ISOマネジメントシステムが一番わかる 2

22.05.16

お断り
このページはISOマネジメントシステムが一番わかるの続編である。
その本を読んであまりにもおかしな点があり、その問題点を指摘し解説するものである。
ここで取り上げた本そのものについてのコメントはご遠慮する。
ぜひ私がおかしいと指摘したことについてコメントいただきたい。


書名著者出版社ISBN初版価格
ISOマネジメントシステムが
一番わかる
日本品質保証機構技術評論社97842971242362021.11.101800円

こういう本(役に立たないという意味だ)を書くのはどうしてなのだろう?
 なぜ企業の経験を基にして考えないのか?
 その前に常識で考えないのか?
 規格の文言をしっかり読んでいるのだろうか?
 自分が語ることに矛盾があるのに気づかないのか?
そんなことを思った。

だいぶ前、規格を読むスタンスという文を認めた。物事は先入観なしに素直に考えないと真意をつかめない。先入観なしといっても、現実には難しい。
「ISOマネジメントシステムが一番わかる」を取り上げて、どうしておかしな考えになってしまったのか、そんなことを考えた。
過去のものと重複するところもあるが、参考になればうれしい。


ISOMS規格を読むには、まずはその規格の意図と知って読むべきだ。ISO9001は何を言いたいのだろうか? ISO14001は何を目的にしているのか? その意図は何か?
もちろんISOMS規格に関わっている人はご存じのはずだ。
ISO9001は「顧客満足」であるし、ISO14001は「遵法と汚染の予防」だ。品質とは顧客満足を実現する要件であるし、遵法と汚染の予防が担保されなければ省エネも廃棄物削減も意味がない。

だからISO9001を読むならそれぞれの要求事項はどういうふうに顧客満足とつながるのか、ISO14001ならこの要求事項は遵法と汚染の予防にいかなる関わりがあるのかと考えねばならない。そして関りがなさそうだと解釈されるなら、その解釈は誤りであるはずで、もっと考えないといけない。
規格に「○○をすること」とあるから「○○をしなくちゃいけない」あるいは「○○をすれば良い」となりがちだが(それさえもおかしいのだが)、「○○をすれば顧客満足につながるのか?」「○○によって遵法が確実になるのか?」と考えなければ社会人として失格だということだ。
とまあ言いたいことはそういうことだが、具体例で考えていく。



うそ800 本日の予定

今回は「ISOマネジメントシステムが一番わかる」を読んで読書感想文を書いたものの、まだ言い足りない、腹ふくるる思いで続編を書いた。
とはいえ、その2まで書いたが、まだまだ言いたいことは半分も語っていない。
そもそも冒頭に書いた意図を実現する話まで至っていない。
よって今後「その3」を書く。



外資社員様からお便りを頂きました(2022.05.18)
おばQさま いつも有難うございます。
前回からの記事「ISOマネジメントシステムが一番わかる」に関連したコメントです。

>ISO認証の意味,メリット
受けている立場で言えば,「顧客要求だから」に尽きていますね。
それだと議論にならないので,なぜ顧客要求になりえるかという点で考えてみます。
私なりには
1)用語統一
企業固有の言い回し,グローバル環境での言語の相違 そうした問題についてはISO規格の基づいた用語統一は,同じ言葉で理解できるメリットがあります。
原典は英語,フランス語ですから,日本語の訳がオカシイ場合には翻訳側の責任なのでしょうね。
だからこそ規格の原典にあたるのが重要

2)一定の基準を見たしている
ご紹介頂いたJAVの記載でも,そのような内容と思います。

おばQさまは規格を仕様書だと仰いましたが,認証を「試験」ととらえれば「ものさし」と捉えることができます。
国際規格として存在するという事は,国際的に共有できる「ものさし」であり,認証を受けているのは一定基準以上の力があると認められると言えます。
これは取引先工場採用では有効な方法と思います。

第三者認証は社内改善につながるのか?
これもおばQさまの常々ご指摘の点です,私は子供の勉強を例にとって考えてみました。
規格要求ですから,カリキュラムは子供の能力に応じたものでなく,共通仕様とします。
勉強に意欲を持てない子供を塾に行かせるのは一般的。
これが第三者認証,つまり自己改善は難しいから第三者による強制力や評価を導入する。
これが認証が有効に働く場合,でも世の中の子供全てに有効な訳ではありません。
改善の効果も,共通仕様のレベルまでで,それ以上には機能しない。
色々な子供がいて塾についてゆけない子を選別するなら,その子とは付き合わない場合もあり。
これが認証を要求する企業の動機で,低いレベルの工場は相手にしない。そういう場合も少しはあるでしょう。
世間では,自分で勉強できる子供もいます。
そういう子供には塾の共通仕様が低レベルならば,その必要もない。
これは大手企業やグローバル企業で,認証不要としているところ。
つまり認証が要求するものは当然満たしていて,その先のレベルにある。

という事で認証制度が有効に機能するのは,全ての企業でなくて限定された条件。
こういう点については言及しないで,あたかも全てに機能するように言えば誤解を招きますよね。
だから,おばQさまがご指摘する認証の意味の不明は,その前提条件:有効に機能する条件を明示すれば,もう少しましな内容になるのだと感じました。

外資社員様 いつもご指導ありがとうございます。
おっしゃることはすべて同意です。
認証の目的は客先要求だからというのは第三者認証の目的そのまんまです。
初めはそういう意図で始まったのでしょうけど、現実は認証を必要とする企業はそんなに多くない。じゃあ認証を増やすにはどうしたら良いかというやむにやまれぬ状況にあったのですね。1996年頃でしょう。認証機関がたどり着いたものは、ISO認証は会社を良くすると宣伝することだったようです。
でも会社を良くするとはどんなことでしょうか? まずは増収増益だろうと思いますが、その他にもブランド向上とか知名度を上げるとか、株価を上げるとか思いつきます。
でもISO9001にそんなことできるはずありません。私はISO9001が品質を上げないとか、ISO14001が順法や汚染の予防に貢献していないなんて言う気はありません。なにしろ規格序文に「この規格で規定する品質マネジメントシステム要求事項は、製品及びサービスに関する要求事項を補完するものである」とありますように、最初に来るものというか製品にとって最重要なものはマネジメントシステムではなく、「製品及びサービスに関する要求事項」であり、それを実現する固有技術であるわけです。
それに目をつぶったのか、理解していないのか、マネジメントシステムが会社を良くするとか、売上増加、製品品質向上、組織の知名度向上、納期短縮などなど、寝言を語っている人たちを許せないのが本音です。
おっしゃるように国際規格、グローバルスタンダードという意味では、各社・各国バラバラだった品質保証規格の統一というのが始まりのときの目的でした。
また認証することにより、レベルの低い会社は最低限のレベルになるということも認証開始時に言われました。
私が怒っているのは、ISO9001が作られてから35年も経った今でも、おかしなことを書いているこんな本を売ることが信じられないです。せめて今までのトラブル、試行錯誤を反映してISOに携わる人に真に役立つものを書いてほしい。
外資社員様と違い、人間ができてませんので、すぐに沸騰してしまいました。


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