ISOマネジメントシステムが一番わかる

22.05.12.

お断り
このコーナーは「推薦する本」というタイトルであるが、推薦する本にこだわらず、推薦しない本についても駄文を書いている。そして書いているのは本のあらすじとか読書感想文ではなく、私がその本を読んだことによって、何を考えたかとか何をしたとかいうことである。読んだ本はそのきっかけにすぎない。だからとりあげた本の内容について知りたい方には不向きだ。
よってここで取り上げた本そのものについてのコメントはご遠慮する。
ぜひ私が感じたこと、私が考えたことについてコメントいただきたい。


書名著者出版社ISBN初版価格
ISOマネジメントシステムが
一番わかる
日本品質保証機構技術評論社97842971242362021.11.101800円

この本は2021年11月に出版された。昨今、ISO本は年に数冊しか出版されないから希少である。すぐに読みたいと思ったが、先立つものがない。市図書館が購入したのを確認して予約を申し込み、順番が来るのをひたすら待った。結構ISO本を読む人もいるらしく、なんと5か月も待ちました。
そして半年後の5月、やっと順番が回ってきましたので、すぐさま引き取りに行きまして、それからひたすら読みました。ISO情報に飢えておりますから。
正直言って中身には期待していませんでしたが、まさに予想通りというか内容がハチャメチャです。そしてこれは一言言わないとならないと思ったのです。

何が問題かと問われるだろう。いろいろ問題と思われることがある。規格解釈もユニークおかしいだし、規格にないことをあたかも要求事項であるかのように語っていたりと、呆れることが多々あります。
そもそも、この本を書いた人は会社の仕組みとか仕事を理解しているのかというのが最大の疑問である。審査員の多くは企業で働き管理職経験者だが、著者たちの経歴はどうなのだろう。いや別に企業で働かなくても管理職でなかったとしてもダメではないが、社会の仕組み、会社の仕組みを知らずばISO審査などできないだろう。なんせマネジメントシステムの審査なのだから。
オット、実際の審査の多くは、手順書に言葉があるとかないというのが多いようだ。

会社の仕組みとか仕事の理解といっても、そんな難しいことではない。理念を実現するために創業し、一人でできないから会社を作り、組織が円滑に動き長期間存続するためには、具備しなければならない様々な機能があること。そして世に存在する数多の企業はそれを備えているということだ。
そういう会社組織や業務手順というものは、ISO規格などと関わりなく、組織誕生時から継続的に整備され運用されてきている。さもなければ企業という組織は維持できない。
もちろん備えてはいるが完璧でないこともあり、運用が完璧でない場合もある。だが備えてはいるのである。

ISOMS規格の要求事項とは、冠した切り口(つまりQMSとかEMSとか)でみたシステム・プロセスが具備すべき機能や要件を示したものである。
そして忘れてならないのは、ISOMS規格は要求事項であり設計図ではないということだ。ISOMS規格を満たすような仕組みを作ることはできるが、ISOMS規格に基づき仕組みを作ることはできない。だって設計図じゃないんだから。

そんなこと当たり前だろうといわれるかもしれない。だが理解している人はめったにいない。
大勢の、審査員もコンサルも、ISOMS規格はシステムの枠組みを定めたものとか、ISOMS規格に基づいてマネジメントシステムを構築するとか語っている。自分が何を語っているのか理解していないのだろう。
この本はどうだろう……それはこれから書いていく。


太陽 ISO認証において、天動説と地動説という言い方がある(注1)そもそも天動説とは太陽は地球を回っていると考えたものであり、地動説とは地球は太陽を回っていると考えたものを言う。ISO認証における天動説とはISO規格に会社を合わせる発想であり、当社がISO規格を満たしているか確認しようというのが地動説だ。

要するにおかしな考えを天動説といい、まっとうな考えを地動説といいます。どちらにおいても、天動説は間違っているが信じやすく、地動説は正しいが理解されにくい。
天動説とは誉め言葉ではなく貶し言葉、これ重要。

ISOの天動説がおかしい例を一つ上げよう。
過去ISOMS規格はたびたび改定された。ISO規格が改定されたら会社のマネジメントシステムを見直さなければならないのだろうか? これひとつで天動説は間違っているといえるだろう。
実際にはISOMS規格改定のたびに、社内の手順書を一生懸命改定していた同業者を知っている。具体的にはISO14001の1996年版では「環境マネジメントプログラム」と呼び、2004年になったら「環境実施計画」に改定し、2015年になったら「計画」になった。イヤハヤ
彼らが力量がなかったのは言うまでもない。


この本を読むと、問題点は多々あるが、重要性とか原因別など体系的にまとめようとすると大変だから、ページ順に列記していく。
なお紫色の文章は引用文である。


お断り
文献を引用するときの条件は報道機関とか論文などにおいて定められています。
ここでは次の条件で引用しております。

  1. 引用する文章は論を進めるのに必要な文章であること
  2. 引用した文章より考察あるいは意見のほうがボリュームがあること
  3. 出典は明確に記述する(書籍、論文名、著者、出版社、出版年、必要なら記述箇所ページ番号)
  4. 引用文は修整をしないこと
    略した部分がある場合は「中略」などと明記すること


うそ800 本日の感想

なにごとも課題を与えられて回答するのは楽だ。自分で課題を見つけて新天地を拓くのはハードルが高い。
本日は課題書を与えられ、その真偽を考えるだけで楽だ。ついついキーボードを叩くのも弾んでしまい13,000字を軽く超えた。ちなみに、この本の文字数は約12万字であるから、本体の1割ものコメント・感想文を書いてしまったことになる。
とはいえ4章までくると事務局とかコンサルなど本質的でないことが続き、気力が喪失した。ということで各MS対応のパートはISO14001だけでおしまいだ。

最後に私はこの本を3回読み返したことを申し添えておく。

 ⇒ その2に続く!




注1
ISO認証における天動説・地動説とは企業で種々のISOMS認証の管理責任者を務めたぶらっくたいがぁ氏が「規格に会社を合わせるのを天動説、会社に規格を合わせるのを地動説」と唱えたことに発する表現である。

注2
「中小企業のためのISO9001―何をなすべきか ISO/TC176からの助言」ISO編、日本規格協会、2005
なおパン屋の事例は悪くないが、本の内容としては2005年版より、初版である1997年版のほうが内容的に素晴らしく、ISOMS規格を理解するには最適なテキストだ。

注3
注4
厚生労働省 モデル就業規則
第10条 服務 労働者は、職務上の責任を自覚し、誠実に職務を遂行するとともに、会社の指示命令に従い、職務能率の向上及び職場秩序の維持に努めなければならない。

注5
反射的利益とは、何者かの行為によって、他の者が副次的・間接的に受ける利益を言う。
近くに公園ができて素晴らしい環境になって地価が上がるようなケースを言う。この場合、その後公園がなくなっても文句は言えない。
ISO認証によって顧客など利害関係者から「組織がISOMS規格の要求事項に適合した○○マネジメントシステムをもっている」と信頼されることが唯一の認証の効果であり、品質が上がることや上がると期待されることは認証が保証することではない。認証の結果そういう効果があっても、反射的な効果に過ぎない。

注6
「環境マネジメントシステムの構築と認証の手引き」土屋通世、システム規格社、2004

注7
罪刑法定主義とは、法律で定めてあることでなければ刑罰が科せられないという近代法の原則の一つ。
そこから法律は公開されなければならない(公開の原則)とか、事件が起きてから制定された法律では以前の犯行は罰せられない(訴求処罰禁止)などが演繹される。



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