ISO インパール 2007.05.20

先日、ISOレイテ沖海戦という駄文を書いた。もしかしたらレイテ沖に例えたことに海軍より陸軍が好きという方から苦情が来るのではないかと心配して、本日はインパールに例えた。
ISO関係者から苦情が来るという心配はまったくしていない。
第三者認証スキームに関するご意見、ご異議は望むところである。
といってもタイトルには何の意味もなく、暗喩というか imply 程度に思ってください。 

日本において、ISO9001の認証件数が07年第一四半期で減少したことについては、ISOレイテ沖海戦で前に書いた。それが一過性なのか、始まりなのか、現時点ではまだ定かではない。同様にISO14001の認証件数が飽和したような気がするといっても、勘とかあてずっぽうで語ってはいけない。
もちろんこれは自然現象ではなく、ISO関係者が必死の巻き返しを図っているだろうから、そのフィードバックにより単純なカーブを描くはずもない。
しかしISO9001認証件数のグラフをいくらひいき目に見ても、ドンドンと増えていく放物線にはとうてい見えない。北斎の赤富士にも見えるし、正規分布曲線の左半分にも見える。正規分布なら最大値を過ぎれば右半分は減少していくことに決まっている。
9001gurafu.gif

ISO9001に比べてISO14001はますます増加しているように見えるだろうか?
14001gurafu.gif

本日は、そんなグラフをながめていろいろ考えたことを書く。
はたして、ISO9001の認証の減少はいつから始まったのか?
日本適合性認定協会のウェブサイトには第三者認証が始まってからの、品質マネジメントシステムと環境マネジメントシステムの認証件数が掲載されている。過去のデータから未来がわかるか? といえば、分かることもあるし、わからないこともある。
内挿よりも外挿の危険は大きく、未来は限りなく未確定なのである。
ともかくJABのサイトをながめていると、ご親切に四半期ごとの総認証件数と直前の四半期との差分が表示されている。
『直前の四半期との差分』と書かねばならないことがいささか悲しい。本来なら『直前の四半期からの増分』といいたいところだ。
この直前の四半期との差分がマイナスになれば減少したということである。

では差分の差分を取れば、それは差分の増減の傾向を示すことになる。連続した数値なら二度微分したことになる・・つまり加速度だ
では品質マネジメントシステムの差分の増減を見てみよう。
個々の数値を見てもそれぞれ四半期ごとのバラツキが大きくなんともいえない。
エクセルには近似曲線という便利なものがついている。
1970年頃はデータをとったもののその傾向をとらえるには相関係数とか近似線なんて大変だった。電卓が個人で使えるようになったのは70年過ぎ、関数電卓が使えるようになったのは75年頃だと思う。それでも我々は直線近似しか扱えなかった。
ともかく、エクセルではマウスをクリックするとあっという間にいろいろな形式の近似線が引ける。いろいろ試してみたが、やはり線形近似(リニア)が一番ビジブルなようだ。

9001zoubun.GIF
ご覧のようにわずかだが右下がりである。そして元のデータに目を凝らしてみると、減少傾向はここ最近ではなく、認証という仕組みが出来たときからのように思えるのは私だけだろうか?
いくら初速が大きくとも、加速度がマイナスならばいつかは止まり、やがて逆方向に動き出すのはニュートン以来の変えようのない厳正な事実である。

ISO認証という仕組みが出来た、では当社は認証を受けるぞという企業がドット認証を受けたのが黎明期であり、その後我々も認証に遅れるなという企業が走り出し、次に時代の流れかしょうがない当社も・・というシークエンスなのであろうが、その勢いはだんだんと衰えてくるというのは自然の理かもしれない。
飯を食っても酒を飲んでも、山登りでも、小便でも、最初は勢いが良いが、だんだんと勢いがなくなってくるのは自然の摂理か?

では環境マネジメントシステムの認証数の推移はどうなのだろうか?
14001zoubun.GIF
近似線を引くと、なんとこれも認証が始まった時点からきれいに減少し続けている。決して最近になってから減少傾向になったのではなく、96年の認証がスタートしたときから加速度がマイナスのようなのである。
ということはISO9001の登録数が減少し始めたように、ISO14001の登録数も減少するのは時間の問題であるということだ。

じゃあ、これ以外の第三者認証ではどうなのか?
情報セキュリティマネジメントシステムのデータがインターネットにあったのでグラフにしてみた。これは四半期ではなく、月ごとのデータなのでよりきめ細かにトレンドが見える。
27001zoubun.GIF
結果はご覧の通り、ISO9001やISO14001と同じく加速度はマイナスである。はじまって間もないISO27001も、認証件数のトレンドは先輩のISO9001やISO14001と変わらないのであろうか?
品質ISOと環境ISOがレイテ沖海戦なら、情報セキュリティマネジメントシステムは始まったばかりでもうインパールである。

とすると、第三者認証というビジネスは、焼き畑農業のように、収奪した土地を捨てて次々と新しい分野を開拓していかなければならないという自転車操業なのか?
エクセレントEMSなんていうのも、つまるところ今までの耕作地を捨てて新しい畑を開墾することなのだろうか?
そして世の中には新しい物好きは個人でも法人でもあるので、新しい認証制度をはじめれば数年間はビジネスとして成り立つということなのだろうか?
家電業界が60年代のように普及率が低く作れば売れる時代から買換え需要しかない現在になったように、第三者認証というビジネスも同じなのだ・・・なんていう理屈は通用しない。なぜなら最大手のISO9001にしてもその審査登録数は日本にある法人250万社の2%にも満たないのである。
まさか冷蔵庫や洗濯機の普及率が2%で飽和したなんて語るお人はいらっしゃるまい。
いや、私も焼き畑農業論を展開するほど自信はない。これからじっくりと品質も環境もその他の認証ビジネスの動向を観察していきたい。



ISO関係者の方々へ
私に刺客を送ってはいけない。私は、日本で一番ISO規格を愛していると確信している。
問題はなぜ認証が伸びないのかであって、私が減少しているとか伸びそうもないと言ったことではない。
ISO規格が求める予防処置・是正処置を行うべきであり、行う余裕はあるはずだ。そして予防処置を行えばきっとビジネス拡大が出来るだろう。
しかし、制度が開始した時期から加速度がマイナスであることを確認したのだから、この対策には抜本的な対策が必要なことがわかる。私が考える認証の加速度をプラスに転じる方法とは簡単であって、それは認証の価値をあげればよいのである。
じゃあ、どうすれば認証の価値が増加するのか? なんてことは私はこのうそ800に膨大な文章で説明している。
みなさん、このうそ800を熟読し、拳拳服膺して実戦に反映して、第三者認証というビジネス拡大をしていただきたいと願います。

でも、悲観的になることはありません。
愛しきISO14001は、マネジメントシステムを向上させることが目的であると語っています。
第三者認証というスキームも継続的改善をしていけばよいのです。


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