地球温暖化のファクトフルネス

21.06.24

書名著者出版社ASIN初版価格
地球温暖化の
ファクトフルネス
杉山 大志Amazon Services
International, Inc.
B08W8GDGYT2021.02.0799円


この本の書き出しである。

地球温暖化に関する報道を見ていると、間違い、嘘、誇張がたいへんによく目につく。そしてその殆どは、簡単に入手できるデータで明瞭に否定できる。本稿は、そのようなデータを分かり易くまとめたものだ。

著者 杉山大志という方はIPCCの「第4次報告書」の統合報告書主著者、「第5次評価報告書」の第3部会総括執筆責任者という人です。つまりそのへんにゴロゴロ転がっている大学教授とか、地球温暖化を語っている有識者()とか、天気予報士ではありません。IPCCの中にいた方であります。

ではIPCCの中にいた人だから、地球温暖化を信じろ!、これから大変なことになる、疑うものは地獄に落ちるなんて語っているのかというと、意外や意外、地球温暖化になっても心配するな。そもそもが大した問題じゃないというお考えのようです。
過去の著書「環境史から学ぶ地球温暖化」でも地球温暖化否定ではないが、地球温暖化の問題は大きくないと語っていた。

この本も地球温暖化を重大な問題ととらえるのは適切でないというスタンスです。そしてIPCCの報告書に書いてないことを、マスコミや学者が語って、その恐怖心を煽っていると異議を述べています。
確かにIPCCの報告書をしっかり読んでいる人など、日本全国に何万人もいないでしょう。国民のほとんどはテレビや講演会や政府広報などをみて、地球温暖化は大問題だと感じている(考えているのではなく)のだと思います。

じゃあマスコミ報道や政府広報において、あわてるな、落ち着け、大問題じゃないと解説すべきではないかとなる。 おまえは温暖化をどう考えているんだ? しかし現実はその反対で、それこそ毎日、地球温暖化が大変だあ〜とテレビや新聞は垂れ流している。
野党の皆さんは花見とか獣医師では何年もしつこく騒いでいるが、巨額のお金がかかり国家が傾くかという大問題である地球温暖化対策には一言も語らない。

なぜ杉山氏のような見解が世に伝わらないのか?
これは本当に私の下衆の勘繰りであるが、杉山氏はIPCCや政府機関からはじき出されたのではないだろうか?
理由? そりゃ杉山氏のスタンスでは金儲けにはならないだろう。研究機関へ流れるお金、民間企業での技術開発・生産設備への莫大な投資、市民生活での買い替え需要、国民から収奪する多額の税金……
いや、すべて私の想像である。

それにIPCCの報告書は英語原文も日本語訳も、普通使うような文章でなく、否定なのか肯定なのかわかりにくく、形容詞がどれくらいのレベルを意味するのかわからない、などあって理解しにくい。
IPCC報告書をもっとわかりやすく訳せといいたいけど、とりあえず現状では真面目に日本語訳を読むしかないのが実情です。

そしてIPCCの報告書を書いているのはその分野の専門家ではない。さまざまな分野の専門家が書いた論文を集めて読み、それらから地球温暖化に関するものを取捨選択して取りまとめたものなのです。(ここ重要)
だからIPCCと同じ論文やデータを読んでも、IPCC報告書と同じ結論に至るのかといえばはなはだ疑問を持たなければならない。編集者の意向次第ではなかろうか?

私は後悔しないためには最大限手に入る情報を集め、それを読んで考えることだと思う。その意味で、この本も信じてはいけません。だけどこの本で引用している書籍とかデータを眺めて考えるためのツールとしては有用です。
ネット詐欺にあわないためにはインターネットに関わらずに暮らすことではなく、詐欺について勉強することです。
地球温暖化がいかほどの問題なのか知識がなければわかりません。


さてこの本では20項目について、マスコミなどが報じていることが本当なのかと問うています。そして全部否定しちゃうわけです。

注:この本では、IPCCが語ることについては、否定しているところもあるし、妥当としているところもある。脚色した報道は否定している。


冒頭のいくつかを上げると次のようなものです。

地球温暖化を信じている人も疑っている人も、絶対にこの本を買い……おっとこの本を信用しちゃだめだ……そこで引用しているウェブサイト、報告書、論文などに目を通すことをお勧めする
そして「地球温暖化を信じている」なんて言うのをやめて、「いろいろ書物を読んだが結果として地球温暖化は間違いないと考えている」と言うようにしよう。
もちろん「地球温暖化を信じてない」人も、「いろいろ調べ結果、地球温暖化しないと考えている」と言えるようになろう。


うそ800 本日のまとめ

世間では嘘も方便という。いっときの付き合いならそれもありかもしれない。だが継続して付き合う間柄なら、絶対に嘘をついてはいけない。
嘘をついた代償は実際にしたことより、もっと悪いことをしたと記憶されることだ。
地球温暖化すると大変だとしても、それを信じさせるためにそれ以上の大問題だと言ってばれたとき、発言を否定されるだけでなく発言者が大嘘つきと記憶される。そしてそれ以降は、カインのごとく嘘つきのしるしを付けて生きていかねばならない。


うそ800 本日のおすすめ

この本はボリュームは大きく違うがビョルン・ロンボルグ「環境危機をあおってはいけない」のデータをアップデートした日本版ともいえる。思い返すと20年前のロンボルグの時代は、まだまだ地球温暖化議論は穏やかだったね。
今は急進的な環境魔女狩りの時代となった。地球温暖化懐疑論を徹底的に叩く本はいくつもある。世も末だ。

このキンドル版が99円というのは絶対にお買い得だ。載っているリンクを探すだけでも手間賃は99円ではすまないだろう。
定年してショップレートもないだろうと言うな。年金が月22万として8時間労働と仮定すれば、5分で100円になる。

良いことばかりではない。この本はKindleつまり電子本だ。文中の出典や文末の引用文献はすべてリンクがついている。興味を持った出典をたどるのにとても便利。こういう点は電子ブックは便利だと実感する。
ただやはり紙の本を手にもって読むのとは違う。電子ブックは本を読みながらじっくりと考えるには向いていないように思う。単に知識と接したというだけのような…
つまらないことだが、スマホで読んでいてちょっと考えていると画面が黒くなってしまい、あまり考えていてはいけないと思ってしまう。




注1
注2




外資社員様からお便りを頂きました(2021.06.25)
興味深い本の紹介ありがとうございます。
さっそくKindleの本を見てみます。
ちなみに、図書館で本を探したら都内公共図書館では八王子市永山図書館に一冊あるだけ。
同じ著者の「環境史から学ぶ地球温暖化」や「地球温暖化 企業の取り組み」などは、あちこちに蔵書されているのと大きな違いでした。
 気候変動は大きな動きがあるもので、過去寒冷化と温暖化の波もありますから、因果関係の判断は難しいですよね。
 近隣の水田のお話、とても良く判りました。
森林伐採の環境も影響もあると思います。
でもお書きのように「何か良くない事を地球温暖化」のせいだと気軽に言う事は、仰る通り危険でもあり、思考停止なのだと思います。因果関係と相関性の違いも含めて、しっかりと考える必要を感じました。

思えば、似たような悪者探しは多いようで「グルテンフリー」も似たようなものを感じます。2015年ごろ米国出張の時に、レストランのメニューにグルテンフリー料理の欄があり、人気のスーパーでは、シュガーレス、カフェインレス、グルテンフリーの3点セット、専用の棚がそれぞれありました。
当然に値段は高いから、マーケティングの面では、新しい食品分野が開発出来て成功だったのだと感じました。
その一方で最近は「畑の肉」と言って「大豆グルテン」が出てきました。これは問題ないのかと「グルテンフリー」の定義も見ると「小麦グルテン」が駄目で大豆グルテンは良い奴らしい。ならば「小麦アレルギー対策食品」とか、「小麦フリー」じゃダメなのか?
食品の問題は個人の体質もありますので、本来は世間で一斉に盛り上がるものでは無いはずなのに、盛り上がりがあるのは、結局マーケテイングの問題なのだろうと、とりあえず納得しております。

外資社員様 いつもありがとうございます。
図書館でも電子図書の蔵書というのがあるのですか? 知りませんでした。
本題ですが、地球温暖化というものの真偽はどうなのでしょうか? 学者とかマスコミが温暖化は間違いないと語っていますが、彼らは研究した結果ではなくIPCCの報告書を根拠にしています。ところがIPCCの中の人が「温暖化は間違いないが心配するな」と言うわけですから、ハテナ?となってしまいます。
ともかく今年まもなくIPCC第6次報告書が出るらしいので、話はそれが出てからなのでしょうね。

ところで「グルテンフリー」と「シュガーレス」はフリーとレスが違うのですが、英語の意味合いはどうなのですか? 辞書をみると、non/noはない、lessは少ない、freeはないとありますが、そのように違いがあるようでもないと思えるのです。
使われている言葉をみるとシューガーレスもシュガーフリーもありますが、意味あいが違うのでしょうか?
ビールのノンアルコールはアルコールが1%未満で酒税法の該否であり、アルコールフリーは法で定めるものでなく一般語だそうです。首をひねるばかりです。


外資社員様からお便りを頂きました(2021.06.28)
>図書館でも電子図書の蔵書というのがあるのですか?
説明不足で誤解させてすみません。
まずは印刷物の本を探したら、都内では八王子永山図書館にしか蔵書が無いという事実を言って、八王子だと借りられないので、KINDLEを買おうと考えたという事です。
電子図書は、大学などで専用端末で閲覧のみ可能なものはありますが、借りられるものは無いと思います。ネット経由でWEBで見られますから、そもそも借りる必要もないですね。
文献などのパブリックドメインはフリーでPDFがDLできるものはあります。

>シュガーレスとシュガーフリー
米国法は脇に置いて日本国内の場合を調べてみました。
結論を言えば、どちらも同じと思います。(糖類の含有量が0.5g/100ml以下である)
現時点では、「シュガーフリー」「シュガーレス」という記載の規程はないようですね。
となると、下記の別表の含有量を見たせば良いと思います。
その場合には「ノンシュガー」「シュガーレス」「無糖」「糖類ゼロ」と書いて問題なさそうです。
裏返せば、全く添加が無いわけでなく、1リットル当たり5g未満なら可という事ですね。
<根拠法:栄養表示基準第8条>

含まない旨の表示は、別表第十三の第一欄に掲げる栄養成分又は熱量の量がそれぞれ同表の第二欄に定める基準値に満たない場合にすることができる。

(別表規定:糖類の含有量が0.5g/100ml以下)
糖類を添加していない旨の表示
次に掲げる要件の全てに該当する場合には、糖類を添加していない旨の表示をすることができる。
一 いかなる糖類も添加されていないこと。
二 糖類(添加されたものに限る。)に代わる原材料(複合原材料を含む。)又は添加物を使用していないこと。
三 酵素分解その他何らかの方法により、当該食品の糖類含有量が原材料及び添加物に含まれていた量を超えていないこと。
四 当該食品の百グラム若しくは百ミリリットル又は一食分、一包装その他の一単位当たりの糖類の含有量を表示していること。

最近ビールなどである「糖質ゼロ」は、もっと厳しく糖類はもちろん、糖アルコール、オリゴ糖、デンプンなども含みますので、「糖類ゼロ」より「糖質ゼロ」の方がより厳しい基準となります。

外資社員様 ご教示ありがとうございました。
Kindleは了解しました。
フリーとレスは揺らぎというかそう厳密ではないということですね。日本語にもそういうのは多々ありますから納得です。
英語の場合は、特別な定義とかあるのかと疑問に思いました。
最近は清涼飲料水ならゼロカロリーとか、ビールはアルコールだけでなくプリンタとかいろいろなものがあるとかないとか宣伝しています。「どうせたいしたことは言ってない」と解釈していくことにします。


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