ケーススタディ 病院に行く その4

13.07.14
ISOケーススタディシリーズとは

前回までのあらすじ
鷽八百機械工業の太田という課長が、地方都市の病院の事務長に出向した。その病院はISO14001を認証していて、太田はEMSの管理責任者に任ぜられた。太田は今までISOに関わったことがなかった。今、ISO規格を勉強しているものの、なかなか理解できない。いや勉強すればするほど、その病院のEMSがISO規格と乖離していること、そして無駄なことばかりしているように思える。それで今後どうしたものかと悩むばかりだった。太田が悩んでいることを知った人事部は、環境保護部の山田に太田の支援を依頼した。
山田はその病院を訪問して太田とコンサルを依頼している黒部と今後の対策の検討をはじめた。

ある朝、山田に太田からメールがあった。


山田は改めてその病院が依頼している認証機関を確認した。山田は鷽八百機械工業グループ企業のISO認証状況のリストを作っている。エクセルの表に凸凹でオートフィルターをかけると5社あった。そのひとつはつい先日、山田が環境監査でお邪魔したばかりだ。山田は名刺のファイルをみて、その会社のISO担当である総務課長に電話した。山田は考えこむとか躊躇するということはまったくない。

?
「ハイ、鷽八百システムウェア株式会社総務部です」
山田
「鷽八百の環境保護部の山田と申します。森川課長をお願いしたいですが」
しばらくして貫録のありそうな声が聞こえた。
?
「ハイ、森川に代わりました」
山田
「先日環境監査でお邪魔した山田です。お世話になっております。」
?
「おお、山田部長、こちらこそお世話になっております。先日の監査で頂いた不適合は現在鋭意、是正方法を検討中でありまして・・」
山田
「いえいえ、今日の要件はちょっと違うのです。御社はISO14001を凸凹QAから認証していると聞きましたが・・」
?
「ハイ、凸凹ですが、それがなにか?」
山田
「いえね、別の関連会社さんもそこで認証しているのですが、ちょっとトラブルがありまして、御社の場合はどうかなと教えてもらいたいと思いまして」
?
「はあ、お役にたつなら・・・具体的にはどのようなことでしょうか?」
山田
「具体的にいますと、御社の環境側面の決定方法はどのような方式でしょうか?」
?
「私どもは製造業といってもソフトハウスでしょう、いろいろな環境負荷を点数で評価するってのが世の中の大勢らしいですけど、当社の業態にあいませんので・・
それで我々が考えた方式ですが、当社の環境への関わりをいっぱいリストしましてね、その中から実際に仕事の上で重視している項目を選んで著しいとしました。もちろんそれを選んだ理由を記しておくのですがね・・
え、審査でなんか言われたかって? いやいちゃもんはつきませんでした。逆に感心されましてね。当社の方法をその認証機関で認証を受けている会社の発表会で解説したことがあります。大したもんじゃないのにね」

山田はこれで十分と判断してお礼を言って電話を切った。
山田はもう二社ほど凸凹QAで認証している会社に電話した。その二社ともスコアリング法でしているとのこと。とりあえず情報は蒐集した。
ともかく凸凹QAとしてはスコアリング法でなければダメとは決めつけてはいないようだ。すると高橋審査員がどう出てくるのか、それ次第だなと山田は思った。なにかあればQA社に行こうという話にしよう。



暑いぞ
1週間後、山田は指定された日の昼下がり、太田の勤める病院に出向いた。今日も真夏の太陽が照りつけて暑い。エアコンの効いた病院に入ると山田はほっとした。
指定された時刻より30分ほど早かったが既に黒部は来ていた。

山田
「やあ、黒部先生、高橋審査員から話があったとは、どういういきさつなんでしょうか?」
山田はくったくなく質問した。
黒部
「はあ、このたびは私が余計なことをしてしまったようであいすみません。いろいろ考えて一応私から高橋の方に了解をとっておこうかと思いましてメールしたのですよ。そうしたら高橋がそんな方法は絶対にダメだと言いまして、こちらに乗り込んでくるというのです」
山田
「はあ、どうしてダメなのか興味がありますが、黒部先生にお聞きするまでもなく、まもなく高橋さんがお見えになるでしょうから、それまで待ちましょう」
太田
「そうですねえ〜、私も高橋さんとお会いするのは初めてなので興味があります」
太田も最近はISOの議論を楽しむようになってきた。以前、悩んでいたのがウソのようだ。
しばし3人で雑談していると高橋さんが登場
4人が自己紹介すると全員着席
高橋
「失礼ですが山田さんは、病院の方ではないようですが、どういうお立場でご参加なのでしょうか?」
山田
「立場というと太田事務長さんと黒部先生からの要請を受けてここにおりますが、それが何か?」
高橋
「第三者のご参加はご遠慮願いたいのですが」
山田
「この場は審査ではないのですから、杓子定規は止めましょう」
黒部
「私からも山田部長にご参加をお願いしております」
高橋
「黒部さん、あなたも当事者ではないのでご遠慮してほしいのが本当のところなのですが」
太田
「当事者となりますと、私は組織の管理責任者ですから、間違いなく当事者なのですが・・
高橋さんは、凸凹認証機関さんを代表して出席されていると考えてよろしいですか。そうであれば今回の打ち合わせ議事録を作成し双方で保管したいと思います」
高橋は困ったような顔をした。
高橋
「いえ、そういうわけではないのです。私は過去のいきさつもあり、お宅様が審査でトラぶらないように事前にお話をしておきたいと考えましたので、そうご理解いただきたい」
山田
「すると高橋さんも非公式ということですね。じゃあお互いに非公式な立場で話し合いをするということでよろしいでしょうか」
太田
「そう願いたいですね。黒部先生もご了解されていますから、そういうことで進めましょう」
高橋 高橋は自分の考えているように進まず面白くない顔をしている。
太田
「まず状況の確認をしたいのですが、当方はまだ凸凹QAさんに正式にも非公式にも、なにも話をしておりません。今回は高橋さんからお話があるという連絡を受けて集まったわけです。
それで、まずは高橋さんのほうからご用件をご説明いただきたいと思います」
山田は太田もやるものだと黙って聞いていた。
高橋
「ええと、私も正式な立場ではないのですが・・ここにいる黒部さんからお宅の病院のEMSを見直しているというお話を聞きまして、それもかなりの手抜きを考えていると聞いています。それで今年暮れに次回審査があるわけです。たぶん私が審査員としてお邪魔すると思います。
そのときに不適合がいくつも出るのではないかと懸念しまして、その考えを改めるようアドバイスしようとしましたわけで・・」
太田
「確かにこの病院のEMSは文書や記録が多すぎまして、業務に多大な支障をきたしているありさまです。私はここに赴任しまして半年になりますが、このままでは非効率極まりないと考え、ISO認証のためのEMSを止めて現実の環境管理体制そのままで審査を受けるように改めようとしております」
高橋は突然力が湧いてきたようだ。
高橋
「そうです、それが問題といいますか、ISO認証するためには必要な文書や記録があるのですよ。そもそもこの病院が認証したいということを黒部さんから相談を受けまして、必要最小限の文書記録をアドバイスしたのが今の仕組みであるわけです」
太田
「どうもその仕組みが現実的でないというか現実離れしているようで、当病院の管理には役立っていないのです。しかしながら私たちの見直しも構想の段階でして、まだ高橋さんが不適合であると判断できるようなかたちまで至っておりません」
高橋
「しかし黒部さんからお聞きしているところでは、例えば環境側面の決定方法は環境側面評価をしないようにすると聞いています。そのようなことは規格要求に反するわけでして・・・」
太田
「言葉尻を捕えて言うのではありませんが、環境側面評価とはなんでしょうか?」
高橋
「いやはや、私は太田事務長さんがISO規格を知らないと思っていましたが、やはりご存じないようですね。環境側面を決定するには環境側面評価をすることになっているのです」

世の中には環境側面評価というコンサル、審査員、そう書いてある本がざくざくと溢れている。
しかしISO14001、ISO14004をみてもそんな用語はない。きっとそういう人たちは頭の中の妄想を語っているのだろう。
え、そうすると妄想を語っていない人はいないのかも?
ところで環境側面を評価することは可能なのか? それとも環境影響を評価するのか? 無学な私にはそれさえもわからない。


太田
太田は立ち上がり額に入れて部屋の壁に飾ってあるISO審査登録証のところに行く。
「ええと凸凹さんから交付されている審査登録証がこれですが、ここにはISO14001/JISQ14001に適合であることを確認したと書いてあります。つまりお宅の審査はISO14001に基づいていると考えてよろしいですか?」
高橋
「当然です、しかしあなたはいったい何を言っているのですか」
太田
「なるほど、ISO規格に基づいて審査しているということですね。
しかしながらISO14001には環境側面評価という言葉はありません」
高橋
「ISO14001に書いてなくてもですよ、関連規格にはちゃんと環境側面評価をすることになっているのです」
太田
「勉強のために伺いますが、どの規格のどこにあるのでしょうか?」
高橋
「たとえばISO14001のアネックスとかISO14004とか・・・」
高橋は語尾を濁した。
太田
「おお、ISO14001のアネックスもISO14004もちょうどここにあります。ええとどこでしょうか?」
太田は床に置いておいたパイプファイルを取り上げて机の上に広げた。タイトルは見えないがいくつものJIS規格票がそこにファイルされている。
高橋は黙っていた。手にする様子もない。
太田
「私も一応関連する規格類は読んだのですが、どこにも環境影響評価をしろとは書いてありません。
アネックスには分析にかかる費用および時間、並びに信頼できるデータが得られるかどうかを考慮せよ、また詳細なライフサイクルアセスメントを要求しないとありますね。要するに結果が信頼でき実用的なレベルの方法を組織が考えなさいということでしょうねえ」
高橋
「じゃあ環境側面を決定する方法が客観性を持つことをどのようにして確実にするのですか?」
太田
「まず環境影響評価という言葉はないということにご同意いただけますか?」
高橋
「あなたがないというならないのでしょうねえ」
太田
「そのようなあいまいな考えで審査されているとは思いませんが、とりあえず著しい環境側面を決定するために環境影響評価をしろとはISO14001やその他の関連規格では要求していないということでよろしいですね」
山田は太田も人事屋なので、文書とか規則の積み重ねということを良く理解していると感心した。あいまいなことについってひとつずつ決めつけていくのが良い。
労働争議などの経験の賜物か?
高橋
「そのようですね。しかし著しい環境側面を決定する方法は誰が見ても納得できる客観性が必要です」
太田
「では次の論点になりますが、環境側面を決定する方法が客観性を持つこととは、どこに書いてありますか? ISO14001にもアネックスにもISO17021にもないようですが」
高橋
「きみたちはISO規格を理解していないよ。そんな生半可の読み方では間違いきわまりない。環境側面を点数化しないで決めるというなら、それが正しいことを説明してほしいものだ」
太田
「点数化しない理由というのは、ISO規格にそうすることと書いてないからという回答では不十分でしょうか?」
高橋
「その方法が正しいとどうして言えるのかね?」
太田
「うーん、しかしどうも高橋さんとは考えではなく、考え方が違うようですね。
ISO17021には組織はシステムを規格適合にする責任があると書いてありますが、審査において、システムが適合であると立証する義務が組織側にあるとは書いてありません。そもそもそんなことは悪魔の証明で不可能でしょう。不適合であると立証する義務は審査側にあるのです。
ですから先ほど高橋さんがおっしゃった、正しいといいますか、この病院のEMSが規格適合であることを私どもが説明する義務はありません。規格適合か否かを高橋さんが判定し、規格不適合であればそれを是正しない限り認証は受けられないということです。
おっと、もちろん私たちは不適合であると判定された場合、それを否定する弁論ができます。
ご存じと思いますが、裁判において被告は自分が無罪であることを立証するのではなく、有罪とする検察側の主張を論駁することで足りるのです。そして無罪であることを証明することは先ほど言いました悪魔の証明ですから。
ところで、実は私はまだ一度も審査というものを受けたことがないのですが、不適合とする場合は証拠と根拠を明確にしなければならないとISO17021にありますね。環境側面の決定を点数化して行わないのが不適合なら、これを不適合にする根拠はなんでしょうか?」
高橋
「そんなこと、著しい環境側面の決定が客観性がなく不適切であるで十分ですよ」
太田
「規格要求とはshallで書かれたことです。不適合にするには該当するshallを記述しなければなりません。先ほども言いましたが、客観的であることとは規格にありません」
高橋
「そんなこともわからないの? もう君たち審査で不適合になっても知らないよ」
高橋はまったくあきれたというふうにいう。
山田はスマホを取り出して電話した。
みなはどこに電話しているのか分らず一瞬黙った。
山田
「ああ、凸凹QAさんですか? 私、鷽八百機械工業の山田と申します。お世話になっております。私のところは御社の認証を受けておりませんが、私どもの関連会社はいくつも御社から認証をいただいておりまして、ハイ、お世話になっております。
ちょっとお聞きしたいことがあるのですが、規格解釈のことです。ハイ、ご担当の方をお願いしたいのですが。ええと御社の正式な見解を応えることができる方をお願いします。
アア? 私ですか? 鷽八百機械工業の環境保護部の山田と申します。役職ですか、ハイ、部長を拝命しております。ハイ待ちますよ」

山田は周囲をながめてニコニコした。
山田
「ああ、どうもお世話になっております。山口様ですか、ああ取締役技術部長さんですか。私、鷽八百機械工業の環境保護部の山田部長と申します。お世話になっております。
このたびはちょっと社内で問題がありまして、純粋に規格解釈のことでお聞きしたいのですが、そうですか、ありがとうございます。
ええと、著しい環境側面の決定というのがありますね。御社ではこの決定に当たり点数化することが必須となっているのでしょうか?
はあ、点数化するのが普通ですか。それは規格できまっているのですか」

高橋は山田がそう繰り返すのを聞いてニコニコしながらうなずいた。
山田
「非常に重要なことですが、点数で評価しない場合は不適合になるのですね。その場合は、不適合の根拠はどうなりましょうか?
アア?? 即答できないですか、それじゃあ、私の携帯の番号ですが・・090-XXXX-XXXX ハイそうです。ご連絡をお待ちしております」
山田はスマホを机に置いた。
山田
「高橋さん、お宅の山口取締役技術部長という方が出てくれました。著しい環境側面の決定は点数法が普通なんだそうです。しかしその根拠はわからないというので、調べて連絡を頂けるそうです。しばしお待ちください」

認証機関の技術部長というと、そこの規格解釈の元締めのような立場である。そんな人が即答できないはずがないと思う人がいるかもしれない。しかし技術部長と名乗っても規格の細かいことを知らないのが普通だ。業界設立の認証機関では、傘下の企業から出向してきた方が取締役とか部長になるわけで、その辺の工場でISO担当している人よりも知識レベルが高いわけではない。

高橋
「当社の考えがどうあれ点数でなければおかしいですよ」
山田
「まあまあ、この病院の次回審査で高橋さんが不適合を出した場合、当然凸凹認証機関に異議申し立てにいくでしょうし、そのときは認証機関の考え方で判定されることになるでしょうから」
異議申し立てという言葉を聞いて高橋はギョッとした。
高橋
「あのですね、みなさんはけんか腰じゃないですか。私は審査で問題がないようにと思ってのことですが、そこをご理解いただかないと」
太田
「正直言いまして現行のEMSはまったく役に立たず意味がないのですよ。それでなければ審査に合格しないというなら、認証を返上するしかないと思っております」
高橋と黒部は顔色を変えた。
黒部
「太田事務局長、それって・・・企業長のお考えはどうなんでしょうか?」
太田
「実を言いまして現状を申し上げたところ、そんな状況じゃしょうがない。まず規格解釈をすり合わせて、現在の認証機関がだめなら認証機関を替えることを検討しろとのことでした。認証返上は今のところ考えていないようです」
黒部と高橋はそれを聞いてまたギョットした。
そのとき山田のスマホが鳴った。♪〜
山田
「ハイ、山田でございます。おお、山口取締役さんですか、どうもお手数をおかけします」
山田は受話器を押し当てて黙って聞いている。
山田
「すると凸凹QAさんとしては、環境側面を点数でしなくても不適合ではないということですね。いや私もそう考えておりました。考えが一致してよかったです。
推奨はしているのでしょうか? はあ、御社としては推奨もしていないのですね。単にそういう方法を取っている企業さんが多いということですか、いや大変ためになりました。ありがとうございます。
そういえば環境目的が3年先の目標であることなんて言いませんよね?」
山田はまた静かに先方の話を聞いている。
山田
「はあ、御社は3年を要求するのですか? 3年というのは規格に書いてあるのでしょうか? いや、私どもにとっては重大なことですから、ハイ、待ちますよ」
しばし沈黙があって、また先方が話し始めた。
山田
「なるほど、3年間であることを要求することはまったくないということですね。分りました。なにぶんの初心者ですので不明な点が多くて失礼いたしました。今後ともご指導をお願いします。ありがとうございました」
山田はスマホを切ってポケットに放り込んだ。
山田
「お聞きの通り、山口取締役としては、環境側面を点数でするもしないも組織の判断ということ、目的が3年間であるということはないという回答でした。ということで高橋さんよろしいでしょうか?」
高橋
「私は規格要求を完璧に満たして病院のEMSを改善するように考えて指導しているのに分らない人たちだ。そんなことで改善になるのか?」
太田
「まず、規格適合か否かという観点をはっきりさせたいと思います。
高橋さん、環境側面評価という言葉はないと先ほど確認しましたが、次に環境側面を点数で行わなくても良いということに確認いただけますか」
高橋
「当社の取締役がいうなら、不適合にはできないでしょうねえ」
太田
「ではご同意いただけたと・・
次に高橋さんがおっしゃった病院のEMS改善ですが、現在のシステムはまったく現実離れしており、病院としてはこのままでは認証を維持することもできなくなると考えています。改善とかいう悠長な話ではなく、現状のバーチャルというか形だけのEMSを現実に合わせることが喫緊の課題なのです」
高橋
「私は審査を繰り返していく過程の中で、組織のEMSを向上させていくことを考えて日常審査を行っているつもりですよ
おたくの病院の場合、まだ認証してからの年月が短いので改善していることが理解できてないんです」
太田
「あのうですよ、私どもではISO認証がEMSを向上させるということはないという考えなのですが。それとも高橋さんは審査において組織を指導するという発想なのでしょうか?」
高橋はしばし黙っていたが、やがて口を切った。
高橋
「わかりました。次回審査は別の審査員にお願いしましょう。お宅に私は合わないようだ」
そう言って部屋から出ていってしまった。


太田
「これで、いいんですかねえ〜、後でもめないといいけど」
山田
「凸凹QAさんには私が太田さんとは別に、一度顔を出してまっとうな審査をお願いしておきますよ。ご迷惑かもしれませんが、そのとき次回の審査員はまっとうな人を出すようにさせましょう。
認証機関を代えることになると太田さんも困るでしょうから。」
黒部
「はあ? 何で困るんですか?」
山田
「だって企業長にはまだ話していないんでしょう」
太田
「そうなんですけど、山田さんよく分りましたね」
山田
「あのとき太田さんの声の調子が変わりましたのでね」
太田
「ハハハハ、慣れないことはするもんじゃないですね」
山田
「高橋さんにとってもよかったんじゃないですか。これで審査前に太田さんが高橋さんを忌避したりしたら彼も立つ瀬がないでしょうからねえ〜。
ともかく次回審査はまっとうにできる審査員を派遣してもらうようにしましょう」
黒部
「山田さんはどのようなお立場で凸凹QAに話をするのですか?」
山田
「どうってことないですよ。鷽八百グループで凸凹に審査を依頼している会社を調べたら5社ありました。それだけで凸凹に意見するには十分でしょう。向こうから見れば、その五社の認証機関の決定権はこちらにあると考えるでしょうね。
規格の解釈の違いで客が逃げるとなれば、向こうは私の話を真剣に聞くでしょう。ましてどこに行っても、こちらの解釈が間違っているとは思えませんし。そのときこの病院は一例として言えばいいですし」
黒部
「山田さんも怖い人ですね」
山田
「ISOって以前は認証機関が売り手市場の殿様商売をしていたのですが、今世紀はノンジャブとか安値攻勢の認証機関が多くなって、競争は大変です。
だけど売上を伸ばすには精神力とか口先だけではだめです。どんなビジネスでも良い製品やサービスをしっかりした営業政策を立てて売るということなんです。
今回は第一にサービスの品質が悪かったですし、ビジネスの方法がまったくおかしいですよね。
とりあえず凸凹さんは、実際の審査はともかく内部での規格の理解はちゃんとしているようですから次回の機会を与えましょう。次回審査がだめならそれまでと」
太田
「それじゃ審査はまっとうになるとして、病院のEMSはまっとうな人には決して突っ込まれないようにするようがんばりましょうね、黒部さん」

次回に続く

うそ800 本日白状すること
実を言って、審査員と協議しているときに目の前で認証機関に電話するという、ここまで露骨というかあこぎなことをしたことはない。
ただ現場の審査員と見解が異なる場合、認証機関に戻って解釈を確認してほしいと言ったことはある。その後、先方から返事をもらわなかったが、出された不適合は消されていた。その審査員はわざわざ私に回答する必要はないと考えたのか、それとも恥ずかしかったのか、どちらだったのだろうか?

うそ800 本日の無念
もういちど審査でチャンチャンバラバラしてみたい。


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