認証停止 10.09.11

ちょっと前、ISO認証停止状況なんて駄文を書いて、ほとんどの認証機関が認証を停止したことさえ公表していないのに対して、認証停止を公表しているわずかな認証機関は立派だとほめたが、本日はほめて損したということを書く。

某認証機関のウェブサイトのトップに次のように書いてある。
株式会社□□様のISO 14001認証の一時停止について 20**年 **月 **日
株式会社□□様つきましては、廃棄物処理に関する是正が必要であるため、*月*日の認証登録判定委員会において、環境マネジメントシステムの認証を一時停止することに決定いたしました。
株式会社□□様のISO 14001認証の一時停止解除について 20**年 **月 **日
株式会社□□様に対して、環境マネジメントシステム(ISO 14001)の臨時審査を実施し、*月*日に認証登録判定委員会を開催致しました。
その結果、不適合の是正処置とその有効性が確認できましたので、認証の一時停止を解除することに決定致しました。
どの審査機関か興味ある方は前回示した認証停止を公表している認証機関のウェブサイトをブラウズすればすぐわかるでしょう。数社ですから簡単です。
これを読んで、何の疑問も持たない人はいるかい?
少なくともその認証機関の人たちは疑問を感じていないようだ。
しかし、私は疑問を持つ。というか、大いにおかしいと感じる。

第三者審査の依頼者は誰なのか? という疑問については過去何度も語った。
さまざまな見解があるが、認証機関は購入者の代理人あるいは一般社会の代理人である。そうでなければ第三者認証という意味が成り立たない。ということは審査という行為は認証機関が組織に対して行うことではあるが、その認証機関の認証がまっとうであるということを、購入者あるいは一般社会に対して説明責任があるはずだ。
言い換えると、審査やその判定が秘密主義では社会は「認証」を信用できないということだ。
「俺の目を見ろ〜何にも言うな〜」というような浪花節ではことはすまない。
認証機関が世の中に信用され、その認証機関が出している認証(正確には審査登録に過ぎないのだが)を社会が取引などにおいて利用するか否かということは、認証機関の存在意義そのものである。
「ああ、あの認証機関なら大丈夫だ」といわれるなら存在価値があるし、「はあ、貴社の認証機関は□□ですか・・じゃあ、二者監査させてもらいます」と言われるようでは存在価値がない。そんな認証機関は倒産するか撤退するべきであろう。
実をいって、私は撤退すべきか倒産すべきだと考えている認証機関が複数ある。
さすがに固有名詞を出すわけにはいかない。

話を戻す。
不適合の是正処置とその有効性が確認できましたので、認証の一時停止を解除することに決定致しました。
という文章を読んで安心するような人は、お人よしである。10歩も歩かないうちに、キャッチセールスにつかまったり、振り込め詐欺にあったり、質の悪い認証機関に依頼するようなはめになることは保証する。
ここで「保証する」という意味はISOやJISの定義による「品質保証」の意味ではなく、「間違いなくそうなるであろうと裏書すること」を意味する。 

ここまで言っても分からない方もいるでしょう。とうの認証機関さえ、何が変なのかを理解していないかもしれない。よって、私の流儀というかスタイルではないのだが、平たく説明しよう。 どこかの大学教授が、ISO認証の信頼性が企業が偽証するから落ちていると語った。
JABがJACBが厳しくチェックする、虚偽の説明をしたところはバシバシと認証を停止し取り消すと語った。
結構なことだ。私は一般社会の立場からその方向を支持し、そのような審査をすることを期待する者である。
と同時に、認証機関はしっかりとした審査、虚偽の説明にだまされない、見落としをしない、問題が起きてから臨時審査などする必要がないような審査をすることを要求する。
がんばってほしい。
これからは認証停止件数の多い認証機関は、ほめるわけにはいかない。認証停止の多い認証機関の審査員は力量が足りないと判断することにしよう。

本日の感想
認証って軽いね、風で飛ぶのでしょうか
登録証が風で飛ぶのはわかるけど、認証そのものも・・

ところで、認証機関が発行するのが「認証書」ではなく、「登録証」である理由が分かりません。ご存知の方、教えてください。



ぶらっくたいがぁ様からお便りを頂きました(10.09.11)
その認証機関は、「なぜ通常の審査でその不具合を見つけなかったのか」の原因究明をしたと書いてないことです。一般社会は「当認証機関では、この組織の環境マネジメントシステムの不適合を見つけなかった原因はこれこれで、それに対してはこのように是正処置を行いました」と広報することを望んでいるのです。

全くその通りです。異論はありません。
で、それに対する認証機関側の反論は、「審査はサンプリングによって行うのであるから、ある不適合を見落とすことはありうる。臨時審査は、露見した不適合に対して行うものであるから、通常の審査と同じ審査チームが行うことに何ら問題はない」と言うことでしょう。
再生紙偽装事件と鋼管試験ねつ造事件を引き起こした企業の大半を認証していた某大手認証機関は、現にそのような言い訳をしております。つまり、認証なんてものはしょせんその程度の軽〜〜い値打ちしかないシロモノということでありましょう。

サンプリングとはいい加減に選ぶことではありません。それは科学です。まっとうなサンプリングをしないでアホを語るなといいたいですね。

ぶらっくたいがぁ様からお便りを頂きました(10.09.11)
抜き取り検査のJIS規格はいろいろありますが、認証機関が言い訳とする「サンプリング」の適切性は何を持って担保としているのか、ぜひ伺いたいところであります。

たいがぁ様 ありがとうございます
私も疑問なのですが、AQLとかはどう設定しているのでしょうか? なんてできるはずありませんよね
危険率以下ならば、不具合を従容として受け入れるべきですし、それを対外的に主張できるはずです。


外資社員様からお便りを頂きました(10.09.14)
佐為さま
ぶらっくたいがぁ様とのお話でも不思議な点はいくつか指摘されているのですが、もう少し教えて頂けませんでしょうか?
廃棄物処理に関する是正が必要であるため、*月*日の認証登録判定委員会において、環境マネジメントシステムの認証を一時停止することに決定いたしました。

認証機関の判断のきっかけは何でしょうか?
新聞やテレビで何か報道されたからでしょうか、ならば裁判所や行政側の断定がされるまでは違法かの判断は保留ですよね。
認証会社も、根拠があって認証したのですから、本来は会社側の立場に立って弁護するのが筋のように思いますが、
まさか容疑だけで、指弾する側に立つ訳はないでしょうね。
残念ながら、認証会社のWEBには、何が原因で審査時に問題を検出できなかったか不明でした。
受験した会社が自ら認証を返上するとも思えませんし(飾っている登録書は恥ずかしくて隠すかもしれませんが)、となると認証会社が、問題が起きないかと探しているのでしょうか?
法令違反が官報などで報じられたら、違法性は明確かもしれませんが、審査との関連を明確にするのは認証機関の責任と思います。
少なくとも審査の品質を考えるならば、審査が正しく行われたかの検証は認証機関の責任ですよね。
その中で、当該の違法性の問題は審査の網から漏れていたのか(サンプリングの問題)、認証を担当した人間の能力の問題なのか、審査そのもので見つけられないものなのか(審査方法自体の限界)要因を分析し、どれでも無かったなら始めて「受験側の虚偽」を疑うことが可能となります。
本当にサンプリングが原因ならば話は簡単で、時間とお金をかければ検出精度は上がります。 但し、お客にはお金も時間も限られているから、その中で選択されたものに漏れがあっただけです。 但し、認証会社も、何らかの基準があってその値段で請け負っていますから、御客が値切ったから意味無い認証とは言えないのだと思います。
自身が意義を持てないような認証ならば、認証システムの価値や意義を自分で下げているので、認証件数の減少も当然なのです。
もし、安い値段で認証を請負って、法令違反等を見つければ認証を停止し追加試験のビジネスの機会を期待するならば、不十分な検出率を前提とした「登録証」を発行し、初期費用の安さを競うような事態を招くことを危惧します。
そのことは、新規顧客を一時的に増やすかもしれませんが、リピータや真面目に取り組む会社はアホらしくて自己認証に転じてゆくのだと思います。

外資社員様 毎度ありがとうございます。
論点が多々ありますので、ひとつづつ片付けていきましょう。
認証を受けようとする会社と認証機関(審査会社)は審査契約を結びます。この中に法に関わる不具合に気がついた場合は、すみやかに認証機関に連絡することになっています。ですから社内の監査(ISOだけでない業務監査など)で発見されたときは、認証機関にその旨を通知しないと民法上の契約不履行で訴えられます。
また、現在では後で面倒になると困るからと、どうでもいいようなことでも認証機関に連絡するようになっています。(私の知る限り)
実を言って、そういう処置はだいぶ経験があります。
困ったものです。
次に認証機関は別に会社側に立つ義務はありませんし、そのようなことはありません。ドライというか機械的、冷たいものです。法的なトラブルが起きれば、ハイ、サヨウナラです。己の審査が未熟だったとかいう発言なんてあるはずがありません。
それからこの世界では有罪でないものは無罪ではなく、無罪でないものは有罪というお約束になっています。ISO17021などをみても、適合の立証責任は組織側にあるそうです。この件について某認証機関のえらいさんにお聞きしましたが、証拠の提示責任は組織側にあり、適合を確認する責任は審査員にあるとのことですが、現実は・・
とにかく法に関わる問題があれば、その処置が決まるまで触らぬ神にたたりなし、臭いものにはふた、危なかったら認証停止というストーリーになっています。
認証会社のWEBには、何が原因で審査時に問題を検出できなかった とのことですが、この世界では情報公開ということがありません。何が悪いのか公表せずに認証を停止し、どのような是正処置をとったのか公表せずに認証停止を解除するのが普通です。なにせ、認証停止さえ公表しない認証機関もあるのですから、しょうがないというべきでしょうか。
まさに我々は江戸時代の民百姓状態です。
細かいことですが、判決は官報では広報しません。まして大きな事件でもなければ報道もされませんから、どうしても知りたいなら、直接裁判所にいくしかありません。とはいえ、環境犯罪の99%は裁判ではなく、略式命令で行われますので、どうなったかは本人とその会社しか分かりません。
認証システムの価値や意義を自分で下げている
まさにそうなのでしょうね、
不祥事があると認証制度の信頼性が下がる。不祥事が多いと認証制度の信頼性が下がる。不祥事を隠すと認証制度の信頼性が下がる。不祥事を審査で見逃すと認証制度の信頼性が下がる。
イヤハヤ、八方ふさがりのようです。
いやまってください、しっかりとした審査をして、組織のマネジメントシステムが規格適合であることを確認すれば不祥事は起きないとはいえないかもしれないけど、非常にすくなくなるでしょう。
じゃあ、根本原因はしっかりした審査をしていないためか・・


外資社員様からお便りを頂きました(10.09.26)
佐為さま こちらこそいつも有難うございます。
判決は、判例データベースでしか見ていないのでライブ経験はほとんどありません。
なるほど、官報では公示されず、環境関連では殆どが略式起訴なのですね。

ISO17021などをみても、適合の立証責任は組織側にあるそうです。この件について某認証機関のえらいさんにお聞きしましたが、証拠の提示責任は組織側にあり、適合を確認する責任は審査員にあるとのことですが
この言葉をみて、今までの疑問:「技術系の認証試験と何故違うのか?」が氷解した気がします。
この通りならば、確認する側は どんな無体を言っても構いません、言い換えれば警察や検察の取り調べと同じではありませんか!
ならば犯人と確定もしていない容疑者を、いくら拘留しても何ら自責の念も持たず、再審請求をしても門前払い。
厳しい取り調べは、クライアント(実際は容疑者)にとっては利益につながるとは言えません。
但し国家権力と結びついていませんので、無体な会社は 次回は使って貰えないかもしれませんが、真面目に取り調べをしない会社に確認して貰ったものが無価値だと思えば、わざわざ確認頂く必要はないですね。
となると佐為さまが仰るように、大手ならば本社系管理部門などが、グループ内に対して第二者認証を行ったり、同様なものを他社間で守秘契約を結んだ上で行う方がよっぽど為になるような気がします。

最後に例によってツッコミです。
江戸時代の百姓、特に天領や西国では、それほど可哀そうな立場ではありません。
また江戸の無産町民は、基本的には無税ですから、その点では今の私たちより恵まれています。
天領の年貢は四公六民で、その台帳は江戸初期のものですから、実際には20%も無かったと言われています。
農地を持つ百姓は自治権(裁判権を含む)も持っており、かなり強い立場だったのですね。
(だから、立派な山車をそろえた祭りが出来て、農民出身の学者もいれば趣味人もいたのです)
もちろん、東北は天候の影響も大きく厳しい面もありましたし、田畑を持たない小作は辛い立場です。
但し、それはあらゆる階層(武士や公家も含む)の中で下層階級がいたのです。
(例として、「龍馬伝」の岩崎弥太郎)
ですから、物言えぬ階層は、江戸の百姓固有の問題とは思わないのが良いでしょう。(笑)

外資社員様 毎度ありがとうございます。
警察や検察の取り調べと同じではありませんか!
異議あり!
被告人は黙秘権もあり、弁護士に依頼する権利を持ちます。また供述書にサインしない権利もあります。
要するに、ISO審査とはその仕組みにおいて論理性がないのではないでしょうか?
権利関係が非対称であり、権利保護が不十分で、万が一のときは責任を負わない・・これはもう非論理的な典型です。こんなことでは認証制度にははじめっから欠陥があるのだろうか?
あるいは制度としては整合性があって運用上の問題なのでしょうか?
私はこの道20年選手でありますが、いまだ悟れず・・



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