ISOサーベイ2021

22.10.17

ISO認証のデータというと、国内はJABのウェブサイトでJAB認定の認証件数の最新状態が見られる。ノンジャブは公開されているデータがない。というかノンジャブを取りまとめる機関がないのだろう。ただ数年に一度のようだが、JABが調査した日本のJAB・ノンジャブの認証件数が公開されているようだ。

審査員登録者数はCEARは業務をJRCAに移管した2019年までは表示していたしJRCAもデータも20世紀は表示していた。だが審査員登録がJRCAに一本化された現在では、何人いるのかいないのか分からない。機密情報なのだろう。
ともかく日本国内で公開されているISO認証関係のデータが少ないのは事実である。

では世界のデータとはとなると、ますます情報がない。唯一といえるのが毎年公表されるISOサーベイであるが、それも各国のISOMS規格ごとの認証件数のみである。その報告の信頼性はものすごく低そうだ。
ISOマークではない
うそ800
USOマークだ

それでいてサーベイ(調査)なんて自称するとは傲慢不遜。せいぜい認証件数くらいに言うべきだ。

サーベイというならもっと多様な切り口でのいろいろなデータがあってしかるべきだ。例えば国別の審査への苦情や異議申し立てとか、認証機関の認定取り消しとか審査員資格取り消しあるいは更新拒否の状況とかを知りたいよ。苦情が多い、認定取り消しが多い、審査員資格取り消しが多いという国があれば、その国の認証制度はしっかり運用されていると信じることができる気がする。
まあ、ないものねだりをしても仕方ない。


ISOサーベイは、以前は9月上旬頃に発表されていたが、最近はだんだん遅くなっている。2022年は9月末だった。まあ借金の支払いじゃないから遅くても困るものでもない。いずれにしても見なければ死んじゃうわけでもなく、ないと困るものでもない。
とはいえ以前も書いたが、単に国別の前年末の認証件数を集計するだけで9か月もかかるというのは不思議極まる。

ISOは日本の総務省統計局に指導を仰ぐべきだ。我が国の国勢調査結果の公報は、人口だけなら4か月後、速報は8か月後、すべての結果でも1年後だ。日本の人口は1億3千万人、ましてや調査項目が40近くある。対してISOサーベイは、全世界の全MS規格認証件数は84万件しかないし、調査項目は件数しかないのだぞ。


ともかく例によって認証件数の推移を見て考えよう。
2018年に集計方法が変わったので、それ以前との連続性がなくなった。ところが今回のISOサーベイ2021ではそれ以上に前年との乖離が激しい。なんとISO9001が12%増加、ISO14001が20%増加している。こんなに増えたのは、認証が始まった直後だけだ。これでISO認証ビジネスは安泰と安心できるのか、それとも数字のマジックなのか?

ISO surveyの「説明ノート」という書面で、前回より認証件数が大幅に増えたことを「これは中国での増加だけでなく、最後の箇条書きで詳述した調査への参加の増加にも起因している」とある。
ということは昨年までの調査は不確実だったということだ。1年前と1割も2割も誤差があるのでは、過去との比較や推移を考えてもしょうがない。ISO survey(調査)ではなくISO hazy(朦朧)とかISO vague(あやふや)とでも名称を変えたほうが良いだろう。

とりあえず誤差を気にせずに、全世界と日本のISO9001/ISO14001の認証件数推移を見てみよう。

全世界と日本の認証件数推移
注1: 全世界は左目盛り、日本は右目盛り
注2: 2018年に縦線があるのは、それ以前/以降ではデータの集計方法を変えたそうだ。どう変わったのかは公表していない。

ISOサーベイ2021では、「今まで報告していなかった認証機関からも報告がありそれを含めた」とある。
それがほんとかどうか分からない。グラフを見るとISO9001全世界(灰色)とISO14001全世界(緑色)を見ると、2018〜2020年までを無視して、過去から2017年までの傾向で線を伸ばしたのとなぜかピッタリ合う気がする。しませんか?

アルフレッド・ウェゲナーではないが、その辺になにかあるのか気になります。
ISO認証とプレートテクトニクスは関係ありませんが、なぜかピタリのような……いや、他意はありません(棒)


さてISOサーベイでは認証件数が増えているとあるが、どのようなところが増えているのだろう?
昨年ISOサーベイ2020を書いたとき、中国が増えただけでそれ以外は増えてないと書いた。
冒頭でも述べたが2021年は2020年に比べて、全体で12%とか20%増えたというが、どの国が増えたのか?

中国を除いた主要国のISO9001/ISO14001認証件数推移
主要国のISO9001認証件数
主要国のISO14001認証件数

ISO認証の主要国の認証件数推移をみると、2020から2021年の1年でISO9001が10.0%、ISO14001が12.5%である。
大きく増加しているといえるのはISO9001では日本とイギリスであり、増加しているといえる国はない。
ISO14001では、これまた日本とイギリスであり、増加しているといえるのはイタリア、スペイン、韓国である。

だが、日本でISO認証件数が大きく伸びているとは驚きだ。本当だろうか?
どう考えても日本で2020から2021年の1年でISO9001が12.6%、ISO14001が12.3%増加というのは信用できない。私の周りでそれほどISO認証しようという人を見かけない。今時QMSやEMS認証にそれほどドライブがかかっているとは思えないのだ。
JAB認定の数を見れば、それぞれ▲2.5%、▲2.4%減なのである。計上されていなかったものを加えたとあるが、それほど遺漏があったのか? これは分からない……が、信じられない。

ともかく主要国の認証件数はISOサーベイ2021によると、増えているところもあるが、あまり増えていないとしか思えない。

おっと忘れていた、上記の線グラフは中国を除いていた。では中国とそれ以外の国に分けて認証件数の推移を見てみよう。
ISO9001でもISO14001でも、中国の増加は著しく、中国以外の国の認証件数の伸びを引き離している。中国の2020から2021年の伸びは、ISO9001は31.5%と29.4%と驚異的だ。それぞれ中国以外の増加率の3.2倍、2.4倍である。

ISO14001世界と中国の認証件数

上のグラフを見ても中国が占めるISO認証の割合はどんどん増えている。その実数は下記の通り(出典:ISOサーベイ2021)。

MS規格地域2018年2019年2020年2021年
ISO9001全世界878,664883,521916,8421,077,884
中国295,703280,386324,621426,716
中国以外582,961603,135592,221651,168
ISO14001全世界307,059312,580348,473420,433
中国136,715134,926168,129217,592
中国以外170,344177,654180,344202,841

MS規格地域2018年2019年2020年2021年
ISO9001中国34%32%35%40%
中国以外66%68%65%60%
ISO14001中国45%43%48%52%
中国以外55%57%52%48%


中国の認証件数シエア推移

なんとISO14001は認証件数の過半は中国である。このグラフを見ればISOMS規格は、中国のためにあるように思える。いや言い方を変えると、OECD加盟国などはISOMS規格の認証など気にもしていないようだ。

さて、これを見て何が考えられるのか?
ISO認証とは開発が遅れた国において意味があるのか? ブランドイメージや品質に対する信頼性が低い国が輸出するときに必要なのか? 環境法制が整っていない国において役に立つのか?
どうもあまりありがたみがあるようには思えない。


ところで昨今はどんどんとISOMS規格が大量生産されている。数多いことを十指に余るというが、
手手
ISOサーベイでは16種類のMS規格が載っている。正直私の知らないものもある。まもなく足の指を使っても足りなくなるだろう。
ではニュータイプ、ニューモデルの売れ行きはどうなのだろう? きっと売れて売れて困っているのではないか……などと思うわけがない。

中身を見れば、老舗のISO9001が55%、ISO14001が21%で合わせて76%である。三位がISO45001の15%、4位が……なくてその他13種類を合わせて8%である。
今のところISO45001つまり労働安全衛生マネジメントシステムが期待の星だが、毎年数パーセント伸びたとしてもISO14001の代わりになるにはあと数年かかるだろう。それに日本のように伸びてない国もあるし……大変だなあ(鼻ホジ)

ISOMS規格はたくさんあるが、そのシエアは著しく偏っている
各MS規格認証件数シエア

ISO9001とISO14001という老優ふたりに頼るしかないのが現実のようだ。鳴り物入りのニューフェイスはどうしたんだ?


うそ800 本日のまとめ

さて、ISOサーベイ2021を見て何か言えるかとなると、数字の連続性がなくて論評するのが難しい……というか元々の数字が信頼できないから何とも言いようがない。
まあISOMS規格は中国だけが活用しているようだ。先進諸国には無用なのかもしれん。

毎年ISOサーベイについて書いている。お暇なら過去のものもお読みください。
ISOサーベイ2020
ISOサーベイ2019
ISOサーベイ2018




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