TEXT:005:2015/07/23

妖怪ウォッチ、RPGバトルアーキテクチャにおいて、ウィザードリー(1981)から、RPG34年ぶりの新作の可能性。


これまでRPGは多数の名作が発表されてきました。ですが、エンカウント制RPGのバトルシステムのアーキテクチャ(基本構造)に関しては「ウィザードリー」(1981)が確立したと言われている「ターン制コマンドバトルシステム」の枠内にほとんどが収まってしまうクローン、もしくは亜種どまりだと言われ来ました。(参考、ウィザードリー,ウィキペディア)

その前提を知ってる方に特にお伝えしたいのは、「妖怪ウォッチ」のバトルアーキテクチャは「ターン制コマンドバトルシステム」とは言い切れない作品だと言うことです。バトルアーキテクチャという視点にたてば、1981年の「ウィザードリー」発売から、エンカウント制RPG32年ぶりの新作の可能性が否定できません。可能性と述べているのは、こちらがすべてのRPGをプレイしていないことによります。ですから最初なのかについては、こちらは断言できません。最初に普及、確立に成功した作品かも知れません。

ただプレイ済みのエンカウント制RPGの中では記憶に無いです。少なくともそれについて議論すべき余地は確実にあるとは、言えます。販売本数とは無関係の内容になります。

「妖怪ウォッチ」は、一般的なイメージとは異なり、実は、システム的にいわゆる売れ筋RPGのセオリーから外れた見どころが多いタイトルなのですが、今回のレビューは、最も「妖怪ウォッチ」の中で重要なポイントであると思われる、バトルシステムに絞りたいと思います。

「妖怪ウォッチ」のバトルは、エンカウント後、戦闘開始ボタンを押した後は、戦闘に直接プレイヤーは参加せず、バトルに参加する妖怪たちは全て、リアルタイム、自律的に行動します。敵によっては、プレイヤーは、何のボタンも押さなくても戦闘終了まで行くことが可能であり、そしてそれで成立してます。この意味について書かせて頂きたいと思います。

前情報では、「ポケットモンスター」みたい、ということで、プレイして初めてそれを確認したんですが、「ポケモン」は、面白いか面白くないという点を抜いて、純粋にカテゴリー分けをすると「ターン制、コマンドバトルシステム」の枠内です。

実際プレイした「妖怪ウォッチ」のバトルは、全く違っていて衝撃的でした。率直な第一印象は「え!なにこれ?」でした。RPGのバトルというより、なにかリアルタイムストラテジーをやってる感覚に近かったです。ぼくの分析・説明能力では、読み手に伝わる形で明解に表現することが非常に困難なことが予想されたため、この説明は他の方がなさるだろうと期待してました。

が、考えてみますと妖怪ウォッチは子供対象のタイトルとされています。販売数は多くとも、「ターン制コマンドバトルシステム」の流れを知ってる子供のプレイヤーが多いとは思えず、その流れを知っている大人のプレイヤー数も子供対象とされているタイトルであるので、多いとは思えません。また、「妖怪ウォッチ」は、(2015,7現在)海外未発売かつテキスト量が多いため、日本語を本格的に読みこなせないとプレイしづらい内容で、国外のレビューはまだ期待できません。metacriticの「Yo-Kai Watch」のMetascoreもUser Scoreもまだ0(2015,7現在)な状況です。

そんな中、先日、2015.6.15日付のUK版のWIREDの「妖怪ウォッチ」の記事で、ビデオゲーム専門誌ではないとは言え、「Combat is also similar to Pokemon」というテキストを読み、バトルシステムのアーキテクチャの両者の明確な違いが一般的に知られてないことを知りました。

こちらの力量的に不完全に終わることが予想できるものを書き、みなさんにお読み頂くのは、本意ではないのですが、少なくとも「ポケモン」とはバトルアーキテクチャ的に別物と認識が一般的にされていないことを知り、1作目発売から2年経過した今さら、速報的に、書いておく必要があると感じた結果がこのテキストになります。「ポケモン」と「妖怪ウォッチ」どちらが面白いかということとは、個人的な意見はありますが、このレビューではそれは無関係です。「妖怪ウォッチ」、「妖怪ウォッチ2本家」をプレイ後ですが、2作ともバトルアーキテクチャはほぼ共通(2で発展部分あり)のため、起源と呼べる第1作目についてにさせて頂きました。

では、これまでのが 「ターン制、コマンドバトルシステム」と対比して、「妖怪ウォッチ」のバトルアーキテクチャを仮になんと呼べば、みなさんに正確に伝えられるかなんですが、「リアルタイム・完全自律型バトルシステム」もしくは「リアルタイム・総NPCによるバトルシステム」「リアルタイム・総AIキャラのみによるバトルシステム」という言葉が当てはまりそうです。3種類は表現形式の違いだけです。正確かは分かりませんが、少なくとも使っても間違いとは呼べないとは言えます。プレイするとあまりに自然に違和感なくできるのですが、言葉にするのが難しいです。これが文章化をためらった理由でもあります。

「ポケモン」との対比は、おそらくゲームの画面の中でなくて、プレイする手元を動画で見れば一目瞭然で証明は可能だと思われます。「ポケモン」はターン制コマンドバトルのアーキテクチャの仕様上、ボタンを押さないとまず、バトル終了は無理、正確には何らかの条件下で可能になることもあるかも知れませんが、「ポケモンX」(リメイクを除く最新作)では、今知るかぎり無理です。少なくとも基本仕様ではないです。ですが、妖怪ウォッチでは、やろうと思えば、開始ボタンを押した後は戦闘終了まで何もボタンに触れなくても行けます。それが基本仕様になっているので。例えるなら、ラジコンとドローン的差です。

細かく説明すると、戦闘は妖怪のみで組まれたパーティーが行います。プレイヤーは、戦闘中、妖怪に対して、通常攻撃モードにおいては直接コマンドを出す方法が、バトルアーキテクチャ内に一切ない、つまりオプションとしてもない、ということです。彼らは通常攻撃モードでは、攻撃、防御、妖術、さぼる、などの複数の選択肢から、自律的に選択した行動のみをします。もちろん、ラスボスが相手の時もです。

プレイヤーが妖怪に指示できるのは、どの敵、もしくはどの場所を狙うかと、わざ(必殺技に相当)などです。そしてわざは出すのに制限があり、妖怪は通常攻撃モードでの活動が占める時間的割合が圧倒的に多いです。

そしてリアルタイムでバトルは進行し、ターン制に切り替えるという選択肢もバトルアーキテクチャにありません。テキストは表示されますが、テキスト送りにボタンを押す必要(意味が無い)はなく、戦闘開始ボタンを押したら、後は見ているだけでも戦闘は終了まで行くことも可能です。妖怪の攻撃のタイミングも予想しづらいです。唯一アイテムを選択している時は戦闘が一時停止しますが、これはその間にどのアイテムを使うかを考えるのではなく、「妖怪ウオッチ」は戦闘中に使用可能アイテム数がかなり多いため、その対応のためだと思われます。そして、アイテムを使用後は一定時間アイテムをプレイヤーは選択することができません。

開発のLEVEL5は、AIバトルでいろいろな意味で知られる「ドラゴンクエスト」の9作目の開発会社でもあるため、そこでAIバトルについて深く考える機会があり、そのAIバトルへの解答が、妖怪ウォッチのバトルシステムのアーキテクチャに繋がってるのではないかと考えるのが自然ですが、推測の域をでません。

そしてAIではつながるかもしれませんが、「ドラゴンクエスト」のAIは「ターン制、コマンドバトルシステム」の補完の位置づけの範囲内であり、「妖怪ウォッチ」のバトルアーキテクチャとは、こちらも別物、としか表現できないことを付け加えておきます。「ペルソナ」のAUTOも同じです。「デジモンワールド リ:デジタイズ」がリアルタイムで、デジモンが自律的に戦うという設定ではあるものの、デジモンが成長するにつれて具体的に出せるコマンドが増えていくので、微妙と言った印象ですが、プレイ感を全く考慮にいれず、アーキテクチャだけ見れば、意外と近いと言えば近いと言えるかもしれません。

結論としまして、少なくとも「ポケモン」とはアーキテクチャが異なることは、明らかなんですが、その他との比較については、こちらの知識が完全で判断がつきません。が、このアーキテクチャを確立・定着させ、完成度の点において、もうこのアーキテクチャで、バリエーションが増えることはあっても、上はないんじゃないかと思われるレベルであるということは言えます。今はまだ分かりませんが、セールス面ということでなく、バトルシステムのアーキチェクチャ面で、ビデオゲーム史に将来残っていても驚きはない作品だと感じました。

あの、このテキストを読んでいただいて、説明が困難でできればしたくなかった理由を分かっていただけたら、嬉しいです。これが今の限界です。

bitnik.jp:桜尚航生


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