ISO第3世代 39.更新審査4

22.12.19

*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。

ISO 3Gとは

スラッシュ電機のISO更新審査は粛々と進む。
本日は第2日目で、ここは東北支社である。
審査員宮下(初出)は、二日間で東北支社とその営業所2か所の審査が担当である。初日は朝から本社でオープニングに参加した後、郡山市に移動して郡山営業所を審査して、夕方に新幹線で仙台に移動してお泊りした。
二日目の本日は仙台の東北支社の審査である。

宮下も70歳になる。今年度一杯働いたら引退しようと考えている。
宮下も年と共に考えも審査スタイルも変わった。成長したといえる。環境側面は点数でないとだめとか有益な環境側面がないとだめなんて語った人とは思えないほど変わった。
ISO14001の意図は遵法と汚染の予防であり、それを実現する方法は数多あまたあるはずだ。ISO14001で定めるマネジメントシステムはそのひとつに過ぎない(序文に書いてある)。もちろんISO14001認証するには、規格要求事項を満たすことが必要だが、規格要求事項は遵法と汚染の予防の十分条件でもないし必要条件でもないのだ。

宮下は最近、会社のマネジメントシステムが遵法と汚染の予防に有効であるなら、その会社を認証してもよいと考えている。そしてまた表面上はISO14001の要求事項を満たしていても、遵法と汚染の予防に不安を感じるなら重箱の隅をつついても不適合を出したいと思う。ISO認証とは規格に適合していることの証明であるが、世の中は規格適合よりも、事故や違反のないことに価値があるのだ。
残念ながら認証機関のトップは概ね良いなら不適合を出すなということを常々語っている。今は企業が認証したいという時代から認証機関が認証してくださいという時代だ。世の中変わったなと感じる。

注:どうでもいい話であるが……
「本社」とは社長がいて本社機能の部門が所在するところでもあるが、会社を登記している場所をいうこともある。建物 多くの場合それは一致している。
なお本社が複数存在する会社もあるし、最近はリモートワークで本社がない会社もあるらしい。
法律では「本社」という言葉は使われておらず、会社を登記した所在地を「本店」と呼ぶ。
では「営業所」とはなにかとなるが、商法20条で営業を行う場所を営業所としている。トートロジーのようだ。
一般的には本社機能のある所を「本社」、その出先機関を「支社」とか「支店」、孫とか小さな出先機関を「営業所」と呼ぶ。


******

朝一、東北支社を訪ねると、支社長は宮下と名刺交換とわずかな雑談をしただけで出張に出かけてしまった。スケジュールでは支社長は出張予定であったが、宮下が来るまで待っていてくれたようだ。ありがたい。
支社長は時間距離的には日本で一番広い地域が担当だと語っていた。確かにその通りだ。宮下は二日かけて東北地方の3か所しか審査できないが、他の人たちは飛行機や新幹線を使って宮下よりはるかに長距離を移動して審査している。
審査は総務課長の太田と営業課長の五反田が応対する。

太田総務課長 五反田営業課長 宮下審査員
太田総務課長 五反田営業課長 宮下審査員
東北支社のメンバー ISO審査員

宮下 「まず本日の予定を確認いたします。午前中に総務課と営業課と業務課をインタビューして、午後から御社の倉庫へ移動、そこに倉庫部門と修理部門があると聞いておりますので、見学した後、担当者のインタビューをしてその場でまとめのお話、私はそれから仙台駅から16時53分の新幹線で青森に移動でよろしいですね?」

太田総務課長 「そう伺っております。業務課は私たち二人が終わりましたら課長が交代します。
東北新幹線の便数が少ないからお気をつけてください。東京大阪間は1時間10本もあるそうでが、仙台から青森は1時間1本ですから、乗り遅れると大変です」

五反田営業課長 「倉庫には私が同行します。
そこで倉庫のことですが、実は大手運送会社の物流センターであり、弊社は検収から保管、出荷などすべてを委託しております。
その他少しスペースを借りていて、返品を受けたものの不具合確認とか簡単な修理、長期保管品の点検をしています。そのため3名が駐在しています。
ですからご覧になっても30分かかりません。
実を言いましてISO審査で審査員の方が倉庫まで行かれるのは今回が初めてでして、お宅のほうでも倉庫といっても実態がわからなかったのでしょう」

宮下 「そうですか、とはいえ今更予定変更はできませんので、計画通りさせてもらいます。時間前に終わればその時点で終了です」

五反田営業課長 「承知しました。それでは支社の審査をお願いします」

宮下 「今回は御社の本社から審査についていろいろ要請がありまして、弊認証機関としてはそれを尊重して行います。東北支社にもその旨の通知はあったと思います」

太田総務課長 「あれですね、事前準備は不要、審査ではISOの専門用語を使わないとか……」

宮下 「そうです、そうです。確かに要請されたのはまっとうなことです。ISO規格も昨年改定になりまして(この物語は今2016年)、その中でその会社で使われている用語をISO規格に合わせることはないという語句が追加になりました(ISO14001:2015 A.2)。
考えてみれば当たり前です。ISO審査だからと常日頃会社で使っている言葉をISO用語に翻訳して説明するなんておかしな話です。
ということで、本日はいつもの感じでお話を進めてください」

太田総務課長 「まあ、それは良いことを聞いたわ。私は課長になる前からISO審査というものを毎年受けていましたが、環境側面とはなにかと質問されたり、是正処置と予防処置は違うとか、わけのわからないお話を聞いて戸惑っていました。悪いことはダメと言っていただいてよろしいのですが、ISO規格の言葉を知らないからダメと言われると困ってしまいましたわ、アハハハ」

宮下 「そういうことがありましたか、大変申し訳ありません。私も皆さんにご理解いただけるよう普通の言葉で質問するつもりですが、意味不明なときはいつでも質問してください。皆さんがしていることを拝見して規格に合っているかいないかは私が判断して、不具合ある時はなぜ悪いのかを平易に説明するつもりです」

太田総務課長 「それはうれしいですね。よろしくお願いします」

宮下 「それでは行きましょう。
ISO14001の意図は遵法と汚染の予防です。つまり環境に関わる法律を守る、環境事故が起きないように予防する、このふたつがISO14001規格の目的です。但し汚染といっても事故で薬品が漏洩するようなことだけでなく、騒音振動や二酸化炭素を排出するようなことも含みます。省エネはCO2排出を減らすことから汚染の予防と理解されています。

ところで環境に関わる法律といいましても、特に決まっているわけではなく、人により会社によってこれは対象となるかならないかの境界はバラツキます。まあそこは常識で考えたいと思います。
ただ環境に関わらない法律でも違反があればそれは指摘しますので、御社としては対策をしてほしいと思います。

ええと御社のお仕事で関係する法律は、どのように把握しているのでしょう?
つまり新しい事業を始めるとき、どんな法律が関わるのか調べる方法とか、法律が改正さのをどのように把握しているのかということです」

太田総務課長 「それは営業担当ですね。五反田さんお願いします」

五反田営業課長 「ハイ、新事業というとすぐには思い当たりませんが、今までにないカテゴリーの製品を販売するような場合ですね?」

宮下 「はい、そのときどんな方法で調べたのでしょうか?」

五反田営業課長 「過去になかった製品の場合は、製造している工場で関係法令や条例を調べます。導入前に従来関わりのなかった法律の規制を受けるときは、工場からそれについての説明会があります。支社としては、それに基づき県庁とか市役所とかに許可申請とか届け出などを問い合わせて対応しました。

新製品に限らず弊社が販売している製品で、お客さんが設置するのに届け出とか許可がいるものもありますが、それも同様に基本的に開発した工場が調べて営業部門に説明があります。販売時にはそれを基にお客様に説明します。
現実を言いますと、お客さんが届けなどをしなければならないものは、売り手つまり弊社がそれを代行してやるというのが基本ですね。
あっ、代行っていっても手続きをお客さんに代わって行うことではなく、書類作成などをお手伝いすることですね。法的な行為の代理人はできませんから」

宮下 「なるほど、そのときはそれで良いとして、それはルールとして決まっていますか?」

五反田営業課長 「あっ、すみません。説明に証拠や根拠をお見せして説明するのは、今までと変わらないわけですね。口頭だけで良いのかと思ってしまいました
営業規則というものがありまして……これですね、ここに新製品が出るときはそれが関係する法律を調べることとありまして、そのインプット事項に……ここに羅列されています。生産工場の説明会とか行政に問い合わせることとあります。電安法など製品に関わることは設計時点で対応しますから私どもでは行いません。
それから販売開始前には工事店への説明会をするなどに続いていきます」

宮下 「新しい製品対応は分かりました。では法律が改正されたとき、改正されたことをどのようにして把握するのでしょう?
法律が変わったことを知らないと大変ですよね」

五反田営業課長 「法律が制定されるとか改正されるときは、県の所管部門から商工会議所とかそれに関わりそうな仕事をしているところに説明会の通知が来ます。一度でも説明会に出ると、それ以降は関係する法律に改正があるとその会社に通知があります。

それについても営業規則にありますが……ああここだ、ええと法改正説明会の案内を受けたときは改正の内容を調べ、不明点を洗い出して説明会後に該否の確認と対応を相談することとあります。

あ〜法改正説明会では説明した後にですね、県の担当者の方々が企業の人たちの相談を受けるのです。そこで具体的に法に関わるか関わらないか、関わればどんな対応が必要かを教えてくれます。ですから参加する前に法改正の要点を調べておいて、私どもの解釈で間違いないかどうかを確認します。
つまり行政の通知を受けたら説明会を聞きに行けばまず問題はありません」

宮下 「なるほど。ええと太田総務課長さんにお聞きしますが、支社から廃棄物とか出るでしょうし、社有車の排ガス規制なども行政の通知を受けていれば十分なのでしょうか?」

太田総務課長 「廃棄物は問題が起きやすいですね。私どもでは市や県の講演とか法改正説明会の案内があれば必ず担当者を出しております。事故事例や法改正については総務課内回覧とか、関係部門に通知を出しています。
もちろんそれによって会社のルールを変更する場合は、私どもでは支社規則、略して支社規と呼んでおりますが、それを改定します。
排ガス規制は通常車検などのとき自動的に対応されますので、わざわざ私どもがどうこう考えることもなさそうです」

五反田営業課長 「ええと総務課長はそれで間に合うかもしれませんが、営業関係では、数年前に一都三県へ域外からの乗り入れするディーゼル車に対する上乗せされた排ガス規制を見逃していて、他社さんから教えられて驚きました。結局我々はトラックを貸切るようなことがなく、対応外であることがわかりました。

私どもがトラックを貸し切って運搬するということはまずありません。私どもが通常利用するのは宅配便とか大きくても運送屋に段ボール箱で依頼する程度のものですね。
新工場建設などで大量に購入されるお客様には、工場から直送になりますが、そのときは工場が運送屋を手配します」

宮下 「おっしゃることは分かりました。でも仕組みとして一都三県が新しい規制を始めたとき、そこに出荷する可能性はありますでしょう。もし委託した運送会社が排ガス規制違反で捕まると、荷物を依頼した客の社名が全国公表されます。それは御社としては不名誉ですよね。
それを予防する仕組みが必要ではありませんか?」

注:一都三県のディーゼル車の排ガス規制は2003年に始まり、その後何度も改正されている。
運送屋の車が排ガス規制違反で摘発されると、委託していた客の名称が公報される。罰則ではないが不名誉なことである。但し貸し切りでなく混載の場合は除外される。
私はそれが口だけだと思っていたが、その後定期的に違反した運送会社に委託した会社名が公報されるのを見て驚いた。

五反田営業課長 「うーん、そう言われると弱いですね。現状ではそういう事態はあり得ないと考えているだけです。
正直言って、縁のない地域で排ガス規制など我々は知る方法がありません」

宮下 「おっとこれは条例ではないですよ。「自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」という法律です。要するに法律があり、それに基づき該当自治体が詳細を定めたという流れです」

五反田営業課長 「えっ、そうなんですか……としても、どうしたら良いのですかね〜」

太田総務課長 「五反田さん、本社の環境部門から法改正時には支社に通知が来ますよ。それを元に対応したら良いのではないかしら」

五反田営業課長 「えっ、そうなんですか! 私は寡聞にして…」

太田総務課長 「五反田さん不勉強ですよ。本社では地方で作られた条例でも他県の人に影響するようなものがあれば工場や支社に通知を出します。支社の総務宛に来るのですが、私は全部署に回覧しています。
支社規で決めています。ええと支社規3329ですよ、ハイ、ここにあります」

宮下 「その支社規のファイルは各部門にあるのですか?」

太田総務課長 「今私が持っているのは支社規の決裁印のある原本のファイルです。これをpdfにしたものが支社のイントラネットにアップされています。
もちろん支社規を制定・改定するときは、事前に関係部署に確認を取り、改定時には全部門に通知を出しています。文書管理の支社規は…この支社規1109で決めています」

宮下 「なるほど、文書管理がしっかりされてますね」

五反田営業課長 「いやあ〜、太田課長 勉強になりました」

太田総務課長 「五反田さん、総務からの通知をご覧になっていなければ課長としては怠慢ですよ。回覧したものを総務でファイルしていて、営業各課長が見ているはずよ。
あなたも見ているはずだけど、もう何年も前だからその時の回覧記録は残っていないわね」

宮下 「ということは仕組みとしてはあるが、見逃したかもしれないし、お忘れになったのかもしれませんね。
それでは支社の建屋から出る廃棄物はどうでしょうか?」

二人のヒアリングを終えてから業務課長と交代し、業務課の仕事の進め方についていろいろ話を聞く。
その後、課長三人とともに事務所と建屋屋外を一周し駐車場を眺めた。屋外には暖房用に400リットルの灯油タンクを設置していた。防油堤や漏洩時の対策などを確認する。
会議室に戻ってから現場で見つけたことについて説明しその事実確認をする。


******

昼食休憩の後、宮下は五反田課長と車で10分ほどのところにある物流センターに移動する。そこはとんでもなく大きな倉庫でランプウェイも二つあり、 フォークリフト 多数のトラックが登り下がりしている。
スラッシュ電機は場所が決まっており、専属ではないらしいがスラッシュ電機担当という人がいた。
宮下はその担当者に仕事の内容をヒアリングしたが、特段変わったこともなく、請け負っている業務も一般的なことであり、現場確認しても整理整頓されており漏洩や可燃物の放置もなく終わりにした。

次にスラッシュ電機が間借りしている部分に行く。倉庫の一部にパーテーションで小部屋に仕切られているところがあり、その一室を借りているという。
入ると20坪ほどで二人の人がいて、10台ほどの電子機器を作業机の上に並べて点検なのか修理なのかしている。壁際にはそれらが入っていたと思しき段ボール箱が積んである。

五反田営業課長 「まあ、見たとおりです。ここでは検品とか修理作業をしています。
使用する電源は100Vだけで、製品も普通の家電品と同じで特段危険もありません。廃棄物といっても汚れ拭きにつかうウエスと手跡ふき取りに使うイソプロパノールくらいですかね。それもここにあるのは500mlビンが1本です」

男 「段ボール箱が痛んでいたりすると交換しなければならないけど、段ボールといっても型名もサイズも多々あるから、ここではそろっていない。だから工場に送り返している。
それから修理という言葉が聞こえたけど、今はしてないよ、五反田さん」

五反田営業課長 「あれ、そうかい?」

男 「長期保管品を出荷前に点検するだけで手いっぱいなので、お客さんから修理依頼されたのはすべて工場に送っている」

五反田営業課長 「それって保管品が多すぎるんじゃないの。在庫管理が悪いのかなあ〜」

男 「いや7年前にここに来てから販売量は倍増している。それでも東日本大震災後は被災した工場再建でPLCなどがジャンジャン出たが、今はだいぶ減ったな」

五反田営業課長 「販売台数が倍なら在庫も倍ってことはないよ。どこか変だなあ〜」


******

見るところもなく1時間も経たずに審査を切り上げた。特にここでは問題はないと五反田に口頭で告げる。
五反田に仙台駅まで送ってもらう。
予定よりだいぶ早いので、スマホで2本前の新幹線に予約を変える。幸い指定が取れた。
早いところ青森について、向こうでゆっくりしたい。

電車の指定席の変更がスマホでできるようになったのは便利だが、これが一般化すれば次に来るのはみどりの窓口の廃止だろう。そうなると老人や滅多に電車の指定席予約などしない人は、窓口がなくなると困るだろうなと宮下は思う。

JRがみどりの窓口廃止を方針を出したのはこの5年後の2021年である。昔は銀行のカウンターには養鶏場のように女性銀行員が並んでいたが、今はいない。そのためにATMの前でウロウロする老人が増えた。それが駅の自動券売機でも再現されるのだろう。

東北新幹線

新幹線の中で宮下は今日の審査を振り返る。
審査員になってから10数年、初めの頃は規格要求事項を満たしているかどうか、必死で文書や見たことを照合していた。やがて規格要求事項を実現するにも多様な方法があると認識した。

呼び名一つとってもISO規格と同じなんてありえない。薬品製造メーカーでは内部監査を自己点検と呼んでいる(cf. GMP)。それをわざわざ審査員のために監査と名前を変えている。
予防処置と是正処置と処置を呼び分けている会社は少ない。ひっくるめて是正処置と呼ぶところが多い。当時、是正処置と予防処置は違うから呼び方を分けなさいなんて語った自分を殴りたい。思い返すと恥ずかしく顔が赤くなる。
10年もしてやっと規格要求事項から証拠を探すのではなく、見たことから該当する規格要求事項を考えるようになり、今は見たことが変なのかを感じたらどの要求事項を満たしていないのか気づくようになった。歳はとっても自分は成長していると自負する。

とはいえそれは独学ではなかった。自分より年下で遅くに審査員になった三木の薫陶だと認識している。
宮下審査員
引退するときに一人前
になったというのは、
引退まで成長したとい
うことだ。
それって半人前のとき
一人前の金をとってい
たということだね
今回の審査のいきさつも聞いている。スラッシュ電機のISO審査で見逃しがあったらしく、取締役が呼び出されその責任を追及され、これからはしっかり審査しますと約束させられたそうだ。そしてまた、審査の進め方を項番順でなく完全にプロセスアプローチとすること、更に審査ではISO用語を使ってはいけないと要求されたと聞く。
既に契約審査員となった宮下が会社に行くことはめったになく、そのときの社内の状況は知らないが、審査で一緒になった審査員から、当時の社内の状況を聞かされた。社長以下、幹部が青い顔で会議・会議だったらしい。
先方は対応によっては品質環境センターに審査を依頼しているすべてを鞍替えすると言ったそうだ。工場や関連会社を合わせると、年間の審査料は1億まではともかく8千万くらいになるだろうか? 品質環境センターの売り上げは20億くらいだろうから、8千万は4%だ。少なくはない。
それも単に審査費用が高いとかでなく、審査の質の問題とうわさが流れたら大騒ぎだろう。社長が青くなるのはわかる。

そして今回の審査は名誉挽回の唯一の機会だと言われ、審査員を吟味したらしい。審査リーダーには品質環境センターのトップ審査員ともいえる三木に白保の矢が当たった。この人選に社内で反対する人はいないだろう。
そしてメンバーには、客先の評判が一番といわれる朝倉は当然として、自分も選ばれたのもうれしいことだ。
当初4人目は最上審査員の予定だったと聞くが、スラッシュ電機が忌避したらしい。彼は元から良い評判を聞かない。代わりに寒河江が入ったが、彼のことは良く知らない。しっかりやってくれれば良いが…
しかし三木も朝倉も自分も定年を過ぎた契約審査員とは、品質環境センターの人材育成は大丈夫だろうか。

北上市を通過する頃、宮下は舟をこぎ始めた。


うそ800 本日の思い出

青森市には監査で一回だけ行ったことがあります。まだ新幹線が全線開通する前だったので、羽田から飛行機で行きました。羽田と青森空港をバスで往復しました。ものすごい霧で飛行機は欠航しませんでしたが、バスが大幅に遅れた記憶があります。
わが生涯で一度だけの青森訪問でした。
青森市には行きたくありません。私は東北生まれですが雪と寒さは嫌いです。


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