ISO事務局講座 その8 2006.12.17

サラリーマン心得
私の商売柄ISO関係者と話をしたり事務局の内輪話をよく聞きますが、愚痴が多いですね〜
愚痴! ISO事務局に限らずプロフェッショナルサラリーマンたる者が、愚痴なんか口が裂けても言っちゃいけません。
42×158 サラリーマンが酒を飲むと、上司の悪口をいうというのが定番だそうです。私はサラリーマン暦40年になりますが、いまだかって酒を飲んで上司の悪口を語った覚えはありません。いつも仕事をいかに改善するかといったことを熱く語っておりました。今でもですが・・
年寄りが熱意を持ちすぎると、若い者が迷惑します。

誤解のないように、私の上司はすばらしい人ばかりだった、なんてことは全然ありません。私が社会人になってから今まで、直属上長と呼ぶ立場の人は勤め先が変わったのも含め、指折り数えて16人になります。2年半に一人というわりでしょうか。もちろんこの中にはこの人のためなら身命を捧げようと思った方もいましたが、もう、どうしようもないアホも何人もいました。
でも、酒を飲んだときにまでそんなアホの悪口を語っていては、せっかくの酒もまずくなってしまうではないですか。
おっと、そんなアホを教育してよき上司にしようなどと向こう見ずなことを考えるのも、愚痴を語るのと大同小異です。
上司の悪口の次は、仕事が多忙だ、人がいないといったものが多いようです。
人がいない・・・そんなはずはありません。
ISO規格では資源を確保せよと明記しています。
man1.gif 人がいないなら、経営者の責任の項目で明らかな規格不適合であり、審査では即アウトではありませんか。 
本当にそうなら、事務局は隠すとかしないでリソースがないとはっきり言って不適合にしてもらうべきでしょう。そんなことを表に出さずに審査をやり過ごす体質こそが公害測定記録の捏造につながるのです。
本当に記録の改ざんにつながるかは確信がありません。
でも、真実を隠しウソを語る人が誠実とは思えません。
ISO規格では必要とする「資源」とは何かを規格の中で定めています。
人、技能、インフラ、技術、資金だそうであります。最近は情報も加えたようです。
先立つものは金といいまして、何をするにも金がなければはじまりません。
そしてその次にというべきか、一番というべきか、重要なのは人です。
だから、人がいなければ規格不適合そのものじゃないですか?
ISO事務局の嘆きをもっと正確に言えば、人間の形をしたものではなく、専門家がいないということのようです。
専門家といっても多種多様です。公害関係とかその他の資格者などは過去から会社にいるか、いない場合は嘱託あるいは違法すれすれで名義借りなどをしているはずです。そうでなけりゃ操業できませんからね。
話題になるのは法を理解している人のことのようです。特に環境ISOですと重要なのは法規制です。法規制を調べるのは門外漢に敷居が高いのは事実で「環境法規制の専門家がいない」なんていう嘆きが多いですね。言い方を変えれば、「私は環境法規制の専門家じゃない」ということなのでしょうか?
しかし、それは資源が投入されていないということなのでしょうか?
まあ、そうともいえますが、そうではないのかもしれません。
われわれが会社で仕事するのにそれぞれ自分を磨くというか、自己研鑽を図るのは当然でしょう。誰が見ても5人分くらいの仕事を一人でしろといわれれば、そりゃ無理だ管理者が悪いといえますが、二人分くらいの仕事ならやってやるぞという意気がなきゃだめです。
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法律を知らないからこの仕事には不向きですなんていうなら、会社辞めたほうがあなたのため、そして会社のためです。
法律を知らないなら勉強しなさい。今ではすべての情報がインターネットにあります。プリントアウトして通勤電車で読みましょう。

前に申し上げたように、法令つまり法律、施行令、規則をセットでプリントして読むことをお薦めします。
環境に関わる法規制は約150、毎週ひとつ読めば3年で完了!

読むべき法律には、印紙税法・建業法など一見環境と関係ないと思われるものも含む。
文章を読んだだけでわからなかったらインターネットに環境や法律の掲示板がたくさんあります。無料でコンサルしているホームページもあります。そういったところで質問するのもひとつの手です。しかし掲示板とかコンサルタントのホームページで質問しても回答が正しいかは保証されません。
それより確実な方法があります。
それは環境省や東京都など自治体の環境部局に問い合わせることです。どこでも親切に教えてくれます。そのくらいの前向きの姿勢、努力は会社員として当然です。
先日、CEAR主催のISO14001審査員の研修会に行ってきた。まあ、よくぞこれほどの環境の審査員がいるものだと驚いた。それより驚いたのは、法規制の説明のときに周りで「こんな法規制があったのか」とか「いやこの講習会はためになった」などという声がしたことである。(事実!)
そんな人たちがISOの審査をしているなら・・・良い審査は期待できない。
審査する人ならまだ許されるだろう。しかし、環境事務局として仕事をしている立場なら、法律を知りませんでした、違反してました、などとは口が裂けても言ってはいけません。
もちろん法律だけではありません。事務局業務の一環として文書を作成するなら、標準や規格の作成作法を知らなければなりません。文書管理とか文書作成という分野はISO9001や14001規格が作られる前から検討され、標準的な様式や書きかた、管理手順などは昔から定まったものがあったのです。
あなたは、会社規則の様式や条項のとり方などをどのように決めていますか?
JISにも製造標準の規格もありますが、会社の規則などの文書を作るには法律が大変参考になります。
法律の条項のとり方、関連する文書の引用の仕方、改定ルールなどを知って、それを援用して会社規則を作ることをお薦めします。法令のハイラルキーというのは良く考えられて作られています。条がいくつもの項に分かれるものと、項はひとつですぐに号のレベルに分かれるものの違い、あるいは本文中に書き込むものと別表(必ずしも表形式ではないのだが)にするものの違い、などすごく精緻です。
会社の手順書をそこまで極めることはないかもしれませんが、やはり文書体系とか書き方を突き詰めるとそういう形になってくるだろうと考えます。また、普段からそういった文書に慣れていると法規制を調べるのもラクチンです。
ISO事務局として会社を良くしよう、経営に寄与しようと真剣に考えると、文書管理ひとつとってみてもアウトソースなんてできないとわかります。
蛇足ですが、官庁や自治体からの通知を読みなれていると、その言い回しを社内の通知文の書き出しに使えます。
しかし面白いことに、これも省庁や県によって言い回しの特徴があるのですね。
このほかにも勉強しなければならないことはたくさんあります。
文書作成の前に、文章作成能力が必要です。
私たちは作家でもなく、詩人でもありません。会社員ならビジネス文書を書ければよいし、書けなければなりません。言い回しとか使う言葉には十分注意しなければなりません。
といっても、映画や宣伝のコピーのように、人に感動を与えようとか、末永く記憶して欲しいなんてことではない。判断した根拠とか文章間のつながりなどに注意しなければならないということです。
最近も監査報告書を添削しておりましたら「MSDSが掲示してなかった」というティピカルな不具合がありました。
誤解なきよう
「MSDSが掲示していない」のがティピカルな不具合ではなく、「MSDSが掲示してなかったと書いた監査報告書」がティピカルな不具合なのです。
「安衛法では掲示を求めていない。すぐに使えることを求めているんだ。MSDSがすぐに利用できなかったと書け」と言いましたら、「そのように考えて書いていたら一字書くのに一時間かかります」なんて真顔で言われました。
おまえ!月給もらえんぞ
womankomatta.gif おっと、もっとひどいのがありました。「内部監査において不適合の見逃しが複数あった。」という文章の次に「内部監査員教育は計画的に行っており、力量を持ったことを確認していることは良い。」とありました。
うーーん、こりゃ重症だよ
監査員教育という以前に、小学校からやり直さないといけないようです。
事務局に必要ないろいろな業務の技量、知識を得ることは、すなわちあなたの力量が向上することであり、仕事は速く、その質は良くなります。
ISO規格にあるのでどこの会社でも『教育訓練』なんて定めてしています。しかし、本当に必要な力量を持たせるための訓練とは絵に描いたようなバーチャルなものではないのです。
訓練以前に、業務遂行に必要な力量とは何か? 定義、レベルを確認していますか?
そして必要な力量と現有の力量の差分が訓練のニーズなのですよ。
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誰だって賃金が上がったほうがいい。昇給があった方がいい。
でも同じ仕事、同じ出来高では賃金が上がるはずがありません。
昨日よりは今日、今日よりは明日、より良い仕事をより速くできるようになって、はじめて賃金が上がるはずです。
私たちは常に能力開発に努め、より高い賃金を要求すべきなのです。
こんなふうに士気が大事だ、積極性が重要だなどと語っていると、ISOの標準化の考え方と相違するのではないかなどというツッコミが入るかもしれません。
 なことはありません。
どんな仕事だって開拓者は己の努力と、臨機応変の才で切り開いていくのです。

この文を読んで、私を前世紀のモーレツ型とお考えの人がいたらそれは間違っている。
いつの時代でも一番大事なのは己です。すこしでも自分を高く売り込むためには自己研鑽が必要です。それは現状に不満があったら愚痴るのではなく、それをトリガに努力することではないでしょうか?


本日の教訓

ISO事務局は積極性がなければいけない。
おっと、
 社会人は積極性がなければいけない。

そんなこと当たり前か・・・




VEM様からお便りを頂きました(06.12.19)
サラリーマン心得について
愚痴を言ってはいけません。とのお言葉
ありがとうございます。少なくとも会社の関係者の前では愚痴を言ったことは無いつもりです。
でも、佐為さまのページには書いても良い気がしてしまうのです。とても勝手な読者ですが、これからもよろしくお願いいたします。

VEM様 毎度ありがとうございます。
人生楽ありゃ〜苦もあるさ〜♪
何事も深刻になっちゃいけません。
有名なテニスプレーヤーの言葉に、「真剣であれ、決して深刻になるな」というのがあるそうです。
私なんか常にダジャレばかりで・・・・

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