*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但し引用文献や書籍名はすべて実在のものです。
研修生のアメリアは施設管理課に仮配属されたが、着任するとすぐ広報部に行ったきりであった。課長からは、広報部から今年のCSR報告書の発行までアメリアを貸してほしいと言われたと説明があった。
向こうでは残業や出張で忙しくしていたようで、施設管理課の人たちはアメリアをめったに見たことがない。それも7月末に脱稿、8月初旬に広報発表をして一段落したようだ。8月中旬から施設管理課に帰ってきた。
たまたま昨日、奥井が福岡に出張して、お土産に「通りもん」を買ってきた。というわけで今日の午後3時は、小会議室に課長を除く施設管理課のメンバーが、アメリアの広報部での活躍を慰労する会を催した。いやいや単なるお茶会である。
なお課長の鈴木は業界団体の会合でお出かけである。鬼の居ぬ間の洗濯は、洗濯機が普及しても不滅である。
環境施設課のメンバー | |||
★ご尊顔★ | ご芳名 | ★年齢★ | 職務 |
鈴木 正信 | 48歳 | 課長…今回は欠席 | |
山下 一郎 | 51歳 | 公害担当 | |
磯原 晋作 | 37歳 | エネルギー担当 | |
奥井 正和 | 35歳 | 廃棄物担当 | |
アメリア・吉本 | 25歳 | 研修生 | |
柳田 ユミ | 41歳 | 庶務担当 |
「グループで目的を共有して、編集企画から始まり、取材、コンテンツの作成……印刷して広報発表までするって、やはりモチベーションが上がりますし仲間意識ができて楽しいですね」
「確かに、うちの職場は仲が良いと思うけど、仕事がひとりひとり違うから、共同して何かを成し遂げるということはないわね」
「広報部って報告書だけでなく、不祥事のお詫び会見もあるだろうし、いろいろ大変だね」
「私のいたグループはCSR報告書だけで、そういうのに参加しなかったわ。
おっしゃるようにほかの人たちは、6月の株主総会とか、新製品発表とか、そのほか突発的なことも多かったみたい。
奥井さんのいう不祥事もいろいろよ、環境ばかりじゃないの。私がいた間だけでも、残業時間で労働法違反とか、子会社の脱税疑惑とか、そうそうISO認証の一時停止もあったし、まあ華やかでない仕事のほうが多いようね」
「組織変更前、環境部があったときは環境報告書って名称だったけど、今はCSR報告書っていうの?」
「CSRっていうと環境より範囲が広いんだろう。環境情報だけでは今の世の中では不十分ってことなんだろうねえ」
「環境以外って何があるの?」
「CSRとは企業の社会的責任の略だから、守備範囲はものすごく広い。企業のガバナンス、人権、労働、消費者問題、コミュニティへの責任とか。
昔ケネディ大統領ってのが消費者の権利を唱えたそうだけど、今じゃ社会的要求は多岐にわたるから大変だよ」
「メセナとか」
「セクハラもありますよね」
「そうそうセクハラとかパワハラとか性差別とか、昔なら考えられないね」
「なるほど、そういうことをしっかりやってますよって広報するのがCSR報告書なのか」
「でもさ、昨年まで環境報告書は株主総会に配布していたけど、今年から株主総会に配るのを止めて、発行を6月から8月にしたから、納期的には楽にはなっただろう」
「以前がどうなのか私は知らないけど、3月末までのことを7月末までにまとめるというのは期間が短くて大変よ。もちろん6月発行のときはなおさら大変だったでしょうけど」
「何月に発行したとしても、報告対象の期間を前年4月から今年3月までにこだわることもないように思うけどね」
「アメリカ政府の会計年度は10月はじまり9月締めだけど、企業の会計はそれにこだわらない。そして環境報告書の報告期間は会社の会計年度とも違いいろいろ。まして環境報告書の発行は数か月ずれるわけで、バラバラよ。
日本では報告期間は政府の会計年度と合わせて、年度明けすぐに発行するのかしら?」
注:アメリカで会計年度と環境報告書の対象期間についてなにか規制があるのか知りません。私がアメリカ企業の会計年度と環境報告書を見た限りではいろいろでした。
「日本では廃棄物の報告も電力の報告も、会計年度に合わせているからなあ。習慣だからというだけでなく、1月から12月にしたら数字が行政報告したのと異なるのも好ましくないし…」
「なるほど、それならきっぱりと、報告書発行を10月くらいにしてしまうほうがいいのかな?」
「そんなに遅く発行しているところあるのかしら?」
「ISO認証機関のJQAは認証機関にしては珍しく毎年CSR報告書を発行しているが、発行は10月だったね。
上期中が難しいなら、余裕をもってそれくらいの時期にしたほうが正解かな」
「10月発行でも対象期間は4月から3月ですか?」
「そうだ。まあ前年度の実績を把握するだけでなく、結果を吟味し対策まで考えるとそんなものかもしれないね」
「でもそれっておかしいわよね、私なんてここの部門費の消費状況は常時把握しているわ。年度末からだいぶ経ってからやっと分かるとしたら、管理してないことじゃない」
「そういっちゃそうだが……まあ、毎日帳簿をつけていれば棚卸がいらないわけでもないし、部門費よりは世の中複雑なことが多い」
「どこだっけかな? 環境報告書は文字だけにして、エネルギーや廃棄物などの数字は毎月の実績をウェブサイトに表示している会社もあったわね。今の時代はその方がいいのかな?」
「発行時期はともかく、日本では環境報告書とかCSR報告書って、どんな使われ方をしているんでしょう?」
「工場では毎年発行されると職場回覧するんですが、私は見もしませんでしたね」
「俺も読むのは自分担当の公害関係だけだね」
「まあそれはちょっと……外部の人はどうなんでしょう?」
「まず株主総会で配る、主要な取引先に送る、業界各社に配る、出版社に広報発表をする、そのほかは要求があれば郵送、今はネットにpdfであげるから、送付依頼はだいぶ減ったわね」
「欲しいというのはどんな人ですか?」
「昨年まで発行部門が環境部だったから、外部から冊子を送ってほしいという依頼は私が受けていたの。9割は大学生でしたね。卒論とかの資料にといってました」
「投資とか就職などに活用されていないのでしょうか?」
「投資? 投資に環境報告書を参考にするのですか? いや参考になるのでしょうか?」
「えっ、磯原さん、投資するときその会社の環境活動を調べないの?」
「株なんて買ったことないですよ」
「僕もない。ここにいる方で投資なんてされている人います?」
「俺が持ってるのは
「出たな!東北弁」
注:膝のことを
「俺は妖怪じゃねえぞ」
「私も株なんて全然、ただ純金積立をしてるわ。金は時代とともに値上がりするから、預金よりは間違いなく良い」
「うわー、ユミ姐さん、オカネモチー」
「昨年から金相場は大きく下がっているぞ
「だって銀行も郵便局も100万円で1年間の利子が10円。まして休日に引き出しすると手数料1回110円、もうマイナス金利よ。でもタンス貯金は盗難の危険もあるし、だから純金積立のほうがタンス貯金よりは良いと思っているの」
「投資ではないですが、僕は2010年に結婚しました。当時は民主党政権で1ドル75円とかものすごい円高だったでしょう。そのとき換えたドルが残ったままで、昨年1ドル124円とか125円のときに両替してぼろ儲け、ハハハ」
「それを計画的にすれば外貨預金とかトレーダーね」
「リーマンショックのときはボーナスも吹っ飛ぶような時代だったから、今になって儲けてもトータルでどうなんだ」
「そう言えばそうですが、儲けたのは事実ですから良しとしましょう」
「みなさんは株を買ったりしないの?」
「アメリアさんは株を買うの?」
「両親も売買してるし、周りがみんなそうだからね。そのほか住むためでなく貸したり値上がりを見込んで不動産を買ったりしているし、投資は身近なことだわ」
「なるほどねえ〜、国が違うと当たり前が違うんだ」
「悪いとは言わないが、そういう性向だから、大恐慌とかリーマンショックが起きるんだよね」
「確かに……でも低金利というかゼロ金利が何十年も続いたら
「経済問題はともかく、アメリアは投資しようとするとき環境報告書を参考にするの?」
「そりゃもちろん。その会社が環境に配慮しているかどうかってことは気にするわ。なにしろ遠い国で製品を作るのに年少者を使っていると報道されると、株価どころかボイコットに発展する国ですからね
「アメリカの環境報告書の中身も日本とは違いますか?」
「記載していることより一番の違いは熱意でしょうね。アメリカの環境報告書を読むと分かるけど、我々はこんなことをしているんだ、知ってほしいという気持ちが、ひしひしと伝わってくるの。
日本の環境報告書は決まった形があって、そこに数字を書き込んだけみたい」
「環境報告書のガイドラインってのがあるのは知ってるでしょう。それにこだわっているんだろうね」
「いえいえ私が言うのはそういうのではなく、ええと社内のプレゼンなら注目を集めるように、思いが通じるように、いろいろ工夫して相手の共感を呼ぶ……そうするでしょう。それが感じられないのよね」
「分かります、分かります。私は英語が得意じゃありませんけど、興味があってときどきIBMなど有名企業の報告書を眺めてます。アメリアさんの言うパッションを感じますよ。言い方を変えると自己顕示欲が強いともいえるけど。
日本じゃ大学生が参考に読む程度だから、盛り込む内容と数字さえあれば、あまり表現にはこだわっていないのかな?
投資とか就職の参考にされるなら文章を書くにも熱意が違うのだろうけど」
「他社の報告書をたくさん読んでいて、笑っちゃうことがあったわ」
「そりゃ、なんだろう?」
「環境方針の文句がISO規格通りなんですもの。だからA社もB社も中身は同じで、違うのは社名だけ」
「アハハハ、分かりますよ、あれには笑っちゃいますよね。
私も毎年環境方針カードなんてものを配られ携帯するようにと言われてたけど、あんな文章恥かしくて読みたくもないし見せたくもないですよ」
「アメリカの会社の環境方針ってどんなものなんですか?」
「まずISO認証そのものが少数なのですが、ISO認証している企業でも規格通りの書き方なんてのはありません。
どこの会社だって創業の理念があるわけだし、経営トップやCSOの環境に対する思いもそれぞれ違うでしょう。だから環境方針は会社によって、内容も形式もさまざまですよ」
注:環境担当役員の略語はCSO(Chief Sustinability Officer|最高サステナビリティ責任者)としているのが多いようだ。CEOはChief Executive Officerがあるからダブリだ。
注:ISO認証件数は日本が異常に高いことを認識してほしい。以前の回で掲示したものですが参考までに再掲。
ISO9001 | ISO14001 | |||
件数 | 人口100万当たり | 件数 | 人口100万当たり | |
アメリカ | 33,051 | 103 | 6,064 | 019 |
日 本 | 46,968 | 370 | 25,990 | 204 |
「そういう環境方針ですと、ISO審査でトラブることはないのですかね?」
「ああ……日本はISO規格通りでないと審査でノンコンフォ−ミティになると聞きました。それもおかしいですよね」
注:後述するIBM社の環境方針は全世界のIBMを一括でBV社が認証しているから、実際問題として不適合ではないのは間違いない。
正式社名でないなんて語る審査員にIBM社の環境方針を煎じて飲ませたい。効果覿面だろう。
「まあ現実問題として、ISO審査でトラブらないためには、大学の試験と同じく模範解答を書くしかないからね。社長の思いを方針にしても、審査員にいちゃもんつけられるだけだ」
こういうことを書くと、どこぞの審査員から「そんな話は聞いたことがない」とか「私の同僚にはそんなアホはいない」なんて、抗議というかご指導メールが来ることを予想する。いや、過去には何度もそういうメールをいただいた。
一度は以前相まみえた審査員ご本人から抗議メールをいただいたことがある。審査ではご当人から「環境方針の中の組織名が登記された通りでなく、ローマ字の略称であるのが不適合」と言われた。
その環境方針のタイトルに「○○社環境方針」と社名が書いてあったのだが、方針の中に略称が使われたのがまずいそうだ。
罪刑法定主義って知ってるかい? 駄々こねのような不適合を言われても困りますよ。
オイ、審査員、お前がオープニングで使ったパワーポイントには、登記した認証機関の会社名でなくアルファベットの略称が書いてあったじゃねえか(笑)
残念ながらそんな話はザクザクある。
「すると環境方針も環境報告書も教科書通りというか形式通りに作るしかないのですか?」
「ISO規格では様式も形式も要求していません。ですけど審査員が硬直した考えだから、もめるのが嫌な日本人は相手に合わせているのですよ。
最近流行語になった忖度ですよ、忖度
磯原はいろいろなことが頭に浮かぶ。日本のISO14001対応の環境方針といえば、どこも金太郎飴の紋切型だ。
某機械メーカーの環境方針の実物(2019)
当社は産業用機械の各種部品の設計・製作を行ない、社会と環境改善に貢献しているが、この生産活動に使用するエネルギー・原材料の消費、廃棄物の排出によって環境に負荷を与えている。当社はこの環境方針に基づき環境活動を推進する。
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これは2004年版に合わせて作ったものとみられる。おっと、別にISO規格が改定されても企業の方針をそれに合わせる義理はない。というか、そもそも方針をISO規格に合わせる義務もないのだ。
ともかくISO14001の2004年版では環境方針についての要求事項は次の通りであった。
上に示した某社の方針の書き方はISO規格をなぞっているだけだ。そこにはその会社特有のなにかはないのか?
しかもなんで環境方針を文書にするとか、一般の人が入手できるようにするなんてのが「方針」に入っているんだ?
規格に書いてあるからだって!
そんな理由で社長の言葉を汚したらいかんぞ、
某ISO認証機関の環境方針(2022)
わたしたちは、当社の基本理念に基づき、以下のとおり環境方針を定め、全員参加で環境管理活動に取り組みます。
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千葉大学環境エネルギー方針(2022)
わたしたち人類は、産業革命以来、大量の資源エネルギーを用いてその活動を発展させてきました。その結果、地球の温暖化、化学物質汚染、生物多様性の減少など、さまざまな環境問題に直面しています。まさに、人間活動からの環境への負荷によって人類の存続の基盤となる環境がおびやかされています。 また、国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、だれひとり取り残さないという考え方のもとで、環境・社会・経済の課題を同時に解決する努力を続ける必要があります。われわれは、こうした世界の現状及び将来に対して、英知を結集させ、教育・研究機関として行動し、社会に貢献していきます。 このため、とくに次の事項を推進していきます。
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環境に関する方針
IBM の企業環境ポリシーは、IBM の最高経営責任者 (CEO) である Thomas J. Watson, Jr. によって 1971 年に最初に発行され、その最初のリリース以降、何度か更新されています。ポリシーは、IBM のグローバル環境管理システムの一部として定期的に見直され、すべての更新は IBM の CEO によって発行および承認されます。IBM の環境パフォーマンスは、IBM 取締役会の取締役 & コーポレート ガバナンス委員会によって毎年見直されます。この委員会は、環境保護を含む、企業の公共的責任に関する重要な問題に関する会社の立場と慣行を確認し、検討する責任があります。 IBM は、すべての事業活動において環境問題のリーダーシップに取り組んでいます。IBM は、安全で健康的な職場を提供し、環境を保護し、エネルギーと天然資源を保護するという長年にわたる企業ポリシーを持っており、これらはそれぞれ 1967 年、1971 年、1974 年に正式化されました。これらは、長年にわたって環境と当社のビジネスに貢献しており、次の企業ポリシーの目的の基盤を提供しています。 安全で健康的な職場を提供し、担当者が適切に訓練され、適切な安全および緊急装備を備えていることを確認します。 当社が事業を行っているコミュニティで環境に責任を負う隣人になり、健康、安全、または環境を危険にさらす事件や状況を是正するために迅速かつ責任を持って行動します。それらを当局に速やかに報告し、必要に応じて影響を受ける当事者に通知します。 材料の再利用とリサイクル、リサイクル材料の購入、およびリサイクル可能なパッケージやその他の材料の使用により、天然資源を保護します。 使用目的に対して安全で、エネルギーを効率的に使用し、環境を保護し、安全に再利用、リサイクル、または廃棄できる製品を開発、製造、販売する。 環境に悪影響を及ぼさない開発および製造プロセスを使用します。これには、廃棄物を最小限に抑え、大気、水、およびその他の汚染を防止し、健康と安全のリスクを最小限に抑え、廃棄物を安全かつ責任を持って処分するための運用と技術の開発と改善が含まれます。 エネルギーの節約、エネルギー効率の改善、可能な場合は再生不可能なエネルギー源よりも再生可能エネルギーを優先することを含め、ビジネス全体でエネルギーの責任ある使用を確保します。 世界中の環境保護と理解を向上させるための取り組みに参加し、適切な汚染防止技術、知識、方法を共有します。 世界中の IBM 製品、サービス、および専門知識を活用して、環境問題に対するソリューションの開発を支援します。 該当するすべての政府要件および IBM が加入している自主的要件を満たす、または上回ること。会社が世界のどこで事業を行っているかに関係なく、独自の厳しい要件を設定し、遵守します。 IBM の環境管理システムとパフォーマンスを継続的に改善し、定期的に一般向けに進捗レポートを発行するよう努めます。 この方針に対する IBM のコンプライアンスの厳格な監査と自己評価を実施し、IBM の環境問題のパフォーマンスの進捗状況を測定し、取締役会に定期的に報告します。 IBM 敷地内のすべての従業員およびすべての請負業者は、このポリシーに従い、環境、健康、または安全に関する懸念を IBM 経営陣に報告することが期待されています。管理者は迅速な対応を期待されています。 |
NRIグループ環境方針
行動指針 1.低炭素社会構築に向けた社会提言と先進的・革新的サービスの提供 気候変動による影響の軽減や低炭素社会の構築などに向けた社会提言と、その実現に資する先進的・革新的サービスの開発・提供に努めます。 2.定量目標の達成に向けた活動 気候変動の影響を抑えるために、 2030年度までにグループ全体の温室効果ガス排出量(Scope1+2)の実質排出ゼロを目指します。事業活動のライフサイクル全てにおいて、エネルギー利用の効率化を図り、再生可能エネルギーの利用促進に努めます。 3.環境マネジメントシステムの構築・運用 環境マネジメントシステムを構築・運用して、目標の達成状況を定期的に評価し、継続的な改善を進めます。環境へのリスクと機会を考慮した環境側面に対し、改善に向けた目標を設定し、毎年見直しを行います。 4.持続可能な社会づくりのための対話と情報開示 社会からの要請の把握やステークホルダーとの定期的な対話を踏まえ、地球環境問題の解決に取り組み、持続可能な社会づくりに貢献していきます。また、環境に関する自社の事業活動やサービスについての情報を開示し、それに対するフィードバックを取り込んで、改善に活かします。 5.環境教育・地域貢献活動の推進 地球環境問題に対する意識・理解を高めるために、グループの役職員及び取引先への教育や啓発活動を推進します。グループの役職員ひとりひとりが、自発的に行う環境保全活動や地域貢献活動などを積極的に支援します。 6.環境法令等の遵守 世界各国並びに日本の環境関連法令、地域の条例・協定、ステークホルダーとの合意事項等を遵守し、適切な対応を行います。 |
磯原は思う。日本のISOは確かに変だ、変なのだがどこが変なのか、どうして変になったのか、そしてどうして誰も変だといわないのか?
余計なこと、意味のないことに労力を使い、真に重要でやるべきことをしていないのはどうしてなのか?
まあ審査員にいちゃもんを言われるからというのは回答であろうが、それならなぜ反論しないのかという疑問が起きる。ましていちゃもんが正当な要求でないなら拒否しても良いのではないか。
注:ISO14001:2015の環境の定義3.2.1では「(前略)人及びそれらの相互関係を含む(後略)」とあるから、人間関係も入ると考えられる。
そもそも…ISO14001の意図は「遵法と汚染の予防」だったはずだ。
メセナ、里山保全、子供たちへの環境教育、それらはどのように「遵法と汚染の予防」につながるのだろう?
もっとも磯原がそう考えられるのは、ISO第一世代の山下たちの苦労を知らず、売り手市場だったISO認証もすでにピークを過ぎ、認証機関と受査企業の力関係が変わったからだとまでは思い至らない。
「磯原さん、急に黙り込んでしまいましたけど具合でも悪いですか?」
「あっ、そうじゃないんです。先ほどISOがおかしいよねって話が出ましたね。私は今まで自分が中心になって活動したことはないのですが、脇で見ていていつもそう感じていました。
本社に来て、本社のISOの担当と工場のISO支援を仰せつかりましたので、今の話を聞いてどうすべきかと考えていました」
「私もISOなんて関りがありませんでした。もっともアメリカではISO認証はとてもマイナーですけどね。
でももしISO規格の本来の意味が伝わってないためなら、私が英語を解説しますから一緒に考えませんか」
「ISO規格は日本語に訳されてJIS規格になっていますが、これが英語以上に難解でして、アハハハ
アメリアさんに原文の真の意味とかニュアンスを教えてもらえばありがたいです」
「私も今後アメリカでISO認証を考えようかと思っていたのです。面白そう」
「ついでにアメリカ流の環境報告書なるものを社内に教えてくださいよ。それをしなくちゃアメリアさんがこちらに来た甲斐がありません。ついでに投資にどう活用するのかも…」
本日の疑問
ISO審査で不適合が多く出る項番はあるが、環境方針の項番もいちゃもんが付きやすかった
環境方針の議論は、規格の言葉が盛り込んでないということがほとんどだ。審査員たちはISO規格文言を金科玉条として、一語一句違うことを認めないことに固執していた。想像だが法律も公害防止技術も知らなくても、不適合を出しやすいからだろう。
でもさ「『枠組み』という言葉が方針にない」とか「組織の目的が『組織の状況に対して適切』なことを説明しなさい
そんなことを語った審査員たちは、真面目にその質問が適切だと考えていたのだろうか?
それとも素面ではなかったのだろうか?
注:固執を「こしゅう」と読むのか「こしつ」と読むのか実は自信がなかった。
ネットとか辞典をみたが、辞典やネットでは大半はどちらもOKであった。明治以前に「こしつ」と読んだ例はなかったと記載があるものもある。NHKでは「こしつ」と読むことにしているそうだ。
固執とは「意見や考えを曲げないこと」なのだから、「こしゅう」と読むのがあるべき姿なのか(笑)
本日のお話を読んで、磯原が迎えるISO審査が楽しみだと思われた方、今しばしお待ちください。
私の意見に異議ある方がいらっしゃいましたら、苦情、抗議をお待ちしております。
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注1 | ||
注2 |
アメリカの金利の推移を見たら、預金する気がなくなるのは当然だ。 ・アメリカ政策金利の推移と長期データのダウンロード方法 じゃあ日本ならとなると、もっとひどい! ・日本銀行公定歩合の推移 このグラフを見て預金する気はおきないだろう。しかし私が子供時代の1960年頃は先生に、社会に出た1970年頃は上司に、しっかり働いて貯金しろと言われたものだ。そう洗脳された身としては、投資はなんだか怖いのである。 | |
注3 |
嚆矢となったのは、1997年のナイキの児童労働問題といわれる。このときは同社が製品の製造を委託するインドネシアやベトナムなどの東南アジアの工場で、児童労働や劣悪な環境での長時間労働などが問題視された。その後もブランド品の製造などで抗議行動が起きている。 日本でも高校生アルバイトは、要件を満たさないと年少者労働問題である。下手すると、日本は子供を奴隷にしているなんて言われるかもしれない。李下に冠を正さず、十分注意しよう。 | |
注4 |
忖度が流行語大賞になったのは2017年であり、このお話は2016年であるが、あまり細かいことに目くじらを立ててはいけない。 | |
注5 |
ISO14001の審査でどの項番が不適合が多いのかをまとめたものを見たことがない。私が現役時代に手当たり次第にデータを集めてまとめたものがこちら 規格改定前だが、環境側面、目的目標、力量、是正処置、内部監査などが多い項番だった。理由は簡単だ。専門知識がなくても文書を見ただけで不適合を見つけやすいからだ。 | |
注6 |
そもそも「環境方針が組織に対して適切か否か」をどのように評価し判断するのかということは、初版制定時にも2004年改定のときもTC207 SC1で議論になったという。 ISOTC委員が分からないなら、審査員にわかるはずがない。 「ISO14001:2004 要求事項の解説」吉田敬史・寺田博、日本規格協会、2005,p.71 |
誤りでは? 「投資ではないですが、僕は2010年に結婚して新婚旅行は海外でした。民主党政権のときものすごい円高になったでしょう。そのとき換えたドルが残ったままで、その後2007年1ドル120円だったのが2011年75円ですよ。あのとき両替してぼろ儲け、ハハハ」 大損したのでは?? |
ギョエーーー
いやぁ、おっしゃる通りです。 当時、娘が海外旅行に行って残金を残しておいて儲けたわ💜 と語っていたのを覚えていたのですが、あれは震災前の2010年頃に海外に行って、その後2015年頃に円に両替したということであったか! ええと、重大な間違いでありますが、つじつまを合わせようとすると奥井さんの結婚を3年遅らせて2010年にして、円に戻したのを2016年にすると、この物語のときとなりますが……奥井さんが29歳の時結婚したことでも年齢的におかしくないか? 以上検討の結果、修整します。 立民支持者様、ありがとうございました。そしてすみません |