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またしても逆転劇! 日本大学が2冠にかがやく!
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(2009.11.01) |
ダニエル・オン・ダニエル!
出雲駅伝につづいて、またしても……。絵に描いたような逆転劇、まさに心憎くいまでの演出というべきであった。
トップをゆく明治大から1分53秒おくれの3位でタスキをうけた日本大学のG・ダニエルは7.4q地点で、早くも先頭をゆく明治大の細川勇介をとらえ、「お先に失礼!」とばかり、ひょいと片手をあげ、かたわらを音もなくすりぬけていった。その瞬間に日本大学の4年ぶり3度目の制覇がきまったのである。
先の出雲とおなじく、またしてもアンカーにタスキが渡った時点で日大がどの位置にいるか。焦点はもっぱらその一点にしぼられた。出雲のときは41秒だったが今回は1分53秒、だが距離はのびて19qという長丁場である。学生長距離4冠のダニエルにすれば、まったく問題がないポジションということだったのか。
1q=2:58とゆったりとした入り、3qも8:33だから、あわてずに余裕のペースである。それでも4qでは中継点では49秒差あった2位の東洋大の大津翔吾を抜き去ってしまった。きっちりととらまえ、自信にみちた走りで、トップを
伊勢路、勝負の最終区。3位でスタートした日大・ダニエル(4年)が、1km2分54秒程度の比較的落ち着いたペースで入りながらも、まずは4km地点で49秒差あった2位東洋大を抜き去る。
トップをゆく明治の細川は5km=15:30ペースだが、まるで登載しているエンジンがちがう。ダニエルは5qでは30秒差と迫り、6kmすぎで20秒を切った。1分53秒差をわずか7qで逆転、トップに浮上したのである。
それにしても……。出雲につづいて2度までも日大に逆転劇を演じられたのは、ひとえに早稲田、東洋、駒澤など主力が、いかにもふがいなかったからだ……というほかない。アンカーの大砲を活かせる展開に、やすやすともちこまれたところに敗因があるのだ。決め手をもたないチームが決め手を活かせるレースに持ちこまれては、どだい勝てるはずがないのである。
かくして候補とみられていた東洋大、早稲田大は明治大をまじえて2〜3位争い、駒澤大は山梨学院大、中央大とシード権争いをするのが精一杯になってしまったのである。
15kmをすぎて、2位の明治大に東洋大がはげしく迫り、とうとうゴール手前で逆転。4位には早稲田が粘りぬき、5位にはコスマス抜きの山梨学院大がなだれこんだ。シード枠の最後の一つは中央大の大石港与が駒澤大の深津卓也をはげしく追いあげ、とうとう17qで逆転してしまった。かくして4連覇をめざした駒大は7位に転落して、シード権すら失ってしまったのである。
ダニエルはそんな後方の争いをあざわらうかのように、区間新はならなかったものの、まるで余裕のペースで伊勢神宮のゴールへ向かい、笑顔をふりまきながら、黒人特有の長い手をおおきくひろげてゴールにとびこんだのである。
山の神さまはことしも健在!
見どころはやはり各チームが主力を投入してきた1、2、4、8区であった。まず1区には箱根山登りの神さま・柏原竜二(東洋大)が登場してきた
1,5qあたりではやくも柏原が引っ張りはじめ、早稲田の矢澤曜、東農大の松原がつづく。東洋大のスーパーエース柏原(2年)が引っ張るが、すぐさま第一工大・ジュグナ(2年)がさらに前に出る。第一工大・ジュグナ、早大・矢澤(2年)、東農大・松原健太が前に出てきて次第に縦長の展開になる。
2qあたりでジュグナがスパート、柏原、矢澤、松原が抜けだしたかたちになる。3q=8:21のペース、だが柏原、矢澤も果敢にくらいつきいて、その差はおおきくひろがらない。
ジュグナは5q=14:12と区間新ペース、10qでは柏原がまだ30メートル差ぐらいにくらいついていたが、その差はじりじりとひらいていった。3位の矢澤に東海大の早川翼が追いつき、4連覇をねらう駒澤ははるか後方に追いてゆかれた。
ジュグナは力でおしきったが、2位の柏原との差は21秒差……。3位の矢澤との差は1分をこえたが、果敢にジュグナを追いかけ、食らいついていった姿勢に清々しいものを感じた。
最初から果敢にとびだすというのは柏原のスタイルだが、平坦なコースでも強さを発揮した。箱根ではさらにみがきのかかった走りをみせてくれることだろう。
かくして1区をおわったところでは東洋大がトップと21秒差の2位、早稲田が東洋から47秒差の3位、日本大学は東洋から1分01秒差の7位につけたが、4連覇をねらう駒澤は東洋から1分20秒おくれの9位と出遅れた。
中盤を制した駒澤
1区で出遅れた駒澤だが、2区から3区にかけてはさすがと思わせる強さを発揮した。2区は各チームとも主力を配しているだけに観どころいっぱいに区間である、だが、それにしても順位はめまぐるしく変転した。
前のほうでは3位の早稲田の八木勇樹と4位の東海大のルーキー・村澤明伸がならんで追い上げてくる。後ろからは9位でタスキをうけた駒澤大のエース・宇賀地強が中大、日本文理大、京産大、中央学院大をいぬき4qまでに5位まで順位をあげてくる。
後半はこの2つの波がひとつになり、もつれにもつれるのである。中間点の長島温泉付近では第一工大の山元綾が逃げ東洋大の宇野博之が追うという展開にかわりはなかったが、東海大の村澤が早大の八木と競りながらトップと41秒差までやってくる。
駒澤の追撃はさらにつづき、7,2qでは3位争いからこぼれてきた早稲田の八木をもとらえて3位まで浮上する
前のほうでは東海大の村澤が8.6qで東洋大の宇野をとらえて2位にあがり、トップまで14秒差にあせまるも、9.2qでは後ろからやってきた駒澤・宇賀地がやってくる。2位グループとなって一気にトップを奪ってしまう。
宇賀地と村澤の意地の張り合い。4年生エースに果敢に挑む村澤、そして1年生負ける者かという宇賀地……。まるで箱根の対決を占うかのようで実にみどころがあった。
9,9qで村澤がスパートしてトップをうばうのだが、12.2qあたりで宇賀地が渾身のスパートをかけてとうとう村澤をふりきった。8人抜きの爆走である。トップに立った宇賀地の走りに4年生の意地をみた。
4連覇を狙う駒澤にしてみれば2区のエースでトップを奪ったのは予定通りだったろう。だが2位東海とは3秒、3位東洋とは28秒、4位早稲田とは56秒……と、主力は1分以内につけていた。だが日本大学は2分37秒差の11位と、意外にも順位を落としていた。
3区にはいって、トップでタスキをうけた駒澤の千葉優が巧走りして独走態勢にもちこむ気配。後ろでは早稲田、東洋大が東海大をとはげしく2位をあらそいながら、駒澤を追うという展開となった。
駒澤の千葉は5km=15分のペースで首位をまもり、2位東洋との差を23秒とした。2位の東洋との差は23秒、4位早稲田とは35秒、日本大学は2分17秒さの9位にもたついており、もはや独走態勢は必至とおもわれた。
大波乱の4区
エース区間のひとつとされている第4区……。駒澤を星創太を配して独走態勢にはいるかと思われたが、駅伝は走ってみなければわからない。観戦者はここで、いかにも駅伝らしい面白さを満喫することになる。
思わぬ大波乱がおきたのである。トップをゆく駒澤をおびやかしたのは中央学院の三浦隆稔である、2.7qで追いついて首位争いのもちこみ、4q付近で星を突き放した。ところが4qすぎで早稲田の平賀翔太が東洋の高見諒をひきつれて追い上げてきた。そして5qでは平賀が一気にトップまで突き抜けたのと対照的に駒澤の星は4位まで後退してしまう。星はペースがあがらない。5q=15:53というから完全にブレーキの様相、駒澤の4連覇に暗雲がたちこめる。
後方からは遅れていた日大がベンジャミンで一気に上位をうかがえるところまでやってきた。5q=14:28というペースで急追、9位から6位にあがり、5qではトップとの差は1分あまりとなる。7qではトップから落ちてきた駒澤の星をとらえて5位までやってくる。明治のエース石川卓哉も好走、9qでは4位まであがってくる。
13qではトップの早稲田の平賀と2位の東洋大・高見との差が14秒、3位明治の石川に日大のベンジャミンがわずか11秒に迫っていた。駒澤の星はさらに順位を落として、最終的にはトップから4分あまりおくれて14位、4連覇の夢はあえなくついえた。
4区から5区へのタスキ渡しでは早稲田がトップを奪ったが、だからといって早稲田が主導権がうつったというわけでもなかった。
早稲田の5区・三田裕介がピリッとしない。明治の安田昌倫が4.5qで14秒差までやってきて6qでは三田をとらえてしまうのである。さらに9qあたりで日大の谷口恭悠にもかわされてしまう。
早稲田に勢いがなく、東洋が伸び悩むなかで、にわかに首位戦線に頭を突っ込んできたのが日大である。
めまぐるしく首位が変転するなかで、5区では古豪明治がトップ、34秒遅れで日大、56秒遅れで早稲田、1分24秒遅れで東洋大……という形勢になったが、アンカーに大砲を持つ日大にしてみれば、まさに思うツボ以上、願ってもない展開となるのである。
6区も明治がトップをまもったが、日大は1分13秒差で3位をキープ、逆転劇の伏線をきっちりとつくってタスキをダニエルにたくしたのである。
後方ではシード権争いが熾烈になり、5位の東海から9位の中央大まで、わずか1分
13秒というありさま。皮肉にも4連覇をねらって夢やぶれた駒澤もそのなかでもみくちゃにされたいた。
東洋大に安定感あり
日本大学の勝因は、なによりもダニエルという大砲を活かせる展開にもちこめたことにつきる。前半は出遅れたが、4区のベンジャミンがレースを立て直し、5区、6区のつなぎのランナーもよく粘った。決め手をもつだけにツボにはまったときの強さをいかんなく発揮した。
東洋大は出雲につづいて、またしても2着におわった。しかし安定感ではきわだっている。距離がのびてこそ持ち味が生きるチームだけに箱根ではさらに上積みがあるだろう。なによりも柏原竜二という絶対的な切り札をもっているだけに、箱根をにらんでの戦力比較では日大、早稲田大、駒澤大をうわまわっている。
健闘したのは明治大である。3位は大健闘だといっていい。鎧坂哲哉、石川卓哉というエースが持ち味を発揮し、安田昌倫と遠藤寿寛が5区と7区で区間賞をとった。予選をトップで通過したとはいえ、みごとな走りであった。エースのひとり松本昂大を欠いての結果だから、まだまだ上積みはあるとみた。全日本と箱根はレース自体の質がまったくちがうが、早稲田、東洋が凡庸な戦いをしているだけに、この明治にほのかな期待をかけてみたい。
4位の早稲田大は鳴り物入りだった花の2年生トリオがいまひとつ伸び悩んでいる。チームのとしてのリズムも悪すぎる。現状では箱根を闘える戦力がととのったとはいいがたいものがある。
5位の山梨学院大も健闘したチームのひとつである。コスマスを欠きながらの5位というのは上々の結果ではなかろうか。少なくともシード権はまもれそうな気配である。
6位の中央大も最終区で駒澤を競り落として、最後はシード権をもぎとった。気がついたらいつのまにか上位に来ていたというわけで、印象度は薄いが、山梨とともに総合力では着実に地力がついている。
期待を裏ぎったいちばんは駒澤大だろう。4連覇がかかる大会だったが、すべての点でチグハグであった。自慢の4年生トリオもいまひとつ乗りきれていない。4区の大ブレーキが敗因だったが、チームとしての戦うリズムを欠いている。やはり箱根予選会を走らねばならないというスケジュールの狂いがおおきく影響しているというわけなのだろうか。
それにしても……。日大の勝ちパターンというものがわかっていながら、2度もおなじ轍を踏んだ有力チームのふがいなさは、いったいどうしたものなのだろう。強いのか弱いのか、さっぱりわからないチームばかりで、今回の箱根は史上空前の低レベルの混戦になり、あるいはサプライズがあるやもしれないという予感もある。
そんなわけで箱根本戦では、とくに早稲田大、東洋大など主力を形成するチームの奮起をうながしたい。
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