ケーススタディ 非製造業の環境教育9

12.09.06
ISOケーススタディシリーズとは

研修会の始めの時に、1日半の講習を書き終えるのに二月かかるのではと書いたが、二か月にまたがったものの全9回でなんとか終了でございます。修了かな?
では、はじまり、はじまり

講習会の最後のケーススタディの発表会となった。個々のケーススタディの結論や対策ではなく、全体として何を考えたか、得られたものは何かを、グループごとに代表者が話をする。

五反田
「昨日今日と、お疲れ様でした。では本日の最後は簡単なペーパーテストを行いますが、その前に本日のメインベントであるケーススタディでの各グループでの結論といいますか、環境管理においては何が重大か、どのようなことに留意すべきかということの発表をお願いします。
Aグループから順にお願いします。代表者でもよろしいし、全員でも結構です。」
尖閣
「Aグループの尖閣 です。Aグループではいくつかのケースを議論しましたが、その中で私たちが環境管理において重要だと考えたことをお話します。
結論から言えば、法規制を認識することが最重要だということです。事故や違反を起こさないためには、基準や規制を知らなければならないからです。
ケーススタディでは養豚業者に残飯を出しているケースがありました。そういう行為自体が法違反に限りなく近く、何もなければ行政は黙認していても、一旦事あると違法と摘発することがあり、そうされてもしかたありません。
その原因を考えた時、個人や法人が利益を求めたわけではなく、単に法規制を知らなかったとか、これくらいいいだろうと甘く考えていたことです。だから環境管理をしている人は、環境法規制を認識しなければならないというのは当然です。
もっともこれは環境に限らずどの職務でも同じです。安全衛生担当なら、安衛法その他労働関係法の知識が必須です。営業担当者なら下請法、建業法、手形とかいろいろ関係する法律を知らなければなりません。しかし、環境業務が他の仕事と違うことがあります。それは環境関連の規制は非常に数多く複雑で、しかも多数の省庁にまたがっていることがあります。そして特に非製造業の会社では環境担当者の異動が多く法規制を熟知することが困難だということです。
ただ昨日の五反田さんの講義でもありましたが、自分の会社が関わる環境法規制を認識することは必要ですが、どのような法規制がかかるのかを調査把握することは、必ずしも自分ひとりでしなければならないことではなく、行政やグループ企業の力を利用して行うことができるということです。
今回この研修会に参加して、非常にためになったということは、知識を得たということではなく、他社の環境担当者と知り合えたこと、そして皆さんが何を考えているかを知ったこと、鷽八百社の環境保護部の活動を知ったことです。他の業務から環境担当に異動したとき、環境法規制についてはまったく白紙であるわけです。今日から環境担当をしてくれと言われても何をしたらよいかわかりません。もちろんISO14001事務局担当でしたら簡単でしょうけど・・
それからISO14001認証は効果がなく、弊害があるという意見がありました。
今回の研修に参加して思ったことは、鷽八百グループとして環境担当者教育を行うことによって、グループ企業の環境管理をものすごく向上させることができるということです。それだけでなく、各企業への情報提供、指導支援を充実させてほしいというのがAグループの結論です。」

陸奥
「Bグループの陸奥(むつ) です。Bグループの討議結果を報告します。
私たちは、工事業者がちょっとした事故を起こした事例を基に、環境管理において留意すべきことを考えました。企業では複数の人が働いています。また社外の人へ依頼したり、議論することもあります。そういったときお互いの意思疎通が行われていなければ1たす1が2どころか、ゼロとかマイナスになることもあるわけです。特に最近は、どの会社でも派遣社員とか、特定の機能を別会社化にするなど行われており、以前であれば細かく言わなくても以心伝心で分ったことが、なかなか伝わらない、理解してもらえないということが増えています。お互いに悪意がなくても、相手の意思を理解していなければ、期待通りのことができないのは当たり前です。
そしてまた、小さな問題が「ほうれんそう」の不徹底によって大問題となってしまうこともあります。
コミュニケーションが大事だということはわかりますが、では現在のように人の出入りが多く、また社外の人と共同で仕事をするようなときに、どのようなコミュニケーションを行うべきかということが問題です。
この辺はグループ内で十分議論したとは言えず、私個人の見解なのですが、事前にこんな詳細まで必要かなと思われるような基本的なことまでを、意見交換し、それを書面に残すことだろうと思います。「言った、言わない」という問題が起きないように、しっかりと決めておく、記録に残しておくということが必要と思います。
また、PDCAといいますが、多くの仕事ではPDCだけで終わってしまっているのではないでしょうか。つまり中間でチェックして是正をかけていないのではないかと思います。仕事が終わってから、「これじゃ違う」と言っても手遅れです。常時、監視し、適切にフィードバックをかけること、これが大事だと思います。
以上です。」
岩代
「あー、Bグループの岩代だがね、陸奥さんのお話はその通りなんだが、若干補足説明したい。
それは問題を起こさないように、コミュニケーションを図ると説明してましたが、私はちょっと違うと思う。問題はコミュニケーション不足そのものだと考えているんだ。
何事か事故や不都合が起きても、それだけでは問題じゃない。それは発生して当たり前の事態なんだ。発生したとき、すぐに関係者に伝え、皆で最善策を考えて実施するのは会社では当然で、そういったものを問題とは言わない。
コミュニケーション不足によって、許容できたはず対策できたはずの不具合が問題になる。そう思う。」
出羽
「出羽です。私も一言述べさせてください。コミュニケーションというのは、仕事上のことはもちろんですが、先輩から後輩への指導や、失敗を含めた経験談を伝えることもあります。私の勤めている会社は創立されてまだ10年の若い会社です。総務課長を拝命している私ですが、総務部門では私の先輩がいません。今回の研修で総務の大先輩の岩代さんにお会いできて大変勉強になりました。研修会の効果にはそういうことがあったと申し添えておきます。」

土佐
「Cグループの土佐です。Cグループでは省エネを進めるために、職場の人の同意協力を得るにはどうすればよいかということを考えました。結論と言えるものまでは至りませんでしたが、方向としては先ほどのBグループの陸奥さんの報告にありましたようにコミュニケーションが重要だということはもちろんですが、相手に理解してもらうためには、正しい情報を提供して実施することの必要性の理解を得なければならないということです。いくら正しいことをやれと指示しても動きません。馬を水場に連れて行っても水を飲むかどうかは馬の意思です。
もちろん相手を納得させるというために、ウソといってはなんですが、プロパガンダ的な行為は不適切です。地球温暖化のような怪しげなことを叫んで、恐怖で人を動かすのはあまりにも低俗で犯罪行為です。
情報、それも出典といいますか聞く人が検証できるような形で提供し、そして理解してもらい、こちらと同じ考えになってもらわなければなりません。正しいことであっても、その理由を説明せずにやれというのも間違いだし、ウソをついて相手を納得させて間違えたことをさせるのだめなのです。正確な情報を提供し、相手に納得してもらい、行動してもらうことこそ、あるべき姿であるということです。
行動するということはエネルギーを使います。エネルギーと言っても体力だけでなく、気持ちを変えるということです。そのためには、その行動による見返りがあり、それが行動に必要なエネルギーよりも行為者が得る見返りが大きいということも必要です。もし省エネ活動をしても、投じた費用や労力より削減効果が小さければしないほうが良いですから。
人を動かすには、相手の利益になることを示し納得させること、それが重要だということが大体の方向でした。」

出雲
「Dグループの出雲です。私たちのグループは環境管理に問題がある子会社があり、しかもその社内に自発的に改善しようという動きがない場合、それに対して親会社がどのように指導していくべきかを検討しました。結論というものはないのですが、そこで考えられた対策の概要を申し上げます。
まず私たちは鷽八百グループに属していますから、1社の不祥事がグループ企業全体の評価に影響します。ですから、他社の問題であると放置することはできません。
ひとつはまず本来のルートである、派遣している取締役、監査役からの問題提起があります。ただこの方法は形式的であり、社内の草の根レベルまで徹底できるのか不安があります。
ひとつは、考えられるあらゆる方法で、その会社に圧力をかけるべきだということです。行政、ISO認証機関、顧客、その他の利害関係者から社会の要求というか遵守すべきレベルを教え理解してもらうということがあります。そして必要な場合は、例えばISO認証機関を動かすことも必要だと考えます。
ひとつは、親会社の関係部門が協力して、コンプライアンスの重要性を指導教育していくことが重要です。といいますのは、情報セキュリティはしっかりしているが、環境管理はしっかりしていないというようなケースは少ないんじゃないかと考えるからです。環境管理がしっかりしている企業なら、情報も、労働安全も、独禁法も遵法はしっかりしているだろう、そしてその逆もまた然りと考えるからです。
ひとつは、その問題の是正に限らず、親会社の監査や監視レベルを上げて、子会社が遵法逸脱しないように注視することが必要です。本来ならそれぞれの会社が遵法体制を確立して自主的に自律的に環境管理をしていかなければならないのですが、低レベルであれば、親会社はそれに合わせた行動をとることもまた必要です。
そして最終的に法違反を起こさせない、あるいは早期発見できる仕組みを作ることということが必要です。」

五反田
「各グループの発表ありがとうございました。では主催者である環境保護部を代表して、山田の方から講評と挨拶をさせていただきます」
山田
「昨日、今日とお疲れ様でした。それぞれのグループで討議した結果、環境管理のさまざまな要素が重要だという意見に至ったということは素晴らしいことだと思います。
ちなみにAグループの法規制の把握はISO14001では『4.3.2法的及びその他の要求事項』にありましたね。Bグループのコミュニケーションの重要性はISO14001の『4.4.3コミュニケーション』です。Cグループの正しい情報の把握と周知については『4.4.2力量、教育訓練及び自覚』の中の、『自覚』そのものでしょう。Dグループの管理ということでは、『4.4.1資源、役割、責任及び権限』に明記してあります。
今回のケーススタディではどのグループも、ISO認証の効果がないという意見がありました。確かにそれは事実のようです。世間でも最近はISO認証の信頼性が低下しているとか、審査員の力量に問題があるなど言われています。しかしISO規格そのものは真理であると私は思います。鷽八百グループの多くの会社はISO14001を認証していますが、その仕組みが本来の会社の仕組みと乖離していたり、あるいは規格のオウム返しで具体的な無く細かいところまで展開していないために、有効に働いていない会社もあると考えています。そして余計なことをして仕事ばかり増えているところも見ています。
ぜひともISO14001の本質をご理解していただき、無駄なことをせずに会社に役に立つような仕組みを作って動かしてほしいと思います。
何事も基本ができてないと応用もできず、また普通はなんとかなっていても問題が起きると途方に暮れるということになってしまいます。環境管理の仕組みはISO規格を参考にしっかりとした背骨を作っておかないとなりません。
もちろんISO認証することはまた別問題です。ISO認証しなくても、ぜひともISOを参考にしてほしいと思います。
現実のお仕事ではケーススタディのように皆で議論したり、囲碁や将棋のように『まった』をしてやり直しができるわけではありません。しかしこういったシミュレーションを多数行い、対策を考えていれば、役に立つと思います。」

うそ800 本日の自慢
ケーススタディを適当に書いて、その結論がISO14001規格で決めている主要な要素であったということは、たまたまの偶然なのでしょうか?
あるいはあらかじめそれを計画してケーススタディの内容を書いたのでしょうか?
さあ、どっちでしょうか?
 実は、私にも・・・・

うそ800 本日の記念写真

但馬 出羽 伊予 出雲 藤本
陸奥 淡路 土佐 五反田 横山
山田 竹島 国後 長門 岩代尖閣



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