいじゃないですか」

磯原 「我が社が広報発表している環境行動計画と、ISOで見せている活動計画が合っていないのは対外的に信用を落としますよ」

藤井 「審査員は総合的なことを考えませんよ。この工場の計画と活動が合っていればいいんです」

磯原 「ちょっと戻りますが、先ほど藤井さんがおっしゃった、過去の認許を得た計画を縮小して、そのお金を別の用途に使っていたって本当なんですか?」

太陽光発電 藤井 「私が聞いたところでは、太陽光発電を設置するといって、そのお金を合理化に回したということでした。
私も思ったのですが、太陽光パネルを入れたところで費用対効果が出るわけないです。しかし事業本部とか本社ではそういう環境配慮のかっこいい投資が好まれますから、そういう名目で予算を得てそれを必要なところに回したのでしょうね」

磯原 「今回発覚したと聞きましたが、大きな騒ぎにならなかったのですか?」

藤井 「いっとき部長クラスが青くなって会議とかしていましたが、幸い丸く収まったようですよ。私はどうなったのか聞いていません」

磯原はそんなものかと思う。現実は、山内が思っているより信賞必罰とは程遠いのだろう。ともかくこれは重大問題だ。山内に報告しなければ…、それに品質環境センターに確認しなければならない。

4時半になった。磯原は予定していた質問は終えたので、これでおいとますると藤井に伝えた。

藤井 「本社でISO準備が大変なら私に声をかけてください。きっとお役に立ちますよ」

磯原 「藤井さんは厚木工場のISOのお仕事や社外活動で、かなり残業をしなければならないとおっしゃってましたね。そんなお忙しい方にお願いなどできませんよ」

藤井 「いえいえ、ご遠慮は無用です。仕事のほうはどうとでもなりますから」

この男の価値観というか論理はどうなっているのだろうと磯原は大いに呆れた。


******

帰りの電車の中で磯原はブスッとしていたのだろう、アメリアが心配して声をかけてき

アメリア 「磯原さん、なにか具合が悪そうですが大丈夫ですか?」

磯原 「あっ、いえ、そんなことはありません。あの藤井さんと話をしているとものすごく嫌な気分になりましてね」

アメリア 「あぁ、それですか、私もですよ。いろいろおかしなことがありましたね。でも、磯原さんはなぜ藤井さんの考えがおかしいと反論しなかったのですか?」

磯原 「今回はISO認証について教えてほしいという名目でしたからね。本社が出した通知の実施状況の調査ではないので」

アメリア 「それにしてもあの人は、ISO審査をうまく乗り切れば良いと考えているだけですね。事故を起こさないため、違反をしないためという本質を忘れているようです」

磯原 「最後に藤井さんは本社のISO審査のお手伝いをしたいなんて言ってましたが、あんな考えの方と一緒に仕事したくはないです。彼は根本から間違えている。それもISO規格解釈がどうとかでなく、会社で働く意味とか仕事に向き合う心構えを分かっていない」

アメリア 「こんなことを言っては何ですが、あの方は前の職場であまされたのでは…」

磯原 「確かに、でもここは誰が聞いているか分かりませんからもう止めましょう」

本社のISO審査も大変だが、厚木工場はISOの仕組みもめちゃくちゃだ。しかもそれが最高の方法だと認識しているなんて、どういう考えなんだと磯原は怒り心頭だ。間違っても工場内で収まっていれば良いが、あの方法を社外で教えては恥さらしもいいところ、大問題だ。
今まで本社は工場のISOの仕組みを点検していないのかと疑問を持つ。恥はともかく、これでは認証にかかる費用、審査費用や藤井のような人件費、更には社員にウソッパチのISO教育なんてしているとしたら、もうロスはとんでもない金額になる。

注:ご存じと思いますが、ISO規格要求に「ISO教育をしろ」なんてのはありません。しかし よく読もう 多くの会社は審査員の心証を良くしようとしてか、eラーニングをして試験までしています。それで品質とか生産性が上がればいいですね(棒)
ISO規格が要求していることは、関わる環境側面の知識、担当する仕事の力量、緊急事態時の対応くらいでしょう。
また「環境教育法」ってのもありますが、よく読めば企業の義務も国民の義務もありません。

本社のISOをどうにかする前に、工場のISO認証をどうにかしないと……磯原は頭を抱えてしまった。
アメリアは磯原を見て、本当は気分が悪いのだろうと心配だ。


うそ800 本日の疑問

そんな会社があるのかと問いますか?
たくさんあります。ひょっとしたら御社もそうじゃないですか? 審査員もそういうISOの仕組みを見逃しているのか、良い方法だと思っているのか、どう考えているのでしょうかねえ〜
審査員は会社がISO規格を満たしていることを確認することでなく、出てくる書面がISO規格を満たしていることを確認することなのでしょうか?

磯原の言葉を書いていて、いやぁ、これは監査のときの話し方だなと気づいて笑ってしまいました。私も飽きるほど監査をしてきましたが、AかBかと聞くような人は監査員に向きません。
山下泰文将軍が「イエスかノーか?」と語ったというのはウソらしいですが、そういうクローズドクエスチョンはダメです。オープンクエスチョン、これ大事。

それだけでなく甲について聞きたいとき、「甲はどうですか…」なんて始めたら、「ああ甲に何か問題があるのだな」と思われるのも必然です。そういうときは「乙ではこんな風だったけど丙はああだった。ところで甲は…」と流れを自然につないでいかないとだめです。
磯原さんの語り口を見ていると、十分監査員の適性がありますよ。いや書いている私に監査員の適性があるのだろう(笑)。

*「山下泰文」の名前は「やすふみ」だと70年間思っていた。もっとも憲法学者の高久泰文は「やすぶみ」だが。今確認のためにググったら「ともゆき」と読むのだそうだ。そんな風に読めるのか?


<<前の話 次の話>>目次



ふとし様からお便りを頂きました(2022.09.07)
死ぬほど暑かったり急に寒くなったり、嫌になりますね。
お世話になっております。ふとしです。
最近立て込んでおりますが、毎更新欠かさずチェックさせていただいております。

「14.適合検討2」読ませていただきました。
個人的にですが、めちゃくちゃ面白くなってきましたね。
藤井さんみたいな方、過去にもよくいらっしゃいました。
審査員なら、うっちゃりで良いのですが社内にいると、非常に扱いに困ります。
まぁ、今私の対面側に座ってらっしゃる方がそうなんですがね・・・

ふとし様 毎度お便りありがとうございます。
暑さ寒さも彼岸までといいますが、最近私はこれはお彼岸のことではなく、あの世に行くまでの意味なのかと勘ぐるようになりました。死んでしまえば暑さ寒さは感じないような気がします。
と、バカなことを語っていてはいけません。
ふとし様がおっしゃるように、俺はISOのことなら何でも知っているなんてドヤ顔している人ってどこにでもいましたね。私の元同僚は社内でISO認証に関わった定年後、地元でISOコンサルを始めました。その頃には私も都会に出てきてしまい彼がどんなことをしているのか知りませんでしたが、後にググったら講演とかしていました。私はそばにいなくて良かったと心底思いましたよ。私があの人の元同僚と知られたら恥ずかしくで死んでしまいます。
今はもうISOコンサルも止めたようで一安心です。幸いにも今まで、あのへんなコンサルはお前の知りあいかと問い合わせはありませんでした。
ISOの表から裏まで知っていて、客の要求を満たすために裏技でも卑怯技でも使って最善を尽くすなら立派といいますが、見よう見まねでいい加減なことをする人は見ないふりして速足で遠ざかるのが吉


うそ800の目次に戻る
ISO 3G目次に戻る

アクセスカウンター