インターネット市場規模を推定する
Update: Apr. 17. 1998
一般に公表される「インターネット利用者数(規模)」とは、1)利用者数の母集団推計ができる無作為抽出による大規模サーベイ(オンラインではない)を実施した結果、2)インターネットにつながっているコンピュータ(ホスト)の数から推定、のいずれかの方法によるものです。
全地球的なインターネット普及状況に関しては、「Nua's
How Many Online?」がベストです。世界中の調査機関が発表する各国別のインターネット人口推計データをまとめて見ることができます。NUA
社はこれらの数字をもとに地域別のネット利用者数をまとめているほか、全世界でのインターネット人口を1997年12月末時点でちょうど1億人と推計、頻繁に最新数字は更新されています。
またインターネットにつながるホストコンピュータに関するデータは、米Network Wizards 社「Internet Domain Survey」(年2回実施)が有名です(郵政省の通信白書の資料もここからの引用です)。最新データ(1998年1月調査)では、jp
ドメインのホスト数は、約117万台で、半年前(1997年7月調査)96万台から大幅に増加です。ただし、98年1月調査からカウントのための方法が大きくかわったため、単純な時系列比較はできなくなりました。今でも「ホスト数の何倍がユーザ数」いう言い方は残っていますが、日本でも、全国の無作為抽出調査によってユーザ数の推計が発表されるようになっていますので、主役はとちらへ移っていくと考えられます。
* * *
97年には日本でもさまざまな調査によって推計値が発表されましたが、複数のソースを総合してみることで、かなり精度の高い数字が得られると考えています。普及率や利用者数や普及率を推計することを目的とした調査としては次の4つがあります。
最初の二つは全国を対象とした無作為抽出調査による推計を行っており、日経MAではインターネット利用者数を、1997.9時点で860万人、1998.3時点で970万人、AMI/IAJ
調査は、1997.2時点で571.8万人、1997.8時点で734.5万人、さらに伸び率を加味した1997年末の段階では884万人と発表しています。
野村総研のCLOも、全国を対象とした質問紙訪問留置法で実施。パソコン・インターネットを含む情報通信機器・サービスの利用実態が把握できます。第2回調査(1997.9実施)ではインターネット利用者を全体の12%、約1,000万人と推計しています。またビデオリサーチのACR
は、新聞・雑誌などのメディア・媒体接触率や消費財の所有率などを測定する日本最大規模のサンプル調査です。全国の利用者推計はできませんが、主要な各都市圏ごとの世帯普及率がわかります。
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以上の調査データの実施時期とインターネット利用者の推計値をまとめて見たものが下図です。元の数字がかなりの誤差を含みますし「利用者」の定義も統一されているわけではないので、あくまで目安と考えて下さい。線の傾きは約27であり、これは1か月に27万人ずつ増加していことを示します。
jp ドメインのホスト数からの推計については「8倍」という数字を使いました。もちろん「6倍」あるいは「10倍」であるかもしれないのですが、半年ごとに実施される日経MA調査とAMI/IAJ
調査の6か月間の伸び方とほぼ一致する点に注目下さい。ただし、Network Wizard
のホスト数は、先に述べたように1998.1測定分から手法がかわりましたので、本来ですとこのような形で連続性のあるデータとしては使えません。下グラフを企画書などに引用いただく際には、その点をご理解下さい。

なお国内のインターネットの普及状況に関する最も基本的な統計データについては、郵政省編「通信白書(平成9年版)」
でも1セクションを割いて取り上げられており、郵政省のホームページでグラフや図を含む全文を入手できます。
また、1991年から毎年実施されているニュ−メディア開発協会「電子ネットワーク実態調査」(96年までは「パソコンネット局実態調査」)では、パソコンネット局の会員数とインターネットサービスプロバイダー(ISP)の端末型ダイヤルアップ接続の会員数が推計されており、1997年6月時点でのこれら「電子ネットワーク会員総数」は、推定789.4万人で前年推定値より200万人以上増加したとのことです。
一方、海外では大規模サーベイによる利用者数推計については多くの調査が実施されていますが、代表的なものではCommerceNet/Nielsen Media Research "Internet Demographic
Study"(1997.3)などがあります。
REVIEW and COMMENTARY
Network Wizards "Internet
Domain Survey" -Revised!
http://www.nw.com/zone/WWW/report.html
- インターネットにつながっているコンピュータ(ホスト)の数に関するデータを提供している。DNS(Domain
Name System)に基づき、すべてのホストコンピュータを把握することを目的として毎年1月と7月に実施。
時系列データやトップドメイン別(com, net, gov, jp...など)の詳細なランキングデータもある。(企画書やプレゼンテーションに使うなら、General Magic "Internet
Trends" がおすすめ)
- 1997年1月調査では、全世界のホスト数は1614万台。ドメイン別では、com
(396万)、edu (265万)、net (154万)、jp (日本、73万)、de (ドイツ、72万)がベスト5。jpのシェアは4.5%。
- 1997年7月調査では、全世界のホスト数は1954万台。ドメイン別では、com
(450万)、edu (294万)、net (216万)、jp (日本、96万)、uk (英国、88万)がベスト5。jpのシェアは4.9%。全体の伸び率も21.1%と非常に高いですが、jp
ドメインの伸び率(30.1%)はさらに際だっています。
- 1998年1月調査からは調査手法が変更され、実態をより正確につかめるようにはなったが、残念ながら時系列で傾向をみられなくなった。全世界のホスト数は2,967万台万台。ドメイン別では、com
(820万)、edu (394万)、net (528万)、jp (日本、117万)、mil (110万)がベスト5。jpのシェアは3.9%。
カウント方法の変更であるが、97.7までの「旧方式」は、IP アドレスのついているホスト名をカウント、98.1からの「新方式」は、ホスト名のついているIP
アドレスをカウント(vvv xxx yyy zzz を片っ端からチェック)しているとのこと。「旧方式」だと拒否してくるホストが、97.7
の調査時点で25%くらい出ており、かつ増加傾向にあったため、思い切って切り替える必要があったらしい。そのかわり過去3年分の修正データ(Adjusted
Count) が出されています。
- 98.1 29,670,000
- 97.7 19,540,000 *(26,053,000)
- 97.1 16,146,000 *(21,819,000)
- 96.7 12,881,000 *(16,729,000) *( )は新手法で行ったとした場合の推計値(修正値)
Access Media International
/ IAJ「インターネット普及率調査」
Access Media International / IAJ「インターネット普及率調査」追加調査 -New!
出典:「インターネット白書'97」(インプレス)
- アクセス・メディア・インターナショナル社と日本インターネット協会 (IAJ)
が1997年2月に実施した本格的インターネット利用者数推計調査。日本インターネット協会編「インターネット白書
'97」(1997.6発行、インプレス、3500円)に結果が紹介されている。(入手が難しければ「INTERNET
Magazine」1997.7月号の特集記事「数字で見るインターネットの現状」(p.398-401)にもダイジェストがある。)
- 主な推計値は以下の通り。
- インターネットを自宅で利用している世帯は、181.6万世帯(母集団4483.1万世帯に対する世帯普及率4.05%)。
- 自宅からインターネットを利用している個人は、221.6万人 (a)(世帯あたり1.22人)。
- 会社や学校からインターネットを利用している個人は、449.7万人 (b)(自宅PC所有者
138.6万人 (b1)+自宅PC非所有者 311.1万人
(b2))。
- 自宅からも会社/学校からもインターネットを利用している個人は、99.5万人
(c)。
- 最終的なインターネット人口推計値=(a)+(b)-(c)
は、571.8万人。
- 調査はかなり手間がかけられていて、1)PC所有世帯を対象とした調査(世帯抽出/8069サンプル)で
(a)と(b1)を算出、2)PC非所有世帯を対象とした調査(世帯抽出/6249サンプル)で
(b2)を算出、さらに、3)自宅でPCを所有しかつインターネットを利用している個人を対象とした調査(個人抽出/1093サンプル)で
(c) を算出し、そのデータを組み合わせることで上記のような厳密な推計を可能としている。なるほど!
- 「インターネット白書 '97」には、同時に実施された「インターネットユーザー利用実態調査」「インターネット非ユーザーの利用意向調査」「企業のインターネット/イントラネット利用実態調査」など、他にも独自調査による貴重なデータが掲載されている。
- なお、アクセスメディアインターナショナル社は、上記調査データのアップデートを目的として、'97年8月に全国主要都市の13才以上の男女を対象に電話調査を実施、有効回答数は19,639。そのうちインターネットを利用していると回答したのは898世帯。そこから、'97年末時点のインターネットの利用者を884万人と推計。「インターネット白書'97」掲載の97年2月調査からの利用世帯の伸び率179.3%、家庭利用者が342万人、勤務先・学校利用者が679万人、両方利用が137万人、といった細かい推計値が出されている他、'99年末には利用者が2,000万人に達するとの予測もある。(レポートは販売されるので、ウエブでは詳細は見られない。
98/01/21付「Internet
Watch」からの情報です。 )
財団法人ニュ−メディア開発協会「平成9年度電子ネットワーク実態調査」
http://www.nmda.or.jp/nmda/net97/net97-press.html
日経マーケット・アクセス「インターネット普及率調査」
http://www3.nikkeibp.co.jp/MA/guests/release/418inet.htm(第1回)
http://www3.nikkeibp.co.jp/MA/guests/release/1013inet.htm(第2回)
- 日経BP社の会員制マーケティングデータ提供サービス「日経マーケティング・アクセス(日経MA)」が、マルチクライアント調査企画として実施。インターネット利用者数を大規模サンプル調査から推計することを目的に設計されている。
- 全国16歳以上の男女個人(=対象人口1億600万人)対象とした電話調査で、第1回は1997年3月中旬〜4月上旬実施、5000サンプル。第2回は1997年9月下旬実施、2000サンプル。都市の規模別に層化して抽出された市町村50地点(第1回)あるいは20地点(第2回)から、性・年齢による割当によって100サンプルずつ回収している。
- 第1回調査時点から第2回調査時点への6か月間の主な変化は以下の通り。
- WWW利用者(1か月以内に自分でWWWを利用)は、全国で3.3%(約350万人)→5.4%(約555万人)
- インターネット利用者(1か月以内に自分で電子メールかWWWを利用)は、全国で6.6%(約700万人)→8.3%(約860万人)
- WWWユーザーに占める女性比率は相変らず低く15%弱、女性全体の人口比では1.5%にとどまる。1997年3月末で女性の普及率は
0.8%,1年後の利用意向比率は6.7%だったが、半年たった時点でも女性の利用は遅々として進んでいない。
- この調査の設計が、以下に紹介する「CommerceNet/Nielsen Media Survey」とほぼ同じ手法(層化抽出、割当法、電話法など)、同じ調査対象(16歳以上男女)、そしてこれが特に重要なのだが、同じ「利用者」の定義(この1か月以内に利用)で実施されていることは貴重であり、日米の直接比較を可能としている。
ビデオリサーチ「ACR (Audience
and Consumer Report)」
http://www.videor.co.jp/box/acr/acrd/index.html
- 新聞・雑誌などの詳細な媒体接触率や200種以上にもおよぶ商品・サービスの普及率調査として有名な
ACR が97年からインターネットの利用率も測定し、結果の一部が上記サイトで公開されている。全国7地域(東京30km圏、関西、名古屋、九州北部、札幌、仙台、広島)の12歳〜69歳男女を無作為抽出、全体で12200サンプル設定、調査実施は1997年5月である。9月から10月にかけて地区別データを紹介したあと、10月20日以降は合計値データによる詳細分析結果も公開されるとのこと。
- 設問は、1)インターネット利用経験率(最近1年間に趣味・レジャー活動の一環としてインターネットを利用した)、2)インターネット利用率(趣味・レジャー活動の一環としてインターネットを日頃よくやっている)、3)インターネット利用意向率(
趣味・レジャー活動の一環としてインターネットを今後(今後も)やってみたい)で、性・年齢別集計であるが、「12〜19歳」「50歳以上」のカテゴリーもある!
- 利用率は以下のとおり。
- 東京30km圏(2652サンプル):利用経験率は男性11.8%、女性4.6%。利用率は男性8.4%、女性2.6%。
- 関西地区(1712サンプル):利用経験率は男性11.8%、女性4.4%。利用率は男性6.4%、女性1.4%。
- 名古屋地区(1004サンプル):利用経験率は男性5.4%、女性2.8%。利用率は男性2.6%、女性0.8%。
- 貴重なデータですが、少し残念なのは、1)質問に「趣味・レジャー活動の一環として」とついているため、真面目に答える人は会社で仕事に使っている場合は答えていないかもしれない、2)「日頃よくやっている」の捉え方は個人でまちまちだろうから、人によっては時々やっていても答えていないかもしれない、ということです。AMI/IAJ
調査でも明らかなように、日本では家庭ユーザより、会社でのみ利用ユーザの方がずっと多いのですから、上記数字はやや過少なのかも知れません。
郵政省「通信白書(平成9年版)」
http://www.mpt.go.jp/policyreports/japanese/papers/index-97wp.html
- 5月27日に発行された今年の通信白書には、インターネットや情報通信分野関連のデータが満載。インターネットの普及状況に関連するものとしては、「インターネット・サービス・プロバイダーの推移」(97年2月現在で1645社)、「サイバービジネス市場規模」(97年1月現在で285億円)など。
CommerceNet/Nielsen Media
Research "Internet Demographic Study"
http://www.commerce.net/work/pilot/nielsen_96/press_97.html
- 1997年1月に北米(米国・カナダ)16歳以上の男女個人を対象に実施された6600サンプル(母集団約2.2億人)の大規模電話調査で、1995年秋に次いで2回目。インターネットユーザープロフィールを明らかにすると共に、母集団推計も重要な目的のひとつ。
- 利用者数推計は以下の通り。(注:CommerceNet のニュースリリースでは利用率は出ているが、具体的な利用者推計数は出ていない。95年秋のデータに基づく利用者数推計については、ウエイトのかけ方などについて反論があり(Project 2000)、今回は慎重を期しているのだろうか。以下の推計値はこの調査を取り上げたCyberAtlas から引用。単純に対象人口×利用率で出したもの。)
- 北米におけるWWW利用者(この1か月にWWWを利用、かつ調査時点でも利用している人)は、17%(3740万人)
- インターネット利用者(この1か月にインターネットを利用、かつ調査時点でも利用している人)は、23%(5060万人)
日経産業新聞「2005年のネット経営」有力シンクタンクアンケート
http://www.nikkei.co.jp/ss/cyber/chousa11-2.html
- オンラインサービスの量的な把握が極めて困難であることは、96年11月に紹介されたこの調査結果をみてもわかる。日本の名だたるシンクタンク28社が推計する「現在」のパソコン世帯普及率、インターネット世帯普及率、インターネット人口といった、ごくごく基本的な数字さえ驚くほどばらついている。(ましてや2000年や2005年の予測数字は...)。これは、やはりだれもが納得するデータがないことの証明なんでしょうねえ。
- 平均値は以下の通りです。
インターネット人口: (現在)360万人(2000年)1252万人(2005年)2804万人
インターネット世帯普及率:(現在)4.8%(2000年)21.0%(2005年)45.7%
財団法人ニュ−メディア開発協会「平成8年度全国パソコンネット局実態調査」
http://www.nmda.or.jp/nmda/net96/net96-full.html
- 1996年6月末時点のパソコンネット局を対象とした実態調査。1991年から実施されており、今回で6回目。全国2741局が対象で回収率は50.6%。有効回答および未回答局推定を加味した延べ会員数は573.2万人。前年調査368.9万人から大幅に拡大。1万人を超える大規模パソコンネット局19局合計の会員数が、466.8万人(シェア81%)。
- また8月末現在でインターネットへの接続ができるパソコンネット局を含むインターネットプロバイダ512局に対しても、アンケート調査が実施された(回収率は57.4%)。その結果に未回答プロバイダー分の推定を加味し、端末型ダイヤルアップIP接続可能ユーザ数を延べ541.1万人と算出。うち85%が、パソコンネットのユーザであるとのこと。
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