草戸千軒 | ||||||
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発掘調査によって、さまざまな町の施設が明らかになりました。主な施設としては、井戸・溝・池・ごみ捨て穴・柵・道路・墓・建物などがあります。
井戸 |
水を得るための井戸は、遺跡全体で200基ほどが発見されています。ほとんどの井戸は、内側に土が崩れるのを防ぐための井戸側をもっています。井戸側の種類で最も多いのは木組みのもので、板材を組み合わせたものが多く見つかっています。また、曲物桶や結桶を利用したもの、丸太を筒形にくり抜いたものなどもあります。木組み以外の井戸としては、石組み井戸や、壺や甕の底を抜いて組み合わせた陶器組みの井戸などがあります。水は人間が生活していく上で最も重要なものですから、この集落で多くの井戸が見つかっていることは、この集落の繁栄ぶりを示していると言えるでしょう。(写真右:重なり合って発見された3つの井戸)
溝 |
溝も数多く見つかっています。排水のための溝、集落内を区切るための溝、小舟を導くための堀割のような溝などがあります。堀割と考えられる溝は、商業・金融活動に関わった人の住む屋敷や、市場と考えられる場所に接して設けられており、この集落の特質を示す施設の一つです。
ごみ捨て穴 |
集落内にはいくつかのごみ捨て穴がありますが、本来ごみ捨て穴として掘られた穴の他にも、池や溝などもごみ捨て穴として利用されています。ごみ捨て穴は、当時の人々にとってはいらなくなったものを処分するための施設に過ぎませんが、中に捨てられているものは、私たちにとっては資料の宝庫として最も重要です。たとえば、身の回りで使った道具の破片からは、当時の住まいの様子を復原することができますし、食べ物かすからは、食生活が明らかになります。また、いらなくなった商取引のメモも捨てられていて、この時代の商品の値段や、取引の方法、交易の範囲などを知ることができます。
柵と道路 |
集落の中は、溝だけでなく、柵や道路によっても区切られています。柵の中には、単に集落内を区画するだけではなく、防衛用の柵もあるように思われます。また、石を敷きつめた道路も見つかっています。(写真右:並行して走る柵)
墓 |
亡くなった人を葬るための墓もあります。穴の中に木の棺を納めたものや、石積みの基壇をもつものなどが確認できますが、これらは単独で見つかっています。しかし、五輪塔がまとまって見つかっている場所もあることから、集団墓地のような場所も存在していたようです。
建物 |
建物は集落の構造を復原するための重要な施設ですが、遺跡の上層が後世の耕作や川の流れによって削られていることから、なかなか明らかにできませんでした。建物は、柱を据える方法によって2種類に分けられます。一つは、柱の根本を穴の中に埋めてしまう建て方で、「掘立柱建物」と呼ばれます。草戸千軒で多く見つかっているのは、このタイプの建物です。ただし、柱の根本を地面に埋めるために、遺跡の上層が削られても柱の痕跡が残りやすいことも原因になっているようです。もう一つの方法は、地面の上に扁平な石を据え(礎石と呼びます)、その上に柱を載せる「礎石建物」です。寺院建築などのしっかりした建物はこの方法で建てられています。この集落でもいくつか見つかっていますが、地面においた礎石が後に動かされてしまうために、遺構としては残りにくいようです。
以上のようなさまざなま施設の痕跡をつなぎ合わせることによって、町の構造や、その変遷が明らかになってくるのです。