ケーススタディ 10年目のISO事務局 その9

12.11.15
ISOケーススタディシリーズとは

前回までのあらすじ
山田の元上司で現在関連会社の取締役である福原から、その会社のISO事務局が傍若無人で好き勝手をしているので、担当者をいさめてその会社のEMSを役に立つものに見直してほしいという依頼があった。山田は直接その担当者を指導するのではなく、監査で不適合を出して、それを是正させる過程で教育していこうと考えた。
そして定例の環境保護部による環境監査を行った結果、案の定、たくさんの法律に関わる問題やISO規格への不適合などが検出された。
是正も相手に任せたらまともなことをするはずがない。そこで山田は是正処置の指導を行うことにした。
是正指導といっても、単に目の前の不具合をどう処理するかではことはすまない。ISO規格の意味、解釈を説明もしたし、別の認証機関の審査に立ち会わせて、世の中にはいろいろな審査をする認証機関があることを教えたり、工夫して行っている。
と、これだけではストーリーがお分かりにならないでしょう。ぜひ「10年目のISO事務局その1」からお読みください。
今回はISO規格にはあまりというか全然関係ないので、そこはご了承願います。



藤本と五反田の新事業スタートまで、あと半月となった。今日は山田と事業計画の最終確認をしている。横山がいれば彼女も参加したいというところだろうが、今日は監査でお出かけだ。彼女は最近では週4日は泊りがけの出張だが、自分から希望した職でありつらいとは言えない。山田は横山もよく頑張っていると見ている。これで藤本と五反田がいなくなればますます横山の負担が増えるが、そこをうまく調整するのが山田の仕事だ。
五反田   山田
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藤本
ともかく打ち合わせ場に三人が集まり、コーヒーを飲みながらワイワイと語る。
山田
「本日は廣井さんに報告する前の最終確認をしたいと考えます。新事業を立ち上げたけど仕事がありませんとか、売り上げがでないとか、損益が赤とかではお叱りが来ますので・・」
藤本
「では私から概要を説明する。
まずひとつは環境保護部からの委託である『環境法規制システム』の運用と改善の仕事だ。当面は現行システムの運用のみだけで、改善については別途契約となる。運用とは法改正やユーザーからの要望・問い合わせの対応、及び必要に応じて情報の追加見直しをすること、この委託料はソフト会社への支払いを含めて委託金額が700万である。
ふたつめは鷽八百グループ内の環境教育だ。当社が独自事業として行うものはここには含まない。仕事内容は、鷽八百社が社内に行っているものと、関係会社に対するもので、テキスト作成、講習の実施、関係するウェブサイト作成などで、外部ソフト作成込み印刷代を含まずで年間1000万を見ている。
みっつは、語るも恥ずかしいが・・・・環境保護部の監査の下請を織り込んでいる。横山さんに話をして、監査員の仕事をもらうことの了解を得ている。これを年間250万程度としている。まあ、環境保護部にしても、今まで五反田君と私がしていた分の監査工数が不足するわけで納得いただけるだろう。
ここまでは親会社というか廣井さんの温情でいただいた仕事で、数字が読めるのだが・・・これ以降は独自事業で、本来はこれで飯を食っていかなければならないんだ。
さて、よっつめは、ISO認証や環境管理のコンサル業で、年間売上700万を見ている。
内容としてはいろいろ考えている。
当社グループの企業はほとんどが認証しているが、そのシステムの軽量化や本来業務への見直しなどのコンサルサービスを提供していきたい。今回の大法螺おおぼら機工の例をみると、ISO14001を認証している企業において、現状に問題がある会社は珍しくないように思う。大法螺は環境保護部が受けて対応したから無料で指導しているが、ビジネスとして考えるなら、かかった工数からみても、効果から考えても、100万はもらってよいのではないだろうか。世間一般のISOコンサル料金から考えても高くはないだろう。こういう仕事が年に数社とれれば御の字だがなあ。
そのほか、当社グループで外部のコンサルを依頼している企業はけっこうあるので、そういったところに売り込みを図りたいと考えている。
それから環境保護部の監査を行って感じているのだが、どの関連会社でも内部監査のレベルが低く向上が必要と思われるが、我々が内部監査を請け負うことも考えている。街のコンサルや認証機関でも、内部監査を請け負うなんて言っているところがあるが、我々は当社グループの状況を理解しているし、ISO規格対応ではなく、企業の環境管理全般についての監査ができることをアッピールしたい。実は知り合いなどにお願いして既に10件ほど話を付けた。
その他、環境に関する講習会、講演などを考えており、これもつてを頼って10件ほど確保している。とはいえ交通費別で1日数万にしかならないね。ISOの権威が講演しても謝礼は10万程度というから、わしらのレベルではそんなものだろう。
とりあえずは以上で、締めて2700万になる。もちろん全部が入るわけではなく、その内からソフト会社への支払いが500万程度ある。私と五反田君の2名で2200万、まあスタート時点ではこんなものかね。
契約審査員をすることも考えたが、日当を考えると、単純に売り上げを上げるためには割に合わない」
五反田
「ISOコンサルをする上では、ISO審査員をしているということはメリットになると思いますが・・」
藤本
「確かにISO審査員あるいは主任審査員の資格があればコンサルの仕事がとりやすいかもしれない。しかし契約審査員の仕事は、日当の低下が激しいからね」
山田
「ともかくスモールスタートでいいんじゃないですか。ただこの金額というか、仕事量は必達しなければなりませんね」
五反田
「もう何年も前になりますが、環境保護部がISO14001認証するようにと関連会社に指示文書を出したことがありましたね。関連会社はそれを親会社の命令と受け取って認証したわけですが・・
このたびは、関連会社の中でISOの見直しや環境全般のコンサル会社ができたということの周知と、ぜひともこの会社を活用するようにと公文を出してください」
山田
「五反田さん、廣井部長もそのおつもりですし、それはもちろん対応します。
ただお宅としてもグループ企業だけでなく、外部の企業にも営業活動を進めてほしいと思います。やはり外販をしていかないとマスが確保できず永続できません。そしてもちろん最重要なことは提供するサービスの価値ですよ。それは皆さんが日々の仕事で価値があることを立証していくほかありません」
藤本
「それでだが、事業を始める前からこんなことを言いだすのはなんだが・・・」
山田
「なんでしょうか?」
藤本
「このビジネスを推進するには、我々二人ではパワー不足だ。福利厚生などインフラや電話番などの庶務は、母体の鷽機械商事のほうで面倒を見てくれるというが、営業活動などを考えるととても二人では回せないと思う。
それで事業開始時点でISOや監査の指導ができる者がもう1名欲しいということ、1年後くらいには工場の公害防止に詳しいものを1名補強したいと考えている。そこで当面の1名だが・・」

山田
「藤本さんにはその第三の男か女かの当てがあるのですか? まさか横山さん横山 なんて言っても彼女は出せませんよ」
藤本
「横山さんじゃないが目星はつけているんだ。大法螺機工の川端をどうかと思っているのだがね・・」
山田は絶句した。よりによって問題児を・・
五反田
「山田さん驚いたようですね。その件については藤本さんとだいぶ話をしたのですが・・以前の川端さんは、あるべきEMSとか現実の環境管理を知らなかったと思います。まさに天動説そのものでした。しかし今では川端さんもだいぶISO規格を理解していますし、長年サラリーマンをしていて会社の仕事というのも心得ていますから、一から指導するよりは手っ取り早いと思います」
藤本
「ISO9001の認証制度が日本で動きだしてから、ほぼ20年が経過した。どこでもISO担当者の代替わりが始まっているようだ。ときどき雑誌などで『ISO事務局10年目』なんて特集とか、『ISO14000事務局10年目の本音』なんてカラムも見かける。仕事柄、そんなのを見かけると必ず読んでいるのだが、我々のしていることに比較するとオママゴトだよね。まだまだ日本には間違えたISOとか、天動説が蔓延しているようだ。
そういった従来タイプというかダブルスタンダードの仕組みや、間違えた理解での活動を是正指導するには、彼のような経歴の人が適任かと考えているんだ」
山田
「お二人がそうお考えなら、よろしいのではないでしょうか。福原取締役とは話しているのですか?」
藤本
「大法螺機工の是正が完了した時点で出してもらいたいという話をしている」
山田
「わかりました。話を戻しますが、そうしますと人件費は5割増しになります。売り上げが変わらず川端さんの人権主費と副費を考えると1000万以上増加しますが、それは・・」
藤本
「私の人件費は鷽八百が補てんするんだろう? 審査員に出向した場合でも補てんするはずだったのだから」
山田
「そりゃ補てんはありますが、藤本さんの人件費を丸々100%補てんするなんてありませんよ。そんなことをすれば利益供与になってしまいます。当面名目をつけて補てんはしますが藤本さんの賃金の全額は出ません。半額くらいですよ。
そもそも当社が支援するという意味で情報システムの維持や教育の仕事を出すわけで・・出向と言えど本来なら自分の賃金は自分で稼いでいただかないと・・
ともかく売り上げ2200万で2.5人ですか・・・これではちょっと成り行きませんよ」
藤本
「廣井さんに見せるにはこれではだめということか?」
山田
「はっきり言ってそうですね。鷽機械商事の事業と言えど、環境保護部にも責任はあるわけで、初めから損益がまっかっかでは承認できるわけがありません」
藤本
「では売り上げを上げるしかないね」
山田
「そりゃそうですが、数字だけ書き直しても意味がありません。現実に事業を行っていくのですから絵に描いた餅ではだめです。
川端さんの件は福原取締役とどんな話になっているのか知りませんが、出向受けするなら多少は補てんが期待できないのでしょうか?」
藤本
「なるほど、そりゃそうだね。そんなことまでは詰めていなかった。相談してみよう」
山田
「当面の間でも川端さんの賃金の半分が出向元から補てんされるなら、いいところいくんじゃないですか。どちらにしても長期的には採算がとれなくては事業として存在できません」
藤本
「大法螺の是正の打ち合わせは今週だったよね。そのとき福原取締役と調整しよう」



金曜日の午後、藤本、五反田と山田は大法螺おおぼら機工を訪ねた。大法螺を訪れるのも、これが最後になるだろうと思う。
大法螺側は例によって福原取締役、川端、桧垣が顔を出した。

川端川端五郎


■  ■


■  ■
五反田五反田
福原福原山田山田
桧垣桧垣藤本藤本

福原
「みなさん、長い間いろいろとご指導ありがとうございました。いくつものテーマがありましたがどれもほぼ見通しがついたという感じです。本日はまずひとつは環境保護部の監査の是正計画について、ふたつめはISO認証機関の調査状況について進捗説明をしたいと思います。
じゃあ、はじめに、是正計画について川端君から」
川端五郎
「ここでご説明したものでご了解得られれば、書面で是正計画を環境保護部の方に提出したいと考えています。
是正の方向は前回のお話のとおりに進めています。日程ですが、文書関連の見直しは既に進めており、今月中にはほぼ完了すると思います。
前回いらっしゃったときには結論が出ていなかったのが2件ありました。まず監査については社内で議論した結果、監査部の業務監査に一本化することになりました。ただ環境と品質については監査部として監査部員だけでは心もとないということなので、業務監査に品質保証課と環境課から監査員を参加させることになりました。自部門は監査できないという件については、今まで環境監査をしていた他部門の人のやりくりなどで対応しようと思います。
次に順守評価ですが、これも総務部の遵法点検に一本化することになりました。先日、藤本部長さんから総務部の遵法点検でも見逃しがあるというご指摘がありましたが、これについて総務の担当者と協議して環境法規制の点検項目を盛り込むよう見直しをしています。
このようなことでほぼ是正を進めています」
山田
「是正というのは不具合を直すことではなく、再発しないようにすることですが、そういう観点ではどうでしょうか?」
川端五郎
「今回は、文書体系の見直しもありますし、順守評価や内部監査のシステムを見直しているわけで、監査でご指摘されたことについての再発防止は十分行っているつもりです。
更にさかのぼればISO規格の理解不足などが原因のわけですが、それについては今までの山田さんの教育などによって理解できたというか」
山田
「なるほど、わかりました」
桧垣
「では次は私が認証機関の選定について報告します。
先日お見せした文案を美辞麗句で飾り立てて、都合10社の認証機関に送付しました。
そのうち回答が来たのは8社で、2社からは返事がありませんでした。このご時世ですから仕事が忙しくて当社の仕事はいらないというわけではなく、その認証機関にとっては、当社の要求レベルが高すぎたのでしょう」
五反田がプッと吹き出した。
桧垣
「回答内容を見て、これならと思えたのは3社ありました。その中には、川端係長が陪席した岩口さんの認証機関からのものもあります」
藤本
「桧垣さん、それで面接までしたのかね?」
桧垣
「実を言いまして1社のみ面接をしたのですが、ちょっと最初のもくろみとは大きく変わってしまいました」
藤本
「ほう、どういう進展があったのだろうか?」
桧垣
「私が説明しましょうか? それとも福原取締役からの方がよろしいですか?」
桧垣が福原を見て言う。
福原
「これは桧垣君の仕事だから、君から話してくれ」
桧垣
「川端係長から岩口さんのお話をお聞きしていましたので、ここを本命と考えて一番目に来ていただきました。先方は岩口社長自らお見えになりました。
そこで弊社の過去のいきさつ、これから考えている体制などを説明しました。
岩口さんはこちらの説明を聞いて、単刀直入にISO認証の必要がないのではないかとおっしゃいました。要するにしっかりしたEMSを作って環境経営を行うことは必要だが、顧客から認証を要求されていないのであれば、わざわざISO認証する必要はないというのです。
もうひとつの理由は、定期的に親会社の環境監査を受けていること、実はそのとき今回の監査報告書もお見せしたのですが、その方法や指摘事項も適正でわざわざ外部の認証機関による審査を受ける必要がないとおっしゃいました」

山田はええっという思いがした。
藤本も五反田も同様だったようだ。
藤本
「岩口さんは認証を受けないで、自己宣言をした方が良いとおっしゃったということですか?」
桧垣
「いや、そうじゃないです。そもそも外に対してISO14001規格に適合しているという情報発信が不要だというのです」
福原
「補足すると、当社の顧客といっても最大手は親会社の鷽八百社だし、直販している代理店からもEMSについて何も要求はない。また当社は製品だけで建設工事など役務提供はしていないから国土交通省の入札時の加点などとも縁がない。近隣住民だって遵法と事故にはうるさいが、ISOなんて興味がない。そんな状況を岩口さんは良く調べてきて、認証も不要、自己宣言も不要、しっかりと環境管理を継続すればいいじゃないかというんだ」
藤本
「しかし、それも商売っ気のない話ですね。先日、栃木鷽機械で岩口さんにお会いしたときは、部下の中島審査員からぜひとも鞍替えしてほしいと語っていましたがね・・まああれは冗談半分としても・・」
川端五郎
「岩口さんがいらっしゃった時、私も同席しました。私も彼の言葉を聞いてびっくりしました。岩口さんは商売よりもまずその会社の立場で考えているのだと思います」
山田
「じゃあ、御社はもうISO14001認証を止めるということですか。まあ、当社としては遵法と汚染の予防に努めていただければ、なにもいうことがありません」
福原
「いや、それを聞いて私は惚れ込んでしまったんだよ。まさか岩口さんがこちらがその話を聞いてぜひとも依頼したいと考えるだろうと計算していたとは思えないがね」
山田
「はあ?」
福原
「その場で岩口さんのところにISO審査を依頼することに決めた」
藤本
「ほう!」
福原
「もし岩口さんが、そこまで読んでいたならそれでも良いと思ってね。ハハハ、今までの認証機関とはだいぶ違う審査を期待しているよ」
藤本
「私は岩口さんの審査を2度しか見ていませんが、間違いないと思います」
五反田
「私は過去何年も岩口さんの審査を受けていましたが、あそこならレベルの高い審査をすると思いますよ」
福原
「ということで、この1件はおしまいですわ。ともかく勉強になりました。もちろん岩口さんのところも何年も継続するのが良いかどうか、2年も審査を受ければ、もう認証機関の審査を受けることはないという結論になるかもしれないし、やはり外部審査を受けることに意味があると考えるか・・・まあ、それはこれからの実績次第ということです」
山田
「そうしますと今日の議題は終了ということになりますね。
ちょっと別件がありまして、福原取締役だけとお話がしたいのですが」

福原は話題の予想がついたのか、川端と桧垣に席を外してくれという。
山田
「藤本部長からお話がついていると聞きましたが、川端さんを藤本部長の新規事業に出向させることは了解されているのでしょうか?」
福原
「まだ本人とは話していない。私としては彼の処遇をどうしようかと考えていたところなので、話自体はありがたい提案だと受け止めている。この話は正式なものと受けてよろしいのですね」
藤本
「そうご認識ください。そこで露骨な話ですが、出向の場合、賃金の負担についてはどうお考えでしょうか?」
福原
「利益供与にならない程度にある程度は名目を付けて負担することは当然でしょうね。具体的には人事と話をしないと決められないが、4割か5割というところでしょうね。彼の年齢から考えると片道切符となるでしょうから、2年くらい出向扱いでその後は転籍ということでいかがでしょうか」
山田
「藤本さん、まあ妥当なところかとおもいますが、どうでしょうか?」
藤本
「正直言いまして新事業なので先行きの見通しはわかりません。2年で見通しがつかない場合は戻すという前提で考えてくれませんか」
福原
「藤本さん、だいぶ弱気ですね。当社のようにバーチャルEMSの会社は世の中にたくさんあると思います。そういう会社の仕組みを見直すという仕事は多いんじゃないですか」
藤本
「そういう実態を問題だと認識している会社が少ないですよ。そんなものだと考えていたり、ISO事務局を社内失業者対策とか税金とみていたり
御社だって福原さんの前任者は問題であるとは認識していなかったのでしょうし・・」
福原
「開発は藤本さんの専門でしょうけど、営業は私の専門です。世の中に自分から欲しいよと手を挙げている人なんていません。いらない人に無理やり売りつけるのは犯罪ですが、自分が必要としているものを知らない人が多いのです。そういう人に、あなたがこれを入手すればこのようなメリットがありますと教えて売るのが営業ってものですよ」
藤本
「いや、正直言って福原さんに来てほしいですわ」
福原
「川端って男はけっこう営業センスがあるかもしれませんよ。実はね、彼がISO関係でちょっとした有名人だってことは以前もお話していると思います。今回の当社のEMSの見直しについてもISO関係の集まりで発表しているのです。近く雑誌にも掲載されるとか・・今までの彼が主張していたISOとまったく相反することなのですが、逆にその改革が評価されているようです」
藤本
「福原さんはそういうことを良くご存知ですね」
福原
「どの会社でも社内の活動を社外発表とか講演をする場合、事前に許可を得る制度があると思います。それと講演後の報告がありますから状況はだいたいわかります。
今回の件で、川端も一度は自信喪失になりかけたのですが、そんなわけで最近はまた自信を持って仕事をしていますよ。ひょっとしてですが・・」
藤本
「はあ、ひょっとして?」
福原
「ひょっとすると川端は藤本さんのところに行きたくないというかもしれませんね。当社ではもう川端を必要としていないということは本人も認識していると思います。本人も身の振り方を考えているようなのです。桧垣から聞いたのですが、職場でISO審査員になりたいと語っていたそうです。もしそちらが具体化しているなら、藤本さんを袖にするかもしれませんね」
藤本
「なるほど、本人次第ということですね、それはそれでしょうがないでしょう。
しかし川端さんも転んでもただでは起きないやつだ 笑」
福原
「いずれこの件については数日、時間をいただきまして、本人とも話をしてご返事差し上げます」
藤本
「よろしくお願いします」
山田
「では、福原さん、これで福原さんからのご依頼の件は任務完了ということでよろしいですね」
福原
「山田君、長い間いろいろとお世話になりました。当初の予想よりも大幅に良い方に変わったと認識している。まあ、これを機会にときどきは三鷹まで遊びにきてくれよ」

大手町までの帰り道である。
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藤本
「川端もけっこう山っ気のある人のようだね」
五反田
「でもめげて自信喪失になってしまうようでも使い物になりません。どんな仕事でも、したたかであることが必要です」
藤本
「もし話が付いたなら、とりあえずは川端を環境保護部の監査に使えるようにすることだね。速やかに売り上げに貢献してもらわなければならない」
山田
「まさかそれを私の方に依頼するってことはないですよね。それこそがお宅のビジネスなんだから」
藤本
「いや、そんなことはしませんよ。
しかし山田さんが教師としていかに優れているかよく分りました。私は山田さんに教えられたわけだが、山田さんは誰の指導もなく自らを教えてきたのだから。またISO規格を山田さんのように分りやすく教えてくれる研修機関や講習会は知るかぎりないようだ」
五反田
「ISO規格だけでありません。環境法規制に詳しい人は工場などにはいますが、何も知らない人に法律の読み方から教えることができる人はまずいない。山田さんはそれができる希少な人です」
藤本
「本当なら山田さんのような人がこのようなビジネスを担当すべきだね。とはいえ、年齢からいって、まだまだ本社の第一線で頑張ってもらわないとならない」
山田
「そんなにほめられても何も出ませんよ。皆さんがしようとしているビジネス分野は、福原さんがおっしゃったように需要はあるのですが必要性に気づいていないのです。必要性を気付かせて、そしてその成果を見せれば前途洋洋ですよ」
藤本
「山田さんも営業出身だったね。うーん次は公害防止担当よりも営業担当者をスカウトしようか」
山田
「費用構造をしっかりとお願いしますよ。売り上げを伸ばすことに気を取られ費用増加を抑えなければ、繁盛貧乏ですからね。
そしてそれよりも大事なことですが、要員を外からスカウトするのではなく、自社で育成できなければ看板が泣きますよ。全くの素人をいかなる業務のプロにでも育てることができなければ、ひと様からお金をもらって研修なんぞしちゃいけません」
藤本
「いや、これは厳しい。おっしゃるとおりだ。
ともかく当分は関東圏内の関連会社に顔を出して仕事を取ることを考えている。それととりあえずは講習会の注文がみっつ入っている。がんばるよ」

藤本の仕事も大変だろうが、順調にいけば鷽機械商事から独立して社長になることが見えているわけで分が悪いわけではない。五反田にしても古巣の総務に戻って埋もれるよりもやりがいがあるのではないだろうか。万が一、失敗しても母体が引き取ってくれるわけだし、そう山田は思った。

うそ800  本日のまとめ
これでおしまいかって?
うーん、はっきりとおしまいにするにはもう一回

その10に続きます。



N様からお便りを頂きました(2012.11.15)
ケーススタディ 10年目のISO事務局 その9
2名で2200万では甘すぎる?
お二人の年収のレベルがわからないのですが、感覚的には、間接コスト(事務所費用、光熱費、機器などの設備投資、消耗品、経費管理の事務費用など)などを考えると、年収×1.4倍かかるというのが私の経験上の感覚です。
一定規模以上の組織であれば、前線で働く人は年収の2倍から4倍というのがノルマだと思います。
営業を一人、事務管理を一人、実働部隊で2人であれば、最低でも売上げは、粗利ベースで3000万〜4000万でしょう。
なんてツッコミを入れてもいいのかな?

N様 毎度ありがとうございます。
専門的で、厳しいご指摘、ありがとうございます。
費用構造は、規模にもよると思いますが、基本的におっしゃる通りだと思います。
ただこの場合、藤本は会社を立ち上げたわけではなく、子会社で新しい事業に進出しという想定でございます。
ですから、文中でもインフラや庶務業務は本体が面倒を見てくれる(業務を代行して費用を請求しない)としております。
次に、出向者を出した側は費用の一部を負担するのが現実です。このとき、あからさまな補てんは利益供与になってしまいますので、研修期間であるとか給与水準の違いなどの名目で行います。通常、出向者の賃金の半分くらいが世間相場かと思います。(もちろん受入側がぜひともと要請した技術者などの場合は、補てんがゼロということもあります)
また、当初は営業も実働部隊も藤本、五反田の2名の予定であります。そういうことを考慮すると、実質1.5人の人件費負担ですから2200万売り上げればなんとかなるとおもいます。
山田は、川端を加えると人件費が2.5人になるので2200万では足りないが、川端の人件費も半分補てんされれば都合2人分の人件費ですから、なんとかなるかと妥協した雰囲気を出したつもりです。
もちろんそれはスタート時点であって、事業として継続していくにはもう少し数字を出さないといけないでしょう。
見方を変えますと、大手企業内部にはこういった社内コンサルといえるような仕事をしている人や部門がありますが、一人1000万稼げば御の字でしょう。会社で地位が上がって給与も上がっても、それに見合ったお金を稼ぐことはまず不可能です。


ダストコマンダー様からお便りを頂きました(2012.11.16)
おばQ様
その後も拝読させていただいております。
泉のように湧き出るお話に圧倒されています。
私ごときがおばQ様のメッセージに共感などとはおこがましいのですが、地動説に立脚するには、
「収入は顧客からしか得られない」
「社内にはコストしかない」
ことを早いうちから認識出来るかどうか、信じられるかどうかだと思います。
おばQ様からはその信念が伝わってきます。

ダストコマンダー様 毎度ありがとうございます。
いえいえ、そんな大層なことではありません。定年退職者の暇つぶしでございます。
ただおっしゃるように、ISOのための仕事をして、会社に貢献しない担当者、そしてそれを助長する審査員やコンサルには心底から憤りを感じています。
おっと、もう引退した身、静かにしていなければなりませんね。反省します。

名古屋鶏様からお便りを頂きました(2012/11/16)
そろそろ「宿命のライバル」とか「新たな強敵」とか、そーゆーアツい展開が怖いですw


名古屋鶏様 毎度ありがとうございます。
ドラゴンボールにしても、スラムダンクにしても、次々と強敵が現れて、しかもだんだんとレベルアップしていくんですよね。
いやあ、つらいなあ



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